【デレマス×ガンブレ】シンデレラとガンプラのロンド   作:擬態人形P

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第37話 特別な背中

「さあ!行きますよ!」

 

堀裕子の操るΞガンダムはいきなりファンネル・ミサイルを放つ真似はしなかった。

この機体は音速飛行が可能である為、他の機体とは機動力が違う。その為、敵のビット兵器による射撃もそう簡単には当たらなかった。

 

「まずは邪魔なビットから!」

 

手始めに秋月涼のエクシアリペアIIの「GNソード改」の「ライフルモード」から放たれるビームを躱しつつ、周りを展開している桜井夢子の操るザンスパインのティンクル・ビット4基を「ビーム・サーベル」二刀流で手早く斬り払う。

そのまま藤原肇の操るヅダFのザク・マシンガンの射撃を「シールド」で弾きながら今度は散弾である「サンド・バレル」を連射。囲っていた詩花のνガンダムのフィン・ファンネルを4基破壊してみせる。

 

『速い!?』

『追いかけても間に合いません!』

 

詩花が残りのフィン・ファンネルでΞガンダムを後ろから射撃していくが、届かない。代わりに反転したΞガンダムにまた2基のフィン・ファンネルを破壊される。

 

『ちょっと、涼!肇!何してるの!?』

『こちら涼!保奈美さんと交戦中!』

『肇です。………茜さん達に狙われていますね。』

 

涼のエクシアリペアIIは徹底的に西川保奈美のリ・ガズィの「ビーム・アサルト・ライフル」の射撃を受けていた。一応、球体のフィールドで自機を覆う「GNフィールド」を張る事で射撃は無効化できるが、攻撃もできないでいる。

一方で肇のヅダFはベアッガイの背中のランドセルから取り出した「ビーム縦笛」の連射を受けていた。更に月面からは小糸のオーヴェロンの「ビーム・ショットライフル」が飛来する。肇の操縦技術もあり、ヅダFが被弾する事は無かったが、射撃能力の低さ故に、反撃のザク・マシンガンも当たらなかった。

 

『すみません、夢子さん、詩花さん。Ξガンダムをお願いできますか?』

『分かったわ、行くわよ!詩花!』

『了解です♪』

 

敢えて通信を流す事でΞガンダムの注意を引こうとしたのだろう。ザンスパインとνガンダムも姿を現す。そして、νガンダムが4基の「ミサイル」を撃つと共に、ザンスパインが突っ込んで来た。

 

「連携が甘いですよ!切り札のファンネル・ミサイル!!」

 

ミサイルを華麗に回避した裕子のΞガンダムはフロントスカートから6基のファンネル・ミサイルを出した。それはザンスパインを全方位から囲う。

 

「チェックメイト!」

『ところがギッチョンってヤツよ!!』

「へ?」

 

しかし、ザンスパインは赤い光の翼を放出し、回転する事でファンネル・ミサイルを全部破壊する。そして、そのまま両肩からビーム・ストリングスを放出。Ξガンダムは慌てて動こうとしたが、その巨体が災いし、動きを止められてしまう。

 

「わわわ!?機体が思うように………!?」

『詩花!』

『撃墜数頂きます!』

 

残りのフィン・ファンネルを一斉射しΞガンダムを逆に四方八方から砲撃するνガンダム。この連携には耐えられず、裕子機は爆発してしまう。これで1機減ってしまった。

 

 

――――――――――

 

 

「裕子ちゃん!?Ξガンダムが電撃武装にやられるなんてシャレにならないわよ!?」

『ご、ごめんなさい………。』

 

リ・ガズィを操る保奈美は正直内心慌てた。オーヴェロンが完全な状態じゃない以上、戦力的には今はもう2対4くらいであった。厄介なビット兵器は裕子がある程度は撃ち落としたとはいえ、まだ6基残っている。そして、その危惧の通り、それは全て保奈美機を狙ってきた。

 

「モビルアーマー形態で………!」

 

とにかくかく乱しなければ意味が無いと思った保奈美はモビルアーマー形態になると、腰部の「ビーム・ガン」を背面に向け、フィン・ファンネルを破壊していく。その奇襲で2基、立て続けに撃ちまくってまた2基。

 

(残り2基………!)

『ぴゃ!?保奈美さん前方!』

「!?」

 

しかし、背後に視線を集中した事で、前方にザンスパインが回り込んでいた事に気付かなかった保奈美。慌ててモビルスーツ状態に変形して上に飛び、ビーム・ストリングスを回避するが、更に後ろから涼のエクシアリペアIIが迫ってくる。左腕に「シールド」を持ち、右手に「ハイパー・ビーム・サーベル」を構えて振り被ったが、相手の武装の硬度が違った。「ソードモード」にした「GNソード改」はその2つの武装を打ち破り、保奈美機のコックピットを突き破る。これで残り2機になってしまった。

 

 

――――――――――

 

 

「ど、どうしよう………!」

 

小糸は迷う。自分があまり戦力にならない事もあり、裕子機と保奈美機が撃墜されてしまった。こうなった以上、もう切り札を使うしかない。

思わず目を閉じて祈りながらオーヴェロンの外装をパージするようにコンソールに指示を出す。しかし………。

 

ピーッ!ピーッ!ピーッ!!

