転生しても楽しむ心は忘れずに   作:オカケン

41 / 75


 俺の愛馬が!!サイレンススズカが!!当たらない!!


そしてfgo6章後半も終了!だから執筆が進まなかった。いいね?全てはfgoごいけないんだ!


努力を続けて

 試合当日、数日前に一本背負いの件でモヤモヤとした気持ちを抱えてしまったものの翌日にはしっかりと切り替えて試合に向けて準備を進められた。気分は……悪くない。程よい緊張感と集中出来ていることが実感できる。いつも通り自分がしてきた努力を信じるだけだ。試合前の控え室のような場所で小道場が隣接してる、俺はそこでストレッチをしながら自身の試合を待つ。

 

 今日も俺の両親と高町一家と八神家の面々、フェイトちゃん達友人達にアルフも。何と今日は時間がたまたま合ってクロノとリンディさん、エイミィさん、ユーノも駆けつけてくれている。4人とも応援に来てくれた事は初めてではないのだが4人揃うのは珍しい。既に皆んなとは挨拶は済ませてある、こんなに集まってくれたんだ……無様な試合は出来ない。

 

「荒瀬選手、5試合後に出番なので会場までお願いします」

 

 会場スタッフにそう告げられ返事をして会場に向かう。まずは初戦……やるぞ!

 

 

 

………………………。

 

 

 

 

 

 相対する初戦の相手は初めて見る顔だった。少し細身の印象だが身長が高い、後腕も長いし足も長い。こういう手合いは間合いに気をつけないとその体を利用して大外刈なんかで狩られる危険がある、そこを警戒しないとな。礼法を行い前に出る。

 まあまあ広い会場の筈なんだが観客席から皆んなの声が聞こえて来た。……ありがとう、その応援がいつも俺の背中を叩いて励ましてくれてる。

 

「始めっ!」

 

 主審の開始の合図と共に間合いを詰めるべく組み手を仕掛ける俺。あんな腕が長いんじゃ下手に間合いを置いたらその長さを利用されて俺が届かない距離を陣取って組み手を封じられてしまう。それを回避するためだ。

 しかし、相手はその対応に慣れてるのだろうすぐに反応して自身は距離を離すべくまず後ろに下がった。

 

 だが、それは悪手だよ。

 

 相手が後ろに下がろうとしたところで俺は一歩を踏み出して一気に距離を詰めた。

 

「っ!?」

 

 相手の一瞬驚いた顔に内心ほくそ笑む。油断したな、最初に距離を詰めようと動いた時はわざと遅く動き出して相手がどう動くか確認したかったのだ。そして後方に下がろうとするのならその動きに合わせて一瞬で距離を詰める。所轄フェイントに近い。

 そして相手が後ろに体重を乗せてる間に一瞬で俺は両手を理想の組み手で持つ。左手は相手の右手の肘下に、右手は相手の襟……理想とされる耳の下くらいの位置。そのまま相手の体重移動を利用して後ろに倒す技、大外刈を仕掛けるように左足を相手真横に踏み出す。

 そこで相手が冷静さを取り戻して大外返しを行う動きに入った。足が長い選手は足に対して直接掛ける技、それこそ大外刈や大内刈に対して受けが強い。足が長いのはそう言う利点もあり強さだ。中でも厄介なのは大外返し、投げるつもりで仕掛けたら速攻に返されて逆に投げられるなんて事はよくある事だ。

 

 恐らく相手もその高身長で数々の返しを行なってきたのだろう、実際に上手くて感服する所だ。しかし、勝ちは譲らない。相手が後ろに掛かった体重を無理やり前へと体を移動させた時は俺は大外刈を仕掛けるように見せかけた踏み出した左足をそのまま、体を寄せた所で瞬時に相手に向かって前へも投げる支釣り込み足へとシフトチェンジした。

 

 いわゆる連携技、相手が大外刈に反応して前へと体重をかける事を見越しての切り返しだ。相手はそれに反応できず綺麗に回転しながら前へと背中で倒れ込む。

 

「一本!それまで!」

 

