転生しても楽しむ心は忘れずに   作:オカケン

27 / 75
日常との狭間で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっはー!慎ちゃんだよー!よろぴく!」

「吐きそう」

「まさかのすずかちゃんからの毒舌ぅ!」

「毎度毎度朝からうるさいわねっチンパンジー!」

「アリサちゃんも辛辣ぅ!」

 

 とある日、荒瀬一家の誓いから翌日。学校の登校中だ。両親とは一度詰めた話をして今後の方針を相談したがとりあえず目下にすべき事は魔力蒐集をさせずどうはやてちゃんを救うか、その方法を模索するため一度時間をくれと両親からの提案だった。その方面のアプローチは今まで考えてもいなかったらしく、とりあえず何とか見つけるまで待てと言われてしまった。

 その間、俺は事件の事を資料で調べる許可は降りたが条件としてちゃんと普段の生活をしっかりと両立させる事を約束させられた。この間みたいに身も心もボロボロにして書類と睨めっこなんて論外だとそこは説教を受けたから仕方ない。はやてちゃんの体を考えると焦る気持ちが芽生えるが俺があたふたしても出来る事はない。

 

 今は父さんと母さんを信じて俺は俺の出来る事をしなくては。そしてちゃんといつもの日常を楽しむ事も俺がすべき事で出来る事だり

 

「し、慎司君?体の方は大丈夫なの?」

 

 俺の様子を伺いながらなのはちゃんがそう問いかけてくる。一応昨日のうちに学校への無断欠席については学校側にもそして心配でメールを送ってくれていたなのはちゃん達にも体調不良と色々とタイミングが悪くて連絡出来なかったと上手く言い訳はしていた。

 

「ああ、大丈夫だよ。数日休んだおかげで元気になったぜぇ」

「珍しいわよね、あんたが体調崩すなんて」

「まぁなー、俺がいなくて寂しかったかぁアリサちゃん?」

「はぁ?久しぶりに静かな学校生活過ごせて幸せだったわよ」

「とか言ってるけどアリサちゃん、慎司君の事ちょっと心配してたんだよ?」

「ちょっとすずか!」

 

 照れ臭そうに顔を赤くするアリサちゃん。ほーん、やっぱり可愛い所あるなアリサちゃん。

 

「………何ニヤニヤしてるのよ」

「べっつにー?」

「腹立つ〜」

 

 俺が病み上がりだと思ってるからか口ではそう言うがいつもみたいに手を出してこないあたりやっぱり優しい子だなぁアリサちゃん。将来の旦那さんにはきっちり俺が面接してあげないと。

 

「そういえば、フェイトちゃん。どうだ?もうクラスには馴染めたか?」

「うん、皆んな仲良くしてくれてるから。楽しく過ごせてるよ、慎司」

「そっかそっか。んなら、そろそろクラスの皆んなに披露してもいいんじゃないか?」

「何を?」

「クウガの変身ポーズ」

「や、やめてよもう!恥ずかしかったんだから……」

「恥ずかしいってこれか?」

 

 言いながら携帯でその動画を再生する。勿論大音量で、辺りにフェイトちゃんの『変身っ!」の声が響き渡る。ちょっと言い方を主人公に寄せてるのは慎司的にポイント高い。

 

「あー!あー!あー!」

「うるさいなぁフェイトちゃん」

「慎司がうるさくさせてるんだよっ」

「学校中にばら撒いていい?」

「駄目だよ!?」

「どうしても?」

「どうしてもだよっ」

 

 そんなこんなで楽しく登校する。後ろでなのはちゃんが俺を心配するような目をして見ていたのは気付くことは出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

………………………。

 

 

 

 教室につけばクラスメイト達が元気だったかと各々声を掛けてくれた。そういえば最初はなのはちゃんとアリサちゃんとすずかちゃんしか友達出来なかったけどこの3人のおかげで俺は自分の実年齢を気にして距離を置くような態度をとっていた事をあらためる事が出来たんだよな。