 

「ッ!?」

『小糸機にエラー発生だ!………ダメなのか、この状況でも!?』

 

願い空しくエラー音と機体の制御が効かなくなる音。思わず、やっぱりダメなのかと思った小糸であったが、その手を力強く引っ張られる。茜機のベアッガイが、動かなくなったオーヴェロンを基地の建物の影まで連れていったのだ。

 

 

――――――――――

 

 

『うーん………こりゃ、しばらく動けそうにないね~。』

「ごめんなさい………。」

『気にする事ないよ~。元々このリスクを了承してのバトルだし。』

 

建物の影にオーヴェロンを隠した茜のベアッガイはいつもの口調で語る。そして、射線が通って無い事を確認すると、反転する。

 

「あの、茜さん………?」

『しばらく茜ちゃんが相手の気を引いてるからそれまでどうするか考えておいてね~。』

「え!?そんな………!」

『ガンプラバトルはどんな状況でも楽しむ物だしね!』

 

何としばらくの間、1対4で戦おうというのだ。

思わず止めようとしたが、茜のベアッガイは軽く手を振ると勢いよく飛び出していく。小糸は1人で取り残されてしまった。

 

「……………。」

『………裕子ちゃんと奈緒さんは、茜ちゃんのバックアップをお願い。』

『わ、分かりました!』

『何とか持ちこたえさせてみせる!』

『私とあかりちゃんは、小糸ちゃんのサポート。………あかりちゃん、エラーが回復したら教えて。』

『はい………。』

 

保奈美はそれだけ指示を出すと通信画面越しに小糸の様子を伺いつつ何を言おうか悩む顔を見せる。それもそうだろう。今の小糸自身の顔は間違いなく落ち込んでいるだろうから。

 

「ごめんなさい、戦力になれなくて………。」

『茜ちゃんも言っていたけれど、貴女が謝る事じゃないわ。………ねえ、聞いてもいい?』

「はい?」

『何をそんなに焦っているの?』

「!?」

 

保奈美の言葉に思わず小糸は固まる。そんな自分を怖がらせないようにか、保奈美は優しい声で語っていく。

 

『頑なにオーヴェロンの殻を破ろうとする姿勢………その姿には力強さがあるけれど、その反面焦りが見える気がしたわ。貴女のその拘りは………。』

「………置いて行かれたくないんです。」

『置いて行かれたくない?』

 

真摯に自分に向き合ってくれる保奈美の姿に温かい物を感じた小糸は意を決して告げる。

 

「ノクチルの………私の幼馴染の3人は「特別」なんです。透ちゃんも、円香ちゃんも、雛菜ちゃんも、私が頑張ってようやく「背中が見える」存在なんです。それはガンプラバトルにも言えて………オーヴェロンも特別な3人には応えてくれました。」

『……………。』

 

小糸だけ何をしても3人に遅れる形になってしまう。

いつも見えるのは彼女達の背中ばかりで………覚えるのは「孤独感」。

 

「わたし、3人と中学校が違ったんです。それで一緒の高校に行ったんですけれど………今度はみんなアイドルになっちゃって………。」

『追いかけたのね、貴女も………。』

「はい。色々迷惑を掛けたけれど、プロデューサーさんはわたしをアイドルとして導いてくれて………その中で「どんなアイドルになりたいか?」って追求していって答えを出したんです。」

『………聞いてもいいかしら、その答え。』

 

聞かれなくても話したかった。もうここまで喋り出すと不思議と小糸も止まらなかった。だから、息を吸い込み告げる。

 

「わたしと同じように居場所を感じられないファンのみんなと寄り添うようにして………そして、みんなとわたしの居場所になれるようになりたいんです。それが283プロのアイドル、福丸小糸の信念………。」

『いいアイドル像ね。本当に。』

 

笑みを浮かべて応えてくれる保奈美に小糸はにこりと笑う。

そこで、あかりがなるべく表情に出さないように………もしかしたら話を聞いていて泣きそうになったのかもしれない………とにかく、機体のエラーが回復した事を告げてくる。

 

「じゃあ、わたしも行ってきますね、皆さん。」

『………ちょっといいかしら、小糸ちゃん。』

「ぴゃ?」

 

建物の影から身を乗り出そうとした小糸に保奈美が語りかけた。


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