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高町家に日常が戻り、俺となのはちゃんの関係は変わらないまま普通の日々を送る。いいねぇ、人生平穏が一番。これまで通りなのはちゃんとは毎日のように公園で遊び尽くして、時には高町家に……時には荒瀬家に招待したりなど順風満帆な日々だ。例の快気祝いのパーティーで高町家と荒瀬家はすっかり家族揃って仲良しに。
翠屋も軌道に乗ったらしく、忙しくも士郎さんがいることで家族の時間はちゃんと作れているらしい。流石一家の大黒柱だ。
「はい、今日のオススメケーキのシフォンケーキよ。慎司君、沢山食べてね」
というわけで本日は高町家……というよりは翠屋にお呼ばれされた。ちなみに今日は金曜日ですので明日は土曜日だから幼稚園はお休み。このまま高町家にお泊まりする予定である。
「待ってました!いただきます」
うめええええ!流石桃子さんのケーキだ!何でもうめぇ。フォーク止まんねえ。
「うふふ、いつも美味しそうに食べてくれるから作り甲斐があるわ」
だってうまいだもん本当。別に甘いのが特別好物とかそんなんじゃ無かったけど、桃子さんのせいというべきかおかげと言うべきかすっかり甘い物好きになってしもうた。
ちなみにちゃんとケーキのお代はママンから貰ってる。行くたび毎回タダにして貰うのも悪いからね。そこはしっかりさせてもらってる。
「う〜ん、お母さん今日もおいしいよ〜」
「ふふっ、なのはもありがとう」
なのはちゃんも顔を蕩けさせながらケーキを口に運ぶ。
「なのはちゃんは毎日桃子さんのケーキ食べてるの?」
「えっ?毎日ってほどじゃ無いけど……でも大体食べてるかも」
そら羨ましい。俺は翠屋に来た時かお互いの家で定期的に行われる事になってるホームパーティーの時しか食えんからなぁ。ていうか定期的にホームパーティーするとか高町家と荒瀬家仲良くなり過ぎだろ。息子としては大賛成ですけども、ケーキ食えるし。
「ふーん、そっか、そんなに食べてるんだ」
ジロッーとなのはちゃんを一瞥する。
「な、何?」
「………………太るぞ」
ピキッと音がした気がした。なのはちゃんは口に運ぼうとしたフォークの動きを止めて、ついでに体そのものも硬直した。
「ふ、ふ、太ってないもん!」
「今はな、けどずっとそんな風に食べ続けてると………」
「ちゃんと運動してるもん、慎司君と遊んで……」
「最近は外で遊ぶよりお家で遊ぶことの方が多くなったよね〜」
意外や意外。なのはさん俺の影響か割と色んなゲームにハマっておいでなのだ。ちなみに今はポケモンルビーにハマってる。
「うぅ………」
「太ったなのはちゃんはどんな感じなんだろうねぇ」
「うぅぅ………太っちゃうのかなぁ……」
「まぁ、太ってるならとっくに太ってるだろうけどね」
俺と会う前、士郎さんが事故に遭う前からそんな食生活だったんだろうし太るならとっくに太ってると思われる。なのはちゃん大食らいじゃないし体質もあるんだろうけどおそらく大丈夫と思われる。俺のその解説を聞いたなのはちゃんは
「またそうやってからかって!もうっ!もう!」