 なのはちゃん達の応援席が湧く。普通、支え釣り込み足だと一本にはなりにくいんだがここまで綺麗に決めれたのは一重に技の練度を上げれた証拠だろう。自身の努力による成果を目の前にして心の中でガッツポーズをしながら礼法を行って畳を後にする。

 

 チラッと相手選手の様子を窺う。悔しそうに瞳に涙を溜めて体を震わせながら会場を後にしていた。………勝った選手は負かした選手の想いも背負って次の試合にも臨まなければいけないと前世で言われた事がある。それには完全に同意だ、しかし………それを分かってて俺は逃げちまったんだな。あの時。………情けねぇ。

 

 雑念を振り払うように俺も一度小道場に戻って次の試合に備えるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………………。

 

 

 

 

 

 

「やあああ!!」

「くっ!」

 

 相手選手の気合と共に繰り出される背負い投げを体感と体重移動で耐える。しばし力のせめぎ合いが続き先に折れたのは相手選手、前に倒れ込んだ所を寝技を仕掛けるが既にガッチリと防御を固められて手の施しようがなかった。俺はすぐに仕掛けるのをやめて立ち上がり試合が膠着したと見せて審判に『待て』を促す。

 

 通じたようですぐに待ての宣言をすると、俺と相手選手は開始線に戻る。互いに道着の乱れを治すように主審に支持され道着を整えて帯を締め直しながら考えを巡らせる。

 

「(くそ、流石決勝戦だ。やっぱり一筋縄ではいかないか)」

 

 一回戦の後から続く2回戦から準決勝まで危なげなく勝ってきたが決勝戦は既に残り時間を1分となる所だった。このままだと両者ポイントが無いので延長戦に突入してしまう。スタミナには自信があるから問題ないがわざわざ延長戦まで持ち込ませる事もない。

 

「(さて、どう攻めるか)」

 

 技は通じてはいると思うが受け方が上手く中々ポイントに結びつかない。既に色々な技を繰り出して仕掛け続けているが警戒されてしまってる。ならば……よし。次の攻めの方向性を固めた所です両者共、道着の乱れを直し終わりそれを確認した主審は『始め』と宣言した。

 

「っ」

 

 強引に掴みかかってきたのは相手選手。俺はそれに応じる形で捌く事なくお互いにガッチリと組み合う。しかしそこで俺が行ったのは技へ繋げるための動きではなく。

 

「ふっ!!」

 

 相手を振り回す事だ、腕が体捌き、体のあらゆる力全てを使って相手を翻弄させ振り回す。やっぱりな、ずっと相手は攻めよう攻めようと躍起になっていたのでそろそろ足にガタが来ていたようだ。最初なら相手も俺が力で振り回そうとした所で体幹で耐えれただろうが今までに無い俺の行動で警戒してなかったのも相まって俺に好きに振り回されている。

 

 しかし、これでは技には繋げられない。相手が大きく崩れすぎなのだ、これでは逆に技を掛けれない。

 

「ぐっ!!」

 

 相手はここでようやく力を込めて俺に抵抗を示した。その瞬間相手は完全に力んで体に力が入るが懐は甘くなった。

 

「(今、すごい一本背負いのチャンスだったな)」

 

 反射的にそう考えてしまったが、動きには出さず俺は相手の抵抗する力を上回る力で相手を下に引き落とす。結構柔道力を鍛えるためのトレーニングだってやってんだぜ?

 

 たまらず相手は膝をついて前に倒れ込む。その一瞬だ、相手がしっかりとした寝技の防御態勢になる前に俺は左手は離して右手の襟を掴んだまま相手の背中に覆いかぶさるように密着する。そして自分の体ごと相手を横回転でひっくり返す。こうもたやすくひっくり返せたのは俺が仕掛けるのが早かったことと相手の襟を掴んでる右手が効いてるからだ。

 

 そのまま逃げようとする相手を流さず相手の上になって抑え込みに入る。横から相手に乗って押さえ込む横四方固めだ。

 

「抑え込み!」

 

