生徒会長・雪ノ下雪乃 奉仕部部長代理・比企谷八幡 作:おたふみ
「あ~あ、雪乃ちゃんと比企谷君のせいで深く考えるのがバカバカしくなっちゃった」
軽く伸びをしながら。姉さんが続ける。
「お母さん、私もゆっくり考えさせてもらうよ」
「そうしなさい」
部屋の空気が軽くなったところで、母さんがポンと手を叩いた。
「さて、夕食の支度をしましょうか。比企谷さんも食べていかれるでしょ?」
「あ、いや、家で小町も待ってますし…」
「あら、そう?」
そんなやりとりをすると、携帯電話を取りだし「失礼します」と一言言うと、何処かへかけている。
「もしもし、小町さん?先日はどうも。今ね、貴方のお兄さん、そう八幡さんが来ているのだけど、…そうね、うふふ。それで夕食を食べていってほしいって言ったら貴方が心配みたいで…。そんなこと言ってはダメよ、いいお兄さんじゃない。…あら、じゃあ小町さんもどうかしら?…そう、じゃあ陽乃を迎えに行かせますから。はい、失礼します」
え?小町さんと電話番号を交換していたの?
「比企谷さん、小町さんもこちらに来るので遠慮なく食べていってください」
比企谷君が呆然としているわ。
「陽乃も聞いていましたね?」
「じゃあ、小町ちゃん迎えに行ってくるね~」
姉さんが部屋を出ると、比企谷君が再起動した。
「す、すいません、妹まで…」
母さんが、とても優しい顔になった。
「大事な家族なのでしょ?」
「はい、俺には勿体無いぐらい出来た妹です」
比企谷君もなんだか嬉しそう。
「では、料理の支度をしましょうか」
「では、私もお手伝いを…」
「雪乃、貴方は比企谷さんのお相手を。比企谷さんを一人にするつもりですか?」
比企谷君を見ると、目が『一人にしないでくれ』言っているようだったので。
「わかりました。では、部屋で待たせていただきます」
「できたら呼びに伺います。夕食にはあの人も帰るでしょうからね」
父さんも帰ってくるのね。
「ゆ、雪ノ下、もしかして、お、お父さんにも会うのか?」
「そうなるわね」
比企谷君の顔がみるみる青くなる。
「大丈夫よ、父さんは私に甘いから」
「そ、そうか」
少し安心したかしら。
「それに、私が文句を言わせませんから」
か、母さん…。
部屋に入りベッドに腰掛けると力が抜ける…。
「あ、あの、雪ノ下?」
比企谷が所在無さげにキョロキョロしている。
「あら、女の子の部屋を舐めまわすように見て。通報するわよ」
「いや、見てないからね。あれ?親公認の彼氏じゃないの…」
いつものようなやりとりをして、ベッドの私の隣をポンポンと叩くと、すこしそわそわした感じで座った。
「どうしたの?挙動不審よ。やっぱり通報した方が…」
「やめてください、お願いします」
軽く頭を下げたあと、ポリポリと頬をかいて明後日の方を向いてしまった。
「どうしたの?」
「いや、小町以外の女の子の部屋って入ったことないから…」
そんな言い方されると、嬉しくなってしまう。
「そう、私の部屋が初めてなのね」
「そりゃそうだ。ボッチ舐めんな」
「今はもうボッチではないでしょ?」
彼の手を握る…。すごく安心する。
「そうだな。俺も雪ノ下もボッチじゃねぇな」
また名字で呼んだ。
「『雪乃』って呼んでくれないの?」
ここは上目遣いで。
「うぐっ!ゆ、雪乃…」
「良くできました、八幡」
彼の肩に頭をのせる。ちょっとビックリしたみたいだけど、すぐに私の頭を撫で始めた。
八幡の鼓動の音と秒針の音しか聞こえない。静かに時間が過ぎていく…。
不意に八幡が声をかけてきた。
「なんか、すげぇ誕生日になっちまったな」
「母さんと話を始めるまでは、最悪の誕生日だと思っていたけど…」
「今は?」
「最高の誕生日よ」
「そうか」
もう、何も遠慮はいらない…。心の思うままに…。
「ねぇ、八幡」
「ん?なんだ?」
「私、誕生日プレゼントに欲しいモノがあるの…」
「え?あんまり高いモンは勘弁してくれ。っていうか買っちまったぞ」
「お金はかからないわ。でも、貴方からしか貰えないモノよ」
そう言って、彼の方を向き目を閉じた。
「お、おい…」
「本当なら、貴方からしてほしかったのだけど…」
「そ、それはだな…」
「私に恥をかかせる気かしら?」
「…わたかった」
彼の唇と私の唇が触れる。こんなにも満たされるものなのね
。
「雪乃ちゃ~ん!比企谷君!ご飯が…出来…た…よ」
「雪乃さん!お兄ちゃん!呼びに来た…よ」