 おかげでクラスメイトの友達なんかも沢山できた。30歳には退屈であろう小学校のんて場所も楽しく過ごせていた。そんな当たり前の日常を、はやてちゃんにも憂いなく過ごしてほしい。

 

「それじゃあこの問題を……荒瀬君、答えれる?」

 

 ん?俺か。いつの間にか授業が始まっていた。ちょっと考え事でボーッとし過ぎたな、気をつけないと。えっと黒板には………算数の計算か。余裕余裕。

 

「216です。ちなみに先生の誕生日だ、皆んなテストに出るから覚えとけよー」

「出ません、そして正解です。あと誕生日なのも当たりです………何で知ってるの?」

「いや、適当に言いました」

「………次からは答えだけ言うように」

「保証は出来ませんけど、分かりました」

「分かってないわね」

「プレゼントは何がいいですか?」

「気持ちだけ受け取っておきます」

 

 座りなさいと呆れた様子の先生。ぶっちゃけ俺のこんな応対慣れたもんだから先生も楽しんでる節あるよな、口には出さないけど。

 それにしても相変わらず授業は退屈だ。なにせ小学生の問題だからな、俺も大学まで通ってたし流石にもう忘れたなんて事態には陥ってないから基本的に授業は聞いてない。あと目をつけられないように騒ぎすぎないようにもしてる。とりあえず、せっかく出来た空き時間は全部今後について考える時間にしよう。

 こっそり鞄から母さんが日本語訳をしてくれた書類を取り出して教材で上手く隠しながら読み進める。とにかく俺も少しでも役に立てるように基本的な情報は自分で抑えておきたいからな。

 

 

 

 

 

 

 

…………………。

 

 

 

 

 所変わって時間は昼休みに。屋上に5人で弁当を囲んで舌鼓を打つ。うむ、上手いなぁ。忙しくても学校の弁当はいつも作っておいてくれてるママンには頭が上がらない。感謝感謝なり。

 

「え?明日音楽のテストなのか?」

「そうだよ、昨日先生が言ってた……って慎司君お休みだったもんね」

 

 しょうがないねと苦笑するすずかちゃん。まじかー、音楽の歌のテストかー、歌うのは嫌いじゃないけど得意じゃないんだよなぁ。

 

「課題曲は?」

「ここの校歌だよ」

「あ〜、確かサビが『燃える闘魂〜いざ進めー!我らが地上を支配する〜!聖祥小学校〜!』って感じだったけ?」

「えっ、そうなの!?」

「フェイト、慎司の戯言よ」

 

 フェイトちゃん毎回反応してくれるからいいねぇ。もう他の3人は全然反応鈍くなっちゃってるから心が洗われるよ。でも、待てよ?フェイトちゃん歌のテスト平気なのか?転入したばっかだろ、校歌なんて歌った事ないだろうに。

 

「うん、だから少しでも練習しないとっ」

 

 フェイトちゃんは張り切ってはいるが、よしならここは人肌脱ごう。

 

「ならば俺が今お手本を見せてやろう……んんっ!」

「あんた別に歌得意じゃないでしょ」

 

 アリサちゃんの辛辣な言葉は咳払いしつつ流して

 

「『ファーーーーwwアリサちゃんwwホッペにご飯粒ついてるーーwww』」

「う、嘘!?」

「『嘘だよw引っかかったww引っかかったww』」

「ぶっ殺す!」

「『ちょっwアリサちゃんwwマジギレは勘弁w』」

 

 ちょっ、ちょっとした冗談じゃねぇかそんな怒んなよ!あ、やべ捕まった。ぐへっ!?まて、お前昼飯直後に腹パンはまずい、出るから!色々出るからぁ!!

