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なのはちゃんと別れて俺は一旦自宅に。このまま柔道の練習に行くつもりだ。色々あってくたびれてはいるがそれとこれとは別だ。アースラで勤務するわけじゃない以上俺はいつも通りの生活は崩せない。それに、試合も明後日に控えている。何だかんだともう目前に迫った大会。前回大会とは比較にならないくらいの規模で大きい大会だ。
規模で言うなら県大会と同じくらいだ。そして、それに優勝するために練習に取り組んできた。帰ってみればパパンもママンも既に帰宅していてさっきの一悶着はなかったかのようにいつも通り。俺も何も言わずにいつもと変わらない態度でいた。すぐに練習に向かう。今日も調整練習だ、しっかりと体を慣らして研究を中心に体を疲労させる。
「よし、ラスト一本!」
「はいっ!」
気合の声と共に相手を思いっきり投げ込む。互いに礼をして整理体操をしたら調整も終了となった。相島先生は門下生全員に明後日の試合に向けて一言伝えた後解散を命じる。明日は練習は無い。休むもよし、少し体を動かして備えるもよし。練習終わりに俺は相島先生に呼ばれ個室で対面する事になった。
「慎司、明日も調整練習をするつもりか?」
「はい、そのつもりです」
「それなら、明日はやめておけ。柔軟体操とストレッチだけして体を休めるんだ。お前はそれくらいで丁度いい」
俺的には明日も体を動かして備えたかったのだが。
「まぁ聞け、確かに備えるのも大事だがお前が柔道を始めて2年……ここまでほとんど休む事なく突っ走って来ただろう?大きな大会に出るのも今回が初めてだ、お前は確かに自分の体の事を考えて効率よく休息を交えて練習に取り組んできた。それでもお前の年齢でこなす練習量じゃない、だから明日1日はしっかり体を休めろ。今まで突っ走って来たお前にはそれがベストコンディションで出る為の準備だ」
騙されたと思ってそうしろと言う相島先生。ふむ、ぶっちゃけ明日調整しようがしまいが結果に大きく変わりは見られないだろうと言うのが本音だが落ちつかさなそうで体を動かそうと思っていた。だが相島先生は落ち着いてドーンッとして試合に構えてろと言う事なんだろう。ここは素直に相島先生の意見に従おう。体を休める事も間違ってないしな。俺は頷いて同意の意を示す。
なら、明日はアリサちゃんやすずかちゃんと放課後に何か付き合ってもらおう。久しぶりになのはちゃんもくる事だしな。
そんな思惑をしながら翌日いつも通りの登校。昨日あんだけ凄い体験をしたが世の中ってのは何も変わらずいつも通りだ。まぁ、魔法を認知されないよう結界とやらが働いてるらしいが。教室についてもいつも通り。クラスメイトに軽く挨拶して授業を受ける。
なのはちゃんが授業を受けているのも久し振りではあるが元々はいつも通りの光景だ。そんなこんなで休み時間、すずかちゃんはなのはちゃんとの再会に喜びを露わにしアリサちゃんもつーんとしながらも元気そうでよかったと素直に伝えた。この間まで少しこじれた事もあったがほっと一安心だ。
「そっか、また行かないといけないんだ……」
「大変だね……」
とは言ってもなのはちゃんも今日だけ帰ってきただけでまたアースラに戻る事になる。また学校に来れなくなる事をなのはちゃんが伝えると2人は明らかにガッカリとしていた。まぁ、仕方ない。
「それじゃあ慎司君の応援にもいけないの?明日は試合だけど」
「うん………多分行けない」
「なのは、楽しみにしてたのにね」
アリサちゃんの言葉に少し驚く。楽しみにされていたとは、なんだか照れくさいな。
「ごめんね、慎司君………」
「謝る必要ないだろ別に…」
特に俺は事情を知ってしまったんだから。
「だからアリサちゃんとすずかちゃん……私の分もいっぱい応援してあげてね?」
「うんっ」
「まっかせなさい」
何で俺より3人の方が気合入ってるんだろう。いや、俺も気合いは勿論入ってるんだけど何だかなぁ………いい友達だ。
「そうだ3人とも、放課後どうだ?久しぶりに4人で遊ばないか?なのはちゃんも少しくらいなら平気だろ?」
そう言うとなのはちゃんも頷いてくれる。すずかちゃんとアリサちゃんも今日は習い事もないのは分かってたので二つ返事でOKだ。
「それじゃウチ来る?新しいゲームもあるし」
「お、アリサちゃんまさか………」
「そ、ドラクエ」
流石、分かってる。この間最新作出たばっかだしな。今日は大いに盛り上がりそうだ。少しワクワクしてるとアリサちゃんがそういえばと口を開く。
「昨日、怪我をした犬を拾ったの」
「「犬?」」
俺とすずかちゃんでつい反復する。昨日の車での帰り道で偶然見かけたらしい。その犬の特徴やら何やらを聞いてみると俺となのはちゃんの視線が重なった。
その特徴が真実なら間違いない………昨日フェイトちゃんと一緒にいたあの犬みたいな奴だ。人間の女性にも姿を変えられるあの人の事で間違いなかった。
放課後、早速アリサちゃんの自宅へ。すずかちゃん宅同様アホみたいに大きい。もう、慣れたけど。感覚麻痺しそう。
「メイドさんいるぅ!!」
車でお迎えに来ている執事の方は何度も見かけたけどアリサちゃんとこのメイドさんは見るのは初めて。ヤバイ、高まる。欲しい、メイドさん欲しい。雇いたい、雇ってコーヒー淹れて欲しい!
