燃えろ!運動会
闇の書事件から早くも半年以上が経過した。俺たちは小学3年生から4年生へと進級、と言っても変わり映えのない日常を送っていた。季節は秋の始まる頃、夏の暑さを残しつつも秋の紅葉をチラリと覗けるくらいの時期だ。
色々あったゴタゴタも今では遠い昔のように感じる、クロノやリンディさん達は管理局員としての日常に戻りユーノはそこで役職を与えられたらしく正式の管理局員に。何て言ってたかな……無限車庫とか何とか。フェイトちゃんは変わらず聖小の生徒として通い続けるなか魔導師としての仕事もこなしている、それはなのはちゃんも一緒だ。ちなみにフェイトちゃんの為にクロノやリンディさんが拠点として使っていたマンションの部屋はそのままであるらしい。ちゃんとリンディさん達もなるべくフェイトちゃんと一緒に過ごすようにしているそうな。
はやてちゃんは日々をリハビリを頑張り続けた結果万全とは言えないがもう松葉杖を使って歩けるくらいには回復した。まぁ、歩けなかった期間が長かったからその分弱った筋肉を取り戻すのも時間がかかるがそれももう少しと言ったところだ。
シグナム達守護騎士達は襲撃事件の罪を贖う為、管理局員として世のため人の為に頑張っている。といっても馬車馬のように働かせられてる訳ではなくちゃんと一管理局員としてだ。
リインフォースに関しては立ち位置があやふやな為、基本的にはやてちゃんにつきっきりだ。その当のはやてちゃんも魔導師としての道を志している為必然的に管理局員という形になるだろう。
俺はと言うとあいも変わらず皆んなとの日常を楽しみつつ柔道の練習の日々だ。あれから神童との対戦は叶ってないがリベンジを果たすべく俺は邁進している。
さて、皆んなのその後はさて置き。この秋の初め頃という時期になれば小学生の一年に一回の一大イベントがある。
「はい、というわけで明日は皆んなも楽しみにしていた運動会です。明日に備えて遅刻しないように皆んな早めに寝るのよ?」
はーいと元気よく教室にクラスメイトの返事が響き渡る。担任の教師が言った通り明日は聖小の運動会である。聖小の運動会はセオリー通りの各学年のクラス毎にチームを赤組と白組で別れて競技で争うというもの。
中には低学年のダンスや高学年の組体操やら色々あるが皆んな各々自分の組こそが勝つと意気込んでいる。かく言うウチのクラスも盛り上がりっぷりは負けてないだろう。
「明日の運動会、楽しみだね慎司君」
ニコニコしながらそう俺に話しかけてくる隣の席のなのはちゃん。まあ、運動会なんて元気が有り余ってる小学生からしてみれば一大イベントの一つだ。皆んなのテンションが上がるのも分かるさ。俺もそうだったしな。
という訳で、俺を含めたいつもの5人で放課後の下校時も明日の運動会の話になる。
「楽しみだな、運動会……」
「そういえばフェイトは初めてだもんね」
呟くフェイトちゃんに対してアリサちゃんがそう言えばと言葉を返す。確かに去年転校してきたフェイトちゃんだがその時にはすでに運動会が終わった後だ。初めてとなれば楽しみにもなるだろう。
「ふふっ、魔法使っちゃダメだからね2人とも」
「「勿論だよ」」
すずかちゃんの言葉に綺麗にはもる2人。仲良きかな、皆んなやっぱり楽しみにしてんな。
「はやてちゃんも家族みんなで見に来てくれるって」
はやてちゃんは聖小じゃなくて今は普通の公立の小学校に通ってる。まあ、足の件もあるから徐々にだろうけど。
「あら、それなら皆んなで絶対に白組に勝たないといけないわね」
ウチのクラスは赤組だ、特にアリサちゃんが対抗意識を燃やしてる。
「慎司も明日は頼むわよ、こういう時しかアンタ役に立たないんだから」