いつもの両手でポカポカ。最近は俺も位置を調整して肩を叩かせている。あ、そこそこ。肩叩きにちょうどええ。
「なのはちゃんや、ケーキを一口くれんかね」
「意地悪な慎司君にはあげません!」
「そ、そんな……ひどいよなのはちゃん。そんないじわるずるなんでぇ」
「その手の目薬はなに!?もう引っかからないもんね!」
ちっ、今日は引っ掛かんなかったか。まぁ時間開ければまた引っかかってくれるポンコツ具合もあるなのはちゃんだしな。後日リベンジしよう。
「あ、なのはちゃん…ほっぺにクリーム付いてるよ」
「ふふん、それも引っかからないもんねー。どうせ慎司君のほっぺとか言うんでしょ?」
「いや、今回はマジ」
「えっ、ほ、ホント?」
ほっぺを恐る恐るさすって確認するなのはちゃん。
「うん……隣の席のおじさんのホッペに」
「騙したね!?」
ツメが甘いのぉなのはちゃん。俺に勝とうなんぞ100年早いぜぃ。さてさて、やるべき事は先にやっておこう。
「ご協力ありがとうございます」
「おお若いの、気になさんな。見てて楽しかったからのぉ」
「まさかの仕込み!?」
ネタに全力なんだよこちとら。
「どれだけ私をからかいたいの?」
「世界が終わるその日がきても、俺はなのはちゃんをからかい続けるんだ」
「聞かなきゃよかった……」
ガックリ項垂れるなのはちゃんの表情は言葉とは裏腹にしょうがないなぁなんて思ってそうな表情をしてた。なんかムカついたので今日もほっぺを伸ばしたとさ。
………………………。
翠屋を後にしてなのはちゃんの実家へ。夕飯をご馳走になり、お風呂も頂いてからお楽しみのお遊びタイム。まずは家からわざわざ持参してきたゲームキューブをセッティング。流石に64は古かったのでパパンにねだって買ってもらった。ありがとうパパン。とりあえずスマブラをセットしてコントローラーを4つ準備。今回はなのはちゃんだけでなく先日のパーティーで仲良くなった恭也さんと美由希さんにも付き合ってもらう。
「ふははは、なのはちゃん動き見え見え〜」
「あ!また慎司君私ばっかり狙ってる〜!」
まだまだ俺っちに勝つのは遠い話ですななのはちゃんよ。
「慎司君、今!今のうちに!」
とか言って自らの兄を掴みで動きを封じて俺に攻撃させようとする美由希さん。
「そんな隙だらけの美由希さんに掴み投げからのぉ〜メテオナックルうううううう!!」
「あぁー!」
ひどい〜っとガミガミ言ってくる美由希さん。はっはっは、勝負の世界は非情なり。
「残念だったな美由希。俺ばっかり構うからだ」
「そして油断してる恭也さんに横スマっああああ!!」
「しまった!?」
というわけで僕たんの優勝である。アイムチャンピオン〜ウィー。と高町三兄妹を煽る。
「むぅ、今度こそ負けないもん」
あ、こやつチーム戦にしやがった。しかも3対1かよ!
「ふっふっふ、私達を怒らせた事を後悔させてあげる」
「ゲームとはいえ負けてばかりなのも悔しいしな」
「これなら流石の慎司君も勝てないでしょ〜」
三者三様にそんな事言ってくる。美由希さんと恭也さんは割と負けず嫌いなのかね。なのはちゃんにいたっては2人の後ろに隠れて俺に可愛い挑発をしてくる。
「ほほぉ……なんら俺っちも本気でいかせてもらうで」
ファルコン……ランチ!で行くぜ!
