今回の話は魔法少女リリカルなのはの二次創作です
なのはが出てこないだけです。
『三体』の登場人物が活躍しますが、二次創作では当たり前のことです。
だから、これは二次創作なのです。
2+2=5と同じくらい当然のことです。
「バカすぎるぜ」
偵都ヨコハマで活躍する女たらしの怪盗、伊藤誠は笑った。
「宇宙に持っていけば盗まれないと思ったか?本当にバカだな」
彼が操縦しているのは小型宇宙戦闘艇。燃料はそこまで多くないが、Nフィールド航行機能は搭載されているので、地球までは逃げることができる。
「そもそも、どうして戦闘艇なんて積んでいたんだ」
「史強、この計画がただの宇宙開発ではないことは知ってるだろ。そのために積んでいたんだ」
浮遊ウィンドウには伊藤誠が乗っている宇宙船の位置が示されている。
まだ月までは遠かった。
「だがキバヤシ、伊藤誠の盗んだ美術品で人類が滅亡するなんて信じられない」
汪淼の疑問はもっともだった。
「ああ、ただの美術品だったらな。だが、このアイツが盗んだのはパンドラの箱とも言うべきものだ」
新しい浮遊ウィンドウが現れる。映っていたのはとても煌びやかな懐中時計だった。
「伊藤誠が盗んだのは、かつてのソ連が製造した懐中時計型核発射ボタンだ」
「確かに人類滅亡の危機だ」
汪淼は納得した。
「今日の朝、実はこれを俺がうっかり押してしまった」
「さらにマズいですね・・・は?」
「オレにだって・・・・・・うっかりすることぐらい・・・・ある・・・・」
「でも、核兵器は落ちてないぜ?」
史強は冷静だった。
「ああ、実はボタンを押したとしてもミサイルが発射されるのは二十四時間後だ。そして、幸運にもボタンが地球圏を離れたらミサイル発射が停止するシステムになっている。それで火星に船団を向かわせたんだ。移住ついでに封印しようと思ってね。なんか予告上も来てたし」
「それなら・・・」
「ただし、地表から五メートルのところに戻ったら、すぐさま発射されるシステムだ」
「ひどいシステムだな」
こうしている間にも伊藤誠の宇宙艇は月に近づいている。
「・・・ああクソ、時間がないな。キバヤシ、そのクソ時計は破壊していいよな」
「ああ、もちろんだ。塵一つ残さなくてもいい」
史強は浮遊ウィンドウを汪淼のほうにスライドさせる。
「そういうわけだ管理人。一応は権限があるだろ?」
「・・・ああ。やってやろう」
大人たちの戦いが始まる・・・!
「まあ、泰平が宇宙船は既に設計してくれているからな」
「ああ、あの掘削船か?確かにエーテル電磁砲はついているが」
泰平が月の洞窟を鉱山化するために開発した宇宙船だった。
「でも、あれはNフィールドには追いつけない」
「Nフィールドには、だろ?」
史強が悪い笑みを浮かべる。
「・・・そうか、そういうことか」
あくまでNフィールドはワープ技術だ。別に宇宙船の航行速度が速くなるわけではない。
それに比べて、泰平の開発した宇宙船はどうだろうか?
「・・・やっぱり、エーテル推進式か」
汪淼は浮遊ウィンドウでデータを確認した。
エーテル推進によるエーテル機動を行うことで宇宙船は亜光速にまで達することが可能となるのだ。
「そういうわけだ、今すぐ出撃させた方がいいんじゃないか」
「・・・ああ!」
「ふう、楽勝だぜ」
伊藤誠は調子に乗っていた。
それも当然だろう。『長距離』航行においてはNフィールド航行はどんな航法にも負けないのだから。
「待ちなさーい!」
通信機から声が聞こえる。
「・・・コーデリアか」
彼の宇宙船の背後から別の宇宙船が迫っていた。
「私を嬲り者にした責任をとりなさーい!」
「そ、そんなこと言われても、お前がお花畑なのがいけないじゃないか!」
「誰がお花畑ですか!ただ新居は土星の輪の上でといっただけじゃないですか!」
(ちくしょー!数時間前の俺、なんでこんな奴にハニトラかけたんだ!)