 

「もはや歌じゃない事にはツッコまないんだね、アリサちゃん」

 

 すずかちゃん……そんな解説いいから、アリサちゃんを止めてぇ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………。

 

 

 

 

 

 放課後、帰り道。皆んなと帰るといつも比較的近所のなのはちゃんとは最終的に2人になっていて今がその状況なのだが、何だかいつもよりなのはちゃんの口数が若干少ない。というか学校でも少々考え事をしていて口数が少なかったイメージ。

 悩みとかそんな感じでは無さそうだからあんまし触れなかったけど。

 

「ねぇ、慎司君」

 

 何て考えているとなのはちゃんの方から声を掛けてきた。

 

「んー?どった?」

「………無理してない?」

 

 軽快に返事はしたがなのはちゃんからの返答は重苦しい口調だった。………なるほど、考え事は俺についてだったか……。

 

「どうしてそう思った?」

「分かんないけど……何となく…かな?」

「直感かよ、流石なのはちゃん。俺の取扱説明書役だ」

「……………」

 

 とちゃらけるがなのはちゃんはちゃんと返事を聞かせろと目で訴えてくる。…………分かったよ。

 

「無理はしてない……けど、明るく振る舞おうって意識はしてた」

 

 正直に、告白した。両親の協力を得たとしてもショックな事実を知ってからまだ数日。流石に綺麗さっぱりに切り替えれてはない。だから、学校を楽しもうって。少しでも気持ちを明るくさせようと考えていた事は事実だ。

 

「ちょっとショックな事があってさ、最初はみっともなく情けない気持ちでいっぱいになってたんだ。けど今は俺は前を向いてる、それに向き合って頑張ろうって思えてる。だから、そんな自分を発破する意味でも元気にしようとは思った。けどそれだけだ、無理とかじゃなくて前に進む為の行動だよ」

「……そっか。私の余計なお節介だったね」

「んにゃ、心配してくれてありがとな」

 

 その俺の言葉になのはちゃんは頷く。だが、まだ聞きたい事があるようでそれを隠す事なく口に出してきた。

 

「……私に出来る事はあるかな?」

「…………………」

 

 返答に少し困った。なのはちゃんに例の件を話す事は考えたがそれは両親に反対された。いわば俺の望みは管理局側と相対する場合があり、要らぬ邪魔を受けるからと。せめて話すのは解決策を手に入れてからだと聞かされた。

 なのはちゃんが俺の話を風潮するとは思ってないけどいつどこで誰に聞かれているとは限らない。ましてや魔法なんて未知数なものが存在するんだ。自分の想定以上に警戒するべきだ。だから、俺の正直な気持ちを述べた。

 

「あるよ。なのはちゃんに出来る事、頼りたい事はある。けど、今じゃない」

 

 そう、今じゃない。勘違いしないで欲しい。俺は誰かを信用してないわけでも信頼できない訳でもない。なのはちゃんが頼りになる子だと言うのは俺は出会った頃から分かっている。クロノだって、アースラの方々だって話して頼りたいくらいだ。だが、俺のこの情報。闇の書の主と襲撃者の情報は闇の書を目の敵してる連中に漏れる事は防ぎたい。

 過去に何度も顕現して災害をもたらした闇の書、それを憎悪の対象にしている人は少なくないだろう。そしてそんな人に俺の情報が渡ったら……考えたくもない想像が膨らむ。だからこそ、完全な解決案が出来るまで徹底的に俺達は俺達で行動する。荒瀬一家が踏ん張らなきゃいけないんだ。

 

「その時になったらなのはちゃん、俺を助けてくれ。俺は君を…頼りしてるから」

 

 なのはちゃんは嬉しそうに「勿論だよっ」と照れ臭そうに顔を赤くしながら言ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………。

 

 

 

 

 

 帰宅後すぐに道場に赴き練習をこなした後、道中で外食しつつ家に帰宅。汗をシャワーで流した後俺はすぐに資料と睨めっこを始める。両親からの連絡はまだ無い。何とかして方法を見つけるとは言ってくれていたが流石に1日ですぐというわけにもいかないか。そんな簡単に見つかるなら闇の書なんてとっくに管理局がどうにかしてるだろうし。

