生徒会長・雪ノ下雪乃 奉仕部部長代理・比企谷八幡 作:おたふみ
「おはよう、比企谷君」
「…」
「おはよう、比企谷君。遂に耳まで腐ってしまって聞こえないのかしら?」
「いや、腐ってるのは目だけだから。この状況に驚いて声が出なかっただけだからね。おはよう、雪ノ下」
「よろしい」
「んで、なんで俺の布団の中に雪ノ下が居るか説明してもらえるか?」
「可愛い彼女が横に寝てるのが不満?」
「不満な訳ねぇだろ。寧ろ大満足だ。満足し過ぎて昇天しかけたまである」
「そう。朝食の準備が出来てるからリビングに来てもらえるかしら」
「了解。朝飯食いながら、色々聞きますかね」
比企谷君への寝起きドッキリが成功したわ。あの驚いた顔は良かったわね。なにより、寝顔が可愛いかった。何枚も携帯で撮ってしまった。なかなか起きないので頬にキスまでしてしまったわ。もう遠慮しなくていいのよね。
「すげぇ豪華な朝飯だな」
「そう?」
豪華なはずよ。張りきり過ぎて、予想以上の品数を作ってしまったのだから。
「いただきます」
「いただきます」
「そういえば、ウチの家族は?」
「お義父さまとお義母さまは仕事へ行かれたわ。義妹(いもうと)の小町さんは友達と受験勉強だそうよ」
「今、家族の呼び方に『義』って文字が見えた気がするが…」
「そう?」
そのつもりで言ってるのだから。
「雪ノ下はなんで、俺ん家に居るんだ?」
「貴方に買い物に付き合ってもらおうかと思ったのよ。どうせ暇でしょ?」
「い、いや、録り貯めたアニメとかラノベをだな…」
「彼女が年末の買い物で重い物を持って歩いているのに、貴方はコタツでアニメ三昧なの?」
「慎んで、お供させていただきます」
彼に甘えて、こんな言い方をしてしまう。素直にならなくては…。
「ごめんなさい。本当は、貴方とその…、デートがしたいの…」
「よし!さっさと支度するぞ」
「ど、どうしたの、急に」
「彼女がモジモジしながら『デートしたい』とか言ったら行くしかないだろ」
「そ、そう…」
「おっと、違った」
「?」
「『可愛い彼女の雪ノ下が』だった」
「は、早く支度しなさい!」
そうやって不意討ちをするんだから…。
「んで、どこに行くんだ?」
「まずは、時計屋さんよ」
「時計屋?目覚ましでも壊れたか?」
「いいえ、違うわ」
「じゃあ、なんだ?」
「行けばわかるわ」
「さいですか」
彼と時計屋さんに入り、従業員に声をかける。
「雪ノ下ですが、注文した物は来てますか?」
「はい、少々お待ちください」
小さな紙袋を受け取り店を出る。
「終わりか?」
「えぇ、受け取りだけだったから」
「ほ~ん」
「中身、気になる?」
「それなりにな」
「あとで…ね」
「おう。で、次は?」
「ショッピングモールでも行きましょうか」
「はいよ」
洋服屋さんや雑貨屋さんを見てまわっていると、比企谷君の手が落ち着かない。…手を繋ぎたいのかしら?
「ゆ、雪ノ下…」
「何かしら?」
「その…手を…繋いでもでも…」
「ダメよ」
「そ、そうか…」
ガッカリした比企谷君の顔…。悪くないわね。次は驚いた顔になるかしら…。えいっ!
「なっ!なにを…」
「今日は手じゃなくて、腕を組みたいの」
「そ、そうか」
ガッカリしたり、驚いたり、恥ずかしそうだったり、百面相ね。
アクセサリーショップの前に来ると、ばつが悪るそうな顔になった。
「どうしたの?」
「は、早く行こうぜ」
そう言っていると、ニッコニコの店員が駆け寄ってきた。
「先日はありがとうございました」
「い、いや、あの、その、こちらこそ、どうも…」
比企谷君がシドロモドロになっている。
「上手く渡せたみたいでなによりです」
「あ、はい…」
「また、可愛い彼女さんとお立ち寄りください」
「その時は、またお願いします」
「彼女さんも、お似合いですよ」
お、おおおおおおお似合い!
「あ、ありがとうございます…」
「で、では、失礼します」
「はい」
「比企谷君」
「はい」
「あのお店でこのネックレスを買ったの?」
「はい」
「そう…。今度は一緒に見てくれる?」
「もちろん」
その後も、色んなお店を見てまわる。
「雪ノ下、本屋寄ってもいいか?」
「ええ、いいわよ」
「じゃあ、俺はラノベを見てくるから、後で入り口で…」
今日はデートなのに!
「イテテテテッ!間接をきめるな」
「今日はデートなのよ」
「じゃあ、一緒に見るか」
「よろしい」
比企谷君はライトノベルを手に取り物色している。
…表紙の女の子の胸が大きいのは気のせいかしら…。
ん?比企谷君が参考書のコーナーを見ている。
「参考書、買うの?」
「ん?いや、今日はやめとく。折角のデートの時に数式とか見たくないからな」
「数式?貴方、数学は捨てたんじゃないの?」
「あっ、いや、…それも含めて話をしたいことがあるんだが…」
「そう。では、今夜はウチに来なさい」
「…わかった」
ナチュラルに誘えたわ。食材も買い揃えてあるし、…男物の着替えも姉さんが置いていってくれたから大丈夫ね。