【デレマス×ガンブレ】シンデレラとガンプラのロンド 作:擬態人形P
シミュレーターを急いで開けた工藤忍・矢口美羽・輿水幸子・黒川千秋は反対側に回る。
見れば、目を閉じている依田芳乃の周りに池袋晶葉・八神マキノ・大石泉だけでなく、泉が呼んできたのであろう、藤原肇・美城専務もいた。
「芳乃さん!目を開けて下さい!大丈夫ですか!?」
「うーん………。」
肇の声に、ぼんやりとだったが芳乃の目が開く。
彼女は周りを見渡すと思わず申し訳なさそうに俯いた。どうやら、コントロールを乗っ取られていた時の記憶があるらしい。
「そのー………大変申し訳ございませんー。わたくしの不徳の致す所で皆様に多大な迷惑を掛けてしまいましてー………。」
「そ、そんな迷惑だなんて!」
「そうですよ、芳乃さんが無事で良かったです!」
「大体、これはウイルスの仕業。貴女が悪いわけじゃないでしょう?」
しおれたような声を出す芳乃に対し、ダジャレンジャーズの3人が思わず励ましの言葉を送る。
確かに今回の騒動は芳乃に非があるわけでは無い。ウイルスによってシミュレーターがバグを起こして暴走してしまっただけなのだ。それでも破壊衝動のままに皆を苦しめてしまっただけに、芳乃の顔は晴れなかった。
「わたくしは………ふぇねくすとあわなかったのかもしれません………。」
「芳乃ちゃん………。」
忍は何て言っていいか分からなくなる。
ガンプラバトルは楽しむ為の物なのに、こんな形で芳乃が苦しむ事になるなんて辛かった。何か言いたい忍だったが、そんな彼女の肩を専務が叩き言う。
「依田芳乃………ガンプラのせいにしてはいけない。今回はウイルスの件もあったが、元々フェネクスが暴走状態になってしまったのは君の未熟さもあったからだ。」
「ちょ、ちょっと専務!?そんな言い方!?」
「最後まで聞け。………逆に言えば暴走状態になるだけの素質は持っていたとも言える。少しずつ別の機体でガンプラバトルを鍛えていけば、いつかフェネクスも使いこなす事ができるだろう。」
「それはー………本当なのでー………?」
「本当だ。ユニコーンガンダム系列のパイロット達は、皆そうだっただろう?」
専務の言う通り、「バナージ・リンクス」を始めとしたパイロット達は、最初は皆機体を暴走させている事が多い。
そうした経緯があるからこそ、ドラマが生まれる。今回の忍達を巻き込んだ騒動のように。
「工藤忍達を巻き込んでしまった事に責任を感じているのならば、今後どうやってその責任を取っていけばいいか自分なりに考えればいい。」
「ですがー………。」
「嘗てテレビで「ダグザ・マックール」が言っていた。自分で自分を決められるたった1つの部品が「心」なのだと。」
「………心………ですかー。」
芳乃は胸を押さえる。
どうすればいいのか、自分の心で考えないといけない。彼女はシミュレーターに置かれたフェネクスを見る。自分が今後フェネクスと共に付き合っていくには………。
「えっと………いいですか?」
「矢口美羽。意見があるなら言ってもいいぞ。」
「そ、それでは………ふとんがふっとんだ!」
『は?』
いきなりのダジャレに皆が固まる中で美羽は叫ぶ。
「クールな矢口がくーる!………ガンダムネタじゃないとダメ!?じゃあ、お正月にはガンタンク!」
「………矢口美羽。何がしたいか説明しろ。」
「え、あの………とりあえず苦しい時は笑って貰えるように振る舞うべきかなって思って………。」
「その程度のレベルでは笑えないぞ?」
専務の容赦ない言葉に美羽は思いっきり肩を落とす。
呆然とする芳乃に対し、美羽は俯きながら、指を弄り呟く。
「な、悩む事なんて常にあると思うんです。だから、辛いと思った時はみんなで手助けしながら笑う方法を考えたほうがいいんじゃないかなって………。」
「美羽さんー………そなたはー、わたくしに笑えと仰るのですかー?」
「き、強制じゃないですよ!でも………1人で悩んでいるなんて芳乃さんらしくないです。失せ物探しが特技の芳乃さんなんですから、きっと答えは見つかります!だから………楽しんでいきましょう!」
最後は顔を上げて言った美羽に芳乃はしばし目を見開き………。
「くすくすー………。」
「え?私、何か変な事言いましたか!?」
「いいえー………わたくし、大事な事を忘れる所でしたー。がんぷらばとるを楽しむ気持ちを抱かなければ前を向く事もできませんよねー。」