「えっ?照れるぜ……」
「別に褒めてなかったよ?慎司」
分かってるよフェイトちゃん、そんな心底不思議そうな顔を浮かべるな。
「にしてもなんか今日の慎司はいつもより落ち着いてるわね、アンタの事だから運動会に向けて騒がしくするかなって思ってたのに」
「おいおい、俺を何だと思ってんだアリサちゃん」
確かに運動会は楽しみだが精神年齢はもう30歳ですよ?そこは大人らしく余裕の態度で楽しむのが肝なんだよ。
「当日はそんな風に騒がしくしたりしないで落ち着いて余裕を持った態度で勝負に臨むのさ。それこそ俺達赤組が勝つための秘訣さ、伊達に柔道で勝負事ばかりしてきた訳じゃないんだぜ?」
と、少しドヤ顔でキメてみるがフェイトちゃん以外皆んなの視線は何だかえっーって顔をしている。フェイトちゃん可愛らしくキョトンとしていた。
「ん?何だよ?」
「にゃはは……と、とにかく当日は楽しみだね慎司君」
なのはちゃんの困った笑顔が気になりつつも俺はそうだなと冷静に返す。ふむ、何を不思議がってんだろう……まあいいか。明日は頑張るか。
…………………………。
「よっしゃああああああああああああ!!!テメェらぁ!!死ぬ気でついて来いヤァ!!」
おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!
こだまする雄叫び。運動会当日、冷静さとは余裕さとは何だったのかと言いたくなるほどの光景が広がる。荒瀬慎司を筆頭に咆哮を上げる赤組の男子生徒たち。慎司より上級生のはずの5、6年生の面々も彼に続いていた。赤組の女子生徒たちは皆んな引いていた。
ちなみにまだ運動会は正式に始まっていない。開会式の全校生徒入場の場面である。そう、競技中ではない。
「いいか貴様らぁ!!死ぬ気で勝つぞぉ!!」
うおおおおおおおおおおおおおお!!
慎司が何か言うたびに盛り上がる赤組男子。もはや止められない、
「はぁ……何が落ち着いた態度なの慎司君」
以前のメイドカルト教団の事件を思い出し頭を抱えるのは高町なのは。まあ、こうなる事はフェイト以外の荒瀬慎司と仲のいい面々は予想できていた。だって毎年この調子なのだから。毎年彼は運動会になると熱くなる。某天候を操るテニスプレイヤーの如く熱くなるのだ。
「そ、それでは続いて赤組代表生徒の選手宣誓です。代表者は前へ」
慎司が騒ぐ中も開会式は滞りなく進んだ。ちなみに教師が誰一人騒いでる慎司を注意しないのはもはや聖小の名物と化しているので公認みたいなものであるからだ。………それでいいのか私立小学校。
「よっしゃあああああああ!!!」
雄叫びを上げながら前へ出るのは赤い鉢巻を額ではなく腕に巻く荒瀬慎司。
「えっ、何で慎司?」
フェイトがそう声をあげるのも無理はなかった。開会式等は既に予行練習などで何度も全校生徒がこなしているが選手宣誓の代表は赤組も白組も最上級生の6年生の先輩が勤めていたはず。現に先に選手宣誓をしていた白組は予行練習時と同じ人だった。
前に出ながら慎司はどこかへ親指を立てながら頷いていた。その先を見ると本来代表で前へ出るはずだった先輩がこれ以上ない笑顔と親指を立てて頷き返していた。なるほど合意の上で交代したのか。……それでいいのか6年生。
「宣誓!我々赤組は………勝利をもぎ取ります!!」
うおおおおおおおおおおおおお!!
「精一杯頑張ればいい?負けても全力を出せばいい?そんな軟弱な考えの奴は我が赤組にはいらない!!我々は勝利以外は許されない!勝つ事にこだわり、勝つ事だけを考えて、貪欲に白組から勝利という美酒をもぎとるのだ!!」
うおおおおおおおおおおおおお!!
