翡翠の弾丸~ゾックはかく戦えり   作:スナ惡

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ならず者達の黄昏

「やっぱり廃棄ですか。」

「これはもう使い物にならんな。」

テキサスコロニー近くのドックでやっとゾック・ゼロを降りて外から見た。

外板はメガ粒子砲の熱と大気圏突入時の熱で焦げて変形しているし、メガ粒子砲は頭部以外は全て焼き切れている。

「無傷で抜け出したハズじゃないんですか?」

タニアはホジョウを責めた。

「センサーに異常は出てなかったんだ…気密も警報出てなかったし…」

コーエンも腕組みしてみている。

「構造材も急制動で金属疲労が酷い。この裏あたりは断裂がはじまっているだろうな。」

コーエンが拳でゾック・ゼロの損傷の酷いところを殴った。

そのまま動きが止まる。

「フッフフフ…」

「何がおかしいんですか?コーエン博士?フフッ!」

コーエン、ホジョウとタニアは一同、笑い出した。

「モビルアーマー1機で…コロニー落としに勝ったんだぞ?我々は!これが笑わずにいられようか!フハハハハハ!」

「モビルアーマーで飛んでるミサイル掴んで…バカみたいな作戦…アッハッハ!!」

「あの時タニアさん、天才だと思ったけど…人生の中であんな才能もう使うところないですよね!あー可笑しい!アハハハハ!」

バハロ首相はニューヌアクショットの事件については公表しない方針を立てた。

アナハイムエレクトロニクス社はジオン共和国及び地球連邦から社内監査役を置くことになった。

ゾック・ゼロの解体廃棄はコーエンとゴンザレスが担当する。

この仕事を最後にゴンザレスは隠居するらしい。

ホジョウとタニアはコーエンに別れを告げると、ズムシティへと帰っていった。

バハロ首相に一度だけ顔を出すと、ホスマン少将に呼び出されて2階級特進となった。

「ジオンは共和国になっても、まだホジョウに甘い。何をやったか知らんが大佐だ。持ってけ。タニア・ロボ、中尉昇格おめでとう。」

ホジョウはなぜか昇格するたびに少しぞんざいな扱いを受ける。

元公王庁だった建物は臨時の共和国行政府となっている。

行政府を後にすると、アブドルアジース博士を尋ねて、挨拶をする。

その後に、マイはホジョウの実家の道場の人間と3回目の結婚をしたらしいので、その祝いに行った。

街でヒゲ面のスズマンに出くわして、ダグラスの店に顔を出した。

フォン・ブラウンでペトローニ夫妻に会い、サイド7で会食に参加した。

お互いの実家を覗いて、一通り家族に挨拶をすると、二人は地球行きの船に乗って北米を目指す。

北米の西海岸をオープンカーで流しながら気ままな二人旅だ。

二人は夕刻、海の見えるモーテルに車を停めた。

「ご宿泊ですか?」

フロント係は入ってきた客の顔も見ずにいつもと同じことを言う。

「空いてますか?」

「今確認します。」

そこで初めて客の顔を見たフロント係は、手元のメモ用紙をチラッと見た。

地元のヤバイ連中が追っているカップルと風体とよく似ている。

ブリーチされた金髪にサングラス、ヴィンテージのフライトジャケット姿のアジア人男性と、ラテン系の美女の夫婦。

妻はハンドバッグに常に武器を隠しているらしい。

フロント係の青年は冷や汗をかきながら、カウンターに置かれた夫人のハンドバッグをみる。

見るからに銃が入ってそうで、ずっしりとして見える。

そっとテーブルの下のブザーを押す。

「こ…ここに、お名前を。」

「大丈夫ですか?顔色が悪いみたいですよ。そういう日は早く寝たほうがいい。」

フロント係の青年はメモをもう一度見た。

男性の特徴には「丁寧な言葉遣い」ともある。

記帳された名前には「ホセ・タミヤ」とある。

妻のほうも「ロビン・タミヤ」と書いている。

間違いない、この二人がヤバイ連中が追っている「タミヤ夫妻」だ。

青年は警察でも何でも、とにかく早く来てくれと願いながら、一番フロントから遠い角部屋のルームキーを渡す。

「ありがとう。」

左手で受け取った妻の手を見て、もう一度メモを見た。

そこには「緑の石のはまったペアリング」と書いてあった。




ここまで読んでくださった方。
お疲れ様でした。
本当にありがとうございます。
ガンダムに出てきたモビルスーツには、1回だけ戦闘シーンが描かれて、その1回で破壊されて、もう二度と出てこないようなモビルスーツがあるのですが、それがモビルアーマーになると、マジで1回出てきて破壊されて終わりになることがほとんどです。
あんなにでかい機械が設計されて製造されて破壊されて終わり…というのは、それは戦争の常なのかもしれません。
ただ、私はそれらのモビルスーツやモビルアーマーにとって、最も華やかで幸せだった時代はいつだったんだろう?とそういうことを考えてしまう人間です。
この話の主人公はストーリーを分かりやすく、作りやすくするために、ぼんやりとタロウ・ホジョウにしています。
しかし、元のタイトルは「翡翠の弾丸-ゾックはかく戦えり」ですので、実はゾック・ゼロが主役です。
設計されて、生まれて、そして死ぬまでをたった10万文字強で書いた儚いストーリーだと思って読んで頂けると。
人間のためにたった1回の出撃で命を散らしてしまった、そんな主人公を描いた物語だと思って読んで頂けると、あなたも完全に病気です。
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