ひぐらしのなく頃にの新作が衝撃の展開が多くて疲れたので癒しに新しいはたらく細胞を見たら中々のブラック案件でしまいにリゼロを見たら心を抉られた作者はここです。
「……そっか、携帯買ったんかフェイトちゃん」
昼食を取り軽い食後休みに昨日ぶりに携帯を覗くと知らないアドレスからメールが届いていた。フェイトちゃんからだった、少し前になのはちゃん達同伴で携帯を契約したらしく俺のアドレスを聞いてこうやってメールをしてくれたみたいだった。
文面には慣れてないからかたどたどしい文章で俺への心配と励ましの言葉が書かれていた。何故ずっと学校を休んでるのか、何故何も教えてくれないのか、そんな事は一切聞かずにただただ
『頑張れ』
随所にその言葉が囁かれるように書かれている。胸を熱くしつつ俺はメールで簡単にお礼のメールを返信して息を吐く。ああ、折れてない。俺はまだ折れてない、まだ頑張れる。そして、たどり着くんだ…ハッピーエンドに。
フェイトちゃんからの激励に背中を押されて立ち上がる。
「さて、やるか」
血反吐吐きながらでも形にしなきゃ。後悔は二度としたくない。
……………………………。
繰り返した、何度も何度も同じ日を過ごすかのように毎日同じ事ばかりの日を繰り返す。汗を垂れ流し、汚物をぶちまけ、身体中の痛みを堪えて、頭が割れるようなそんな症状にも耐え何日も何日も繰り返す。
毎日泣きたくなった、毎日こんな事やめてやるって脳裏によぎった。けどダメだった、諦めるなんて出来なかった。何でこんな事をしてるんだろうって自問自答を繰り返す。
『後悔したくないから』
『失いたくないから』
『失わせたくないから』
毎日明日はこんな弱音は吐かないって気力でこなす、けど毎日弱音を吐いた。俺は特別じゃない、魔法の才能も柔道の才能もなかった。だから努力が必要だった。
携帯を見る。アリサちゃんから早く学校に来いってメールがあった。すずかちゃんから悩みがあるなら力になるってメールがあった。涙が滲んだ、頑張らなきゃ……頑張らなきゃ……。
はやてちゃんからメールがあった。『会いたい』。その一言
………………救わなきゃ。俺が……俺にしか出来ない事なんだ。
繰り返す。繰り返す。何度も何度も。何回も何回も。泣いて吐いて我慢して堪えて狂って戻ってまた泣いて。
またなのはちゃん達はシグナム達と交戦した、その時フェイトちゃんが例の仮面の男の介入でリンカーコアの魔力を奪われたと聞いた。これ以上誰かが傷つく前に。早く、早く、早く。俺を見て母さんが泣いていた、父さんが辛そうにしていた。止めるなと説得した。
迷いなんかとっくに消えていた。
「……………何とか…ここまでは形にしたか」
これ以上は無理だ。いや、無理じゃない、まだだ。まだ、もっと…もっと完成形に……。
久しぶりに、笑みをこぼせた気がした。
………………………………。
嫌な予感はしていた。フェイトから慎司が学校をしばらくお休みすると学校の教師から伝えられたらしい。理由は?と問い詰めてみると両親の都合としか聞かされなかったらしい。逆に何か聞いてないか?と問うて来た。
僕は知らないと答えた。……両親の都合……。彼の両親は独自で闇の書の調査をしてくれている。僕達とも連携してくれている筈だ。もし本当に両親の都合なのだとしたら……慎司は今事件に関わっている?
