西側も東側も協力して計画を推し進めたのです。
人類の夜明けを誰もが確信しました。
-『子供のためのKerbal計画』-
汪淼の運転する車に乗ってから十分くらい経っただろうか?
車は港にたどり着いた。目の前には『脑叶計画』と書かれた壁がある。
「こちら汪淼、ゲートAの開放を頼む」
壁が左右に開く。
(・・・もしかして、とんでもないものに巻き込まれてる?)
車は前に進む。そして、タイヤが何かにはまったように、カチッと音がした。
その瞬間、床が下がっていく。
(エレベーター?)
十秒後、強い光に照らされる。
「汪淼、そいつが泰平とかいう子供か」
車に粗暴そうな男性が近づいてくる。
「ああ、私達の希望だ。泰平君、この人が君の秘書となってくれる史強だ」
少し粗暴そうな気はするが、頼りになりそうだ。泰平はそう感じた。
車から降りた後は史強についていった。彼は一番地下にある部屋に泰平を案内した。
「ここが今日からお前の仕事場だ」
その部屋にはたくさんのモニターがついていた。信じられないことに、泰平はその無数のモニターを見るだけで施設の全体像を把握することができた。
「・・・やっぱり、わかるか」
史強が言った。
「ええ、なんとなく建物の全体が分かったような気がしました」
「まったく、ソフォン・システムというのは本当にすごいな」
史強が聞いたことのない単語を口にした。
「そふぉん?」
「ああ、お前が管理人に最適だということを証明したシステムだ。今は気にしなくていい。それよりも、今からやってほしいことがある」
泰平の前にSFで見るようなウィンドウが飛び出してくる。
「それで宇宙船を作ってくれ。もちろん生還できる代物を頼む。これが試練だ」
「・・・失敗してしまったら」
「安心しろ、記憶処理だ」
(・・・記憶を消されちゃうのか)
泰平はウィンドウに手を触れる。これではまるでKerbal計画みたいだ。
だが、以前からやってみたいことが今ならやれるはずだ。
「史強さん、エーテル部品は使えますか」
「もちろん、そりゃ好きな部品を使っていいぞ」
言質は得た。泰平は自分の脳にしっかりと焼き付けたエーテル推進式探査船をウィンドウに再現する。
「おお、やっぱり管理人に選ばれただけはあるな」
史強は感心した。
「・・・完成しました!」
泰平はモニターを見る。開発室と思われる場所で、泰平がウィンドウに組み立てたのと同じ探査船が出来上がっていた。
すぐに探査船は発射されることになった。
「うう・・・、やっぱり不安だな」
「安心しろ、コークを飲んでいたら終わっている」
史強がコーラを差し出してくれる。
モニターに人みたいなぬいぐるみが宇宙船に乗り込むのが映る。
「泰平、お前の作った宇宙船に人が乗り込むぞ」
「・・・もしかして、誤認式精神フィルターですか?」
「いや、これは認識フィルターだ。ちゃんと本人にそっくりの見た目だから安心しろ」
「・・・カーマンよりかはマシです」
「だろ?」
そして、その時が来た。天井が開く。
3、2、1、0
宇宙船はエーテル機動で空高く飛んでいく。
かつてのKerbal計画と違うのは管理人が宇宙船の操作をしないことだ。
「・・・これがエーテル機動ですか。美しいですね」
かつての実験でもわかっていたことだが、エーテル機動をする物体の周囲は緑色のオーロラのようなものが発生する。
「こちらジョナサン。管理人、亜光速エーテル機動に突入していいか?」
どうやら、管理人というのは『操作』ではなく『指揮』が求められるようだ。
「別にいいよ。そのままの速さでお願い」
「了解。・・・管理人、ありがとうございます」
ぬいぐるみがこちらを見ていた。
「礼なんていいよ。僕はただ宇宙船を組み上げて、指令を出しただけ」
「いいえ、管理人の正常な精神があったからこそ、私は宇宙に行くだけでなく、地球でもう一度家族に会うことができそうです。・・・本当は宇宙に行くだなんてまっぴらでした」
最後の一言に、泰平は驚愕した。
「あ、あなたは思想鋼印を受けていないんですか!?」
「管理人、それはKerbal計画の時の話ですよ。さすがに違法な技術を使用するわけにはいきませんよ」
思想鋼印、かつてKerbal計画において使用された技術だった。この技術によって宇宙飛行士たちは宇宙に行くことを恐れないどころか、『主任』の虐殺を喜んで受け入れた。
この技術を開発したビル・ハインズは終身刑となった。そして思想鋼印は禁止された技術となった。
「本当に新しい計画なんですね」
宇宙船は衛星軌道に入ることができた。
「・・・ジョナサンさん、帰還してください」
「了解、管理人」
探査船は大気圏に突入する。もちろん燃え尽きることはなかった。
数十秒後、パラシュートも無事に開く。
「管理人、本当にありがとうございます」
探査船は海鳴の海に着水する。
「・・・施設の全員に告げます」
職員たちが一斉に耳を傾ける。
「エーテル推進を開発した技術者に一分間黙祷してください」
泰平、史強、宇宙飛行士、職員たちは全員黙祷する。
全員が実感していた。これは一種の決別だ。Kerbal計画に対する。
「おめでとう泰平君。君は試練に合格した」
全てのモニターに男性が映り込む。その男性に泰平は見覚えがあった。
(もしかして、羅輯国家主席・・・?)
羅輯、若くして中国のトップに昇りつめ、数々の改革を実行してきた政治家だ。
「初めまして、泰平君。知っているかもしれないが、私は羅輯。このLobotomy計画の総責任者だ」
「は、初めまして。大山泰平です」
泰平は改めてとんでもないものに巻き込まれたと実感した。
「君以外の管理人も続々と試練に合格した。そろそろ頃合いだ。これは私からのプレゼントだと思ってくれ」
その時、大きな地響きが起こる。
モニターの一部が外を映し出す。光り輝く塔が上へ、とにかく上へ伸びていた。
「・・・光の木」
思わず、泰平はそう呟いた。
「正式名称はエーテル・衛星軌道エレベーターだ。これが我々をもう一つの宇宙に引き上げてくれるだろう」
「・・・もう一つの、宇宙?」
これはまだ始まりに過ぎない。
つづく
これは魔法少女リリカルなのはの二次創作です。
誰が何と言おうと、魔法少女リリカルなのはの二次創作です。