 

「……ふぅー」

 

 落ち着け、あまり時間がないかもしれないとは言え俺がソワソワしたところで仕方がない。とにかく俺は少しでも自分で知識は蓄えろ。分かった事はかなり増えた、おかげ闇の書とその関連の事件についての話にはついていける。

 それを踏まえた上で俺に何が出来るかを考える、といっても俺がこなせる重要な役割は一つ。八神家側への接触、つまりは説得だ。俺が、俺だけがあいつらと知り合って長い。こんな言い方は嫌だが説得者としては一番条件が合うのは俺だ。本当なら俺は今すぐみんなの所に赴いて説得しに行きたい。

 

 俺を信じてくれと、俺達にチャンスをくれと。しかしシグナム達の行動原理はあくまではやてちゃんだ。はやてちゃんの命が掛かっている以上、そんな話は聞く耳持たない。一度説得に失敗したら二度とチャンスは訪れないだろう。寧ろ会うことすら出来なくなる。それは避けたい。やるなら確実に相手を説得できる材料を手に入れてからだ。それを両親が見つけてくれるかどうか、そして見つけられたところでそれを実行できるかどうかだ。

 一つ、方法としてはやてちゃんに接触して全てを話すという選択肢もある。恐らくはやてちゃんは闇の書とかシグナム達がしている蒐集は認識していないだろう、しているならはやてちゃんの事だ……自分がどうなってもいいからと皆んなを止めるだろうから。だからはやてちゃんに事情を話すのもありだ。

 しかし、その行為は反則とも取れる。何も知らないはやてちゃんに魔法についてから全て説明するのは危険な行為だ。何よりシグナム達の反感は必ず買うだろう。はやてちゃんの命を救うのが最優先だが蒐集そのものを止めなければ意味がない。シグナム達とはやてちゃん、両方を納得する形になるよう俺は行動しなければいけない。

 はやてちゃんが納得してシグナム達を止めるようにいってくれてもそれにシグナム達が従うとは限らない。自分達が嫌われてもはやてちゃんを救う道になると思う事を選択するだろう。

 

「となると、1番の肝はやっぱりシグナム達だ……」

 

 説得する上であいつらはどう言う思惑で動いてるのかを知りたい。勿論はやてちゃんを助ける為なのは分かってるが闇の書は本来、完成させてもさせなくても主の命を奪う。それを分かってて、完成させて一縷の望みにかけているのか、単純に完成させないとはやてちゃんから命を奪う事だけは分かっていて完成させた後の事を分かってないのか。このどちらかだ。シグナム達がどう言う存在かと言うのは資料を穴が開くほど見た俺には既に分かっている。

 シグナム達は闇の書が有する守護騎士プログラム、ヴォルケンリッターと呼ばれる存在。闇の書が生み出している主人を守るための防衛機構、つまるところ少し違うが使い魔のような者だろう。闇の書が生み出した存在なら闇の書のそのふざけた機能も知ってるはずだと思うんだが………どうにもきな臭い。完成させても死ぬと分かってて他に望みがないからと完成を急ぐような真似をするとは思えない。そこら辺はっきりできればいいのだが。

 

「うーん、とりあえず現状じゃ出来る事は限られるよなぁ……」

 

 そもそも出来ることが少ない俺には進展がなければ本当にすべき事を見つけれない。無意味かもしれないがとにかく現状分かる事でも見直しておこう。出来ることをとことんやるって決めたのだから…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………………。

 

 

 

 

 

「やはり、この方法しかないよ。ユリカ」

 

 管理局本局で2人だけに与えられた特別な作業室。そこでいつもこもって妻と共に事件を追っている荒瀬信治郎は妻のユリカにそう伝える。

 

