【デレマス×ガンブレ】シンデレラとガンプラのロンド 作:擬態人形P
「あの人達は何ですか?はづきさん………。」
「いきなりごめんなさいね、円香ちゃん。彼女達は346プロの見学者達なの………。チームを募集しているらしくて、小糸ちゃんの悩みももしかしたら解決できるかもしれないって思って………。」
「……………。」
283プロの事務所のレッスン室で赤みがかった髪の少女………樋口円香が七草はづきに問い詰める。彼女は言動に厳しい部分はあるが、内面は優しい。同じユニット仲間………「noctchill(ノクチル)」の小糸がいきなり部外者と関わる事が心配であるのだ。
「厳しい事を言うけれど、私達だけじゃどうにもならない問題だから、少しでも外部の意見を取り入れたほうがいいと思ったのよ。」
「それで小糸の為になるならば、いいんですけれど………。」
円香の表情は晴れない。やはり彼女にとって色々と不安ではあった。
――――――――――
「えっと、わたし、福丸小糸です。宜しくお願いします。」
「宜しくね、小糸ちゃん。そんなに固くならないでいいから。」
「い、いえ、そんな固くなってませんから………。」
事務所の面接室のソファで、346プロの面々の後に自己紹介をした福丸小糸。彼女は代表して応じた西川保奈美の言葉にぶんぶんと手を振る。その姿は小動物のように思えた。
「それで、えーっと、悩みというのはこのガンプラなんですよね。」
「はい!漫画「機動戦士ガンダム ヴァルプルギス」の主人公機である「オーヴェロン」です。見た目は「ジ・O」に似てるんですけれど、何と装甲をパージするとガンダムタイプの姿になるんですよ!………本来は。」
「本来は………?」
堀裕子の言葉に自分のガンプラの紹介をした小糸は、少し俯く。彼女はオーヴェロンを持ちながら困ったように言う。
「わたしがシミュレーターでガンプラバトルをする時にパージをしようとすると「エラー」を起こすんです………。」
「それ、バグじゃないのか?一度シミュレーターの点検して貰ったほうが………。」
「いえ、「他の人」ならパージできるんです。ノクチルは4人ユニットなんですが、わたし以外の3人の友達はパージできたんですよ。………私だけがパージできなくて。」
神谷奈緒の疑問に更に落ち込んだように答える小糸。どうやら円香を始めとしたユニット仲間だと異常は起きないらしい。小糸だけがエラーを起こすのだ。
「えっと………失礼ですが、そのガンプラとの「適正」が無いって事では?前にウイルスの事件で346プロの仲間がガンプラを暴走させた事がありますが、その時、適性が関係していたって聞いた事があります。」
「やっぱり………そうでしょうか。でも、わたし………「だからこそ」、このオーヴェロンを使いこなせるようになりたいんです。」
「だからこそ………?」
顔を上げた小糸の言葉に辻野あかりは疑問を抱く。
それに対する回答は単純明快だった。
「このガンプラは、ユニット仲間の4人で組み上げたわたしの為のガンプラだからです。それまでの「努力」を無駄にしたくないんです。」
「……………。」
あかりは心の内で考える。
努力というのは結果が実ってこそだ。そして、残酷な話だが、努力は常に叶う物では無い。
あかりの実家はリンゴ農家故に、台風という天災には成す術が無い。だからこそ、頑張っても無駄な物があるという事を知っていた。
しかし、その一方で、工藤忍を始めとした仲間達のようにがむしゃらに努力をして求める物に手を掴もうとする人物達の姿も見ている。
その想いの熱さには何かを突き動かされる事もある。………小糸もそういうタイプの人間なのだろうか。
「小糸さんは………その、ノクチルの仲間の事、大切にしているんですね。」
「ぴゃ!?え、いきなり何を………。」
「あ、ごめんなさい。何となく気になっただけです。そのガンプラ、仲間との思い出だって言ってましたし。」
「そうですね、大切です。………みんな、わたしがいないとだめなんですから。」
想像以上の何かがこの子にはあるのかもしれないと思ったあかりは、意見を求めるように保奈美達を見る。これからどうしようかと。それに対して、保奈美が小糸に聞く。
「小糸ちゃん、その機体で実戦は何度かしたの?」
「はい。みんなに協力して貰いました。でも、戦闘中にピンチになってもパージができなくて、負けてばかりです。」
「そう………努力で何とかする気なら、色々と試してみるしか無いと思うけれど………。」
「団体戦とかはどうだ?ここだと対人戦は個人戦しかできないんだろ?」