「なのはちゃん!やっぱり俺、メイドになる!!」
「どういうことっ!?」
「違った、メイドさん雇いたい!」
「働きなさいよ」
「すずかちゃん、俺……頑張るから!」
「私の家に雇われるの前提なの!?」
以前に似たようなやり取りをした気がしたがまぁいいだろう。そんなことよりもメイドさんである。
「くそぉ、いいなぁ……ウチにも来ないかなメイドさん」
「あんた……なんでそんなメイド欲しがるのよ。如何わしい事でも考えてんじゃないでしょうね?」
「んわけねぇだろ!俺はただ………ただメイドさんに『ご主人様、コーヒーのおかわりはいかがですか?』って言われたいだけなんだ!」
メイド服を着た綺麗で上品なお姉さんにそんな風に尋ねられたいんだ。分かるだろう男なら!俺しか男いないけど!
「けど、子供の俺がメイドさんを雇うなんて夢のまた夢だ。誰かフリでもいいからメイドさんの真似して言ってくんねぇかな?」
チラッと3人を見る。チラッとなのはちゃんのほうを向いて顔を逸らすアリサちゃん。チラリと俺から顔を背けてなのはに視線を流すすずかちゃん。
「えっ!私!?無理だよ!」
「フリでいいんだ!フリで!頼むなのはちゃんこの通り!土下座するからっ!」
「安っぽい土下座ね」
アリサちゃんうるさい。
「も、もう〜」
しぶしぶと言った感じで深呼吸をして佇まい上品に、そして仕草を丁寧にと割と本格的な物真似をし始めるなのはメイドさん。おお、ホントにコーヒーポット持ってるみたい。
「ご、ご主人様?コーヒーのおかわりはいかがですか?」
「ちっ、なってねぇな。出直してこい」
「叩くよっ!?」
とか言いながらポカポカとしてくるなのはちゃん。メイドさんを名乗るなど15年早いわ。やらせたの俺だけどな!
「ほら、2人で漫才してないで行くわよ」
ポカポカしてくるなのはちゃんをのらりくらりと相手しながらアリサちゃんについていく。アリサちゃん宅に着いてすぐに俺たちは例の怪我した犬の様子を見に行かせてもらうことになっていたのだ。少し歩くとこれまた大きな庭のような森のような敷地に入ると大きな檻に入れられている見覚えのある獣の姿を確認した。包帯を体中に巻かれており、その姿が痛々しい。4人で檻に近づいて様子を伺う。
やっぱり、フェイトちゃんにアルフと呼ばれていたあの犬に間違いない。なのはちゃんと目を合わせる。なのはちゃんは頷くと心配そうな顔をしながらジッとアルフを見つめ始める。恐らく今念話で語りかけているんだろう。俺が気になってる事もなのはちゃんが今聞いてくれている筈だ。しかし、アルフはすぐに檻の奥に引っ込んで背を向けてしまった。
「あらら、元気なくなっちゃった。おーい、大丈夫か?」
アリサちゃんの声にも無反応だ。なのはちゃんが俺をみて首を振る。どうやら話には応じてくれなかったらしい。
「傷が痛むのかも……そっとしておいてあげようよ」
すずかちゃんの言葉に誰も反対はしなかった。しかし、本当に何があったんだろうか。一緒にいるフェイトちゃんも勿論見かけないし。色々と思考してると一緒についてきていたフェレット姿のユーノが抱かれていたすずかちゃんから擦り抜けて檻の近くに。
「ユーノ、危ないぞー?」
「あはは、ユーノ君なら大丈夫だから」
多分、ユーノが話を聞いておくという事なんだろう。お互い獣姿でも念話で会話は出来るだろうし。多分今頃、アースラでもモニターして見てるんだろうし。なのはちゃんもユーノ君と念話で話したのだろうか俺にこっそりとユーノ君がお話しするってと耳打ちしてきた。ここはユーノに任せて俺達は離れた方がいいだろう。
「早速お茶にしましょ」
アリサちゃんの言葉で部屋に戻る流れに。
「あぁ、俺ちょっと気になるから先に行っててくれ」
「あんましちょっかいかけるんじゃないわよ?」
「かけねぇよ、すぐに行くから先に行ってくれ」
