生徒会長・雪ノ下雪乃 奉仕部部長代理・比企谷八幡   作:おたふみ

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18話

翌日、普通に授業を受けていたが、心の中は比企谷君と折本さんのことでいっぱいだった。

最初の授業を終えて、教科書を片付けていると、クラスメイトに呼ばれた。

 

「雪ノ下さん、あそこの男子が呼んでほしいって」

 

扉の方を向くと比企谷君が軽く手を挙げた。

 

彼に呼ばれた嬉しさを隠しながら、扉に向かう。

 

「何の用かしら?ストーキング谷君?」

 

「違ぇよ。ほら、あれだ、折本との話だよ」

 

「え、ええ、そうね」

 

「昼休みと放課後、どっちがいい?」

 

一刻でも早く聞きたい私は、昼休みと答えた。

 

「わかった。部室でいいか?」

 

「ええ、いいわ」

 

「悪かったな、急に来て」

 

「いえ、大丈夫よ」

 

そう言って席に戻ると、数名のぐらいはメイトに囲まれた。

 

「雪ノ下さん、もしかして彼氏?」

 

「いえ、まだ違うわよ」

 

「『まだ』ってことは…」

 

しまった!

 

「ち、違うのよ、ただの言葉の綾というか…、そうよ、ただの言い間違いよ」

 

「へ~」

 

「ふ~ん」

 

チャイムが鳴り、その場はなんとかなったが、あとが怖いわ。

 

昼休みは急いで教室を出て部室へ向かう。休み時間に由比ヶ浜さんには連絡済み。

 

部室はまだ鍵がかかっていたが、すぐに比企谷君が来た。

 

「早いな」

 

「私を呼んでおいて、私より遅いのはどうなのかしら?」

 

「うっ!わ、悪ぃ」

 

クラスメイトの追及を逃れる為にダッシュで来たのだけど、それは言えない。

 

「先にメシ食おうぜ」

 

「そうね」

 

比企谷君と二人で昼食。次の機会は私の手作りのお弁当で…。

 

「ごちそうさま」

 

え?もう食べ終わったの?

 

「早いわね」

 

「まぁ、菓子パンだけだからな。それにしても、キレイな弁当だな。それにうまそうだ」

 

「た、食べてみる?」

 

な、何を言ってるのよ私!

 

「い、いいのか?」

 

ええい!ままよ!

 

「ど、どれがいいかしら?」

 

「では、玉子焼きをもらえるか」

 

箸で一口大に切って…。

 

「はい」

 

「い、いや、手の上に置いてくれれば…」

 

わ、私は何を…。も、もしかして『あ~ん』をしようとしていたの…。ここまできたら!

 

「あ、貴方は手に比企谷菌がついてるでしょ、だから…」

 

「俺自身比企谷なんだが…」

 

「い、いいから、早く食べなさい」

 

「わ、わかったよ」

 

ひ、比企谷君が私の箸から玉子焼きを…。

 

「ど、どうかしら?」

 

「ん?ダシを入れてるのか?旨いな」

 

「そ、そうよ。砂糖ではなくダシで甘味を入れているのよ」

 

「さすが雪ノ下だな。旦那になるヤツが羨ましい」

 

「あ、貴方さえよければ…」

 

「ん?」

 

な、何を言っているのよ私!

 

「な、なんでもないわ」

 

比企谷君は平気なのかしら…。

 

「そっか、本読んでるから、食べ終わったら言ってくれ」

 

「ええ、わかったわ」

 

ど、どうしましょう。この箸を使ったら、比企谷君と間接…き、キス。

 

ああ、もう!えい!

 

…お弁当の味がわからないわ。

 

なんとか、食べ終わったわ。

 

「比企谷君、お待たせ」

 

「あ、おう」

 

比企谷君がこちらに向き直り、話し始めた。

 

「えっとだな、折本は中学の時に告白してフラレた相手だ」

 

「…そう」

 

「それで、告白した次の日にはクラス中がそれを知ってた」

 

なんてことなの!

 

「まぁ、あとは想像の通り、陰湿なイジメになった訳だ」

 

「そ、それは折本さんがバラしたの?」

 

「昨日まではそう思ってた。折本は誰にも話してないらしい」

 

「では、どうして?」

 

「偶々目撃者が居てな。そいつも折本のことが好きだったらしい。それであることないこと言いふらしてな」

 

「折本さんは止めなかったの?」

 

「『止められなくて、ごめん』て言われたよ。あの時のクラスの状態はもう止めるのは無理だったと思うしな」

 

「折本さんは、その言いふらした相手をいつ知ったのかしら?」

 

「高校入ってからだってよ。告白してきて、その話になったんだと。まあビンタしたって言ってたけどな」

 

「そう…なのね。それで比企谷君は…」

 

「俺の中では終わってたことなんだが、ああやって言ってもらって黒歴史もただの思い出に昇華したって訳だ」

 

「あ、あの比企谷君…」

 

「なんだ?」

 

これは聞かないと後悔する。…よし!

 

「お、折本さんのことは今でも…」

 

「言っただろ、俺の中で終わったことだって」

 

「そ、そう…」

 

昨日、私の後ろで好きな人の話をしていたけど、心配だった。比企谷君から聞けて安心した。

 

「それでだ、雪ノ下に頼みがある」

 

「な、何かしら」

 

「折本の頼みとはいえ、昨日あんなこと言っちまったからな。もし折本が海浜の連中の折り合いが悪そうなら、こっちに引き込んでもいいか?」

 

比企谷君が折本さんに気持ちがないなら、かまわないのだけど…。

 

「やっぱダメだよな…」

 

そ、そんな顔しないで、比企谷君。

 

「は~、仕方ないわね」

 

「本当か!さすが雪ノ下。ありがとな!」

 

そ、そんな、比企谷君、手を握られだら…。

 

「あ、悪い…」

 

え?もう終わりなの?

 

「い、嫌だったよな」

 

「そ、そんなことないわ。むしろ、もう少し…」

 

「え?」

 

もう!この難聴系主人公!!

 

 

クラスに戻ってから大変だった。『あの人、彼氏なの?』とか『あのイケメン誰?』とか『どこのクラス?』とか…。


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