伊藤誠は懐中時計を盗み出すために、ヨコハマで『優れた』探偵の一人であるコーデリア・グラウカを口説き落としたのだが、結果はこれである。
「と、とにかく逃げないと・・・」
だが、前方から緑色に発光した宇宙船が迫ってくる。
「あ、あのオーロラみたいな光り方。ま、まさか・・・」
そのまさかだった。エーテル宇宙船だった。『短距離』航行においては最速を誇る宇宙船だ。
「だ、だがこっちにはNフィールド航行が・・・」
ビュン
効果音をつけるとすればそれだろうか?エーテル電磁砲が飛んできて、伊藤誠の宇宙船の横をかすった。
「こ、殺す気か!」
〈イエス〉
画面に白衣姿の男が立っていた。
〈どうも伊藤誠さん、私は海鳴宇宙港管理人の汪淼です。死んでください〉
「ふざけるなあ!」
伊藤誠が乗っているのは戦闘艇である。だからビームを発射できた。
しかし、それは全て避けられた。誠の狙いが悪いのではない。エーテル機動が速すぎるのだ。
(クソ、亜光速なんて卑怯すぎる!)
幸いにも、誠は怪盗なのである程度は身体能力が高い。それで相手の電磁砲をギリギリで回避できた。
つまり、勝負はつかないということだ。
(ここで死んだら二度目か・・・)
彼は実はこれで二回目の人生だった。・・・まあ、読者のほとんどは一回目の彼の人生を知っていると思うが。
(三回目なんて都合のいいことはなさそうだが・・・最後の抵抗だ)
彼はついに決心した。
「うおおおお!」
伊藤誠の乗る宇宙船はエーテル宇宙船にまっすぐと飛んでいく。
〈ま、まさか・・・!〉
「特攻してやる!」
伊藤誠はせめて怪盗らしく死のうと特攻を決意したのだ。
〈残念だが、君の行動は予測通りだ〉
「えっ?」
その時、エーテル宇宙船からもう一つの砲台が出てくる。だが、出てきたのは電磁砲ではなく、魔法陣だった。
そして、誠の宇宙船は何かに拘束されたかのように急停止した。
「き、奇跡論による拘束!?でも、あの技術はまだ実験段階のはず・・・」
〈ヨコハマではそうなんだろうな。だが海鳴宇宙港は奇跡論の研究が実用段階にまで到達した。さて、私も人殺しなんて、そうしたくはないからな・・・。君が盗んだ時計だけ宇宙船に置いていってくれ〉
「・・・わかった」
誠は時計を操縦席の窓において、宇宙空間に出て行った。
〈ありがとう。それでは安全な場所まで離れてくれ〉
そして、エーテル電磁砲が戦闘艇を貫く。
「・・・ここまでか」
その時、何者かが彼の腕をつかむ。
「捕まえましたわ、誠さん」
「あっ、忘れてた」
伊藤誠はコーデリアに連行されていく。
「・・・汪淼さんだったけ?助けてくれませんか」
〈・・・あとはヨコハマの管轄だ〉
「えっ、そんなこと言わないで、助けて」
〈君の今後に幸あれ〉
「うわあああああ」
「さあ帰りましょう、私達の火星に・・・」
日本標準時3:34、事件は解決した。
後にこの事件は334事件と呼ばれる人類初の宇宙戦闘だった。
めでたしめでたし。
「・・・汪淼は『表』の管理人だ。つまり、奇跡論の研究を推し進めたのは『裏』の管理人の泰平」
キバヤシは大山泰平のファイルを睨む。
「・・・注意しておかなくては」
つづく
蛇足(という名の言い訳)
地球文明が魔法(奇跡論)を使えるようになっていますが問題ありません。
ちなみに汪淼さんはずっと地上で指揮していました。宇宙には出ていません。