生徒会長・雪ノ下雪乃 奉仕部部長代理・比企谷八幡   作:おたふみ

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37話

「ここまで発展した会社経営をしていて、そんな前時代的な思考をしている方とは思えません。それに…」

 

「それに?」

 

「雪ノ下…、雪乃さんとソックリな和風美人な顔立ちなのに、今は何かを企んでる雪ノ下さん…、陽乃さんみたいな仮面をしている…。まるで、俺たちを試しているような」

 

え?娘の私でもそんな感じは受けないのに…。

 

「さすがですね、比企谷さん。よくわかりましたね」

 

えっ!

 

「どうも。大方、陽乃さんの悪巧みでしょうかね」

 

「どうして、そう思われるのですか?」

 

「あの人、相当なシスコンですからね。俺たちへの最終試験といったところでしょうか」

 

母さんがひとつ間を置いた。

 

「雪乃」

 

母さんがこちらに微笑みかけてきた。

 

「はい」

 

「良い人を見つけましたね。そして、良い人に見つけてもらいましたね」

 

「母さん…」

 

「さて、ざっくばらんに話しましょうか」

 

「え?」

「え?」

 

私も比企谷君も間抜けな声を出してしまった。

 

「葉山さんの息子の隼人君がクリスマスの前に彼女を連れて来たって奥様から聞いてね。陽乃は大丈夫かもしれないけど、雪乃はこんな性格だから、彼氏とか出来なかったら最終手段は隼人君にお願いしようと思っていたから困ってしまって…。そしたら陽乃が雪乃にも良い人が居るって言って。あの写真が送られてきた時は嬉しくて…」

 

か、母さんが止まらない!

 

「か、母さん!」

 

「何かしら?今、いいところなんですから」

 

「いえいえ、どうしたんですか!?」

 

「どうもしませんよ。貴方が(義理の)息子候補を連れて来たのが嬉しいのよ」

 

「な、なんか小町っぽい」

 

「妹の小町さんね。よく出来た可愛い妹さんね」

 

「こ、小町を知ってるんですか!」

 

「ええ。クリスマスに陽乃が連れて来たので。兄思いの妹さんでしたよ。ええと、こういう時は…『お母さん的にポイント高い』でいいかしら?うふふ」

 

比企谷君が 呆然としている。私がしっかりしないと!

 

「ど、どういう心変わりなんですか?」

 

「心変わりではありません。自分で言うのもおかしいですが、昔は天真爛漫・おてんば娘でした」

 

「か、母さんが?」

 

「私は県議会議員の妻として、雪ノ下建設を取り仕切るモノとして、娘二人を育てる母として、自分にも家族にも厳しくしてきました。そんな仮面をつけていれば誤解が生じても仕方ありません」

 

「まぁ、そうでしょうね」

 

「雪乃が家を出てから悩みました。厳しくし過ぎたのではないかと…。主人に言われました。『娘を嫁に出すの辛いが、彼氏も出来ずに独身でいられるのはもっと辛い。そんなんじゃ陽乃も雪乃も彼氏を連れてこれない』と…」

 

「確かに、比企谷君を連れて来るのは戸惑いました」

 

「陽乃は高校卒業する頃に、この仮面に気がつきました。すると、のらりくらりとしている感じを装い、言葉の裏や背景を読んで行動するようになりました」

 

確かに、今のようによう振る舞いは大学生になったころに顕著になったわ。

 

「雪乃は今でも真面目過ぎて、言葉を額面通りに受け取ってしまいます」

 

「確かに、俺もそう思います」

 

「陽乃のようになれるとは思ってはいません。ならなくてもいいのです。例え姉妹でも別の人間なんですから」

 

母さんは、そんなふうに思ってくれていたのね。

 

「聞けば比企谷さんは、物事へのアプローチがかなり斜めだとか」

 

「うぐっ。そ、それは否定出来ません」

 

「雪乃のような正攻法では、上手くいかない場合も多くあります。だからといって、比企谷さんのような搦め手ばかりでもダメです」

 

「はい」

「はい」

 

「二人で力を合わせるのですよ」

 

「母さん…」

 

「二人の交際に異論はありません。比企谷さん、雪乃のことよろしくお願いします」

 

「はい」

 

力が抜けるのがわかる。

 

「お茶、いただきます。喉カラカラで」

 

「あら、緊張していのですね」

 

「それはしますよ」

 

比企谷君も力が抜けたようだ。

 

「ところで、孫はいつですか?」

 

「げほっげほっ!」

 

「か、母さん!!」

 

「冗談ですよ」

 

何、『してやったり』みたいな顔をしているんですか!

 

「比企谷君、大丈夫?」

 

「ビックリした…」

 

「孫は楽しみにしていますが、学生のウチは節度をもってくださいね」

 

「は、はぁ、肝に命じておきます」

 

「しかし、親子というのは、こんなところも似るんですね。ウチの人の若いころにソックリ」

 

「父さんも目が腐ってたんですか?」

 

「おい、目の腐りかよ」

 

「ええ。若い頃は世の中を斜めからしか見てなかったですからね。ある意味、政治家向きだったのでしょう」

 

「俺は清廉潔白なイメージがあるんですけど…」

 

「政治の世界は魑魅魍魎だらけなんですから、そういう部分がないと務まらないですよ。比企谷さんんは政治家向きかもしれませんね。ウチの人が引退したら地盤を継ぎますか?」

 

「か、考えておきまふ」

 

「ふふふっ、冗談ですよ」

 

「雪ノ下、どこまでが冗談かわからなくなってきた」

 

「わ、私もよ」

 

 

 




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