と言っても流石に3対1ではなす術なく惨敗。ていうかいつも俺に付き合ってくれてるせいか美由希さんも恭也さんもどんどん上手くなってるし。なのはちゃんにいたってはもう上級者レベルである。まぁ、皆んな笑って楽しんでるからよしとしよう。
まぁ、悔しかったから今度は手加減なしでボコボコにしてやりましたけどねまる。
「あら、ゲームはもういいの?」
ある程度対戦を重ねて飽きてきた頃に洗い物を終えた桃子さん登場。それを手伝ってた士郎さんも続くように居間に現れる。
「桃子さん、士郎さん………お家でのお仕事はおしまいですか?」
「あぁ、もう終わったよ」
なればと持ってきたリュックサックを漁りトランプを取り出す。
「全員で……やります?」
「いいのかい?」
「餅つきの論でさぁ、お二人が良ければですけども」
勿論一緒にやるわと桃子さんが腰掛ける。それに習って士郎さんも。俺が高町家に泊まるたびのトランプに限らず毎度士郎さんと桃子さんを巻き込んで何かしらのゲームをしている。前回は人生ゲームを持参してきましたよ。
この人達面白いしね。両親一緒の方がなのはちゃん兄姉も楽しいだろうし。俺も人数多い方が楽しいしね。
「さてさて、まずは肩慣らしにババ抜きでさぁ」
二枚の内一枚のジョーカーを抜いてトランプをシャッフルする。
「ショットガンシャッフルはカードを痛めるぜ」
「自分でやって自分で言うんだね」
美由希さんにツッコマれながらも気にせずカードを配る。無論このトランプにはブラックマジシャンも入ってないし不正もしてないぽよ。
「んじゃ皆々様カードを取ってくださいな」
俺の言葉を合図に全員カードを確認する。さてさてジョーカーは誰の手かなぁ?ちなみに俺ではなかった。
「ぶふっ」
カードのペアを切っていたら突然美由希さんが吹き出した。おっと、どうやらババを持っているのは美由希さんのようだ。
「どうした?美由希」
「う、ううん。何でもないから……気にしないで?」
と恭也さんの心配はよそに俺の方をジロリと見てくる美由希さん。俺はどこ吹く風の如く口笛を吹きながらカードを切ってく。
全員カードを切り終わった所でジャンケンで順番を。恭也さん→桃子さん→士郎さん→俺→なのはちゃん→美由希さんの順番に。まずは恭弥さんが美由希さんのカードを取る。
「ぶふっ」
引いたカードを確認すると突然軽く吹き出す恭也さん。同時にニヤリとした表情を浮かべた美由希さんも俺は見逃さなかった。まさか初手で引いたか。恭也さんは平静を装って続ける。とりあえず一巡、二巡とあまり展開は動かず進む。そして四巡め、全員いくつかカードを切って順調に進んでいた所で桃子さんが恭也さんからカードを引いて……
「……っ」
ピクッと動きを止めた。あ、ちょっと笑った。続けて士郎さんにカードを引かせる。と、思いきや持っている手札に一枚だけ飛び出させてる状態で士郎さんに見せる。おっと夫婦による心理戦か?
「桃子、それババだな?」
「うふふ〜、さぁ?」
仲良いなこの夫婦。羨ましいよ。うちのパパンとママンにも負けてないよこの2人。
「貴方……」
と士郎さんが引くカードを決めあぐねていると甘えたような声を出す桃子さん。
「お願い………」
「そんな風に甘えてもダメだぞ?」
「お願い……あ・な・た」
「………くっ!」
あ!結局誘ってたカード引きやがった!心理戦じゃなくて誘惑だった!士郎さんの反応を見るにババ引いたっぽいし。そして士郎さんもそのカードを見て軽く吹き出してた。
つーか士郎さんがババ持ってるって事は次に危険なの俺やないかい。
「……さ、慎司君の番だ」
キリッとして言ってんじゃないやい。誘惑に負けたくせに。桃子さんよほど嬉しかったのかずっとニコニコしてるし。
だが甘いです、引いた後はちゃんとシャッフルしなきゃ。どこにババがあるかバレバレだぜ。
「なぬ?」
引いたのはババだった。士郎さんを見やる。フッと少し微笑みまだ慎司君には負けれないよと言わんばかりの顔。このやろう俺に分からないようにすり替えやがった、大人げねぇ〜。俺大人みたいなもんだけど!
「それじゃ次私ねー」
と俺が悔しがってる隙にカードを引くなのはちゃん。嬉しそうに揃ったカードを切る。ふふふ、今は笑っているがいいさ。すぐにババを引かせてやるゼェ。
と思惑しつつもそのまま俺の手札からババは動かずいつのまにか俺となのはちゃん以外はみんな上がって俺となのはちゃんのタイマンを見守っている。
なのはちゃんのカードは残り一枚。俺は二枚。次なのはちゃんが引く番だ。 二枚のカードを見比べながらチラッと俺の様子を盗み見て観察してくる。表情に出すようなヘマはしませーん。
「うーん………」
中々決まらないなのはちゃん。ええでぇ、いくらでも待ちまっせ。
「………し、慎司君……ババはどっちかなぁ?」
おっとここで心理戦か?