疑念は疑問となり、自分の師匠でもあるリーゼと再会を果たした時に確信に変わった。
「そういえば、管理局で荒瀬慎司に会ったよ。管理局について勉強したくてわざわざここで寝泊まりしてるんだってクロ助も知り合いなんだろ?」
この時、僕はきっと表情を強張らせていただろう。すぐに信治郎さんとユリカさんにコンタクトを取ったが忙しいの一点張りで会えなかった。何か隠しているのはすぐに分かった。
ならば、彼らが作業している部屋に赴こうと思ったがタイミング悪く闇の書の調査の進展や問題が発生してそれどころではなくなった。
そして今、ようやくその作業室の前にたどり着いた。今も自分自身切羽詰まってる事に変わらないが彼が関わっている以上きっと彼は無茶をする。出来ることを全てやろうとするのが彼の美徳でもあり欠点でもある。
ならば、止めるのも友人としての務めだ。礼儀としてノックをしてから返事を待たずに扉を開け放つ。
驚くように目を見開いてこちらを見つめる彼は震える声で
「ク、クロノ……」
そう呟いた。何だその姿は。何があったらそうなるんだ。最後に会ったのいつだったか、地球に居を構えた日だったか。ある程度の日数は経ったがそれから何があったらそうなる。
目の下には濃い隈が、髪は伸ばし放題でだらしなく見える。頬はこけ、少しだが痩せたように見える。いや、やつれたという方が正しいか。顔色も良くない、だがそんな体の状態で何故君は……眼だけはそんなに輝いているのか。前を見据えて進んでいる者の眼だ。
心は荒んでない、そう分かるほど眼だけは慎司らしく力強いままだった。君は何をしてる、何をしようとしている。答えろっ。答えろっ慎司!
………………。
「何で……ここに?」
突然扉が開いたと思ったらこちらを睨むように凝視しているクロノ姿が。何となく察する、俺が事件に関わり始めた事がどういう形かクロノにバレたのだ。
「ここで何をしている?答えろ慎司」
声音は冷たい、言い訳は許さないと言われてるようだった。言い訳も誤魔化しも無理だと悟る、俺は観念するしかなかった。
「………俺がすべき事、したい事をしてるだけだ」
瞬間、体が引っ張られ体制が崩れる。かと思ったら胸ぐらを掴まれる形で体を少し持ち上げられる。
「ふざけるな!」
怒声が耳につんざく。驚いた、確かにクロノには悪い事をしたと思ってるし怒りを買う事は仕方ないと思ってる。俺の詳しい事情は知らないんだろうがクロノにとって闇の書の案件は父親の仇だ、そんな大事な案件に勝手をされては怒るのも当然だ。だけど、その怒りの声とは裏腹に表情は何だか辛そうに見えた。
「君はただの一般人だ!安易に魔法に関わるのは危険だと伝えただろ!ジュエルシード事件はたまたま運が良かっただけだ、またあの時のように関わるつもりなら命がいくつあっても足りない!」
そうだろうな、もしかしたら今回はあの時より危険かもしれん。なにせその世界の命運が関わる代物でもあるんだから。だけど、俺だって……俺だって!
「安易なんかじゃねんだよ!」
こっちも大声になる。
「俺だって……俺だって関わりたくなんかなかった!こんな形でこんな辛い想いなんかしたくなかった……」
クロノが俺の言葉で驚愕を覚え、自然と胸ぐらを掴む手の力が緩む。
「知りたくなんかなかった……けど放っておく事も俺には出来なかった!見て見ぬ振りなんか出来なかった!」
死んで欲しいわけがない。生きて欲しいに決まっている、元気でいて欲しいに決まっている。その為には俺が身を粉にして頑張るしかなかった。けど、そんな信念を持っても俺は何度ももう辞めたいって思った。
自分の情けない所、汚い所を何度も何度も突きつけられて頭が狂いそうになった。でも、それでも後悔したくないから俺は!
「お前が怒る事は仕方ねぇ、俺はお前に嘘をついたしそれを隠してた。だが、邪魔はさせねぇ。お前がどれだけ怒りを感じても辞めるわけにはいかないんだよ!」
クロノはゆっくりと胸倉から手を離して目を閉じる。俺の言葉を一身に受けてクロノは少し考える素振りを見せながらも真っ直ぐに俺を見て言葉を紡ぐ。
「僕は、お前が僕に隠して事件に関わった事自体は大して怒ってなどいない」
その言葉に俺は驚きを隠さなかった。
「慎司……お前は理由ができれば、そうしなきゃいけないと思ったら迷わずそうする男だ。お前が今回の事に関わると決めたのならそれ相応の理由があったんだと理解するし納得はする」
眉を少しひそめつつもクロノは冷静にそう語る。……そうか、そうやって俺の事を理解してくれようとしていたのか。俺は何だか恥ずかしくなった。なら、何でそんなに怒ってるんだ?
