ええ、私も、あなたも。皆わかってない。
安全なのか危険なのか、さあどっちでしょうか?
最も『倫理的』と噂される海鳴宇宙港もためらいなく使った。
でも、誰もあれの正体なんてわかってないんだ。
-とある反宇宙開発主義者-
ちなみに、今回の話には関係しません。
朝の教室
「おはよう、泰平君」
「おはよう、暁美さん」
二人はいつものように挨拶する。
だが、どこかぎこちなかった。
数時間後、図書館。
「・・・うわあ、宇宙戦争に関する本が全てない」
いつものパターンだった。
「・・・泰平」
アリサの顔は憔悴しきっていた。
「あ、アリサさん!大丈夫ですか!?」
「・・・なんでもないわ」
「何でもないなんてことは無いでしょ!と、とにかく何があったか・・・」
そう言って、アリサを椅子に座らせた。
「・・・アンタって本当に優しいのね」
それから、アリサは彼女のクラスの男子の雰囲気が険悪になってること、なのはが何も話してくれずに、自分だけで抱え込もうとしているということを語った。
「・・・確かに、なのはさんはそういうところがあるような」
泰平は先日の温泉での出来事を思い出す。
「・・・アンタ、なのはと話したことなかったんじゃ」
「いえ、ちょっとだけ話したことがあって」
もちろん嘘ではない。
「・・・ちょっとだけ辛いかな」
アリサの頬に涙が流れる。
「えっと・・・はい」
泰平はハンカチを差し出す。
「大丈夫よ。・・・大丈夫だから」
アリサはハンカチを受け取らなかった。だが、その瞳からは涙が延々と零れ落ちていた。
「・・・まあ、そういうことがあったんです」
「そりゃ大変だったな」
泰平はここ最近のことを史強に全部話した。
「暁美ほむらに、フェイト・テスタロッサ、それに高町なのはか。・・・高町のほうにはお前が管理人だというのはバレてないんだよな?」
「たぶん。・・・たぶん」
「まあ、秘密なんていつかバレるものだし、多少はな・・・」
今回は今まで以上に大気圏内で飛行できる宇宙船を作り上げていた。
「それにしても、このペペロンチーノうまいな」
「史強さん、あとで僕にも分けてください」
そうしている間に、宇宙船は完成した。
「この宇宙船だったら、地上でも宇宙でも自由に動かすことができると思います」
「今までの宇宙船は飛行機みたいに大気圏内を飛ぶことができなかったからな・・・。ところで、エーテル電磁砲がどうしてついているんだ?」
「この前みたいなことに備えるためです」
「・・・まあ、あんなことはしばらくは起きないと思うが。お前が大人になったら、また本格的な宇宙戦争が起こるんじゃないか?」
「そんな縁起でもないことを・・・」
「冗談だよ。まあ、さすがにないと思うぞ。そんな宇宙戦争なんて・・・」
その時、モニターが赤くなり、サイレンが鳴り響く。
「い、いったい何ですか!?」
「・・・宇宙戦争じゃないだけマシだな」
施設の入り口を映すモニター。そこにはフェイト・テスタロッサの姿があった。
彼女の周りには瓦礫が散乱して、武装した職員たちが倒れていた。
「嘘でしょ・・・」
泰平は急いで浮遊ウィンドウを立ち上げ、マイク設定を施設内全体に有効にした。
「と、とりあえず皆さん退避してください!ゲートAには近づかないでください!作業は中止です!仕事よりも皆さんの命を優先してください!落ち着いて、避難をしてください!決して立ち向かおうなんてかんがえないでください!」
泰平の言葉に従って、全職員が避難を始める。
「・・・あと、フェイトさんは避難している人を攻撃しないでください!」
「泰平、さすがに無駄だと思うぞ」
だが、フェイトは職員に危害は加えなかった。
「ありゃ、どういうつもりだ」
彼女は職員なんてどうでもいいように、ただ下に向かっていった。
「・・・ところで史強さんも避難した方が」
「おいおい、一応はお前の護衛なんだぞ」
彼女はどんどん施設の深部に向かっていく。
「・・・ところで、管理人室も危ないですかね?」
「安心しろ。『主任室』と同じくらい安全だ」
施設下層の一室、そこには奇跡論加速器があった。フェイトはその前に立った。
〈・・・見えてるんだよね?〉
「ええ、モニターにバッチリ映っていますよ」
〈聞いていい?どうして私の名前を知っていたの?〉
「・・・それだけのために、ここまで?」
〈答えて〉
泰平は史強のほうを見る。
彼は頷いた。言ってもいいというサインだった。
「・・・ソフォン・システムから知りました。・・・ただし又聞きですが」
〈ソフォン・システム?〉
「僕も詳細は知りません。管理人でも情報は制限されているんです」
〈ありがとう、それじゃあ・・・〉
フェイトの周りに金色の球状物体が出現する。
「あっ、その加速器は壊さないでください。その代わり、その玉は僕に当ててください」
〈そう言うと思ってた。・・・申し訳ないけど、これは破壊させてもらいます〉
「ちょっと待って。申し訳ないなら壊さないで。宇宙開発が・・・」
〈これ以上、『魔法』に手を出さないでください〉
球状物体は加速器を破壊する。
泰平はそれをただ見つめて、マイク設定をオフにする。
「・・・また設置しなおさないと」
「そうだな。結構かかるが、お前は気にしなくてもいい」
いつの間にか、フェイトは去っていった。
「結局、僕がフェイトさんの名前を知っていた理由を知るために襲撃しただけなんですね」
「ああ、かなり迷惑だな。もう襲撃されるような口実はないよな?」
「はい。・・・たぶん」
「まあ、また防衛体制を強化しておくか」
これが海鳴宇宙港に対する最初の武力攻撃だった。
後に、海鳴宇宙港は何度も襲撃を受けるのだが、それはまた別の話。
つづく
泰平が帰った後
汪淼「今日は大変だったな」
史強「お前、真っ先に逃げただろ」
汪淼「勘弁してくれ。私はただの科学者だ」
史強「そうだったな。仕方がないか」
汪淼「・・・ところで、暁美ほむらのことなんだが」
史強「どうしたんだ?何かわかったのか」
汪淼「彼女が温泉に行っている隙に、ソフォンで監視したんだ」
史強「いつの間に・・・。それで何かあったのか?」
汪淼「・・・彼女の部屋、おぞましいことになっていた」
史強「どんな感じに?」
汪淼「泰平君の写真が壁一面に・・・」
史強「おい」
汪淼「それだけじゃない。泰平君の顔をした少女の絵も・・・」
史強「・・・」
汪淼「・・・飲もう」
史強「ああ、そうしよう」