「小糸ちゃん、経験ありますか?」
「いえ………無いです。」
小糸の返答に保奈美が考え込む。彼女は少し離れた所で様子を見ていた今西部長に問う。
「次に向かう予定の765プロには複数人で戦えるシミュレーターはありますか?」
「秋月律子君が機械に強いと聞くからね。此間、346プロの手助けもあって4対4のシミュレーターを実装した所だ。」
「そうですか………。ねえ、小糸ちゃん。貴女が知る通り、今裕子ちゃんはチームを募集しているの。………でも、貴女を無理に誘う真似はしないわ。けれど、貴女にそのガンプラを使いこなす意志があるなら、765プロに一緒に行かない?」
「な、765プロに………ですか?」
流石に有名プロダクションに行くと言われると、小糸は少し怖気づいた顔をする。しかし、何か考え込むとすぐ強気の顔を見せる。
「………行きます。今までの事、無駄にはしたくないので。それに、例えそこでオーヴェロンを使いこなす事ができなくても、経験が無駄になるわけじゃないですし!宜しくお願いします!」
「そう。今西部長………申し訳ないのですが………。」
「ふむ、はづきさん達に聞いてみようか。」
そう言って今西部長に続いて、一同は部屋を出ていく。
あかりは一連の流れを見て思った。この福丸小糸という子は強いアイドルだと。
――――――――――
はづきが社長とプロデューサーに電話をした事で、許可はすぐに出た。765プロへ向かう為に車に乗ろうと玄関に行った一同は見る。
小糸は3人のアイドルと会話をしていた。円香の他、紫から青へのグラデーションがかかった髪色の少女と栗色の長い髪を持つ背が高めの少女。多分、小糸の言うユニット仲間なのだろう。
「仲いいんだなぁ………。」
「………端末で調べて調べてみたけれど、ノクチルは最近結成されたばかりのユニットなの。何でもあの4人、幼馴染なんだって。」
「そうなのか。結成されたばかりだからアタシ達、小糸達の事、把握しきれてなかったんだな。」
保奈美の言葉にバツの悪い顔をする奈緒。そこに、円香が何か言いたそうにやってきたので、保奈美が前に出て代表して対応する。
「………小糸の事、宜しくお願いします。」
「分かりました。確約はできないけれど、………それでもできる限りの事はやってみます。大切な円香さん達と作り上げたガンプラですからね。」
「………はい。」
「だからその………ちょっとだけ協力して貰ってもいいですか?」
「え?」
ごにょごにょと円香と会話をする保奈美。そして、やり取りと終えた後、彼女は急いで今西部長のワンボックスカーへと走って行く。
そして、保奈美も乗せ、車が発進していく。ノクチルの3人は最後まではづきと共に小糸を見守っていた。
――――――――――
「ぴぇっ!?ここが765プロ!?」
765プロに着いた一同はそこで、765プロの事務所………「765PRO LIVE THE@TER」を見る。流石に346プロという異常な規模の建物ほどでは無いが、それでも事務所というよりは「劇場」と言える規模の大きさだ。
それ故に、283プロの大きさに慣れていた小糸は思わずビックリした声を上げてしまう。
「大丈夫ですか、小糸ちゃん!」
「だ、だいじょうぶですよ、裕子さん!こんなの、ぜんぜん、平気です!大きさが全てじゃないですからね!」
虚勢を張っているが、やはり動揺する所はあるらしい。そんな彼女を先導するように今西部長がいつもの笑顔で劇場に向かって歩いていく。
「高木社長は仕事でいないが、秋月律子君が待ってくれているそうだ。まずは中に入って………おや?」
入口付近で誰かが走っているのを部長達は見る。
その子は赤っぽいはねた髪を持っているのが特徴であり、小糸といい勝負の低身長だった。彼女はこっちに気付くと手を振る。
「あ!もしかして、噂の346プロと283プロのお客さん!こんにちは~!」
『こ、こんにちは………。』
「茜ちゃんはね、茜ちゃんって言うの!765プロでも可愛いアイドルだから宜し………ぷぎゃ!?」
「こ~ら!茜!お客さんに対して失礼でしょ!………申し訳ございません、今西部長。」
茜と呼ばれた少女の背中を掴むのは垂れ下がったエビフライの髪の女性………秋月律子。彼女は少女の頭を押さえつつ、共に部長達に頭を下げる。
「自己紹介が遅れましたね、私は秋月律子です。………こちらは野々原茜。ホント、ロクな事言わないんだから。」
「いや~、ゴメンゴメン。茜ちゃんの個性が滲み出ちゃって~。あ、頭なでなでしてもいいんだよ?」
一同が唖然としている中、新たな出会いがここに生まれた。