「どっちかがババだよー」
「それは分かってるよぉ〜」
ヒント!ヒント頂戴!と懇願してくるなのはちゃん。いや、ヒントもクソもないだろ。教えるか教えないかしかないよ。しかしそこまで言うなら仕方ない。
「よし分かった、納得のいく猫の物真似をしてくれたら教えよう」
「えっ」
葛藤するなのはちゃん。しかし勝利に貪欲でもある高町家のなのはちゃん。最後まで葛藤しつつも猫の物真似を始めた。
「にゃ、にゃ〜お……」
鳴き真似だけじゃなく仕草までちゃんと物真似する。
「ゴロゴロ〜」
おお、俺の膝に擦り寄ってゴロンとしてくる。確かに猫っぽい。て言うかなんだこの可愛い生き物。確かに納得のいく物真似ではある。
「けど尻尾がないので失格で」
「きしゃー!」
うわっひっかくな!いたい!
「ぐるるるっ………」
「猫ではなくて虎でしたか」
怒ったようにずっと唸ってくるなのはちゃん。でも残念だが勝負の世界は非情、手札は明かしませんよ。
「………し、慎司君」
「………」
「お願い……慎司君」
「………………」
「…………お願い……し・ん・じ・く」
「さっさと引け5歳児」
「自分だって5歳じゃん!」
何桃子さんの真似しようとしてんだよ。20年くらい経ってから出直せ。ほら見ろ、娘が真似し出したから桃子さん赤くなってるじゃんか。
「うぅ、なら嘘でもいいから答えてババはどっち?」
「右」
それを聞いてなのはちゃんは勝ち誇ったような顔をした。
「ふふん、慎司君気付いてた?実は慎司君は嘘をつかない人だって」
「そうだね」
からかったり冗談は言うけど明確な嘘や虚偽はしないのが俺である。前世の頃から正直者なので私。
「だから右はババだとなのはは思います!」
「そうかい」
「ふふん、謝るなら今のうちだよ?」
「騙されてるなのはちゃんが見れそうだから謝らない」
「そ、そんなこと言っても騙されないよっ!」
まぁ、なのはちゃんがそう思うのも無理は無い。遊びでも何でもお茶濁したり誤魔化した言い方とかはするけど明確な虚偽とか一度もしてないしね。
「だから、左のカード引くからね!」
とカードを手に取り引く。
「あ、言い忘れてたけど俺から見て右ね」
「にゃあああああ!!」
俺のその言葉にがっくしするなのはちゃん。俺に心理戦で勝とうなんざ100年早いぜ。
でもまだ負けてないもんっとすぐに立ち直って引いたカードを確認するなのはちゃん。すると目が点になった。
「な、なにこれぇ!?」
慌てながら俺から引いたカードを見せてくるなのはちゃん。それはババであるジョーカー。ジョーカーなのだが絵柄に書かれた悪魔の顔の部分が俺の書いた落書きによってインクで潰れている。顔部分には俺が書いた下手な似顔絵が書かれておりそれだけじゃ誰か伝わらないのでカードの下の方に『デビルガールなのは』と書いてある。
「慎司君の仕業でしょ!このトランプ持ってきたの慎司君だし!」
「いや、メーカーの仕業だろ」
「そんなわけないでしょ!?」
ギャーギャー騒ぐなのはを見て高町家も微笑ましそうに笑う。ゲーム終盤でようやく何でみんなが途中途中吹き出してたのかようやく気付いたなのはちゃんは恥ずかしそうに顔を赤くしている。
「ほれさっさとカードを引かせろデビルガール」
「デビルガールじゃないもん」
この勝負絶対負けないと決意するなのはちゃんは。俺に見えないよう背中にカードを回してシャッフルして俺に突き出す。さて、運に身を任せるのも面白いけど負けたくないのでこっちもしかけよう。
「なのはちゃんも嘘でもいいから質問に答えてよ」
「い、いいよ……」
ボロは出さないぞと言わんばかりに表情を引き締めるなのはちゃん。
「お父さんの事好き?」
「え?う、うん……」
「お母さんは?」
「も、勿論好きだよ」
「恭也さんと美由希さんも?」
「あ、当たり前だよっ」
