転生しても楽しむ心は忘れずに   作:オカケン

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 気温が暑いから寒いへ。体に気をつけている作者です


不穏な知らせ

 

 

 

 学校の昼休み、いつものように昼食を4人で囲んで和気藹々とした雰囲気で過ごす。先日の柔道の大会から数週間、最初こそはアリサちゃんやすずかちゃんに励ましの言葉をかけられてはいたが既に落ち込んではいられないと前を見てる俺を見て背中を押すように応援してくれたなんて出来事を経た。

 2人にももちろんなのはちゃんや八神家の皆んなには感謝しかない。それに報いるためにも何より自分の為にも次は優勝を届けてあげたい。再出発して、もっと努力をして、一本背負いなんか頼る必要のない俺に生まれ変わってもっと強くなるのだ。

 

 さて、それはさておき。

 

「もう届いたかな?ビデオメール」

 

 話題はフェイトちゃんについての事だった。先日のビデオメールの返事をようやく録画出来たので1週間ほど前に郵送したのだ。俺となのはちゃんはともかく魔法の事を知らない2人にはフェイトちゃんを外国に住んでいる子だと説明しているので届くのに時間がかかると思っている。

 実際地球にいないフェイトちゃんに届けるのだがそも魔法というのは便利なものでおそらく既にフェイトちゃんの手元にあるのではないかと思われる。

 

「届いてるさ、今頃見てくれてんじゃねぇの?」

「…………」

 

 俺の言葉を聞くとなのはちゃんは暗い表情を浮かべる。絶望だ、絶望の表情だ。

 

「どうしたなのはちゃん?暗い顔して」

 

 まぁ、理由は分かってるけど。

 

「う……」

「う?」

「うわああああああああん!!!」

「泣いた!?」

 

 号泣である。まぁまぁと慰めるアリサちゃんとすずかちゃん、オロオロとする俺。

 

「やっぱり撮り直そうよ〜!」

 

 悲痛な叫びをあげるなのはちゃん、ビデオメールの事である。撮り直した所で既にもう送ってしまっているので手遅れなのだが。

 

「何がそんなに不満なんだ、フェイトちゃんも喜んでくれそうなビデオメールが撮れたじゃないか」

 

 そうたしなめる俺をジトッーとした目でなのはちゃんは見る。

 

「それ慎司君が言うの!?そもそも………そもそも慎司君があんなイタズラしなきゃこんな事言わないもん!」

 

 プンプンと怒るなのはちゃんに苦笑する俺。まぁ、怒るのも無理はない。実はビデオメールの撮影の前にうっかり昼寝をしたなのはちゃんの額に『神』とマジックで落書きをしたのだ。

 面白かったので撮影を始めても俺は何も言わずアリサちゃんとすずかちゃんにはそういう演出だからツッコマないでと先回りして伝えてそのまま撮影をした。

 

 そのまま解散してなのはちゃんが落書きに気づいたのは帰ってからしばらくして鏡で自分の顔を覗いた時。俺は既にデータをダビングしてビデオを送った後である。

 

「ちょっとほっぺに猫の髭とかの落書きならまだいいよ?それくらいじゃなのはは怒らないもん」

 

 ホントかなぁ?

 

「でも『神』って何!?しかも額にでかでかと!」

「なのはちゃんらしい落書きかなと思って」

「どこが!?」

「……………………」

「せめて何か言ってよ!」

「ガム食う?」

「いらないよ!!」

 

 ビシッと関西人ばりのキレのあるツッコミを披露するなのはちゃんに関心しつつどう宥めようか考える。ふーむ、ちょっと悪戯が過ぎちゃったかな?そこは反省反省。

 

「安心してよなのはちゃん」

「いや、自分の事を神って公言してるかのような映像を見られてるんだよ?安心できないよ……」

「きっとフェイトちゃんだって馬鹿じゃない、すぐにイタズラされてるんだなって思うって」

「そ、そうかなぁ?」

「まぁ天然なところもあるからもしかしたら痛い子だなぁって思われてるかもだけど」

「安心させる気ないでしょ慎司君!?」

 

