生徒会長・雪ノ下雪乃 奉仕部部長代理・比企谷八幡   作:おたふみ

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36話

1月3日…。今までで一番気分の重い誕生日になってしまった。

 

午後から彼を迎えに行き、実家の玄関前に立つ。

 

「着いた…。着いてしまった…」

 

「比企谷君、大丈夫?顔色が悪いわよ…。ごめんなさい、いつもだったわね」

 

「おい、ゾンビじゃねぇからな」

 

いつも通りの受け答え。少しは気持ちがほぐれてかしら?

 

「ありがとな、雪ノ下」

 

「いつも通りの貴方で大丈夫よ」

 

「本当かよ…」

 

「でも、自己犠牲はダメよ」

 

「わかってるよ。俺は雪ノ下と前に進むって決めたんだから」

 

彼が手を握ってくれる。それが何より心強い。

 

「ひゃっはろ~、お二人さん」

 

「姉さん」

 

「お母さんはお待ちかねだよ」

 

「わかってるわ」

 

「私は同席出来ないけど、大丈夫?」

 

姉さんが苦しそうな顔をしている。

 

「だ、大丈夫よ」

 

「雪ノ下」

 

「何かしら?」

 

「手、痛いんですけど…」

 

「ごめんなさい!」

 

緊張で手を強く握り過ぎてしまったわ。

 

「大丈夫だよ。たぶん、知らんけど…」

 

「こんな時くらい、言い切りなさい」

 

「それだけ言えれば大丈夫だ」

 

「そうね」

 

「じゃあ、行くか」

 

「ええ」

 

応接室まで来ると、姉さんが扉をノックする。中から『どうぞ』と言う母さんの声が聞こえた。

 

「私はここまで。二人とも、がんばってね」

 

姉さんが苦い顔をする。

 

…比企谷君が何か思案しているみたい。

 

「比企谷君?」

 

「なんでもない」

 

応接室に入ると、母さんが待ちかまえていた。

 

「比企谷さん、その節は大変なご迷惑をお掛けしました。お加減はいかがですか?」

 

「いえいえ、もう済んだことなので、お気になさらないでください。ケガもこの通りになんともありません」

 

「では、今回の話は事故とは無関係としてよろしいですか?」

 

威圧感を与えるような声色…。

 

「構いません」

 

比企谷君も、家の前で不安そうにしていた時とは一変して、引き締まった顔をしている。普段から、こうしていれば、さぞかしモテるでしょうね。

 

ソファーに座り、母さんが紅茶を一口。そして話はじめた。

 

「まず、二人はお付き合いをしているという認識でかまわないのかしら?」

 

「はい」

「はい」

 

「まず、雪乃」

 

凄い威圧感…。

 

「はい」

 

「陽乃から送られてきた写真。あれは何ですか?」

 

「あ、あれは…」

 

「はっきり言いなさい」

 

「比企谷君のお宅に泊めていただいた時に寝ぼけて比企谷君の布団へはいってしまいました…」

 

「嘘はないですね?」

 

「はい」

 

「まあ、仕方ないでしょう」

 

追及してこない?何故?

 

「比企谷さん」

 

「はい」

 

「貴方は雪ノ下の娘と付き合うという認識はありますか?」

 

「認識とは?」

 

ひ、比企谷君…、もっと聞き方があるでしょ。

 

「うちは、建設会社で主人は県議会議員をしています」

 

「そうですね」

 

「貴方のお宅はいかがですか?」

 

「うちは、普通の中流家庭だと思いますよ」

 

「そう。そこまでわかっているなら、これ以上言わせないでいただけるかしら?」

 

つまり、付き合うなと、別れろってこと…。

 

「それは、別れろってことですか?」

 

「比企谷さんが、そう捉えるのら、そうなのでしょう」

 

「お断りします」

 

ひ、比企谷君!

 

「雪乃、わかるわね」

 

比企谷君は覚悟を決めている。私だって、比企谷君と一緒に居たい。

 

「母さん、私は比企谷君と別れるつもりはありません」

 

「何故ですか?貴方には名のある家から、それこそ隼人君のようは人と雪ノ下の一翼を担ってもらわなければなりません」

 

「比企谷君は、私を『雪ノ下家の次女』でも『雪ノ下陽乃の妹』でもなく、『雪ノ下雪乃』を見て好いてくれているんです。今まででそんな人はいなかった。たぶん、これからも…」

 

「それだけですか?」

 

母さんの威圧感が更に増した気がする…。比企谷君を見ると口角が上がってる…。

 

「いえ、違いますよ」

 

比企谷君の一言を聞いて母さんの口角も上がった…。何が起こるの…。

 

 

 


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