生徒会長・雪ノ下雪乃 奉仕部部長代理・比企谷八幡   作:おたふみ

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8話

授業が終わり、海老名さんと話すためにもう一度2-Fへ。

 

比企谷君が出るタイミングとあってしまった。

 

「よう。由比ヶ浜か?」

 

「いいえ、海老名さんよ」

 

彼は何かを察したのだろうか。

 

「部室、使うか?」

 

「いいえ、生徒会室を使うから大丈夫よ」

 

「そうか」

 

あっさりと返されたので、意地悪をしてみる。

 

「部室は一色さんと貴方がイチャイチャしているからイヤよ」

 

「んぐっ!知ってたのかよ。イチャイチャしてないからね、コキ使われてるだけだからね」

 

そんな軽口の会話をして、彼は部室へ向かった。去り際に『お手柔らかに頼む』と言っていた。本当に甘いのよね。

 

「あっ、ゆきのん!どうしたの?」

 

「由比ヶ浜さん、抱きつかないで!」

 

あぁ!柔らかい!暑い!柔らかい!

 

「ゆ、由比ヶ浜さん離れて。海老名さんは居るかしら?」

 

「姫菜?居るよ。姫菜~!」

 

由比ヶ浜さんに呼ばれ、海老名さんがやってきた。

 

「何かな?」

 

「海老名さん、少し時間いいかしら?」

 

海老名さんは私の顔を見て何かを察したのだろう。

 

「結衣、優美子と先に行ってて」

 

「姫菜?ゆきのん?」

 

由比ヶ浜さんが心配そうな顔をする。

 

「大丈夫よ、由比ヶ浜さん。大した話じゃないから」

 

「そうだよ結衣。ちょっと雪ノ下さんにBLを布教しようと思ってね。愚腐腐…。結衣もどう?」

 

え?それはお断りしたいわね。

 

「あっ!いや~。じゃあ、先に行ってるね」

 

由比ヶ浜さんが三浦さんの方へ行き、海老名さんがこちらに向き直った。

 

「じゃあ雪ノ下さん、行こうか」

 

こちらに向いた彼女の顔は真剣なモノだった。

 

海老名さんと生徒会室に入る。

 

「少し待ってもらえるかしら?今、お茶を淹れるわ」

 

今回はいつもの紅茶とは違う。

 

「どうぞ」

 

「ありがとう。これは…、ハーブティー?」

 

「そうよ。冷静に話をしたいから。私も貴方もよ」

 

「なるほどね」

 

海老名さんはハーブティーを一口すすり、話し始めた。

 

「雪ノ下さんはどこまで知っているのかな?」

 

「なにも知らないわ」

 

嘘ではない。私の憶測でしかないのだから。

 

「じゃあ、聞き方を変えるね。いつ気がついたのかな?」

 

相変わらず主語がない。

 

「主語がないわよ。言わなくてもわかっているからいいのだけど。気がついたのは、休み時間にそちらのクラスに行った時よ。あまりにも普通に由比ヶ浜さんと話をしていたから」

 

「さすが雪ノ下さんだね」

 

「そんなことはないわ。私はあの時何も知らず何も出来なかったのだから。依頼は奉仕部へ来た時にしていた…ということでいいかしら?内容は告白の阻止及びグループの存続…」

 

「うん、そう。その…、ごめんなさい」

 

「それは、何に対しての謝罪なのかしら?」

 

「私の依頼のせいで奉仕部が…」

 

「確かに、雰囲気が悪くなってギクシャクしたわね」

 

「そうだよね…。実際に生徒会と奉仕部で別れちゃったし」

 

「私は乗り越えられると思っているの。私達三人ならね」

 

「雪ノ下さんは強いね」

 

「そんなことないわ。私は彼の存在があるから頑張れるのよ。普段は『存在感がない』とか言ってるクセに…」

 

「ヒキタ…、比企谷君だよね」

 

「そうね」

 

「雪ノ下さんは、やっぱり比企谷君のことを…」

 

「彼への好意に気がついたのは、あの嘘告白があったからかもしれないわね」

 

「そうなんだね」

 

「今、冷静に話が出来て居るのも、彼のお陰よ」

 

「どうして?」

 

「さっきすれ違う時に『お手柔らかに』って、言われたのよ」

 

