「もしかして宇宙船か!?」
「でも宇宙開発は中止されたはず・・・!」
-探査船を打ち上げた直後の海鳴市-
「・・・もう一つの、宇宙?」
だが、そこで映像は終了し、施設の映像に切り替わった。
「・・・泰平、今日の仕事は終了だ」
「・・・わかりました」
家に帰った時にはすでに日が沈んでいた。
ちなみに、史強もついてきていた。
街が何だか騒がしいが、宇宙船が飛んだり、訳の分からないタワーが立ったりしたからだろう。
(・・・どうしよう)
あまりにも遅い帰宅、その言い訳をどうしようか悩んだ。
宇宙開発に携わっていたなんていうことは言えないだろう。
信じてもらえないだろうし、信じてくれたところでお説教が待っているだろう。
「・・・史強さんに誘拐されたという言い訳を」
「やめてくれ」
玄関のドアを開ける。
「ただいま」
「お帰りなさい」
泰平の母、大山静子が微笑みながら迎えてくれた。
「あの、少し遅くなっちゃって・・・」
「いいのよ。ところで史強さん、うちでご飯でも・・・」
「いや、俺の任務はここまでだ。またいつか」
「わかりました」
信じられない。そう泰平は思った。なぜか母が史強を知っている。
史強はそのまま立ち去った。
「・・・お母さん」
「『親の心子知らず』、そんなことわざが日本にはあるわ」
両親は全てお見通しだったのだ。
親というのは改めてすごいものだと泰平は思った。
「史強、一杯どうだ」
そういって汪淼は茅台酒を取り出す。
「おお、ありがてえ」
二人はコップに酒を注ぎ、乾杯した。
二人がいるのは港に設置されたテラスだった。
月光が海に反射して、幻想的な雰囲気を醸し出していた。
「それにしてもソフォン・システムはすごいな。あんなガキを見つけ出すなんて」
「世間にバレたら大騒ぎになることは間違いないな。あんなシステムの前にはプライバシーなんて無意味なものになってしまうからな」
軌道エレベーターの光は淡い光なので、眩しくはない。
「まあ、その時はその時だ。何とかなるだろう」
「君は本当に気楽だな、史強」
夜風が頬に当たる。
「・・・やっぱり、あんな子供にやらせるのは酷なような気がするよ」
「仕方ないだろ。ソフォン・システムの判定では海鳴宇宙港の管理人に適しているのは、あいつだけだったんだ。それに、あのガキは一番まともな管理人だ。いや、まともなんてレベルじゃない。あいつこそが理想的な管理人だ。一番、倫理ポイントが高かったんだからな」
「わかってはいるが、彼はまだ九歳だ。ただでさえLobotomy計画はKerbal計画と似た計画だというのに、私達はさらにKerbal計画以上のことをしようとしているんだ。下手したら、彼に修復不能な傷を与えかねない」
「・・・俺にはそうは見えなかったぞ。アイツが宇宙船を組み上げているところを見ていたが、アイツはとてもじゃないが、簡単にへこたれるような奴じゃない。そんな目をしていた」
「・・・お前がそういうなら、そうなんだろうが」
「それに、俺たちは丁儀よりかはマシだろ?」
「ああ、確かに」
丁儀は別の宇宙港で物理学者として勤務しているが、そこの管理人の倫理ポイントは・・・。おそらく『主任』よりかはマシだが。
「でも、この計画はただの宇宙開発計画じゃない。やっぱり罪悪感は湧くよ」
「確かにな。だが、だからこそ、あのガキが必要なんだ」
「どうしてだ?」
「倫理ポイントなんて堅苦しいものを使わなくてもわかる。アイツはおそらく聖人とやらの部類に入る人間の一歩手前まで来ている。多分、地球を正しく導けるのは羅輯とあのガキぐらいだ」
「それはそうだが・・・」
「それに、アイツを支えるために、俺たち大人がいるんだろ?俺たちがしっかりしなくてどうする?」
「・・・それもそうだな」
史強はグラスに酒を注ぐ。
「さあ飲め。また明日から忙しくなるぞ。乾杯!」
「・・・ああ!乾杯!」
彼らを祝福するかのようにいくつもの流れ星が降ってくる。
「綺麗だな」
「史強、お前がそういうことを言うなんて珍しいな」
その流れ星を泰平もベッドの上から見ていた。
「・・・そうだ!」
彼は自由帳にアイデアを書き込む。新しい宇宙船のアイデアだ。
彗星を掴み取ることのできるアームを格納できる宇宙船が彼の頭の中に浮かびだす。
つづく
補足(という名の蛇足)
もちろんイランはLobotomy計画に参加していません。
北朝鮮?言わずともわかると思います。
それ以外の国はほとんど参加しています。