「僕が君に対して怒っているのは……別の理由だ。君に対して真っ先に言いたい事は………」
そこでクロノは言葉を詰まらせる。何て言えばいいのか、自分でもどう言葉にしていいか迷ってるように見える。
「今の君は……体がボロボロで不調をきたしているのだろう?」
優しい声音に変わるクロノの言葉。
「眠れなくなるくらい悩んでいるのだろう?そんな状態になるまで追い込まれていたんだろう?何故……何故そうなる前に僕に助けを求めなかったんだ!!」
「それは………」
だって俺がやろうとしている事はお前の父親の仇を助けようとしてるんだ。そんな事をしようとしてる俺がクロノに助けを求めるなんて出来ないだろうがっ
「その顔を見れば分かるぞ、どうせ僕に申し訳なくて話せなかったんだろう?君が何をしようとしてるかは知らないが僕の答えを勝手に決めるな!僕は……僕と君は友達なんだろ?慎司……友達の助けになりたいと思う僕はおかしいのか?」
「………」
何も言えない、色々な事情があって家族以外には話さなかった。情報がどこから漏れるか分からない、中には闇の書憎しと過激な考えの人もいるだろう。情報の拡散は最低限にしなければならなかった。
けど、それでもこうやって真っ直ぐに俺の力になると言ってくれてるクロノを見て俺はどうすれば正解だったのか分からなくなる。
「僕も深い事情は知らないから、僕の言っている事は的はずれかどうかも分からない。だが、君を助けたいと思ってる気持ちに偽りはない。慎司、僕は頼らないか?頼りにならないか?」
「そんな事は……」
「なら僕に話してくれ、君が知っている事、困ってる事、助けて欲しい事全てを……」
「………………」
話すべきだろう。ここまで言われて問い詰められたら隠し通せない。だが、どこまで話していいか……。
「それくらいにしてやってくれクロノ君」
いつの間にか両親が部屋に入っていようで、唐突に父さんの言葉が部屋に響く。クロノはびっくりつつも
「やはり、信治郎さんそしてユリカさんも慎司と共犯ですか」
「ええ、ごめんなさいね」
「いえ……」
互いに気まずい雰囲気になる。が、このままでいるわけにもいかず父さんはとりあえず座って話そうとそう言い別室に移動する。俺も汗やら何やらを始末してから向かった。
結局父さんが主導でクロノにはある程度の事情を話した。俺が闇の書の主と思われる人物と友人となりその守護騎士達とも友人になった事。偶然が重なり闇の書の存在とそのふざけた副作用を知ってしまった事。
俺の目的を、しかしはやてちゃんの情報は言わなかった。
「誰なのかは……教えてくれないのか…」
「教えてたら……すぐにでも捕縛するだろ」
「………ああ」
クロノは正直に話した。
「当然手荒な事はしない、事情を話して解決策を模索する」
「闇の書の主人を犠牲にしてか?」
「……………」
クロノは黙り込む。はやてちゃんを捕らえた所で闇の書ははやてちゃんの命を奪う。主人がいなくなった闇の書は再び別の主人の元へ転生して悲劇が繰り返される。
「慎司の話が真実なら闇の書の主は自らの意思で魔力の蒐集を行なっているわけではない。つまりは現状凶悪な次元犯罪者ではなく善良な一般市民だ、僕もそんな人物を犠牲にしようだなんて考えてない」
「……すまん」
ちょっと冷静さを欠いて噛み付くような形になってしまった。素直に謝る。
「仮に闇の書の主を手中にしてもその守護騎士達は主人を救うためにより一層管理局と敵対体制をとるわ。そうなれば説得は愚か余計な被害を招く恐れもある。慎司が私達にしか話さなかったのはこれが理由よ」
俺を庇うように母さんはそう口を開く。確かにその通りだ、クロノ達仮に情報を話しても行動を起こしてるシグナム達を説得しなければ平和的に話は進められない。
「慎司の目的は分かった。守護騎士達を説得し、闇の書の呪縛から主人を解放する事………それは願ってもない解決方法だ。しかし、方法はどうするつもりだったんだ?」
「それは………」