 結局この日も機嫌が治るまで平謝りであった。

 

 

 

 一方フェイトちゃんはと言うと

 

 

 

「……………」

「……………」

 

 じっとビデオメールの映像を真剣に見つめるフェイトちゃんとアルフ。再生が終わり、彼らからの温かい声と気持ちを胸いっぱいに受け止めて笑顔を浮かべる。

 

「………うん、ありがとう皆んな」

 

 そう呟いて記憶ディスクを取り出し大切にしまう。そして、今度はダンボールで届いた沢山のディスクを取り出して笑顔でアルフに

 

「じゃ、今度は慎司がまた送ってくれた『仮面ライダーアギト』……一緒にみよう?アルフ」

「そ、そうだね……」

 

 ルンルンとしながらディスクを入れ替えるフェイトちゃんを微笑ましく見つめつつアルフは呟いた。

 

「まぁ、どうせ慎司のイタズラか」

 

 ちなみに次のフェイトちゃんからのビデオメールで気を使って落書きに関しては全く触れてこなかった事に逆になのはちゃんは頭を抱える事になるのはまた少し後の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまーっと」

 

 しっかり練習で体を限界までいじめ抜きはやてちゃんに夕飯をご馳走になってから帰宅。あれ?家の電気が付いている。

 

「ああ、おかえり慎司」

 

 出迎えてくれたのは母さんだった。

 

「あれ、母さん仕事は?平気なの?」

 

 今日も帰れないからと連絡があったのだが

 

「うん、ちょっと資料だけ取りに戻ってきたのよ」

 

 そう言う母さんの顔は少々疲労の色が見られた。詳しくは聞けてないが父さんも母さんも無理を押してでもやらなくちゃいけない案件らしく管理局を辞めたはずの母さんが父さんの手伝いでここまで家を開けるのは今までなかった事だ。

 それほど大事な事なら息子としては無理をしないで休んでと無責任な事は言えなかった。

 

「そっか、まぁ倒れない程度には気をつけてよ。俺は大丈夫だからさ」

 

 管理局所属という役職がどれほど大変かは分からない俺はそう言う他なかった。

 

「うん、それじゃあお母さん行ってくるから。慎司には悪いけど明日も慎司に家の事任せっきりになっちゃうけど……ごめんね?」

 

 いいっていいってと答えて母さんを見送る。さてと、家の掃除機かけてから風呂入って寝るとしようか。そう思いとりあえず居間を通るとテーブルに紙の書類が置いてあった。

 ありゃ、母さんの忘れ物か?興味本位に覗いてみると日本語じゃない文字の羅列と一枚の写真が切り抜きされた書類だ。

 

「………本?かな……。もしかして魔導書とかそう言うやつかな?」

 

 魔法使いじゃない俺には何か全く分からないがこれについて調べているのだろうか?写真の本が何となく気になってまじまじと見る。

 

「俺が見たってしょうがないか……」

 

 とりあえず、母さんは恐らく転移で移動しただろうから追いかけて渡す事は俺には出来ない。通じるか分からないがとりあえず携帯に連絡を入れておいた。

 すぐに慌てて取りに戻ってきた母さんはちょっと印象的だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある日、俺はもう何度目かも分からない八神宅に夕飯をご馳走になりにきた。流石に甘え過ぎかなと何度も思っていたが結局の所はやてちゃんに来て欲しい来て欲しいとキラキラした瞳で言われては断れなかった。

 練習を終えた後に来ているので既に日は沈み、辺りは暗闇に包まれている。……ん?

 

「電気……ついてないな」

 

 はやてちゃんの家から灯りが全く漏れていなかった。いつもならカーテン隙間から灯りが漏れ出たりしているのだが今日は全くそれがない。

 

「留守か?」

 

 試しにドアに手をかける。………開いてるな。顔だけ覗いて声をかけてみるが返事はない。番犬のザフィーラもいない。家の中は真っ暗だ。鍵をかけ忘れたのだろうか?