 審判のその宣言と共に抑え込みタイマーが始動する。一本にするには20秒間相手を逃さず抑え込む必要がある。しかし、かなりガッチリと抑え込んだので逃がさない自信があった。相手も必死に逃げようとするが立技だけでなく寝技の修練も欠かせなかった俺の抑え込みを逃げるのに20秒じゃ足りねぇよ。

 

 ブザーがなり20秒が経過した事を知らせる。審判からの一本の宣言を聞いてから俺は体の力を緩めて相手を離す。そのまま開始線に戻るが相手は悔しそうに涙を浮かべて寝そべったまま天井を見上げて中々立ち上がらなかった。

 やがて審判に促されてようやく立ち上がって互いに礼法をしてから畳みを後にする。

 

「ふぅ………」

 

 ため息のような安堵の吐息をもらす。これで……小学5年生の部の優勝は俺に決まった。……うしっ。練習の成果は十分に感じられた。また一歩前進だ、これからもっと実績を上げて強化選手に選ばれるのを目標にまた頑張ろう。そう決意を新たにしているとどたどたと騒がしい音が。なんだ?と思いそこへ振り返ると

 

「優勝おめでとう慎司君!!」

 

 なのはちゃんを皮切りに友人達が俺を祝福すべく取り囲む。お疲れと肩を叩いてくれたり、いい試合だったと満足げに言ってくれたり、感極まって興奮したように抱きしめてくる。最後のはなのはちゃん、このアホは何度優勝してもいつもこんな感じなのだ。

 

 大人達は遠目から微笑ましげにそれを眺める。あ、クロノとエイミィさんもそっち側だった。

 

 皆んなに揉みくちゃにされた後ようやく解放されてから応援してくれた大人達へ頭を下げに行く。皆んな口を揃えてかっこよかった、いい試合だったと言ってくれる。そんな中、後ろから声をかけられる。この声は……リィンフォースだな?そういえばさっきから見ないと思ってたら

 

「どうしたんだリィンフォー……す?」

 

 振り返りリィンフォースの姿を認めると俺は言葉を詰まらせた。

 

「いい試合だった。とてもかっこよかった。流石慎司だ、私の心も嬉しくてキュンキュンだ」

 

 そんなよく分からんことを口走るリィンフォースの姿は昨日の珍妙な装備のうち一つの襷だけを身につけていた。実はあの時、俺はめんどくさくなってせめて一つに絞れと言った。確かに言ったがよりによって襷か。あいも変わらず慎司LOVEと書かれた襷を選んだか。………クソがっ。

 

「リィンフォースこの野郎、お前襷の文字せめて変えろや」

「む?気に入らなかったか?なら……これならどうだ?」

 

 そう言うとリィンフォースは襷を身につけたままひっくり返した。そこにも文字がありそこには『慎司しか勝たん』。襷のリバーシブルなんて聞いたことねぇよ。ていうかもう内容も意味不明だよだれか助けてくれ。

 

「あ、うん。もうそれでいいや」

 

 襷つけてても目立たないようにしてくれてれば人の目も引かなかっただろうし俺も恥ずかしい思いをしなくて済んだろう。

 

「応援席の真ん中で立ち上がって大きな声で応援してくれてたんだよ?リィンフォースさんにちゃんと感謝してあげてね?」

「バッファ!!?」

 

 驚いて変な言語が出た。くそ、目立ってたんだろうなぁ……色んな人の目に触れたんだろうなぁ……慎司LOVEがみんなの目に触れたんだろうなぁ。リィンフォースぇ……

 

「リィンフォーステメェ心中するぞコラ」

「うん?それは駄目だ、死ぬのはわたし1人だけでいい。慎司は生き続けてくれ」

「ああ?テメェも死ぬなよ生きろよ」

「ならば共に生きよう」

「「えんだああああああああ!!いやあああああ!!」」

 

「いや騒がしいよ2人共!?」

「あかん……想像以上にリィンフォースがどんどん慎司君に毒されとる」

 

 なのはちゃんとはやてちゃんがなんか嘆いているが気にしない事にした。

 