「いいか貴様らぁ!!我々赤組の誓いの言葉を思い出せぇ!……白組は!?」
『『『ぶちのめす!!』』』
「それを邪魔するものは誰であろうと!?」
『『『ぶっ飛ばす!!』』』
「しかし女の子には!?」
『『『蝶を愛でるように優しく!!』』』
「だが勝利の邪魔をしてきたら!?」
『『『それでも優しく!!』』』
「惚れた女に!?」
『『『いいところを見せたい!!』』』
「よしよく言った軟弱ども!!その願いを叶えたければ俺に黙ってついてきやがれぇ!!」
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!
ボルテージは最高潮に、赤組は気魄によって雄叫びをあげ続け開会式を続行不可能にした。
「もうやだこの学校」
なのはちゃんの言葉に赤組の大半の女子が同意を示すように頷いた。
…………………………………。
さて、ここからは各競技をダイジェストでお送りしたいと思う。
赤白対抗 応援団による応援合戦
「犬畜生どもがあああああ!!!ギッタンギッタンにしてやるからかくごしろやああああああ!!!」
『うおおおおおおおおおおおお!!!』
「あれ応援じゃなくて宣戦布告だよね?」
「フェイト、慎司の言う事にいちいち疑問を抱いたらキリがないわよ」
学年別綱引き対決
「オラ野郎ども!死ぬ気で引っ張れぇ!!これは運動会じゃなく俺達の聖戦だ!ぶち抜くぞおおおおおおお!!!」
『うおおおおおおおおおおおおお!!!!』
「あ、相手の白組の選手ごと引っ張られたね」
「もう慎司君だけでいいんじゃないかな?」
「他の学年の男子もあんな感じだもんね」
「あ、けど負けちゃってるとこもちらほらあるみたいだよ?」
「流石にガッツだけじゃ勝てないわよ」
大玉転がし
「オラァ!ふっとべや!!」
「慎司君!玉を転がす競技だよ!?ゴールに向かって投げ飛ばす競技じゃないからね!?」
「ていうかよくあんな大玉をゴールまで投げれたわね」
「………柔道やってるからかな?」
「多分関係ないよフェイトちゃん……」
というわけで各々なんだかんだと楽しみながら運動会の競技は進行していき、進行が半分まで進んだ所でお昼休みが宣言された。生徒は皆んな待ってました言わんばかりに家族の待つテントやレジャーシートへ走っていく。さて、俺らも行くとしようか。
「よっしゃあ!午後にも決戦は控えてるからなぁ!ここで英気を養うぞおおおおおお!!」
「うるさいで慎司君」
「あ、すいません」
俺の両親と高町家と一緒に応援に来てくれたはやてちゃんに反射的に頭を下げる。そんなはやてちゃんは少々げんなりしていた。
「………いつも慎司君は運動会だとああなん?」
「そうね、いつもよりかなりうるさくなるわ」
「うるさいというか騒音というか公害というか」
アリサちゃんとすずかちゃんが辛辣である。ていうかすずかちゃん公害って何だよ。ちなみにすずかちゃんとアリサちゃんの両親はお仕事の都合上来れてない、いつもの事だと2人は涼しげだ。まあ、すずかちゃんの姉の忍さんは恭弥さんに会いに行くついでに応援に来てくれている。
「でも、いつもより元気な慎司のおかげで何だかんだ皆んな楽しそうだよね」
辺りを見渡しながらフェイトちゃんがそうぼやく。確かに最初は女子達や挑発されてる白組はげんなりとしていたが俺の熱気に釣られてか俺達と同じように盛り上がっていたとは思う。
「そうか?普通だろ?」
「絶対普通じゃないよ慎司君……」
そうかななのはちゃん?皆んなこれくらいは楽しむもんだろ。
「あ、リインフォース。そこのお弁当広げてくれへんか?」
「はい、すぐにでも」