 事前に連絡はしてあった筈だが急用でも出来たのか?

 そんな事を考えているとポッケの携帯が震える。メールだ。確認してみると送られてきたのははやてちゃんの携帯からだ。しかし、文面からしてこれを送信したのははやてちゃんじゃなくて別の誰か。恐らくシャマルさん辺りだと思われる。

 

「……っ!」

 

 メールの内容を読み終えた瞬間俺は駆け出していた。冷や汗がツタリと背中を伝う。全力疾走をしても不思議と無限に走れるような気がして俺は病院に向かった。

 

 

 メールには、はやてちゃんが倒れて病院に運ばれたと書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 病院の救急所に赴き事情を説明して病室に案内される。チラッと覗くと病室のベッドには元気そうな様子のはやてちゃんの姿と八神家の面々が。ザフィーラまでいる。

 とりあえずはホッと胸を撫で下ろしつつ一応扉は開いていたがノックしながら声をかける。

 

「よっ、大丈夫か?」

 

 努めて明るい声でそう告げる。

 

「し、慎司君……ごめんなぁ」

 

 はやてちゃんは開口一番謝罪の言葉を口にしてきた。俺は謝る必要はないだろと笑いながら答えてそれをやめさせる。

 

「体は平気なのか?」

 

 そして一番気になっていた事を口にした。はやてちゃんは苦笑しながらただの貧血だと言う。皆んながあんまり大袈裟なんだと心配してくれた事はうれしそうにしつつもそう口にした。

 

「そっか………」

 

 と、再び胸を撫で下ろす。貧血なら少し休めば大丈夫なはずだ。貧血ならな。実際顔色は悪くないみたいだしとりあえずは安心していいだろう。

 

「ウチは大した事あらへんから慎司君は帰って休んでな?ご飯もウチのせいでまだやろうし………」

「なんだよ、折角来たんだ。もっとお話しようぜ?」

 

 どかっとまだ帰る気はないと言うように無遠慮に備付けの椅子に座る。ふふふ、逃さんぜぇ……。

 

「それよりもさ、聞いてくれよ。今日実はな………すごいもん見ちまったんだ」

「すごいもん?」

 

 俺がそう切り出すとはやてちゃんも一緒にいる皆んなも興味深そうな顔をする。

 

「学校から帰ってる途中にな………いたんだよ」

「いたって何が?」

 

 焦らす俺にそう早く言えと言わんばかりにそう問うヴィータ。小さく生唾を飲み込んでいた。

 

「………ト○ロ」

「トト○!?」

 

 ガタッと椅子から立ち上がるシグナム。意外と食いつきがいい。

 

「って、んなわけないやん。もうちょっとマシな冗談言ってや〜」

「いたもん………」

「えっ?」

「トトロいたもんっ!!」

「それ言いたかっただけやろ」

「まあな」

 

 脈絡ないのが俺ですから。

 

「そんな冗談よりももっと他の事話そうや」

「ゆ゛る゛ざん゛!!」

「うっさいな!」

 

 そんなやり取りで高らかに笑う俺とはやてちゃん。いや、心配したけど元気そうだし心配無用だったな。ははっ

 

 

 

 

 はやてちゃんの体は既に命の危機にまで迫っている事を知らなかった俺はそんな無責任な事を思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それかしばらく経ったある日、学校が終わりなのはちゃん達と別れて帰路に着いている途中だった。はやてちゃんが倒れたあの日を境に俺は八神邸に遊びに行く回数を減らして控えていた。

 

 理由は勿論先日倒れた事が起因している。病院から出た後深刻な様子のシグナムに呼び止められた。その時シグナムにはやてちゃんが本調子に戻るまで前みたいに頻繁に来るのは控えてほしいと申し訳なさそうに言われた。

 

 シグナムがはやてちゃんを心配しての事だから俺は二つ返事で了承し、いきなり全く会わなくなるのも逆に気を使わせてしまうので1週間に一度くらいのペースで会いに行っていた。