一通り母さんが説明をする。全て聞き終えて頃にクロノは机を叩きながら立ち上がる。
「バカなっ!慎司にそれをやらせるつもりなんですか!」
「慎司にしか出来ないのよ。慎司も覚悟は出来てるし止めたって慎司はやるわよ……クロノ君はそれを痛いほど分かっているでしょう?」
「くっ……だからといって……」
「別に命を犠牲にするわけじゃないし、失敗したって俺の人体には影響はないだろう」
「そう言う事じゃないだろう。君は鏡を見てないのか?このまま無理をすればそれこそ君が潰れる」
心配してくれるのは嬉しい。友人として本当に感謝している。さっき怒ってくれてことも諸々含めてクロノには感謝している。けど
「クロノ、俺は覚悟は出来てるって言っただろう。邪魔をするなよ、弱音は何度も吐いたし泣きたくなった事も何度もある。けどようやく形にはなってきた、その成果を無駄にする気はねぇししたくない。俺が闇の書をどうにか出来るってなら俺がやるべきだ」
力強くそう言い放つ。例え誰に止められようが俺は続けるぞ。成功率を少しでも高める為に。
「………分かった」
ため息をつきながらクロノは納得してくれた。
「しかし、もうそんなに猶予はないと思った方がいい。動き出すならすぐにでもだ」
クロノは服装を一度正してから俺を真っ直ぐに見つめて
「3日……いや5日だけ待つ。それがタイムリミットだ。それまでに少しでも完成させろ。それ以上は待てない、拒否するなら君から情報を無理矢理にでも聞き出して僕達は僕達で動く事になる。5日後に君から情報を話してくれたのなら僕は君の目指すそのハッピーエンドの為に全力で協力する事を約束する」
手を差し出して
「だから君も僕を信じろ」
俺は少し戸惑ったが迷う事はなくその手を取る。俺を信用し助けてくれると言ってくれた友達の手を取った。
「信じるよ、クロノ。そしてお前の信頼にも応えて見せるよ」
この握手は信頼の証。クロノのこの決断に報いる為にも俺はまだ……頑張らねばならない。
既に猶予は残されていない。
……………………。
2日が経過した時だった。汗だくの中、さらに完成度を高める為俺は作業をぶっ通しで続けていた。
前にも言ったように形にはなってきた、上手くいく可能性は0ではなくなった。しかし、まだこのままでは分の悪い賭けくらいの完成度だと思う。しかし、あと3日では劇的な変化は無い。現実的に無理だ、既に無理に無理を押し通して体はボロボロだ。意地を貫き通すのも限界だった。俺がそれを痛恨している事を分かっていたかそうでないかは分からないが見守っていた父さんがパンっと手を叩いて
「ここまでだ」
そう俺に告げる。服の袖で汗を拭いつつ俺はまだ出来ると目で訴えるが父さん口から出た言葉は俺の想像外の事だった。
「いや、ここまでだ。今日だけの話じゃないぞ?これ以上研鑽しようとしても残り数日じゃすずめの涙も上達しない、約束の期日に万全に望めるように残りの期間は体の回復に努めるんだ。作業は間隔を忘れない程度にとどめておけ」
なっ、と声が自然と漏れる。
「そんな、このままじゃまだ可能性が低い状態だ!納得できないていない」
「慎司、勘違いしてないか?お前の目的はそれを完全に出来るようになる事じゃなく友達を助ける事だろ?残りの期日でいざ本番で成功させる為に必要な事は無駄な努力じゃなくお前の体を少しでも休ませる事だ。万全じゃない状態で臨む事がどれだけ足を引っ張る事かくらいお前も理解できるだろう?お前の今の体調と残りの時間を考えると最適解はこれだ」
そう有無を言わせない雰囲気に押され俺は歯を食いしばる。くそ、くそ、確かに形にはなったがまだ熟練度は低い。時間が圧倒的に足りなかった。
「そう暗い顔をするな、正直ここまでやれるとは思ってなかったよ」
「えっ…?」
「数日では成長の見込みがないって事はそこまで熟練出来てるって事だ。俺も母さんもお前がこの期間でここまでモノに出来るなんて思ってなかったんだ。正直、賭けにもなるかならないかってくらいだと思ってたんだ」