 

 皆んなで優勝の喜びを分かち合うようにふざけつつも俺はチラリと会場の出方の方を見る。既に決勝の相手の姿はない。彼は負けた事実に悔し涙を浮かべていた。涙を浮かべるのはそれだけ本気だったという事、きっと今頃人目のつかない所で大いに泣いているだろう。……俺もそんな経験は沢山してきた。そして勝ったものはその人の掛けた想いも背負って今後も頑張り続けなきゃいけない。全身全霊を持って……全力で……。

 

「………くそ」

 

 誰にも聞こえない声でそうぼやく。試合には勿論全身全霊を掛けた、全力で取り組んだ。……一本背負いを使わないでの全力だ。そのような事実がある中で俺は本当に負けた人の想いも背負えているのだろうか?………仕方ないだろ?好きで使ってないわけじゃない。……じゃないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………。

 

 

 

 

 

 

 大会から1週間、気持ちを切り替えて再び柔道の練習へと打ち込む日々を送る。次の出場予定の大会はおよそ1ヶ月。この間の大会よりも小規模の大会だが出れる大会は全て出て経験を積むのも大きな大会で勝つ秘訣だ。

 

 そして、今は小学生の本分として学校で授業を受けている最中だ。しかし、今に始まった事じゃないが小学生の授業となるとやはり退屈である。別に前世は学力は高い方では無かったがいくらなんでも小学生の授業内容を忘れてるほど不真面目に取り組んではいなかったからな。しかしまぁ、サボって先生に目をつけられるのも嫌なのでしっかり受けてるふりはする。

 

 既に目はつけられているがこう言う授業とか普段の生活態度を良くしておけばいざって時ふざけてもある程度は許してもらえるのだ。大人としての知恵である。しかし、ちょっと退屈だから隣の席のなのはちゃんでも茶化してやろうかと視線を送る。

 

「………すぅ」

「……マジか」

 

 あの真面目な……真面目で真面目ななのはちゃんがうつらうつらと居眠りしそうになっている。かくんっと頭が下がりそうになるのを堪えて持ち直してまた下がっての繰り返しである。

 

「(そういえばここのところ眠そうにしてた時も何度かあったな)」

 

 ふとそう思った。この間の大会の優勝祝いのいつものパーティーも途中で眠そうにして早めに休んでたし、夏休みが明けてから……いや始まる前くらいからよくあくびをしているのを見かけた気がする。俺も何度かそれを指摘して揶揄ってた覚えがある。

 いくらなんでも……ちょっと多いんじゃないか?寝不足?疲れてる?

 

 パッと浮かんだのは管理局での仕事。やはりいくら魔法の才能があるからって小学生の体にはキツい部分もあるんじゃないか?いやしかし管理局もそんな小学生相手に鬼のように仕事させてるとも思えないしな……。俺が考えた所でしょうがないか。授業中に寝ちゃうほど疲れてんならこのまま寝かせてあげよう。

 

 

 

 

 

 

 

………………………。

 

 

 

 

 

 

「なんて事が最近多くてな、フェイトちゃんは大丈夫なのか?」

 

 放課後。アリサちゃんとすずかちゃんは車でのお迎えでそのまま習い事に、なのはちゃんは管理局に行かないといけなかったらしく慌てて先に向かっていった。

 フェイトちゃんと2人きりの帰り道になのはちゃんがここの所疲れてる様子が多々あった事を伝えて実際管理局のお仕事はどうなんだ?って所を聞いている。フェイトちゃんはうーんと少し唸った後に分かりやすく教えてくれた。

 

「実際お仕事って言っても私もなのはもはやてもまだ管理局員としては新米?って言うのかな……だからお仕事をしながら管理局で必要なお勉強や訓練もしてるんだ」

 