 貧血とはいえ心配になるのも分かるがシグナムの表情からただ事じゃないと俺は思ったが心配するなと言ったシグナムの言葉を信じて追求する事はしなかった。

 

「そろそろなのはちゃん達を紹介しようと思ってたんだがなぁ」

 

 それもはやてちゃんがちゃんと元気になるまでお預けだな。残念だが仕方ない。が、残念な事ばかりではなく嬉しい知らせもある。

 

「そういえば近々フェイトちゃんが来るんだよなぁ」

 

 感慨深いとはこの事だ。その連絡はビデオメールで知らされた。俺もなのはちゃんは勿論、アリサちゃんとすずかちゃんも大騒ぎになった。正確な日程は分からないが楽しみで仕方のない状態だ。

 

 さてと、家帰ったら準備して道場に行くか。次の目標に向けてまだまだ頑張らないといけないからな。

 と、家に到着したところで気づく。母さんが帰ってきている。

 

「ただいまママン、今日は管理局行かなくていいの?」

 

 台所で料理をしているママンの背中にそう声を掛けると。俺が帰ってきた事に気付いてなかったようで少々驚くような反応を見せた。

 

「お、おかえり慎司。今日は練習でしょ?ご飯用意して待ってるから、慎司が帰って来る頃にはお父さんも戻ってきてると思うわ」

「お、久しぶりに全員でご飯食えるね」

 

 ここの所帰ってこれる頻度はますます減っていたから2人の体の心配をしていた俺。母さんは少し疲れた顔をしているがそこまで深刻な程では無さそうで少し安心した。

 

「まだまだ時間かかりそう?その大事な案件は」

 

 俺のその他意のない質問に母さんは苦笑を浮かべながら「そうね」と短く答えた。

 

「ここの所母親らしい事出来なくてごめんね、慎司」

「ん?いやいや、大事な案件なんでしょ?それなら俺は応援したいからさ気にしないでよ」

 

 当初、これから帰りが遅くなって一緒に過ごす事が出来なくなると告げた時のパパンとママンの顔を思い出す。2人とも俺に申し訳なさそうな表情をしつつも瞳に宿るその目にはいつもとは違う覚悟のような物を感じた。少なからず因縁がある物なんだろう。

 なら、それに全力を向けてほしいと思った事は本心だ。全く寂しくないと言えば嘘になるが本当の子供ってわけじゃない俺には問題ない。それに

 

「一緒に晩ご飯食って過ごしてくれる新しい友達達も出来たからさ。心配しないでよ」

 

 今は、会う回数を意図的に減らしてはいるけど。

 

「この間言ってた子ね?色々落ち着いたら家に招いて頂戴。私もお父さんもお礼をしたいから」

「勿論、んじゃ俺ちょっと練習行ってくる!」

 

 すぐに支度を済ませて家を出る。

 

「車に気をつけなさいよー」

 

 毎度毎度トラウマ掘り起こすのやめて欲しいなぁ母さん。知らないから仕方ないけどさ。

 

 

 

 

 

 その日俺は練習が終わった後真っ直ぐ帰宅し、久しぶりの一家団欒に花を咲かせた。父さんも母さんも楽しそうにしてくれていた。明日にはまた忙しい日々に2人は戻ってしまうけど今はただ休んでほしい。

 そしてまた頑張ってほしい、頑張れ。

 

「あ、帰ってきた時に書類が散乱してたから適当に纏めて部屋に置いておいたから明日忘れないでね」

「あらそうだった?ありがとう」

「慎司、書類読めるのか?」

「まさか、日本語じゃないから無理だよ。悪いけど順番は適当だから勘弁してね」

 

 他愛もない会話一つ一つを楽しんだ。その夜、俺の預かり知らぬ所で一つの事件が発生していた事が分かったのはそのすぐ後の事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クロノっ!」

 

 指定された場所に赴くとクロノが既に俺を待っていた。つい数十分前の事、突然携帯にクロノから連絡が入った。フェイトちゃんの事についてかなと思い、クロノからの久しぶりの連絡に胸を躍らせつつ電話を取った俺はクロノが発した言葉に耳を疑った。