父さんの目は優しさを帯びていた。俺より詳しい父さんが言うんだ、今はその言葉を信じて言う通りにしよう。
「ここまでよくやったな慎司、ここまで頑張れるお前ならきっとうまく行くさ」
そう言って俺の頭に手を乗せる父さん。ああ、そうか……俺、ちゃんと頑張りきれたんだ。まだ何も始まってはいないけどけどその為に俺はちゃんと全てをぶつけて来れたんだ。
多分クロノも、俺達から何をしようとしてるのか話を聞いて、俺が万全に休む為に5日という時間をくれたんだろう。そう思えば合点がいく。そういえば約束の期日の日は奇しくもクリスマスイブの日だ。今年は皆んなとワイワイ出来なさそうだ。
「……ありがとう」
「ああ、その言葉は母さんにも伝えてやれ。すごく心配しつつも頑張ってたからな」
うん、勿論だよ………。
翌日の夕方、体をしっかり元に戻すべく睡眠と食事を繰り返して過ごしていた。少し細くなった体を取り戻すべく無理矢理にでも飯をかきこむ。ずっと例のアレで嘔吐を繰り返していてまともに食事をするのが億劫だったが休息となれば話は変わった。
昨日と今日でだいぶ顔色は良くなったと思うし体調も良い。体の不調に自覚があまりなかったがこうやって少し健康さを取り戻すとどれだけ自分がひどい状態だったかようやく理解できた。確かに父さんの言う通り今俺がする最善は休む事だったなと共感できる。
といっても全く体を動かさないのもまた良くない、軽いストレッチと柔軟くらいはしておこう。………ずっと柔道着に袖を通してないな、この期間でライバル達に差をつけられてしまった事は否めない。……全部終わったらまた気を引き締めて頑張らないと。前向きに考えよう、そうだ前向きに。
「あ、慎ちゃんいた」
「お邪魔するよ慎司」
ちょうど柔軟を終わらせたタイミングでロッテとアリアが入室してくる。あれ、ここには俺だけで父さんと母さんはいないぞ?ほの有無を伝えるとアリアが首を振って
「慎司に会いに来たんだよ」
そう告げてくる。2人がわざわざ俺に?
「慎ちゃんと遊びに来たんだよー」
「暇かよ」
ロッテの言葉に反射的にそう返していた。いや、ロッテはもう遠慮とかいいだろ。ついでにアリアにもかしこまる事もないだろうし。前回話した時はそれで何も言われなかったしむしろ嬉しそうだったからいいよな?
「遊ぶつってもなー、俺疲れてるからあんまり激しいのは……」
そう言いかけるとロッテが任せろと言わんばかりにどこからかトランプを取り出して見せる。ミッドにもトランプが存在するのか。
「信治郎から慎ちゃんが暇してるから相手してあげてって言ってたからわざわざ用意したんだぞ~」
なるほどパパンの差し金か。まあ、ボケッとしてるよりは健全か。ロッテからトランプを受け取ると慣れた手つきでカードをきる。ふむ、とりあえずババ抜きから行こうか。三等分に配ってゲーム開始。割と白熱したのは意外だった。ロッテはババを引くと顔に出るしアリアもアリアでババに触れるとちょっと嬉しそうに尻尾が揺れるので分かりやすかったりするが。
神経衰弱やら簡易ポーカーやら色々遊ぶ中で他愛もない話をしていた。
「それにしても慎ちゃん今日は元気そうで良かったよー」
「そうね、少し前に会った時は何だか元気がなさそうに見えたからね」
あー、あん時初対面……でもないけどほぼ初対面の2人でもそういう風に見えてたのか。ロッテのあの過剰なスキンシップも励ましのつもりだったのだろうか。いや、それは考えすぎか。あれは素だろうな。
「あはは、元気だよ。こう見えて意外と心は強い太郎ちゃんなんです」
「太郎ちゃんって誰よー?」
「あっはっはっは」
笑って誤魔化しておいた。そんなこんなで割と長い時間遊んでいた。2人はそろそろお暇すると言い出した。扉越しで見送るが、俺は少し気になっていた事を聞いた。
「2人はどうして、俺に良くしてくれるんだ?」
率直な疑問だった。俺の両親と親しい仲だったのは伺えるが俺が赤ん坊の頃に一度あっただけでそれから大体10年程経った頃にたまたま再会しただけの関係だ。無論、子供相手の俺に気を使ってるだけかもしれないがそれだけでは無いような気がする。