 そう言うフェイトちゃんの言葉に俺はなるほどと思う。そりゃそうか、いきなりあなた魔法使えるから実戦で頑張ってください……ってわけにもいかないのか。

 ジュエルシードや闇の書の時のケースは特殊だからなのはちゃんやフェイトちゃんはガッツリ関わっていたけど管理局員として正式に入隊するのならちゃんと段階的にやる必要はあるよな。色々慣れない勉強や訓練で疲れてる中での実戦演習という形の管理局の仕事。フェイトが言うにはちゃんと周りの先輩局員達のサポートもある中でとは言え命に関わる事もしていく魔導師ならそれくらい厳しくする必要はあるって事なのだろう。

 

 まぁ、それにしたって万が一があるのだからなのはちゃんには疲労を感じてるならちゃんと落ち着いて休息も取ってほしいところだけど。

 

「なのは、慎司に負けられないからって凄く頑張ってるから」

 

 そう言って微笑ましそうにするフェイトちゃんを見て俺もあんまり外野からガヤガヤ言うのは避けた方がいいかなって思った。心配するのも結構だが過度に干渉してなのはちゃんの努力を邪魔する形になってしまうのは嫌だから。なら俺はなのはちゃんを信じてもう少し様子を見る事にしよう。何、本気でヤバそうな時に余計なお節介をさせてもらえればいいだろ。

 そう心に決めて俺は一旦この話を終える事にした。

 

 

 

 

 

 

 ………………………。

 

 

 

 

 

 日々は過ぎていく。俺は柔道を、なのはちゃんは魔法を。努力を重ねて、重ねて、頑張る。辛い思いをしながら成長をしていく。『生きてる』って感じがしていた。充実した気持ちで俺はいられた、一本背負いの事で後ろ髪を引かれるような気持ちになる事はある。けど、やりたい事で頑張り続ける事の幸せを、尊さをよく知る俺はそう在れる今が凄く荒瀬慎司としての生を全うできると感じていた。

 

 そうだ、頑張り続けるんだ。柔道も、何もかも全部。

 

 

 

 

 

「ペペロンチーノだこの野郎!!」

「いきなりどうしたの!?」

 

 びっくりした様子のなのはちゃんを見て満足しながら俺は桃子さんが作ってくれたケーキに舌鼓む。場所は翠屋、練習帰りに寄ったのだ。そしてなのはちゃんも一緒である。うめぇ、相変わらずうめぇ。なんでこんなに美味しいの?天才かよ。

 

「桃子さんケーキめっさ美味いです。あと5000くらいいけます」

「あらあら、食べ過ぎは体に悪いからもう3個だけよ?」

「お母さんお母さん、その時点で食べ過ぎだよ。あと慎司君、私の耳元で奇声を発した件は見逃さないからね?お詫びに慎司君の一口ちょうだい」

「あげませんっ!!」

「あむっ……そう言いながらいきなり口に突っ込むのは危ないからやめてね?」

 

 ジト目でそう言いつつも満足げにケーキを頬張るなのはちゃん。桃子さんはそんな様子を見て嬉しそうに微笑むように笑う。練習の日々を過ごしてあっという間に数週間が経ち、あと1週間と少しくらいで次の大会が控えてる今日この頃。

 

 リフレッシュも兼ねて翠屋に1人でご飯を食べきたがたまたまなのはちゃんもいたので一緒に……と言った流れに。ちなみに俺の両親は管理局の方に出向いてる。母さんは本当は辞めてるはずなのにこうやって駆り出されたりしている。やっぱり技術者としては天才なんだなぁ。その分給金踏んだくってくるって張り切っていた。

 

「あ、なのはちゃんクリームついてる」

「え?ど、どこに?」

「ここだよ、額」

 

 と、俺の額を指差して教える。

 

「え!?嘘っ、そんな所に……」

「んなわけねぇだろアホめ」

「シンプルにひどい!?!久しぶりだから騙されちゃったよ!」

 

 ポカポカとしてくるなのはちゃんにいつも通りほっぺびろーんをお見舞いする。ワッハッハ、一度見抜けるようになったからって油断しちゃダメなんだぜなのはちゃん。

 

「いつもいつもなのはを揶揄って〜、今日という今日は許さないからね!」

 

