生徒会長・雪ノ下雪乃 奉仕部部長代理・比企谷八幡 作:おたふみ
会議室に戻り、会議の後半が始まる。
ここから比企谷君は仕掛けると言っていたのだけど…。
「じゃあ、まずブレインストーミングの続きを…」
「おい、ブレインストーミングってなんだ」
始まったわ。
「ブレインストーミングっていうのは…」
「意味を聞いてるんじゃない。この会議にそんな横文字は必要か?」
「会議をスムーズに進めるために…」
「会議になってねぇじゃねぇか」
「そんなことは…」
「そもそも、この会議の先はなんだ?」
「地域のみなさんとのコミュニケーションを…」
「そうだな。老人ホームや幼稚園や小学校に声をかけている」
「そうだね」
「年配の方や子供にそんな言葉、通じるのか?」
「それは…」
「どうなんだ?玉縄会長」
比企谷君、格好いい…。
「…通じないだろう。だけど、伝える時には…」
「無理だな」
「どうしてだい?」
「会議で使われてる言葉が議事録として残り、資料作りにそのまま使われる。イチイチ翻訳なんかしていられるか」
「…」
「大方、そこの折本に格好いいとこ見せたいだけかもしれんがな」
「なっ!そ、そんなことは…」
みんなの視線が折本さんに集まる。
「何それ、ウケないんですけど…」
玉縄会長、御愁傷様。
「俺たち総武はいくつか案を作ってきた。本牧、頼む」
「総武は、小学生による劇、小学校には連絡済み。園児によるお年寄りへのケーキ配り、これも了承済み。あとブラスバンドもしくは軽音楽、こちらは顧問と相談中です。あとは有志による合唱、以上です」
「ありがとう。海浜は何か決めてきたのか?」
「そ、それは今から…」
「それじゃあ遅いんだよ」
「…」
「海浜の校長に『これ以上、協力体制は無理だ』と直談判してもいいんだぞ。前回の会議のボイスレコーダーと今録画しているビデオがあるからな。玉縄会長に分かりやすく言えば『エビデンス』だ」
「…」
海浜側が黙ってしまった。比企谷君が私に目配せをした。私の出番ね。
「比企谷君、言い過ぎよ。玉縄会長、うちの比企谷が失礼なことを言いました」
「い、いや…」
「私も彼と近い感想を持っていまして。一言言わしてもらいますが…」
「え?」
「ごっこ遊びがしたければ余所でやってもらえるかしら 。ずいぶんと中身のないことばかり言っているけれど、覚えたての言葉を使って議論の真似をするお仕事ごっこがそんなに楽しい? これ以上私達の時間を奪わないでもらえるかしら」
思わず、口元が緩んでしまう。
「な、な…」
玉縄会長、口をパクパクさせて鯉みたいですよ。
「何で二人ともああいうこと言っちゃいますかね~。雰囲気最悪ですよ~!」
え?一色さん?
由比ヶ浜さんと目配せをしている。
…そういうことね。乗るわよ、比企谷君。
「私は間違ったことを言ったつもりはないけれど」
「正論かもしれないですけど、もっと空気を読むっていうか色々あるじゃないですか!」
「その男に空気を読むことを期待するなら無駄よ。部室でも文字列しか読んでいないんだから」
「残念だったな。俺クラスの読書家ともなると行間までちゃんと読んでる。ていうか、今怒られてたのお前じゃないの?」
「一色さんは今、正論だと認めたじゃない。だったら、怒られる謂れがないわ」
「あぁ、それそれ、そういうところを怒られてんだよ、話聞け話」
「あの、私の話聞いてますか?ふ・た・りに言ってるんですよ」
「いろはちゃん、ストップ!ゆきのんとヒッキーも!」
いいタイミングよ、由比ヶ浜さん。
「お二人が夫婦漫才始めるからいけないんです」
もう、一色さん。め、夫婦だなんで…。
「と、とにかく、海浜のみなさんは、次回までに案をまとめて来てください。今日はここまでにしましょう!ねっ?ねっ?」
上手よ由比ヶ浜さん。
「そうね。玉縄会長、それでよろしいかしら?」
「あ、ああ、そうしてもらえると助かる…」
意気消沈ね。
「では、失礼するわね」
スッキリした気分でコミュニティセンターを出た。
「一色さんには驚いたわね」
「まったくだ」
やっぱり、比企谷君も知らなかったのね。
「先輩と雪ノ下先輩が席を外した時に由比ヶ浜先輩と話をしてまして~」
「そうそう、いろはちゃんも参加したいって」
「ね~」
「ね~」
そんな話をしていると…。
「比企谷~!」
あれは…、折本さん。
「悪い、先に帰ってくれ」
何もないとは思うけど…。
とても比企谷君と親しそうだったし…。
「雪ノ下、そんな顔すんな」
え?
「ちゃんと説明するから」
「…そう」
比企谷君を信じる。あの時とは違う。
「比企谷君、待ってるわ」
「すまん」
「いいのよ。また明日」
「じゃあな」