分かったーと返事を聞いて見えなくなった所で俺も檻に再び近づく。ユーノがこちらをジッと見つめてくる。念話は使えないが何となく言いたい事は分かった。
「大丈夫だよ、一言二言伝えたい事あるだけだから」
言葉でそう言ってアルフに向き合う。まだこちらに背を向けているけど顔だけは振り向いてこっちを覗いていた。言葉を交わすのは温泉宿以降初めてだ。と言っても俺はあっちが語りかけてくれたとしても伝わらないけどな。
「アルフでいいんだよな?知ってるかもしれんが俺は荒瀬慎司だ」
一応、名乗った事は無かったので名乗っておく。返事は期待しない。しても聞こえないし。だから言うこと言って退散しよう。
「………胸はだけ痴女」
「〜〜〜〜っ!!」
あ、覚えてたみたい、見るからに激怒してる反応だ。ユーノもなんで余計な事言うのと言いたげだ。ま、そこまで怒る元気あるならよかったよかった。
「冗談だ冗談。悪かったな、あん時は痴女呼ばわりして」
そう言うとアルフは落ち着いたようで興奮気味だった表情に冷静さの色を取り戻す。ふむ、出来れば犬の姿だけじゃなくあのスタイル抜群の姿を見せて欲しいのだが多くは望むまい。
「色々何でそうなってんのか気になるがそれはこのフェレットもどきが話をすると思うから俺からは聞かねぇけどよ」
ユーノが前足でペチペチと俺の足を叩いてた。ごめんて、でもフェレットもどきだろお前。
「アルフ、フェイトちゃんの相方のお前に言っておこうと思ってな………」
伝えよう。俺はもう覚悟を決めたのだから。
「俺となのはちゃんを信じて欲しい。フェイトちゃんに何かあるのなら、何か事情があるなら話して欲しい。必要なら必ず救ってみせる」
アルフはジッと俺を見つめてくる。言葉はないけど目を見れば分かる。アルフはこう言いたいのだろう『お前に何が出来る?』と。アルフも俺が魔法を使えないのは承知なんだろう。管理局所属でもない地球出身の一般人。巻き込まれただけの一般人だと言うことを。
「確かに俺に出来る事はほとんどない。一番頑張る事になるのはなのはちゃんやユーノ達だ。けどな、俺はフェイトちゃんを知っちまった。彼女と話をした、笑顔を知った、悲しい顔を知った。知らないフリなんかできない、魔法に関しては無力だけど………俺はあの子の心を救ってみせる。それだけ……あんたに伝えたかった」
何となくだけど、このアルフという使い魔はプレシアではなくフェイトちゃんの味方なんだと思う。確証はない、勘だ。だけどプレシアの魔力にフェイトちゃんが襲われた時必死の形相でフェイトちゃんを抱き抱えたあの行動を見ればそんな想像も抱ける。
「そんだけだ、じゃあな」
そう言って檻から離れて背中を向ける。アリサちゃん達待たせるのも嫌だしな、さっさと戻ろう。俺は分からなかったが背を向けて離れていく俺の背中をアルフは見えなくなるまでずっと見つめていた。
「来た!はぐれメタル!経験値いただくわよ!」
「『逃げる』!」
「何やってんのよ!?」
ギャーギャーと噛み付いてくるアリサちゃん。アリサちゃんの言ってた新作ゲームをプレイ中である。痛いよ、なのはちゃんと違って君のは痛いんだからやめてくれ。
「あ、でもまわりこまれたよ」
「よし、今度こそ攻撃よ慎司!」
「『メガンテ』!」
「「自爆!?」」
哀れなり、使用したキャラはダウン。メタルにメガンテは効かないからノーダメージ。
「な〜に〜してんのよ!」
ハハハ。とかふざけてるうちにはぐれメタルに逃げられる。アリサちゃんは凄く悔しがってるがぶっちゃけ俺にコントローラーを持たした時点でそれくらいは覚悟してたろうに。キャッキャキャッキャとふざけ合いながらも今は席を外しているなのはちゃんの事を考える。
トイレに行くと言っていたが恐らく念話でアースラからの報告を受けてるんだろう。ユーノを残してからある程度時間も経ってるし話が終わっててもおかしくはないからな。