「………………」

「それが君の夢だったのは分かるよ、だけど選ぶのは慎司だ。そして慎司はその方法を求めてる。俺達はちゃんとこの事を慎司に伝えるべきだ」

「私の夢なんてどうだっていいの!」

 

 ユリカの叫びが部屋にこだまする。ユリカがこのように取り乱すのは珍しく信治郎は面食らうがすぐに自分を取り戻す。しかし、ユリカの慟哭という名の叫びは止まらない。

 

「私の夢なんかより慎司の安全の方が大切なのよ!確かに私が考える上で慎司の望みを叶える為の一番可能性が高い方法はこれしかないわ、けど!失敗すれば慎司がどうなるか分からないわ!それに、慎司にそれをさせる事自体が危険なのに!この方法だって決して分の良い方法じゃない!」

 

 ユリカの言葉をしっかりと胸に留めるように信治郎は聞いた。そして、色々と考えた上で信治郎は

 

「そうだ、最優先は慎司の安全だ。だけど、慎司は望んでるんだ。助ける事を、救う事を!その想いに俺達は答えるべきだ」

「それで慎司が危険な目に合うくらないなら私はっ」

「慎司は俺やユリカが思ってるほどヤワじゃない。あいつならやり遂げる」

「私だってそう信じたい!でも、命には変えられないのよ………」

 

 主張は平行線、拉致が開かないと2人は感じていた。しかし、互いに譲る事は出来なかった。

 

「慎司は絶対にこれを実行する。その為に自分を擦り減らしてでも努力する、それは……素晴らしい事だけど……心配だってするわよ……」

「そうだな、俺もこうは言ってるけど本心じゃ慎司には今回の事は関わって欲しくなかったし今だって辞めてほしいと思ってる……けど」

 

 けど、そう。信治郎もユリカも分かっている。他に方法はなくそして例え慎司に方法は見つからなかったと伝えて何もさせなかったらきっと

 

「あいつはこの先の人生を全て不幸な感情を抱いたまま歩むだろう。それは……悲しいし死んだも同然だ」

 

 既に慎司は根が深い所まで関わった、そして救うと決意した。その時点でもう手遅れ、慎司をこの先幸せな人生を歩ませるには慎司に委ねるしかない。選択させ、行動させるしかない。危険な事でも、大変な事でも、慎司が決めて歩ませなければいけないのだ。

 

「それに………いい加減これも慎司に返さないと」

 

 2人でデスクの中央に大切に保管されてるガラスケースを見る。この作業室でいつも目にし、この中身をいつか慎司に託す為に妻のユリカは局長としての立場を捨てた。

 それは管理局の為の行動ではなく自分の達の事であったからそれにかかりきりになる為にケジメとして管理局を辞めたのだ。タイミング悪く闇の書が再び顕現した事で管理局でまた行動してはいたが。それでもユリカにとってそれはとても大切な事で夢だった。

 

「ユリカは頑張ったさ、慎司も分かってくれる。そして慎司は強い、きっと良いように進んでくれるさ、なんせ俺の息子でユリカの息子だからな」

「………………そうね」

 

 ユリカの表情は笑っていたが、瞳からは少なくない涙を流していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………。

 

 

 

 

 

 

「なのはちゃんのスケベ!!変態!」

「誤解を招く事を大声で言わないでよ!!」

 

 翌日、学校の休み時間。顔を赤くしてそう言うなのはちゃんを見て満足げにする俺。ふむふむ、そんな反応も新鮮で楽しいぞよ。

 

「まーた慎司が訳のわからない事言ってる」

「いつもの事だよアリサちゃん」

 

 もうこの2人の反応はやさぐれている事が多いのは悲しい。すずかちゃんもアリサちゃんももうちょっと食いついてくれてもいいじゃない。

 

「だ、駄目だよ慎司。なのはが困ってるから……」

 

 オロオロしながらそう言うフェイトちゃんを俺は真っ直ぐに見据える。

 

「どうしたの?」

 

 可愛く首を傾げるフェイトちゃんに俺は叫んだ。

 

「フェイトちゃんっ!!君は異世界転生に興味はあるかい!?」

「え?な、無いけど」

「今なら何と!蜘蛛、サソリ、ゴブリンから選べるよ!」

「せめて人間がいいな」

「インゲン豆?食材になりたいとかレベル高いなフェイトちゃん………」

「もう、疲れたよ慎司………」

 

 やさぐれフェイトちゃんにならないで!これ以上反応鈍くされると俺のキャラ的に困るから!