嘘のつけない質問なので全部正直に答えてくれるなのはちゃん。少し照れているのかもじもじし出した。高町家は満面の笑みでそれを聞いている。
「それじゃポケモンで一番気に入ってるのは?」
「ぴ、ピチューかな」
「スマブラで一番得意なのは?」
「カービィだよ?」
「ファルコン?」
「パンーチ!」
「はどっちの手でやってた?」
「えっと……右かな?」
「なのはちゃんの利き手は?」
「左だよ」
「俺のこっちの手は?なのはちゃんから見て」
「左!」
「なのはちゃんから見てババは?」
「右!」
「はい、ありがとう」
「にゃ!?」
はい俺の勝ち。何で負けたか明日までに考えといて下さい。そしたら何かが見えてくるはずです。ほな、いただきます(勝利を)本田風。
「ず〜〜〜る〜〜〜い〜〜〜!」
「HAHAHA、勝った方が正義じゃけん」
今日は一段と長くポカポカしてくるなのはちゃん。よっぽど悔しかったのだろう。やれやれとしながらカードを集めて次はどうするかと考える。
ホント高町家と知り合ってから転生した人生に充実という言葉が当てはまってる。楽しいなぁ、こんな日が続けばええなぁ。なんてじじくさい事を考えていた。
さてと、次は七並べにでもしようかね。もっかいババ抜きでもええねぇ。高町家にはトコトン付き合ってもらうかのぉ。
……………………………。
そんな楽しい日々を過ごしていれば時が経つのもあっという間で。俺となのはちゃんは早いもんで幼稚園を卒園し4月から晴れて小学生となる。うわっ、ランドセルとか懐かしいなぁ。さてさて、気になる小学校だが実は私立小学校に通うことになった。ある日突然ママンにちょっとこれ解いてみてと言われ渡された幼稚園児向けの問題集。ちゃんと全力で取り組んだ所流石は元20歳の俺。勉強に関しては強くてニューゲームを発動して問題なく全て正答。
ママンとパパンはやっぱりかと予想していたよう。流石に転生者だとは思われてないだろうけど俺が外見年齢不相応な所はもう完全に気にしてない様子。それならばとパパンが私立の学校に行ってみないかと言われた。
金銭的な面で負担は掛けたくなかったし、今そこに通わずとも後からちゃんと勉強して受験して高校あたりから良い学校に進もうと考えていた俺っち。しかし、ママンとパパンは余計な事考えなくていいと一刀両断。それに、なのはちゃんもそこを受験するらしい。良い学校行って損はないだろうしせっかく仲良くなったから一緒の学校にすれば?と両親から背中を押される形で俺もその学校に受験したのである。
俺もなのはちゃんも無事合格。晴れて入学式を迎えて小学生の仲間入りだ。
「けどせっかく同じ学校に入学したのにクラスは別々かぁ……」
世の中そううまくいかないもんである。まぁ仕方ないねぇ。幼稚園では友達はできなかったしなのはちゃん以外にも仲良しの友達作れたら良いなぁと心の中でぼやく。
まぁ、なのはちゃん少し大人っぽい所あったから実年齢と違う俺は波長が合ったけど幼稚園の時と同じで難儀しそうだ。やっぱり素を出せる子と仲良くしたいしね。
まぁ、なるようになる事を願おう。
………………………。
さてさて入学してから1ヶ月とちょっと経った。授業は退屈だが先生に目はつけられたくないので真面目に受けてる振りをする毎日。結局クラスでは多少話す仲は出来たが放課後まで関わり合いになるような友達は出来なかった。まぁ、自分のせいだけどな。せっかく誘ってくれても避けてるの俺だし。ごめんね誘ってくれてるのにと内心謝りつつもそれに応じる事はない。
なのはちゃんとも今まで通りに会って話して遊ぶのは変わらなかった。とは言っても小学校に上がった事でその時間は以前より減ってしまったが。そんなこんなで休み時間なのはちゃんのクラスにでも行ってなのはちゃんからかいにいくかと赴いてみると。
