「ゾック・ゼロ!南大西洋上空を落下中!」
「頭部メガ粒子砲!プラズマコーティングモードに移行します!」
ゾック・ゼロの頭部メガ粒子砲が淡い閃緑色の煙のようなものをなびかせている。
「ゴンザレスやったな!」
「おおお…!」
そのまま大気中を加速するとゾックは焼き切れてしまうため、前方の大気を予めプラズマに変え、機体周辺の空気の挙動を変化させているのだ。
Iフィールドを応用した技術の一つだ。
「ジャブロー!どうだ!」
「フン、ジオンの科学者風情になめられるジャブローではないわ!全14本発射準備完了だ!」
「ありがたい!大気圏突入時に誤差が出ている!修正情報を送る!」
通信の向こうでジャブローの動きが慌しくなる。
「誤差修正完了!発射準備完了だ!」
「ジャブロー頼む!」
「全弾発射ァ!!」
通信の向こうでジャブローの画面が乱れて消えた。
「大丈夫かジャブロー?」
不安な声も聞こえるが、数秒後に白煙が立ち込めるジャブローがうつった。
「一斉発射の衝撃で天井板が落ちただけだ。問題はない。」
後ろで消火器を撒いている光景も見えるが、連邦の軍人の沽券に関わるのだろう。
だれも追及しなかった。
「ホジョウ少佐!そろそろ見えるはずだ!」
モノアイを動かして下を見ると、地上を超音速で飛んでくる、14本のミサイルが見える。
「ゾックの姿勢制御スラスターはそんなに長く噴かせない!ルナゲート2号!ミサイルのハッキングは完了しているか!?」
「バッチリです。いつでもいけます。」
ホー博士は少しイラついている。無理もない、100分の1秒の世界のことを数秒の通信タイムラグの中でやっているのだ。
「よし!ゾック・ゼロ空中合体プロセス!ゴー!」
「空中合体プロセス開始します!ホジョウ少佐は右腕、タニア上曹は左腕をお願いします。まずはホジョウ少佐から。」
ホジョウのディスプレイに右腕の先を狙うモノアイの映像が映った。
そしてその先にはミサイルが横並びに飛んでいる。
「ミサイルをアイアンネイルで握りつぶすと失敗です。」
ホジョウは応えず無言で集中している。
「掴んだ!タニア!カメラを!」
ホジョウが右手でミサイルを掴んだ。
「了解!モノアイ貰います!」
次はタニアが左手でミサイルを掴む。
「よっしゃ!こういうの得意!」
通信の向こうから拍手が響く。
「ゾック・ゼロ空中合体プロセス完了、ゾック・ゼロ加速します。」
「うわ!」
「きゃあ!」
掴んだミサイルのバーニアが一層強く炎を吐いた。
ゾック・ゼロが急加速する。
その横にさらに6対12本のミサイルが併走して飛んでいる。
「ゾック・ゼロ、加速第1段階終了までカウントダウン」
ホジョウとタニアはカウントダウンと同時にミサイルを離した。
「2段階目開始してください。」
再びホジョウからだ。
「ああっ!」
掴みすぎたミサイルが炎の固まりになって後方に飛んでいく。
「ミサイルの本数には余裕があります。少佐、落ち着いてください。」
「マイさん、これ私が両方やっても大丈夫?」
「大丈夫ですが。目が疲れたら少佐に代わってくださいね。」
「多分大丈夫…こうでしょ…こうでしょ…せーの!掴んだ!」
「加速します!」
再びゾック・ゼロが加速する。
「タニア、モノアイで両方同時に掴んだ!?」
「いけるいける。モノアイ慣れてるから。」
通信機の向こうで拍手が起こっている。
「2セット目のミサイルも燃え尽きます!カウントダウンで次のセットに移ります!」
「オッケー!」
燃え尽きたミサイルを離すと、すぐに次のミサイルが幅を寄せてくる。
それをタニアは即座に掴んだ。
「加速!」
「…作業が速い!?3セット目加速します!」
再びゾック・ゼロを加速のGが襲うが、先ほどの激しさではない。
「ゾック・ゼロ南極圏上空に入りました!3セット目カウントダウン!」
「4セット目の加速は素早くね!…はい掴んだ!」
「加速!上昇プロセスに入ります!」
ホジョウとタニアが呻いた。
ものすごいGがかかっている。
ミサイルも残りの燃料が少ないので交換のタイミングが早くなっている。
「5セット目!加速!」
このときミサイルとの合体作業に集中しているホジョウとタニアには見えていなかったが、南極点上空にはニューヌアクショットが不気味に近づいていた。