 

「慎司君!私スケベでも変態でもないよ!」

「うるさいぞ山本!」

「誰っ!?私高町なのはだよ!知ってるでしょ?」

「来世は勇者の敵になるゴブリンの魔王になるって噂の高町なのはちゃん?」

「私転生したら魔王になるの!?」

「今世でもなれるべ、なのはちゃんなら」

「どう言う意味かなぁ!!」

 

 転生しても魔王だった件、アニメでありそうだ。なのはちゃんにポカポカされながらも俺もほっぺをびろーんとする。ついでにフェイトちゃんのほっぺもびろーんとしてみた。

 

「あっ、えへへ………」

 

 なんか照れて喜んでる。お前もドMだったのか。その反応まるで俺に惚れてるみたいじゃないか、やめろよ照れるぜ……。でも俺ロリコンじゃないのよ。すまんな

 

「フェイトちゃん、俺と結婚するか?」

「えっ?急に?うーん……なんかやだ」

「あ、冗談で言っただけなのに泣きそう……」

 

 凹む俺になのはちゃんはザマァみろと言いたげに俺にポカポカを続けてくる。なんか、癒された事は内緒にしよう。あと八つ当たりでアリサちゃんとすずかちゃんのほっぺもびろーんっと

 

「何すんのよっ!」

 

 痛っ!?普通に殴られた!そしてすずかちゃんに至ってはなんか一瞬残像を残すほどのスピードで躱されたんだけど!?何その反射神経!前から思ってたけどあなた全体的に運動能力えぐいな!

 

「あんた、人のほっぺを引っ張る癖前からなの?」

 

 アリサちゃんに呆れ顔でそう問われると何となく俺もいつからだったかな?と思案する。うーん……とうねりつつ手持ち無沙汰になのはちゃんのほっぺをびろーんとした所で思い出す。

 

「そうだ、なのはちゃんと友達になってからだ。肌スベスベだったから楽しくてついやっちゃうんだよね」

「え?そ、そうだったんだ……」

 

 スベスベと言われたからかちょっと照れ気味に喜ぶなのはちゃん。

 

「今じゃ見る影もないけど」

「そんな事ないもん!?」

 

 今度は泣きながらポカポカしてきた。しまいには「ほら引っ張ってみて確かめてみて!今もきっとスベスベだからぁ!」と騒ぎ始める。いや、冗談だから……ごめんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 てな感じで学校生活も楽しみつつ考える事、やるべき事は可能な限り続けていた。どうしても思考に意識を手放して心配されたりもしたが何とか他の子には怪しまれずに過ごせている思う。柔道の練習も欠かせない、しっかりとこれまで通りの事をして生活する事を条件で親の協力を得られたのだ。しかし、やはり普段の生活をしていると焦燥感とかそういうのが俺を襲う事が多々あった。

 

 給食を食べてるときや今現在のように家で一人で夕飯を済ませた時なんかは八神家でのご飯を思い出す。ご飯は勿論美味しく、八神家独特のあの雰囲気を味わ得得てない事に寂しさと悲しさを積らせる。

 

「会いてぇな………」

 

 あれから八神家の面々から連絡は来てない。事情を知らない筈のはやてちゃんからも来てないとなるとシグナムあたりが上手く説明したのだろうか。またあのひとときを取り戻す事は出来るのだろうか?