しばらくするとなのはちゃんは決意を固めた表情で戻ってきた。その表情は一瞬で消えてアリサちゃんとすずかちゃんに笑顔を向けていたけど俺は見逃さなかった。アルフから話がきけて色々アースラやなのはちゃんの方針も決まったんだろう。俺の方にも恐らくなのはちゃんから話を後で聞く事になると思う。けど今は、この時間を楽しもう。友達とこうやって過ごす時間も、人生においてとても大切な時間なのだから。
「遅いぞなのは、早くリアルドラクエごっこしようぜ」
「なにそれ?」
「あら?そんなにやりたいの?なら望み通り攻撃してやるわよ!!」
「いけ!すずかちゃん!ハイドロポンプ!!」
「作品違くないかなそれ!」
「えぇ、なのはどうすればいいの?」
「びっくりサタンの真似でもしてろ。悪魔みたいなもんだし」
「どういう意味かなぁ!?」
と言いつつその物真似しながら襲い掛かってくるところ見ると案外ノリのいいなのはちゃんである。ていうかびっくりサタン知ってんのかよ、俺が今までなのはちゃんにゲームすすめたけど染まりすぎだろなのはちゃん。
「食らいなさい!」
「おっと危ねぇ………そんな蹴り俺には通用せんぞ!」
何だかんだで楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
日は傾いて夕刻。はしゃぎすぎてくたびれたところでお茶菓子を囲んで飲み物を飲みながらゆっくりとした時間を過ごしている。あ、俺マテ茶だ。すずかちゃん邸で言ったの冗談だったのに。
「やっぱりなのはちゃんがいた方が楽しいよ」
すずかちゃんのその一言に俺もアリサちゃんも頷く。全員揃ってるのがやはり一番いいのだ。
「ありがとう……多分もうすぐ全部終わるから。そしたらもう大丈夫だから」
やはり何か進展があったのだろうか。なのはちゃんがそこまで言うということなら。
「なのは、少し吹っ切れた?」
「え?………どうだろう?」
アリサちゃんの言葉に首を傾げるなのはちゃん。
「心配してた……てか、あたしが怒ってたのはさ……」
アリサちゃんが素直にその時の心情をポツリポツリと語る。なのはちゃんが隠し事してる事、考え事してた事に怒ってたわけじゃない。不安そうに、悩んだりしてた事。そのまま自分達の元に帰ってこないんじゃないか……そんな目をしていた事に怒っていた。怒らなくてはいけなかった。そう語るアリサちゃん。この子は優しい子だ。本心でも怒っているが、なのはちゃんのためにも怒っていたのだ。小学低学年の子どころか俺よりずっと大人だ。
心配そうに見つめるすずかちゃんと涙ぐむなのはちゃん。なにも言えない俺。しんみりとした空気の中それを壊したのはなのはちゃんだった。
「行かないよ、どこにも。友達だもん、どこにも行かないよ」
涙を拭い俺達を見つめてそう言うなのはちゃん。決意を固めた瞬間な気がした。彼女なりの決意を。5歳の頃、公園で一人で泣いていたなのはちゃんを思い出す。あぁ、強くなったなこの子は。すごい子だ……本当に。
時間も時間で解散となり帰路につく俺たち。アリサちゃんとすずかちゃんは明日の試合の応援するからと言ってくれた。
俺となのはちゃんは帰りながらアルフから聞いた話、そしてアースラとなのはちゃんの方針を聞いた。アルフから伝えられた情報は予想していたものが多かった。やはり、主導でジュエルシード集めをしていたのはプレシアの方でフェイトちゃんはそれに従ってる形である事。
プレシアはフェイトちゃんの戦果を気に入らないと鞭などで暴力を振るっていた事。それなら恐怖で従っているフェイトちゃんは被害者……と言いたい所だが俺はそうは思わなかった。恐怖も少しはあるだろう。だが、彼女のあの母親の事を語る姿を見ている俺からすればあれは役に立ちたいとか母が願うならとそう言う気持ちの方が強いと思う。
アースラは目的をプレシアの捕縛に変えて明日から早速動く事になるようだ。フェイトちゃんを任せられたのはなのはちゃん。なのはちゃんがフェイトちゃんと恐らくぶつかる事になると思うとの事。フェイトちゃんとそういう取り決めがあったわけじゃないけどきっとそうなるとなのはちゃんは語る。