 プンスカとするなのはちゃんがそう言って取り出したのはゲーム機とポケ○ン。ほほう、ポ○モンバトルで俺を負かそうってか、

 

「俺に勝とうなんざ100年早え!」

「そう言ってられるのも今のうちにだからね!」

 

 負けられない闘いがここにある。

 

 

 

 

 

 

…………………………。

 

 

 

「ずーるーい!ずーるーいいぃ!!」

「ずるかねぇよ立派な戦略だよ」

 

 ただちょっと小さくなるとテッペキを4段強化したツボツボで毒でじわじわ倒しただけやなかい。ちゃんとバトンタッチ使って場を整えてからね。

 

「うぅ、もういいもん。慎司君のバカ」

 

 珍しく子供っぽくプイッとして拗ねてしまったなのはちゃん。なんだか妹に甘えられてる気分になる。俺はなのはちゃんの視線に入るように回り込んでから今度は顔をぐにゃぐにゃして遊び出す。

 

「にゃにすりゅにょ〜」

「なのはちゃんの顔どれだけブサイクに出来るか選手権」

「にゃんてことすりゅの!?」

 

 再びギャーギャー言い出すなのはちゃんとわちゃわちゃと戯れ合う。次第にそんな事ばかりしてたら2人してくたびれてしまい、テーブルに突っ伏する。そして顔はお互いに向けたままで見つめ合う。

 

「………どうだ?魔導師の方は順調なのか?」

 

 ふと、見つめ合ったままそうこぼした。いつも俺が応援してもらってるなら魔法の事を応援したいと思うのは当然の事。疲労が溜まってる事について心配だった事もあるが俺は自然とそう聞いてしまっていた。

 

「うん……まだまだ頑張らなくちゃいけないけどね」

 

 そう笑って言うなのはちゃん。頑張りすぎるなよ……と言葉が出かけたが飲み込んだ。それを言ってしまったら次々と余計な事まで言ってしまいそうだったから。

 

 無理してないか?

 頑張りすぎじゃないか?

 ちゃんと休んでるか?

 

 心配の感情に支配されて一方的に捲し立てるのは嫌だったから。前に頑張りたいと言っていたなのはちゃんの言葉を尊重したかった。

 

 

 何度か疲れた様子を見せていたのは気になったが。だからこそ、俺といる時くらいは楽しそうにはしゃぐか、ぐでっとゆっくりしてほしい。だから、言葉の続きは見つけられず俺は何となくなのはちゃんのほっぺを優しくツンツンとする。

 

「ふふ、もう何〜?」

 

 くすぐったそうにしながらも嫌そう顔をせずに寧ろ楽しげに笑うなのはちゃん。…………なんだよちくしょう、可愛いじゃねぇか。

 

「………また揶揄ってるの?」

「んにゃ、相変わらずほっぺ気持ちいいなと思って」

「すべすべ?」

「ベトベトン」

「殴るよ?」

 

 おうふ、とうとう叩くから殴るに進化した。

 

「なんでそんな揶揄ってばかりなの?」

 

 それは怒って言ってるわけじゃなく単純に気になって聞いてきたような声音だった。実際そうなのだろう。俺は少し返答に迷った。なんで揶揄うの?と聞かれればそれは反応が楽しいからである。そしてなのはちゃんもその事自体は日常の一つの交流として楽しんでくれてるからだ。

 しかし、それを言ってしまうと絶対否定されるし今後揶揄いにくくなる。それは避けたい。上手いこと言おう。

 

「反応が楽しいから」

 

 死ね俺の語彙力。

 

「うわぁ、それ言っちゃうんだ」

 

 なのはちゃんもちょっと引き気味である。しかしまぁ、事実だしな。けど実はそれだけじゃないんだぜ?