 

『高町なのはが何者かに襲われて今管理局の施設で治療を受けている』

 

 それから先の言葉は耳に入らなかった。とにかく管理局の施設に転移をさせてやるから指定した場所に来いと言われて無我夢中で走って来た所だった。

 少し前にもはやてちゃんの事でこうやって走った事を思い出す。こんな立て続けに嫌な事が起こると何かの予兆のようで怖かった。

 

「慎司!こっちだ、すぐに転移する」

 

 再会を喜ぶ暇もなくクロノに促されその肩に触れる。瞬間目の前の景色が一瞬で変わり見た事のない場所に移動した。ここは?いや、今はそんな事はどうでもいい。

 

「クロノ、なのはちゃんは?なのはちゃんは無事なのか!?」

「慌てるな、電話でも話しただろう?怪我自体は軽い物で命に別状はない」

 

 そ、そうだったのか。焦って話が全く入ってこなかったらつい聞き逃してしまっていた。自身を落ち着かせるために一度深呼吸をして冷静になる。

 

「そうか……けど、なんだってそんな事に?」

 

 クロノから話を聞くとなのはちゃんを襲ったのは魔導師だったという。海鳴の町で複数人の魔導師の襲撃に遭い、怪我は軽いものの魔力の源であるリンカーコアから無理やり魔力を奪われたと語る。

 ふむ、どこのどいつらかは知らんけど命まで奪わなかったってことは元々魔力を奪うのが目的だったのだろうか?

 

「詳しくはまた後で話す。君をここに呼んだのは高町なのはの事もそうだが別件の用事もあるんだ」

「別件?」

 

 魔法関係で俺に用事が?

 

「それも後で話す。今は顔を見せてやったらどうだ?高町なのははこの先の奥の部屋で休んでいる」

「そ、そうか。分かったよ」

 

 その別件とやらが気になるがとりあえずはなのはちゃんだ。クロノに促され言われた部屋に押し入る。

 

「なのはちゃん!」

 

 部屋に入るとびっくりした様子で俺を見つめるなのはちゃん。パッと見た所目立つ外傷などは見つからず軽傷という話は本当のようで安心した。

 

「し、慎司くん?なんで……」

「クロノに呼ばれてな、それより……体は大丈夫か?」

「う、うん。怪我は大した事ないから大丈夫だよ」

 

 そう語るなのはちゃんの顔は少し優れない。そりゃそうだろう、いきなり襲撃されたと言うんだ。明るい顔をしろと言う方がおかしい。

 

「そ、そうだ慎司君、ここにフェ……」

 

 なのはちゃんが何か言いかけた所で病室の扉が開く。反射的にそちらを向くと俺はそこに立つ予想外の人物に驚く。

 

「あっ………」

 

 その人物も俺を見て驚いた様子で立ち尽くす。忘れるわけもない、ずっと再会を望んでいた。聞きたい事は沢山あった。

 

 元気だったか?調子はどうだ?そんな言葉ご浮かんで口にしようとするがうまく出来ない。その金色の髪は相変わらず綺麗に輝いていて、黒から桃色のリボンに変えた姿はよく似合っていた。

 

「…………フェイトちゃん」

「…………?」

「その……」

「……………うん」

「…………太った?」

「……………」

 

 一応補足して言うと別に見た感じは太ってはいない。何を言えばいいか分からずとにかく何か言おうと思って飛び出た言葉がそれだっただけである。

 

 それだけである。

 

「…………慎司」

「うん……」

「………久しぶりだね」

「うん………うん?」

 

 あれ?結構酷い事言っちゃったけどスルーしてるのかな?スルーかな?

