生徒会長・雪ノ下雪乃 奉仕部部長代理・比企谷八幡 作:おたふみ
翌日放課後。
一旦、生徒会に顔を出し、助っ人を連れてくると言い残して、奉仕部へ向かう。平塚先生には根回し済み。比企谷君、どんな顔をするかしら。
部室の扉をノックすると『どうぞ』という比企谷君の声。
中に入ると、比企谷君と平塚先生が居る。
「失礼するわ」
「よう。今日はどうした?」
「ここは奉仕部であっているわよね?」
「ど、どうした?雪ノ下」
「どうなのかしら?」
「そ、そうだが…」
「この奉仕部、部活動の要件を満たしてないのだけど」
「今さらかよ…」
「部員一人で空き教室ひとつ使っているのは、どうなのかしら?」
「そんなこと言われてもだな…。雪ノ下だって知ってるだろうが」
「これは由々しき事よ」
「いや、だからな…」
「よって、奉仕部に廃部を言い渡します」
「雪ノ下、どういうつもりだ?」
そ、そんなに睨まないで。
「しかし、活動理念は素晴らしいものね。何だったかしら?『飢えた人に魚を与えるのではなく、捕り方を教えて自立を促す』だったかしら」
「確か、そんな感じだ。で、どうするつもりなんだ?」
焦らないで。これからが本題だから。
「その理念を持った部を、ただ廃部にするのはもったいない。では、どうするのか?」
「雪ノ下、まさか…」
さすが比企谷君、勘がいいわね。
「奉仕部を生徒会へ合併します」
「やっぱり…」
平塚先生、肩が震えてますよ。そんなに笑わないでください。
「くくくっ!さて比企谷。君はどうするのかね?」
「平塚先生、雪ノ下とグルだったんですね?」
「さぁな。君たちが面倒臭い性格をしているのが悪い」
「比企谷君?」
「はぁ、やられたよ。生徒会に入るよ」
「そう」
諦めた比企谷君と生徒会室に向かう。
「何なんだよ、あの三文芝居は…」
「何の事かしら?」
「無かったことにしやがった。素直に『手伝って』と言えないのかよ」
「『手伝って』だったら、その場限りじゃない。私は貴方と…」
「俺と?」
もう!察してよ!
「貴方と一緒に居れないじゃない…」
は、恥ずかしい!
「そ、そうか…」
「比企谷、私の前でイチャコラするとはいい度胸だな…」
あ、平塚先生、居たのね。
「い、イチャコラなんてとんでもないですよ…。て、いうか先生はどちらに?」
「私は生徒会の担当教諭だ!」
生徒会室に戻ると、『ヒッキーが来た!』と由比ヶ浜さんがピョンピョン跳ねて喜んでいた。
…、由比ヶ浜さん、お願いだから跳ねないで。体の一部が大暴れしてるわよ。
「比企谷君、早速だけどこのボイスレコーダを聞いてもらえないかしら?」
「これは?」
「海浜総合との合同クリスマスイベントの会議よ」
「ほ~ん」
ボイスレコーダーを聞いていると、みんな渋い顔をしていた。
「なんだこれは。まるで中身がない…」
比企谷君も眉間にシワを寄せている。
ある一部に差し掛かった時だった。
「ん?本牧、海浜側の名簿あるか?」
名簿?誰か知り合いでもいるのかしら…。
「…なんで居るんだよ」
「比企谷君、何か?」
「いや、なんでもない」
ちょっと辛そうな顔…。
一通り聞き終ると、全員グッタリしている。
「雪ノ下」
「何かしら?」
「よくキレないで我慢したな」
ひ、比企谷君が誉めてくれた。
「え、ええ。由比ヶ浜さんが止めてくれたのよ」
「そうか。由比ヶ浜、ありがとな」
「えへへ」
「さてと」
比企谷君がポンと手を叩き、話を始めた。
「藤沢、スケジュールを見せてくれ」
「はい」
「このままだと、無理だな」
「えぇ、そうなのよ。どうしたらいいのか…」
「なぁ、海浜が居ないとダメなのか?」
え?
「これは、向こうから提案してきたことよ」
「まぁ、そうだな。じゃあ、向こうさんには名目だけ参加してもらって、こっちだけで進めよう」
「比企谷君、どういうことなの?」
「このまま行けば共倒れだ。と、いうか海浜に道づれにされる。だから、名目は合同だが別々にする」
「そ、そんなことが出来るのかしら…」
「出来るさ。それには雪ノ下、お前が必要だ」
ひ、比企谷君、そんな目で見られたら…。
「ひ、ヒッキー!私は?」
「もちろん、由比ヶ浜の力も
貸してもらう」
「やった~!」
「先輩、私は!」
「はいはい、あざといぞ~」
「あざといことなんて言ってません!」
「藤沢、会議の録画って名目でビデオカメラ借りられるか?」
「大丈夫だと思います」
「本牧、次の会議にはしっかり総武の意見をぶつけたい。各方面の根回しを頼みたい」
「わかった」
「さて雪ノ下会長、イベントの演目を決めようか。5つぐらいは提案したい。実際に出来るのは2~3だろうがな」
「では、みんな、意見はあるかしら」
比企谷君はすごい。私には思い浮かばないような発想だ。
それに、私を頼ってくれた。
でも、名簿を見てた時の顔…。
その後の会議は順調に進み、次の合同会議に備え解散となった。
帰り際、比企谷君を呼び止める。
「比企谷君」
「ん?」
「あの…、海浜の名簿見ていた時に
…」
「あ、あれか…。ちょっとな、同じ中学だったヤツの名前があってな…」
「それは、会いたくない人なの?」
「まぁ、出来ればな」
「ごめんなさい、私知らなくて」
「いや、雪ノ下は悪くない。むしろ、黒歴史を払拭するチャンスだよ」
「それならいいのだけど…」
「それに、上手く転べば利用出来るしな」
比企谷君が悪巧みしてる顔をしている。
「気持ち悪い笑い方ね」
「ほっとけ」
いつもの比企谷君の顔に戻った。
「なぁ、雪ノ下」
「何かしら?」
「ちょっと乱暴なやり方になるかもしれない」
「ええ」
「でも、俺一人じゃ出来ないやり方だ。すまんが、力を貸してくれ」
「比企谷君…。私の方こそ、巻き込んでしまって、ごめんなさい」
「気にするな。俺は雪ノ下の力になれて嬉しいんだ」
もう!比企谷君、なんでそんなこと言うのよ!ズルいわよ!ますます好きになっちゃうじゃない!
「どうした?顔が赤いが…」
貴方のせいよ!