一緒に来たリインフォースも何だかルンルンである。まあ、リインフォースからしてみれば物珍しい催しだろうし見ていて楽しいのかもしれない。
「何だか楽しそうじゃんかリインフォース?」
「ああ、見ていて楽しい。特に慎司がはしゃいでる姿が愉快でな」
「あれ?貶された?」
「…?そんな意図はないが?」
「いとおかし」
「いとようじ」
「いとおしむ」
「いと………」
「はい、リインフォースの負けー」
「むぅ……」
言葉遊びで俺に勝とうなんざ100年早いぜ
「ねぇねぇはやてちゃん……リインフォースさんどんどん慎司君に毒されてない?」
「あ〜、まぁ本人が楽しいそうやからええかなって……」
「…………不安だ」
ひそひそとなのはちゃんの耳打ちに困ったように笑うはやてちゃんを見てそうぼやくなのはちゃんであった。
昼休憩も終わり運動会は後半戦へ。赤白両軍とも接戦に接戦を重ねて互いの得点はほぼ同点と言った所に。最後の学年対抗別リレーにて決着は委ねられる事となった。そして、俺たち4年生の番に。ここで勝って得点を重ねたい所だ。
「うっしゃあ!!いくぞ野郎ども、足がちぎれてでも走るんだあああああああああ!!!」
『おおおおおおおおおおおおおおお!!!』
「ねね、荒瀬君荒瀬君」
気合を入れてる所にクラスメイトの女の子に肩をツンツンとされる。
「ん?どしたの?」
「私達も参加するリレーだよ?野郎っていうのはちょっと……」
まさかの苦情である。
「………………よっしゃあ!!我がクラスメイト達よ!!相手をぶちのめしてでも先にゴールするぞおおおおおおおお!!!」
わあああああああああああああ!!!
上がる歓声、今度は男女共に。女の子は満足げにしながら歓声に参加する。ていうかフェイトちゃんの言った通りなんだかんだ女の子達も俺達と一緒に盛り上がってくれてたようでよかった。
「……うう、胃が痛い」
「だ、大丈夫だよなのはちゃん、いくら今の慎司君でも運動が苦手で足が遅いなのはちゃんには優しくしてくれるよ」
すずかの容赦のない言葉だった。
「抜かれたやつ、距離をさらに離された奴は覚悟しておけぇ!!地獄送りだぁ!!」
「…………多分」
「すずかちゃぁん………」
高町なのは、涙目である。今のところ本当に慎司が競技で誰かが負けて制裁を下す所は勿論なかったしむしろ励まして気にすんなっ……なんて言っていたが勝負のかかってるリレー競技となると特に走るのが苦手な高町なのははお腹を押さえるくらいはプレッシャーを感じた。
「俺の前の走者はなのはちゃんだったな、しっかり頼むぜ!」
「う、うん……アンカーの慎司君にちゃんとバトンを繋げられるように頑張るよ……」
「……どした?お腹痛いのか?」
「だ、大丈夫大丈夫。ちょっと緊張してるだけ」
「まあ、いくら運動苦手ななのはちゃんでもまさ凄い大差つけられるって事はないだろうから気楽にいけよ?」
ちょっと心になにかが刺さった。
「う、うん……頑張る」
「まぁ転ぶとかバトンを落とすとかポカしなければ大丈夫さ」
プレッシャーは倍増した。
「………そ、そうだね…」
「とにかく頑張ってくれればいいか、追い抜かれても距離を離されても俺が何とか……できる範囲で頼むぜ?」
「ねぇわざとやってない?」
「あ、今更気づいたの?察し悪いのうなのはちゃん」
「ちょっと!?またからかったね!!」
ポカポカポカポカ、対する慎司はほっぺをびろーん。クラスメイト達はまた始まったというかのようにやれやれとしていた。
