ラモックス・ザ・スタービースト号は宇宙世紀79年12月30日21時30分、驚天動地のグリーンノアコロニーを脱出した。
マハルコロニー改めソーラレイがデギン公王とレビル将軍を含む地球連邦の艦隊を吹き飛ばしたからだ。
被害の大きさは未だ不明だが、サイド7もその状況でジオンの艦を放っておくことはできない。
拘束されてしまっては元も子もないのでサイド7の宙域は維持しつつも、グリーンノアからは離れた。
もうゴンザレスとコーエンは連絡もつかない。
「あー…世界は今どうなってるんでしょうね…」
ホジョウの素直な気持ちだった。
「ホジョウ君と状況はおんなじ。何にもわかんない。」
「ですよねー…」
あまり近づいて刺激するとまずいが、先ほどまで居たグリーンノアコロニーから艦船が出撃するのが見える。
「さすが、軍艦速いな。」
メインバーニアを目一杯噴かしてグリーンノアを焦がさん勢いで出航していく。
「ホジョウ君、寝ましょ?」
「あん?」
「デギン陛下はなくなって、ゴンザレス博士も連絡取れない。私達の組織は頭が取れたトンボ状態。」
「結構グロイこと言いますね。」
「茶化さない。でも、私達には、コロニーが落ちてきたら止める使命がある。幸い、コロニー落としのきっかけはフォン・ブラウンが監視してるから、私たちはまだやれる。もう夜の22時。寝て英気を養いましょう。」
ホジョウはタニアの心が折れていないことを頼もしく思いながら、素直に眠ることにした。
船長室の無線の音量を最大にして、誰から何がかかってきてもすぐ対処できるように備える。
眠れない眠れないと思いながらもいつしか意識は途絶えた。
「ホジョウ室長!」
ホジョウは自分で最大音量にしたのを忘れて飛び起きた。
「はい!起きました!!」
アブドルアジース博士の乗るルナゲート1号だ。
「ルナゲート1号が、連邦の艦に投降するように呼びかけられています、投降してよろしいですか?」
「なんて事…投降してください!投降の仕方分かりますか?」
通信してきた兵士はホジョウの実家の道場からやってきた人間で、恐らく怪我の類いで予備役になったベテランだ。
ソツなくやってくれるだろう。
「ルナゲート2号聞こえますか?」
「こちらルナゲート2号です。1号の話は聞こえておりました。連邦はサイド2のア・バオア・クーを総攻撃するようです。」
そう話しているとマイが兵士を押しのけて通信に顔を出した。
「2号機を移動させれば、ズムシティは無理でもフォン・ブラウンとの通信を再開できます。」
「しかし、サイド2に近づくことになります!危険です。」
「言うほどじゃないと思います。ではちょっと艦を動かしますね。」
通信はそれで切れてしまった。
タニアも起きだしたので事情を説明して朝の9時ごろ。
とりあえず、通信に気を配りながらシャワーを浴びて、朝食を摂った。
そのまま1時間、2時間と時間が過ぎていく。
まだフォン・ブラウン市との通信再開の目処は立っていない。
事態が急変したのは13時ごろだった。
「戻ってまいりました。ご心配をおかけいたしました。申し訳ございません。」
急に通信に顔を出したのはアブドルアジース博士だった。
「博士ご無事で!?」
「おじいちゃん!?」
博士はなんだか着衣は乱れていたが、またルナゲート1号に乗っていると言う。
「すいません、何があったんですか?」
博士が言うには、自分達を投降させた軍艦が攻撃で半壊し、そのタイミングでルナゲート1号機を取り返して、艦を脱出したそうだ。
「ですから、今、艦の中には連邦の兵士が結構乗ってございまして。この足で、一旦サイド6に向います。中立地帯でございますので。連邦の皆様をそちらに送って差し上げないと。」
「ああ、それは送って差し上げたほうがよろしいですね…お気をつけて…」
アブドルアジース博士はついでに「あ、そうそう」と何か思い出したらしい。
「なんですか?」
「ギレン総統とキシリア少将が討ち死になされました。」
「ええ!?」
その日の夕方、バハロ首相がサイド6の広域放送でジオン公国を共和制に移行する宣言を出した。
さらに、地球連邦へ終戦を呼びかけた。
軍国時代は終わり、終戦が訪れるのだ。
その夜、グリーンノアコロニーから通信が入った。
珍しい文字の電信だった。
デイナーニオサソイシテモヨロシイデスカ?
二人は喜んで誘いに応じることにした。