「ありゃ?」
なのはちゃんいねぇな。しゃーない、出直すか。合間の休み時間じゃ大して時間ないし。と大人しくクラスに戻った。
その後一年生の女の子2人が大喧嘩したと言伝で聞いた。青春してるねぇ。そうやって色んなこと経験して大人になるだぜ少年少女よ。なんてテキトーな事を考えていた。
「いやなのはちゃんが当事者かよー」
それから数日経ったくらいになのはちゃんが紹介したい友達がいると放課後になのはちゃんの教室に呼ばれたので行ってみるとなのはちゃんの他に2人の女の子がいた。
アリサ・バニングスと月村すずかと2人は名乗った。実は先日の女子同士の喧嘩はなのはちゃんとアリサちゃんが起こしたものらしく、それを当事者でもあったすずかちゃんが止めたのだという。それをきっかけに仲良し3人組と化したとの事。
それはとても良い話だけどまさか肉体言語から始まって仲良くなるとか……夕日バックにクロスカウンターでも決めたのだろうか。
「そかそか、なのはちゃんの友達かー。一緒だね、俺は荒瀬慎司。よかったら俺とも友達になってん」
よろしくと素直に握手を返してくれるすずかちゃん。アリサちゃんの方は少し不躾ながらも応じてくれた。両者正反対な性格のようで。あ、あと喧嘩の内容には触れなかった。その話題になるとアリサちゃんがばつの悪そうな顔をするもんだからあんまり広げないようにしたのだ。そこらへんお兄さんちゃんと察するよ。
「よろしくねー、月村すずかちゃんに………アリサ・バーニング?」
脛を蹴られた。
「バニングスよ!バニングス!」
「ごめんごめん、アリサちゃんだね……よろしく」
たくもうっと言いたげな顔をするアリサちゃんに。蹴られた俺に大丈夫?とおろおろするすずかちゃん。ある意味バランスいいのかも。
「んでんで?なのはちゃんは俺と2人を会わせて何が目的なんだい?」
「え?いや、特に深い意味はないけど………」
あ、こいつ俺に気を使ったな?クラスに仲良しな子が出来ないって一回ぼやいた事を思い出した。まぁ、好意には感謝しよう。実際この2人とは仲良く出来そうな気がする。気がするだけだけど。
「せっかく知り合ったんだしなんかして遊ぼうぜ」
「何をするのよ?」
「道ゆく人を順番にドロップキックして誰が一番怒られないかゲーム」
「それは……やりたくないなぁ」
この調子で2人には俺がどういうキャラか分かってもらおう。うーんと考え込む。女の子3人だしあんまり激しい遊びは控えた方がええかなぁと思考してると強い風がなびく。つい目を瞑ってしまうような一瞬フワリと体が持ち上がるような強風が俺たちを襲った。
特に怪我等はないが問題が一つ発生した。
「あっ」
「えっ」
強風によってフワリと持ち上がるアリサちゃんのスカート。アリサちゃんのスカートだけが何故か強風の被害を受けた。そして神はいないとばかりにアリサちゃんの対面にいた俺。顔を真っ赤にして慌ててスカートを抑えるアリサちゃん。
何も言えない俺となのはちゃんとすずかちゃん。いらねぇよ、小学生相手にそんなスケベイベントいらねぇって。
「見た……?」
「白パン?」
「殺す」
「マジか」
事故だろどう見たって!理不尽だテラワロス。走って逃げる俺に小学一年生とは思えない速度で追いかけてくるアリサちゃん。慌ててそれを追いかけるなのはちゃんとすずかちゃん。いやー、全くもって理不尽。
「待てええええええ!!」
「だが断る!」
今は追いかけられていて捕まれば恐らく酷い目に遭うだろうが俺はこう思った。昨日よりこれから明日が楽しみになりそうだ。後々なのはちゃんと一緒で腐れ縁となる2人に親近感を沸かせながら俺は笑顔で全力で逃げた。
無印前の話はあんまり長くしないようにしようと思ってるけど書き始めるとどうして蛇足ばかり書く。まっいいか。恐らくあと1話で無印前は終わるかも