「比企谷君らしいね」

 

「私も一人のことが多かったからわかるのだけど、貴方も趣味せいで昔は一人…ボッチだったのではないかしら?」

 

「うん、そうだね」

 

「彼はきっと過去の自分と重なったのでしょう。だから、あんなやり方をしても、貴方の依頼を解消した」

 

「そうだと思う」

 

「戸部君の依頼を受けた由比ヶ浜さんもそう…。自分と重ねたのでしょう」

 

「そうだね」

 

「由比ヶ浜さんは、知ってるの?」

 

「まだ言えてない…」

 

「そう。でも、いつか言ってあげて。友達なのでしょ?」

 

「そうだね。たぶん近いうちに結衣と優美子には言うつもり」

 

「それは?」

 

「たぶんクリスマスに、戸部君に告白されると思う…」

 

「そう…」

 

「その時は、ちゃんと優美子と結衣に話すよ。そして今回のことも謝る」

 

「それがいいわね」

 

「許してもらえないかもしれないけど…」

 

「そんなことないわよ。由比ヶ浜さんは優しいし、三浦さんは比企谷君曰く『オカン』だから」

 

「そんなこと優美子に言ったら怒るよ」

 

「だから、内緒にしてあげて」

 

「わかった」

 

もうひとつ確認をしておかないと。

 

「海老名さん、あとひとつ。グループの誰かには相談しなかったのかしら?」

 

「勿論、相談したよ」

 

由比ヶ浜さん、三浦さんに相談していないということは…。あの男は…。

両方から相談されていて、出来なくなって丸投げしてきたのね…。

 

「ゆ、雪ノ下さん、顔恐いよ」

 

「あっ、ごめんなさい」

 

「その事は…」

 

「大丈夫よ、今は何もしないわ。彼が守ったグループなのだから」

 

「薄っぺらいグループだけどね」

 

「でも、もしあの男がまた…」

 

「その時は仕方ないよ。私は心の中では、見限ってるから」

 

「あら、私と一緒ね」

 

「雪ノ下さんは、ハッキリとだけどね」

 

最後はお互いに笑っていた。

 

海老名さんが帰り、カップの中に残ったハーブティーを飲んでいると、扉がノックされた。

 

「どうぞ」

 

「…うっす」

 

ひ、比企谷君!

 

「あら?誰も居ないのに声がするわね」

 

「ふっ、俺のステルスもそこまで進化したか」

 

「おかしいわね、声と腐敗臭だけするわ」

 

「おい、腐ってないからね。って、臭ってないよね?」

 

「冗談よ。こんにちは、比企谷君」

 

「まったく…」

 

「それで、生徒会室に何か用事?」

 

「いや、紅茶飲みに来ていいって言ってたから…」

 

本当に来てくれたのね。まぁ、海老名さんの件もあるのでしょうけど…。

 

「あれが、只の社交辞令だったら帰るんだが…」

 

「そ、そんなことないわ。す、座って待っていてちょうだい」

 

「お、おう」

 

ハーブティーを淹れ比企谷君の前に。

 

「今日はハーブティーなんだな」

 

「えぇ」

 

比企谷君と一緒にお茶を飲む。すごく幸せな時間。

 

海老名さんとのことは何も聞いてこない。

 

「何も聞かないのね」

 

「ん?聞かんでもいいだろ?」

 

「何故?」

 

「雪ノ下が、すげぇいい顔してるから」

 

「え?」

 

ひ、比企谷君が私の顔を…。

 

「い、いや、すまん。別に凝視してた訳じゃなくてだな。その、雰囲気というかなんというか…」

 

ちょっとだけ意地悪をしたくなってきた。

 

「そ、そう…。私を視姦したのね。通報しなくては」

 

「ま、待て。まず携帯をしまってくれ」

 

「では、罰として私を送りなさい」

 

「へ?」

 

「こ、この前も送ってくれたじゃない…」

 

「いや、視姦とか言った相手に言うことかよ…」

 

ここは一色さんのマネをして。

 

「…ダメ?」

 

「うぐっ!卑怯だぞ雪ノ下。わかったよ」

 

「最初から、素直になりなさい」

 

素直じゃないのは私ね。

 

でも、『心の思うままに』…。

 

 

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