 山宮太郎としての人生は紆余曲折あっても平凡な人生だったのに荒瀬慎司としての人生は波瀾万丈過ぎる。けど、幸せな事も多い。だから頑張ろう。そう改めて決意を固めると家の玄関から扉の音が。来客じゃないな、両親が帰ってきたようだ。

 

「おかえり」

 

 出迎えると二人は少しお疲れ気味のようだった。片手に自分達の分なのかコンビニ弁当らしきものが入った袋を提げていた。時間もとっくに夕時は過ぎている。

 俺の心配の言葉に2人はちょっと時間掛かっただけだから平気だよと俺に告げてきたそしてそれよりもと前置きを置いて

 

「慎司、方法を見つけてきた」

「えっ……それって」

「お前の友達を救う方法だ」

 

 家の壁時計がちょうど動いてカチリと音を鳴らした。時は来た……と言う表現は大袈裟だが待ち望んでいた言葉だった。そして、その方法を俺は知らされる。事細やかに、そして俺のすべき事が見つかった。

 はやてちゃんをシグナムをヴィータちゃんをシャマルをザフィーラを救うために俺がすべき事を。

 

 

 

 

 命を、俺の全てを賭してまでしなくてはならない事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 早朝の学校、教室。高町なのははキョロキョロと教室中を見渡していた。朝、いつものように合流する筈の荒瀬慎司が来なかったからだ。

 昨日の夜に明日は先に学校に行っててくれと連絡があったのだ。何か学校に用事でもあって先に行ったのだろうかと思っていたのだが教室にその姿はなかった。

 

 アリサやすずかも同様に探してみるが見つからない。フェイトは慎司のいない教室を見て少しだけ残念そうな顔をしていた。

 

 チャイムが鳴る、ホームルームの時間だった。皆席について姿勢を正して先生を出迎える。アリサの号令で朝の挨拶をして担任の教師は難しい顔をしながらも淡々と告げた。

 

「今日から荒瀬君はしばらくご両親の都合で学校を休むそうです。どれくらいの間になるかはまだ分からないそうですが心配はないとのご連絡をいただきました。なので皆さん、荒瀬君がいなくても心配しないで真面目に授業を受けるように」

 

 その言葉にクラス中がざわつく。ただでさえクラスの中心人物と言っても過言ではない慎司が1日休むのさえ珍しいと言われるくらいの慎司がしばらく詳しい理由は不明で休むと言うのだから。

 なのは達はそれぞれ驚いたように見合わせる。誰も何もそれについての事情は聞いていない。

 

「慎司君………」

 

 自然となのははそんな呟きを溢していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………。

 

 

 

 

 苦しい、吐き気がする。頭がガンガンと響くように痛い。こんな感覚なのか……柔道とまた違った辛さだった。けど、もう一度………もう一度だ。時間は限られている、ならば全てをかけてそれに取り組む。

 

「ぐっ!このっ!」

 

 駄目だ、駄目だこんなんじゃ。救えない、救えない。このままじゃ何も成せない。

 

「まだ……まだぁ!!」

 

 振り絞れ、足掻け、続けろ。続けろ、納得のいくまで……いや、それでも足りない。苦しくてもやれ、辛くてもやれ……柔道と同じだ。苦しんで苦しんで努力してようやく勝利という物を手にする。そう言うことには慣れたもんだろ?なぁ、荒瀬慎司。

 意味のある努力を続けてようやく俺の掴みたいものが掴めるんだ。

 

「ああっ!!」

 

 気合いの声と共に再び行う。努力だ、皆んなを救う為の努力だ。

 努力、努力、努力、努力。体が辛くても、心が苦しくても。

 

「おおおっ!」

 

 俺が諦めない限りは……俺の心が燃えている限りは………ハッピーエンドの為の道は潰えなどしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 シリアスが続くぅ!日常中心の話は事件が終わるまで難しいかもしれない。まぁ、日常回好きな方ごめんなさいって感じでここは一つ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。