 

「会えてすごく嬉しいよ」

「太った?」

「…………」

 

 思ってないよ?太ったなんて思ってないよ?俺の失言だしごめんなさい何だけど何だろう、見事なスルーだったからあえてもう一度地雷を踏みに行きたくなってる。

 なのはちゃんも絶句である。大口開けてとっても絶句である。

 

「慎司」

「はい」

 

 おっと、声にドスがかかってるぞー。

 

「………太ってないもん」

 

 かと思いきや今度は若干涙目でそう抗議してくるフェイトちゃん。一気に罪悪感が俺を支配する。

 

「ごめーん!?フェイトちゃんごめん!冗談だから!本心は全然そんな事思ってないからぁ!!」

「太って……ないもんっ!!」

「そうだね、太ってないよっ!全然太ってなんかない!ちょっとなのはちゃんと見間違えちゃっただけだからっ」

「ちょっと慎司君っ!?どう言う意味かなぁ!!」

「太ってないもんっ!!」

「再会して早々カオスだねぇ!!」

「「君のせいでしょ!!」」

 

 フェイトちゃんとなのはちゃんは久しぶりに会っても息ぴったりに俺にツッコミをしてくれましたとさ。フェイトちゃんも今後ツッコミキャラに育成するの意外とアリなのでは?

 

 

 

 

 

 

 

 

「慎司、私ね……すごくね、すごーく会えるの楽しみにしてたの」

「うん、俺もだよ」

「でもね?会って一言目にあんな事言われるとね?……何だろう、叩いていいかな?」

「いいよ」

「え、いいの?」

「うん、なのはちゃんをね」

「なんでよ!」

 

 なのはちゃんに怒られて正座中の俺、フェイトちゃんよりもプンスカとしているなのはちゃんにタジタジしつつも本当に怪我は大した事無さそうでよかった。

 

「はぁ、でも慎司も変わらず元気そうで良かった。また会えて嬉しい」

 

 ため息をこぼしつつそう笑みを浮かべて言ってくれるフェイトちゃん。まぁ、開始早々てんやわんやになっちゃったけど……ちゃんと言わないとな。今なら冷静になって変なこと言う心配もない。

 

「俺も会えて嬉しいよ、フェイトちゃん」

 

 互いに笑みを浮かべて破顔する。釣られてなのはちゃんも笑顔に、俺たち少しの間離れ離れになっていた時間を埋めるように他愛のない話に花を咲かせた。

 襲撃者の存在とか、フェイトちゃんの手首に巻かれていた包帯なんかをあえて無視して。

 

 

 

 

 

 

 一旦病室を退室した俺、今は2人で仲良くお話ししているだろう。病室の前で待っていたクロノに声をかける。

 

「で?色々説明してくれるんだろうな?」

 

 今回の襲撃の事と俺が呼ばれた別件についての事だ。

 

「ああ、歩きながら話そう」

 

 そう言うクロノの隣を歩きながら俺は詳細を聞く。まず襲撃の件だが実は最近魔導師に対しての連続襲撃事件が発生しているらしい、その一端ではないかと管理局は見ているようだ。

 

 襲撃の目的は恐らくリンカーコアからの魔力蒐集、なのはちゃんも含めて被害者は命は取られていないものの皆んな魔力を奪われている。なのはちゃんもしばらく回復するまで魔法は使えないとの事。

 

 なのはちゃんの襲撃の時に駆けつけてくれたのがフェイトちゃんやまだ会っていないアルフとユーノだったと言う。フェイトちゃんの包帯の理由はそれか………。色々もっと詳しい情報を求めたがクロノは

 

「今回の件は君は無関係だ。前回と違っておいそれと情報は言えない」

 

 と渋られる。仕方ないか、前回はフェイトちゃんと顔見知りだった事と直接巻き込まれた事……それらが重なってクロノ達との同伴を許されたのだ。リンガーコアのない俺に協力できる事はない。それは仕方ないと割り切る。だが

 

「それなら、何でクロノは俺をここに呼んだんだ?」

 

 今更だが、ここは前みたいなアースラではなくもっと凄い大きな施設だ。アースラは戦艦だったがここは完全にそれらを管理する大きな基地と思われる場所。時空管理局本局と呼ばれる場所だ。そんな御大層な所に俺を呼ぶ用事が思いつかない。

 