パァンと空気砲の破裂音を響かせながら4年生の対抗リレーが始まる。4年生は全部で4クラスと大所帯なので見応えのある人数だ。俺のクラスともうひとクラスが赤組で残りの2クラスが白組ではあるが対抗リレーではそんな事は関係なく各々自分達のクラスが一位となるべく熾烈な争いを繰り広げる。
「おっしゃあ!!いけぇアリサちゃん!ぶちぬけぇ!!」
「うっさいわねぇもう!!」
とか言いながらも好スタートを切り1位でリードを広げるアリサちゃん。
「いいぞすずかちゃん!いつも思ってたけどなんでそんなに身体能力高いんだ!?プロテインか!?」
「慎司君後でお話ししようね!!」
それなのはちゃんのお家芸と思いつつなんだかんだ途中抜かれてしまった分を取り戻すすずかちゃん。
「フェイトちゃん!今の君はファイズアクセルフォーム*1だ!10秒間だけ無敵だぞ!」
「………魔力を使えば何とか…」
「ダメ!それはダメだ!?」
フェイトちゃんの足の速さは標準といったところだった。
接戦接戦が続き4クラスともほとんど並走の状態でアンカーの手前の走者にバトンは渡される。俺達のクラスは鈍足のなのはちゃん。なのはちゃんはちょっと緊張した面持ちでバトンを受け取って走り出す。とはいえっても急に足は速くなるはずもなく他の3クラスに徐々に引き離されていくが。
「頑張れ高町!」
「高町さんがんばれー!」
クラスメイト達の必死の応援に応えようと思ったよりも食らいついて頑張っている。俺が想定してるより引き離されないで頑張っていた。しかし
「あっ」
それが祟ったのか不明だが足をもつれさせて前に転んでしまう。顔を打たないように両腕でガードしたのとバトンを離さなかったのは流石と言うべきか。そしてへこたれずにすぐに立ち上がり走る。転んだのは仕方ない、頑張った証拠だ。
「気にするな高町!頑張れぇ!!
俺達のクラスメイトもそんな事全く気にしていない。しかし勝負のかかっている対抗リレー、俺達ならともかく他の学年の赤組の生徒たちからは悪気はなくてもつい落胆の声をあげてしまう子もいた。
それも仕方ない、ただでさえリードされてる中での転倒だ、わざとじゃなくてもそう声を上げてしまうのは仕方ない。
既に俺以外のアンカーはバトンを渡されスタートしたところだ。遅れてなのはちゃんも俺に渡そうと腕を伸ばす。かなりと言わずとも少しリードを取られた。俺がアンカーなのはクラスで一番足が早かったからだがそれは他も同じ、追いつけるかは分からない。けど
「ごめんっ!」
そう、ちょっと申し訳なさそうにバトンを渡してくるなのはちゃんを見て俺は。
「ふぇ?」
なのはちゃんがとぼけた声を上げる。そりゃそうだろう、俺はバトンごとなのはちゃんを横抱きにする形で持ち上げたのだから。
「……嘘でしょ慎司君?」
「一緒にゴールするぞなのはちゃん!!」
「やっぱり〜〜〜!!!」
なのはちゃんの叫びをbgmに走り出す。周りの観客や生徒達からは驚きの声。
「わっはっはっは!!こういうのは楽しんだもん勝ちじゃボケェ!!!」
「序盤と言ってる事違うよ!?」
といっても勿論負けるつもりは毛頭ない、なのはちゃんを抱えたまま全力で走る。アンカーは他の走者の2倍の距離を走る、そこに勝機はある。
「流石慎司だ!」
「おれたちにできない事を平然とやってのける!」
「そこにシビれるあこがれるゥ!」
「頑張れ荒瀬君ー!」
「高町さんと一緒にだよー!」
クラスメイトの面々も俺の行動を良しとしてくれる。
「アンタそこまでやるなら一位取りなさいよー!!」
「なのはちゃん振り落とされないよに気をつけてね!!」
「頑張れ慎司!今の慎司はン・ダグバ・ゼバ*2……だよ!」
3人の応援も糧にする。てか待ておい、フェイトちゃんまだそれ言ってんのかいい加減にしろ。