俺のそんな疑問に2人は少しだけ照れ臭そうな顔をして言うのだ。
「……慎司は覚えてないだろうけど、まだユリカが地球に越す前に色々あって慎司のお世話をしてた時期が少しだけあるのよ」
「2人でわちゃわちゃして慎ちゃんのお世話したんだよ。と言っても慎ちゃん全然手のかからない子だったけどね」
色々……ね。俺も生まれてしばらくの頃の記憶は曖昧だ。物心ついた時には既に自分が転生者でそれを受け入れていた。だからそんな事実は全く持って知らなかった。
「変な話だけどさ……弟が出来たみたいで楽しかったんだよね、慎ちゃんのお世話するの」
照れ臭そうに言うロッテにそれに同意するかのように同じく照れ臭そうにするアリア。俺が粗相をして困らせたことや寝顔は可愛かった等色々2人には思い出として残っていると語る。地球に越してしまった後は気軽に会いに行けるわけもなく気づけばそんなに時間は経っていたと言う。
「だから構いたくなるのさ、慎司に迷惑だろうけど私達にとっては弟みたいなものだからね」
そっか……。
「じゃあ、2人は俺の姉ちゃんみたいなもんか……」
そっか、それなら……実際今日なんかはそうやって何も出来なくてヤキモキしてた俺の気を紛らわしてくれたしな。なら、言うべき事は言わないと。
「それならさ、今日はありがとう。また遊んでくれよ、アリア、ロッテ」
「そこはお姉ちゃんって呼んでよー」
やだね、恥ずかしくてそんな事は言えねぇさ。けど、俺には姉も兄も弟も妹もいないけど俺を弟として想ってくれてる人がいるって事が分かった。
それだけで、十分励まされたよ。2人はきっと……いい人だ。
さらに翌日早朝、クリスマスイブの日。俺は一度地球に戻り久方ぶりに学校へ行く準備を始めていた。昨日の夜に俺の顔色を確認した両親は行ける時に行っておいた方がいいと言い、学校に行くことを勧めた。明日には約束の期日となり、クロノに報告してすぐにでも動く事になると思われるからまた休む事にはなるんだが俺も久しぶりに皆んなに会いたかった。
夜になのはちゃん達に1日だけ顔を出すと連絡をしておいた。きっと学校で会ったら質問責めに合うだろうがそこはうまく乗り切ろう。さて、そろそろ出るか。
「このバカ死ねぇ!!」
「凄い出迎えかたぁ!!」
休み時間に少し遅れて教室に入れば出迎えたのはアリサちゃんのローキック。あ、怒ってる。思ったより怒ってる。
「ああ!もう何なんのよあんたは!!なのはの時よりタチが悪いわね!」
ギャーギャーするアリサちゃんをすずかちゃんとなのはちゃんが必死に抑える。俺はとにかく心配かけて悪かったと平謝りだ。メールも返信をしなくなっていたし事情を聞かれてもはぐらかされてばかりならそりゃ頭にキても責められん。
「慎司……ちょっと痩せた?」
フェイトちゃんのその一言でアリサちゃんの怒りは静まった。やっぱり数日じゃ完全には元に戻らんよな。それでも全然マシになったと母さんは言っていたが。アリサちゃんの瞳はバツの悪そうに心配する色に変わっていた。すずかちゃんもなのはちゃんもフェイトちゃんも。
「ま、色々あってな。ちょっと頑張り過ぎちまったけどもう少しで元の生活には戻れそうなんだ、だからもうちょっと待っててくれよ」
ちゃんと終わったら事情も話すからさと付け加えて。だから今日は……明日はきっと大変だから、いつも通りに過ごさせてくれ。俺のそんな想いが伝わったのかアリサちゃんは怒りを完全に収めて、他の皆んなも俺が学校を休んでいた事の理由やらは聞かないでくれた。
「慎司君……」
なのはちゃんが俺を呼ぶ。ああ、心配してくれてるのは分かる。だから俺は笑顔を浮かべてなのはちゃんにしか聞こえないように言う。
「もしかしたら……もう少しで助けを求めるかも」
そう告げる。ていうか、明日クロノに話す前になのはちゃんとフェイトちゃんには筋として話すつもりだった。クロノがアースラが動いてくれるのならなのはちゃんとフェイトちゃんも一緒の筈だから。