「ああ、これから慎司にはなのはとフェイトと一緒に面接を受けて欲しい」

「面接?」

「そんな構えなくていい、形式上面接と呼んでいるがそんな厳かなものにはならないと思う」

 

 何で俺が?とクロノに問うと理由は2つだった。一つ、この面接の目的はフェイトちゃんが今後自由に生活するための面接だそう。面接官はフェイトちゃんの保護監察官なのだ、そしてあの事件に深く関わりつつ事情を知っている友人として俺となのはちゃんは元々呼ばれる予定だったそう。

 

 もう一つは地球人として魔法という神秘を知っている俺の人柄を確認すべきという声があったらしくそのついでだ。確かに魔法の存在は知っているが直接管理局に協力してるわけでもなければそもそも魔導師ではない俺の立場は微妙なものだ。

 

 形上、面接はすべきだとクロノは語る。

 

「ちなみにどんな人なんだ?その監察官は」

「安心しろ、僕もお世話になった人でとても優しいお方だ。心配はいらない、それに……君の両親とも知り合いでもある」

 

 え、そうなの?そんな事突然聞かされたら逆に緊張するんだけど。俺のそんな戸惑いをよそにクロノの歩は変わらない速さで進んでいった。

 

 

 

 

 

 面接までまだ時間があるとの事で先にこの施設にいるアルフとユーノに会うかとクロノに問われ俺は勿論と返答した。クロノに案内された部屋に通ると何かしら作業をしているユーノと缶ジュースを片手退屈そうにしているアルフが。

 2人とも獣姿ではなく人間の状態だった。

 

「よっ、久しぶりだな」

 

 開口一番そう告げると2人は驚いた様子で俺の名前を呼ぶ。

 

「久しぶりだねぇ、元気だったかい?」

「そっちこそ」

 

 アルフと拳を突き合い。

 

「ユーノも、また会えて嬉しいぜ」

「うん、僕もだよ」

 

 ユーノとは肩を組み合う。フェイトちゃんと続いての再会に喜びを感じながら俺達は言葉を交わす。話は尽きないがあんまりゆっくりしていられる訳でもなく少し話しているといつの間にか退出していてたクロノがなのはちゃんとフェイトちゃんを連れてきた。

 

 なのはちゃんは既に襲撃された時にアルフとユーノとも会っていたようだがここでしっかり再会を互いに噛みしめ合っていた。

 

「慎司、なのは、フェイト……そろそろ…」

 

 クロノの言葉にドキッとしつつ俺は誰にも気付かれぬよう軽い深呼吸をする。クロノは形式上の者だと言っていたが俺の発言や行動でフェイトちゃんの今後が関わると思うと緊張するなと思う方が無理だ。

 

 構え過ぎるのも良くないが、軽く考えるのも頂けないだろう。俺達3人が頷くとクロノにここから少し離れた奥の応接室らしき所に連れ行かれる。クロノが先導してノックをしてから扉を開ける。

 

「失礼します」

「クロノ、久しぶりだな」

「ご無沙汰しています」

 

 初老の感じの良い男性がこちらに振り向いて人の良さそうな笑顔を浮かべる。

 

「初めましてだね、フェイト君、なのは君」

 

 2人を見てそう言う男性は今度は俺の方へ向くと

 

「……大きなったな。君は覚えていないだろうが久しぶりだね、慎司君」

 

 優しそうな雰囲気を醸し出しつつどこか大物さを感じる……実際大物らしいこの人が時空管理局顧問官、ギル・グレアムさんか。ああやばい緊張する。

 

 どうしよう……どうしよう、失礼のないように!失礼のないようにしないとっ!

 

「ごめんなさいっ!記憶にございませぇぇん!!」

 

 グレアムさんとのファーストコンタクトはジャンピング土下座から始まったとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 ようやく原作での1話です。余談ですが柔道には座礼という正座状態で頭を下げる礼法がありまして、まぁぶっちゃけ見た目は土下座に近い者ですがそんな事もあって慎司君の土下座のフォームはまぁ綺麗なフォームです
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