芳乃はそう言うと立ち上がり、周りを見渡し、頭を下げた。
「皆様ー、この度はありがとうございますー。わたくし、もっと精進いたしますー。」
間延びした口調は変わらなかったが、その顔には力強さが混じっていた。
――――――――――
「あのー、このがんぷらー、ぱーつを刺す部分が間違っていましてー?」
「アレ?………あ!本当だ!は、早く外さないと!」
「何やってるんですか、美羽さん!これじゃあ、芳乃さんのガンプラの組み立ての邪魔になるだけですよ!」
「みんな落ち着きなさい!………もう、このチーム先行きが思いやられるわ。」
「本当なのでー。」
後日、ダジャレンジャーズの3人は新しい芳乃のガンプラの作成を手伝っていた。というのも芳乃がダジャレンジャーズの一員に正式になったからだ。
別に罪滅ぼしの意識で参加しなくていいと美羽達は言ったが、芳乃はこのチームで鍛えてみたいと懇願したのだ。
その結果、こうしてレッスンの合間に4人で活動する事になっている。
「わたくしより、美羽さんのがんぷらを作り直した方が宜しいのではー?たいたすでは足を引っ張るだけなのでー。」
「あー!言いましたね!私のタイタス、結構自信作なのに!」
「フフーン!その点ボクのギラ・ドーガは「サザビー」の原型機なだけあって素晴らしいです!」
「私のビギナ・ロナも忘れないで欲しいわね。」
そんな4人を遠目から忍と辻野あかりがアップルパイを食べながらのんびりと見ていた。
何だかんだで、芳乃の表情は明るい。いい仲間に恵まれたと思っていた。
「肇ちゃんが嫉妬していたよ。芳乃ちゃんを取られたって。」
「楽しそうな表情を見ればそれも分かります。………そう言えばシミュレーターは?」
「あの日以来、毎日メンテしているから大丈夫だって。専務の行動も早くて、ウイルスを送って来た犯人はもう捕まったみたいだし。でも………。」
また、いつこういう事件が起こるか分からない。それだけは心に留めておかなければならなかった。
「そう言った経緯もあって、今後は外のゲームセンターのシミュレーターも管理する事になったんだ。」
「そこでガンプラバトルをする事も許可されたって言っていましたね。色々なプロダクションのアイドルが集いそうです。」
「リサちゃん以外にも混成チームができるかもね。………あ、最後の一切れ貰い!」
「んごッ!?………ううッ。ちょっと私も出かけようと思うんご。」
「何か新しいガンプラを買うの?」
「ちょっとゲームセンターに行こうと思いまして………。」
「ここのシミュレーターは使わないの?」
「順番待ちだから色んな所のシミュレーターを活用したいんです。」
「成程………じゃあ、面白い事あったら教えてね。」
「分かったんご。」
あかりは忍にそう言うと、未だ楽しそうにガンプラ作りをしているダジャレンジャーズの様子に苦笑しながら街へと出た。
――――――――――
あかりが街に出る数時間前、藤原肇はヅダFをカバンにしまい、同じくゲームセンターへと出ていた。実は専務から外でのガンプラバトルを定期的に試してほしいという依頼を受けたからだ。
そんな彼女であったが、元々は機械に強くない事もあってゲームセンターの雰囲気には毎度呑まれそうになる。
(えっと、目的のシミュレーターは………。)
色々と確かめようとしたためだろうか。若干周りへの注意が疎かになった。そこで、向こうから同じように周りを見渡していた為か、前方不注意だった少女とぶつかってしまう。
「きゃあッ!?」
「ご、ごめんなさい!」
尻もちをついた少女を見て、思わず肇は謝る。
その娘は白い長い髪を持っていた。綺麗だと思うと同時に何処かで見たような覚えも肇は抱く。
「大丈夫ですか?」
「はい、私こそごめんなさい。クレーンゲームで景品を取って興奮してしまいました。」
見ればそれはガンプラの箱であった。この少女もガンプラが好きなのだ。
そして、立ち上がると少女は肇を見て神妙な顔をして言う。
「あの………もしかして、346プロの藤原肇さんですか?」
「え?はい、そうですけれど………。貴女は?」
「まあ!「あらかねの器」素晴らしい曲でした!………あ、名前言わないと。」
少女は肇のソロを褒めると礼をする。
「私は詩花。961プロのアイドルです。宜しくお願いします!」
少女………詩花は肇にそう名乗った。