「ダメだよ慎司君!私を抱えたまま走ったら追いつけるのも追いつかなくなっちゃうよ!」
「そうだな!!ちょっとなのはちゃん重いな!太ったかな!?」
「大声でなんて事言うの!?成長期!太ってないもん……太ってないもん!!」
「ごめんて!確かに成長期だな、けど重くなったもの事実だから気をつけろよ?」
「私に対してはほんっとにデリカシーないね慎司君!!?」
怒りつつも俺の走りを邪魔しないようにか頬を膨らませるだけで済ますなのはちゃんにほっこりしつつも足は緩めない。なのはちゃんの言う通りこのまま走るのは本来出せるスピードを出せないことになる。
しかし勝算はあった、一つは俺の肉体。確かに小学生4年生の肉体の俺だが実年齢は30の元スポーツマン。どうすれば効率的かどうすれば効果のあるトレーニングになるかその知識を持って日々トレーニングを重ねてる俺の肉体は年齢に比べれば一線を画してると自負してる。いくらなのはちゃんを抱えながらとは言っても短時間なら重さなど感じないに等しい。
足の速さも言わずもがな、クラスどころ学年ではタイムは一番速い。そしてさっきも言った距離、皆んなより倍の距離もあるのならチャンスはある。そら、他のアンカー陣は顎が上がってきて減速し始めたぞ。俺のスタミナはこんなもんじゃ切れないぞ!
「ふはははは!!さらに加速じゃああああああ!!!」
「ちょっ、速い!?速いよ慎司君!?」
なのはちゃんの悲鳴を無視してさらに足を動かす。もっとだ、もっと早く。なのはちゃんと一緒に一位でゴールするんだ。
ゴールまで20メートル、1人抜いた。10メートルでまた1人……あと1人だがもうゴール直前っ。
「うおおおおおおおおおおおおお!!!待て貴様あああああああああ!!!」
俺の雄叫びにビクッとびっくりして一瞬動きを止める前の走者。そんなつもりなかったけどこれは好機だ。その一瞬が命取り。
「いけぇ慎司!!」
誰かの声援に後押しされ紙一重の差で俺は……最初にゴールテープを切る。なのはちゃんを抱えたまま、俺は一位をもぎ取った。
『うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』
『すげぇ!!』
『流石は荒瀬慎司だ!』
『転んだ女の子を抱えて一緒にゴールなんてロマンチックだ〜〜』
辺りは歓声に包まれる。それに俺は笑顔と腕を振って応える。
「ほれ、なのはちゃんも手くらい振れよ」
「えっ……あ、うん……」
少し呆然としているなのはちゃんにそう声をかけて遠慮がちに手を振るなのはちゃん。チラチラとこっちを見て何か言いたげななのはちゃん。
「どうした?」
「いや……なんかごめんね。私の為に気を使わせて」
「バーカ、んなんじゃねぇよ」
なのはちゃんが転んで悲しそうにしてたからああいう無茶苦茶な行動を取ったのかと言われれば全くそうじゃないとはいえない。そんな悲しそうな顔を吹き飛ばすほど驚かせてやろうと思ったのは事実だから。けどそれよりも
「ああした方が盛り上がるし楽しそうだったろ?」
「も、もう……」
困ったようにするなのはちゃんに笑顔を向けつつ思う。俺の行動理念なんてそんなもんだ、俺はこの第二の生を全力で楽しむ決めているのだから。
「………でも、ありがと」
「おうよ、ちゃんと運動しておけよ?」
「それは運動音痴だから?それとも体重の話?」
「いや、後者に決まってんじゃん」
「叩くよ!?」
なんて会話も楽しんでいる。
ちなみに勝敗は奇跡的に赤白同点で荒瀬慎司は
「延長戦じゃああああああああああ!!!」
と大騒ぎを始め収拾がつかなくなったのはまた別の話である
次回も幕間です!