タイミングは、学校が終わった後でゆっくり話せばいいだろう。
「うん、待ってる」
なのはちゃんは少し微笑んでそう言ってくれた。
学校ではいつものようにふざけていたらすぐに放課後に。楽しい1日は時が過ぎるのは早い。さて、フェイトちゃんとなのはちゃんには例の話をしないと、とりあえずアリサちゃんとすずかちゃんと別れてから切り出そう。
そう考えていた俺にすずかちゃんから放課後のお誘いがあった。
「新しく出来た友達のお見舞い?」
「うん、実は今日サプライズで4人で病院に行くつもりだったんだ。慎司君の事紹介してあげたかったし良かったら一緒に来ない?」
話を聞けば俺が学校を休んでいる間にすずかちゃんが女の子の友達が出来たらしく仲良くしていたそうなのだがその子が最近になって体を悪くして入院してしまっているらしい。既に俺以外の4人は何度かお見舞いに行き顔を合わせているらしいが今回は相手にも予告なしでサプライズで元気付けるために計画しているらしい。一瞬はやてちゃんの顔が浮かんだ、彼女の体の方も心配だった。
「そういう事なら勿論協力するぜ?俺の100連仮面ライダーモノマネを披露してやる」
2人に話すのはそのサプライズが終わってからでも遅くはないだろうし。
「せめて通じる奴にしときなさい」
「慎司、私それ見たいかも」
「フェイトちゃん!?」
アリサちゃんがやれやれと言った様子で呆れる中フェイトちゃんの反応にびっくりするなのはちゃん。うーんと困ったように笑うすずかちゃんが口を開いて
「参考までに一個だけ見せてもらえる?」
「オンドゥルルラギッタンデスカー!」
却下されたのは言うまでもないだろう。
学科帰りに直接その病院に向かう。見覚えのある病院だった、というか来たことがある。前にはやてちゃんが倒れたと聞いた時に運ばれた病院で俺も慌てて駆けつけた所だ。
と言っても海鳴市内に大きめの病院はここぐらいだからなぁ、変な偶然ってわけでもないんだけど。はやてちゃんはやっぱりまだ病院の世話になってるんだろう、闇の書の影響で症状が悪化してるのなら入院している可能性もある。シグナムたちに鉢合わせないように気をつけないとな、まだ説得する為の言葉の準備が足りない。
前に来たはやてちゃんからの会いたいと言っていたメールは何て返せばいいのか分からず返信のタイミングを逃してしまってそれっきりだ。…………俺も早く元気な姿のはやてちゃんに会いてぇよ。
「慎司君?すずかちゃんが受付済ましてくれたよ?」
なのはちゃんからそう声を掛けられ意識を取り戻す。俺は頷いて皆んなの後ろについてく形で歩く。エレベーターに乗って入院患者がいる病棟まで移動し長い廊下を歩いている途中で俺はそういえばと思いすずかちゃんに
「そういえば、これから会う子はなんて子なんだ?」
大事な事を聞きそびれていた。これから元気付けてあげる子の名前くらい知っておかないと。
「あ、言ってなかったね」
そう言って病室の前に立ち止まって扉をノックするすずかちゃん、扉のネームプレートが視界に入ったのととすずかちゃんから聞かされた名前が耳に届いたのはほぼ同時だった。
「はやてちゃん……って言うんだよ」
病室からどうぞと聞き覚えのある声が聞こえる。
「まっ……」
扉が開かれる。皆んなが予告なく来たからか驚きと喜びを表した表情で出迎えるはやてちゃんと険しい顔をしたシグナムとヴィータちゃんの姿、それと気まずそうにするシャマル。そして扉の前で動けない俺をはやてちゃんは見つけてしまう。
「えっ……慎司…君?」
はやてちゃんの言葉にシグナム達3人も反応し俺を見る。浮かべる驚愕の表情
。事情を知らないすずかちゃんは「知り合い?」と疑問の声をあげたがその問いには誰も答えない。
「………慎司」
シグナムが罰の悪そうな表情を浮かべる。
ああ、クソ。明日になる前にこんな想定外の形で会うなんて。最悪だ。
………最悪だ。
闇の書編のクライマックスまであともう少し……頑張ります。5話くらいで纏められるかなぁ。無理そう