「慎司君は、明日大切な試合だから……そっちに専念してほしい」
「最初からそのつもりさ」
俺がいても出来る事はない。俺の試合での活躍で応援する事がきっと今すべき事だ。
「それじゃ……またね慎司君。試合頑張って!」
「あぁ、ありがとう。またな」
簡素な別れだった。俺だけじゃなくなのはちゃんにとっても明日は重大な日になるだろう。もっと何か言うべきだったか。けど、思いつかない。何か、俺に……出来る事は……なのはちゃんために出来る事はないんだろうか。そう考える思考は止められなかった。
早朝、なのはちゃんの家の近くで佇む俺の姿があった。そろそろかなと思ったところでちょうどフェレット姿のユーノと使い魔姿のアルフを連れて走ってくるなのはちゃんの姿を確認する。なのはちゃんも俺の姿を確認すると走るのをやめて俺の前で止まる。
「慎司君?試合は……」
「大丈夫だ、転移を使えばまだ間に合う」
そう言って遠くで俺を待ってる両親を指差す。面倒を掛けるがこうでもしないとなのはちゃんと会えなさそうだったから。
「昨日伝え忘れた事があったからどうしても会って伝えたかったんだ」
俺はなのはちゃんの正面に立つ。真っ直ぐ見据えて昨日伝えたかった言葉を言い放つ。
「俺は今日の試合……優勝してくる。絶対だっ!」
朝の住宅街に響く俺の大声。けど今は許してほしい。気持のこもった俺の誓いだ。
「絶対勝つ。なのはちゃんの応援がなくても絶対に勝つ!だからっ……」
右手に拳を作ってそれをなのはちゃんに向ける。
「なのはちゃんも負けんな。フェイトちゃんのためにも自分の為にも負けるなよ」
俺の出来る事はやっぱり言葉を送る事だけだ。エールを送る事だけだ。なら、それを全力でする。ちっぽけなことでもそれが俺の出来る事なのだから。
「……うん!私も負けないからっ。絶対に負けないから……だから慎司君も……優勝して」
約束だ。と二人で言い合ってコツンと拳と拳をぶつける。あぁ任せろ。俺は優勝の報告しかするつもりはねぇ。だから頑張れなのはちゃん。
「あたしも少しいいかい?」
「うおっ」
いつの間にかアルフが使い魔の姿から人間の形態に変化していた。俺と会話をするためだろうか。
「何だ、どうした?」
「あたしも昨日あんたに伝えられなかった事があるからね。それを言いたいだけさ」
伝えられなかったこと?
「……………ありがとうね、慎司」
「………まだアルフに礼を言われるような事してないけど」
「フェイトの事、気にかけてくれてありがとう。実は何度かフェイトからあんたの話は聞いてたんだ。優しくしてくれた男の子に会ったって」
そうだったのか。フェイトちゃんはそう言ってくれたのか。
「それと、フェイトを救ってくれるって言った言葉……あの時は何も言えなかったけど………あたしも信じるよ、なのはと慎司の事を」
彼女がどれだけフェイトちゃんの事を大切に思っているかすぐに分かった。きっとフェイトちゃんが苦しい事に耐えながら頑張ってこれたのもアルフのおかげ何だろう。
「あぁ、任せておけ」
見栄っ張りな返事しかできないけど、ハッキリとそう言う事は出来た。
さて、あんまりゆっくり話してる時間もお互いないだろう。アルフが人間の形態から使い魔姿に戻ったところで俺はなのはちゃんの背中を叩いて言い放つ。
「よしっ、行ってこい!!」
「うん、行ってきます!」
ユーノとアルフに二人を頼むぞと耳打ちしてから全員を見送る。その背中が見えなくなるまで俺は視線を外さなかった。早朝の住宅街には再び静寂が包む。俺も行こう。試合だ、切り替えろ。俺は勝つんだ。自分のためにも、応援してくれているみんなの為にも。なのはちゃんのためにも。
「っしゃあ!!」
勝つぞ俺は。俺達は絶対に勝つ。
びっくりサタンの物真似してるなのはちゃん……少し見たい