 

「後は……そうだな、なのはちゃんを笑わせたいんだな」

「いや、笑うどころか憤慨してる事が多いよ?」

「そうじゃなくて……」

 

 そう、なんて言うんだ?そうだな……

 

「…………心を笑わせたいのさ」

 

 そのまま表情として笑わせたいんじゃなくて、いや表情も笑わせるのが1番なんだけど。日常の一つの出来事として、ありふれた1日の1ページの一コマとして、俺とのやり取りや想い出を思い出すことがその時のなのはちゃんの心を温めるものであって欲しいんだ。

 

 あの時あのバカはあんなアホな事を言っていたな

 相変わらず訳わかんない事ばかりやっていたな

 

 そんな他愛もない事をふとした瞬間に思い出して、俺って言う存在が、俺と言う男との思い出が何となく楽しかったなって、退屈しなかったなって思って欲しい。

 その時だけじゃなく、ずっと先もなのはちゃんの心を温めて笑わせているものであって欲しい。揶揄って反応を見るのもちゃんとそう言う意味合いもあると言えば殆ど無いけどゼロじゃ無い。そう言うやり取りの方が思い出に染み渡るものだから。正直俺が楽しいからって言うのが1番の理由だけど。

 だからまぁ、この心情は表に出さないで俺は意味ありげにドヤ顔をしておく。

 

「意味わかんないよー、あとその顔なんかやだ気持ち悪い」

 

 はっ倒すぞこの野郎。とりあえずさっきよりほっぺグニグニの刑に処した。

 

 

 

 

 

 

 

……………………………。

 

 

 

 

 

 翌日、学校が終わり真っ直ぐ家に帰ってからすぐに道場に向かう。今日は練習はないが相島先生が時間を割いてくれて今日もマンツーマンで特訓だ。いつもなら俺が先に来て道場の清掃をやって準備しておくのだが今日は相島先生が既に来られていた。道場に入る前に一礼して相島先生に声をかける。

 

「おう、慎司か」

「はい、今日もよろしくお願いします」

「道着に着替える前にこれを見てくれ」

「はい?」

 

 間髪いれずにそう告げられ渡されたのは一枚の紙。うちの道場宛……相島先生宛に送られてきた通知書。………日本柔道協会から!?驚きを隠すことが出来ないまま俺は通知書の内容を読み進める。その文面に俺はさらに驚く事になる。

 

「これ………2ヶ月半後の…」

「そうだ、全国小学生強化選手権大会の推薦選手の通知だ……。お前が選ばれたんだよ慎司」

 

 驚いてもう声が出なかった。全国小学生強化選手権大会、前回の大会の前に相島先生との会話で話題にあがった例の小学生柔道家が誰もが夢見る舞台。いつもはある学年別ではなく、柔道協会が認めた真の実力者である強化指定選手と強化選手ではないが実力はあると認められた協会が推薦する選手しか出られない小学生の本当の日本一を決める大会だ。

 正直それに出られる事だけで名誉な事だ、強化選手は全国の選りすぐりの強さを持つ選手しかいないしその中で参加を認められるのも今後強化選手として指名されたも同然なんだ。あの神童も強化選手だからこの大会には出場する筈だ。

 

「……っ、しゃあ!!」

 

 喜びの感情がようやく落ち着いて全身を震えさせる歓喜に声を上げる。努力を続けた、大会にも出場し続けて結果を残してきた。前世でも選ばれる事はなかった強化選手。やった、やったぞ!俺の努力の証明が形になって俺の元にやってきた。

 

「目標は全国制覇……やれるな?慎司」

「……っ!はいっ!!」

 

 声を張り上げる。夢の舞台の切符を手に入れた、それから俺に出来ることはその切符を落とさないよう握りしめ続けて走り続ける事だ。………今度は負けねぇ、神童にも……全国屈指の選手達にも負けねぇ。勝って、俺は俺の人生に胸を張るんだ。それが、前世の失態から顔向けできる俺なりの証明だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………………有頂天になったものには基本的にそれを叩き落とす何かが起こるものだ。そして荒瀬慎司にも……高町なのはにもそれは例外ではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 魅力的なアプリが多くて困る。作者は指揮官でマスターでトレーナーでドクターで騎士君で黒猫の魔法使いでさらに指揮官ですからね。いい加減絞んないと死ぬほんとに

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。