転生しても楽しむ心は忘れずに   作:オカケン

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 sts編スタートです!


StrikerS編
始動


 太陽に照らされた道を悠々と歩く一つの男の人影、機嫌が良さそうに口笛を吹きながら止めていた自身のバイクまで歩くと跨ってエンジンを掛けると辺りにバイクの排気音が響き渡る。

 

「相変わらずうっせぇな!ちょっとは静かにしてろ!」

 

 男の周りには誰も居なかったはずだがそう少し大きい声で叫ぶ男にたまたま通りかかった人はギョッとして奇異の目を向ける。通行人は思った、まさかコイツ自分のバイクのエンジン音に言ってるのか?

 だとしたらとんでもないキチガイだと。真実は分からないが。そんな風に通行人に思われてるとは知らず男は右手の腕時計を覗く。

 

「っべぇ、超遅刻じゃん」

 

 慌てた様子でヘルメットをつけてバイクを走らせる。バイクのエンジン音はその男の好みなのか純正品よりは少々大きい音であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………………。

 

 

 

 

 

 

 

 中学卒業から4年、俺こと荒瀬慎司は19歳になった。管理局入りしてから本当に色々あって今まで忙しい日々を送っている。いや本当に忙しい。まあそれは置いておいてだ。今バイクを急ぎめで走らせて向かってる場所は聖王教会、カリムと会う予定なのだが約束の時間を過ぎてしまっているため少々慌てている。あ、でもちゃんと安全運転よ?前世の最後交通事故だからね、そこら辺は人よりしっかりしますとも。

 ………おっとー!コーナーで差をつけてやるぜえええええ!

 

 冗談だ冗談。ともかく、ちょっと遅れて俺は聖王教会にたどり着く。

 

「やぁやぁ、遅れてすまん。久しぶりだな〜カリム」

「あら、慎司。そんなに遅れてないのだから気にしなくていいのに。それに久しぶりって……先日会ったばかりじゃない?」

「あれ?そうだっけか?」

「忘れん坊ね、シスターシャッハに早口言葉勝負仕掛けてたじゃない」

「あー、そんな事したなそういえば」

 

 教会でバイトしてた時に知り合ったけどアイツもアイツで結構負けず嫌いなとこあるからなぁ……シグナムと剣友って聞くしあんななりで勝負事には好戦的だしなぁ。ちなみにシャッハは青巻紙赤巻紙黄巻紙で噛んで負けてたな。いや、遊びに行った訳じゃねぇよ?ちゃんと仕事の一環で訪問したけど前回のトランプに負けたのが悔しかったらしいから付き合ってあげたのよ。

 

「そんなシャッハは今日はいないのか?」

「ええ、別件でちょっと出てるのよ」

 

 ほう、カリムの側にいるイメージが強いから珍しいな。また遊んで負かしてやろうと思ったけど別の機会だな。どっちにしろゆっくりしてる時間ないし用事を済ませよう。

 

「ほらこれ、今回の遠征の報告書な」

 

 カリムに紙の書類を何束か手渡す。データで送るのもありなんだが直接こっちに来る用事が他にもあったからついでだ。

 

「確かに受け取ったわ……こっちでも慎司の頼み通り調整しとくわね。どう?お茶でも飲んでいく?」

「おう、いつもながら助かるよ。いや、この後六課の編成式もあるからもう行かないとなんだ。アイツ呼んできてくれるか?」

 

 俺がそうお願いするとカリムは通信で何事か告げる。恐らく教会のシスターにお願いしたのだろう。数分ほど待ってると小走りでこちらに向かってくる少女の影が。

 

「ご主人様、お待たせしました」

「…………貴方この子にそんな呼ばせ方してるの?」

「待て誤解だ、俺は別に強制はしてないっ。勝手にそう呼んでくるだけだ!」

 

 少女の一言にカリムからあらぬ疑いの視線を投げかけられる。その少女はと言うと俺が困っていると言うのに顔色一つ変えずキョトンとしている。綺麗な黒髪のショートボブに前髪はギリギリ眼を隠さないくらいの長さ。歳は恐らく15、6くらい。恐らくなのは正確な年齢が分からないから。それより下かもしれないし上かもしれない。見た目的にはそれくらいだ。

 

「おい、ソフィ……お前からも何か言ってくれよ」

「ご主人様が常日頃から私にメイド服を着させてる事をですか?」

「お前が勝手に着てんだろうがっ!」

 

 名をソフィア、ソフィは愛称だ。体型は小柄で少しちんまりとしてる感じ、雰囲気は常時ダウナー系。ダウナー系だが言う事はハッキリ言ってくるし今のように普通に俺に生意気言ってくる事もしばしば。立場はちょっと難しいが俺の部下と言うのが一番正確だろう。ちなみに着用してるメイド服は英国風のクラシカルメイド服、露出が無くオーソドックスな俺の一番好きなメイド服。

 

「たくっ、用事は済んだんだろ?行くぞ」

「はい」

 

 俺がそう言うと素直に俺の後ろをテクテクとついてくる。元々ソフィを迎えに来たのが用事だったのだ。俺は振り返ってカリムに視線をよこし

 

「んじゃ、世話になったな。また来るよ」

「ご協力感謝致します。それでは失礼いたします」

 

 俺はぷらぷらと軽く手を振って、ソフィは深くお辞儀をして教会を後にする。カリムは「いつでも待ってます」と笑顔で2人を見送る。慎司がソフィをバイクの後ろに乗せて走り去ったのを見届けてからカリムは1人呟いた。

 

「……いよいよ……ね」

 

 その呟きは風に乗せられ誰にも聞こえる事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

……………………………。

 

 

 

 

 

 

 バイクを六課の宿舎の駐車場に止めてゆっくりと歩いて編成式が行われてる場所へ向かう。

 

「ご主人様、既に編成式は始まっております。お急ぎしなくても?」

「平気平気、俺達はメインスタッフじゃないしいてもいなくても変わんないからな。はやても俺が遠征帰りなのは知ってるし遅れる事は先んじて伝えてあるから」

 

 いやー、それにしても今回の遠征も参ったなぁ……酷く疲れた。

 

「今回私はついて行けませんでしたが、その様子だと上手くやれたようで何よりです」

「ああ、と言っても今回は数日間の短期遠征だし遠征自体ももう数えきれないほどやってるしなぁ。ソフィがいないのは色々と大変だったが」

「恐縮です」

 

 こいつ作法やら態度はメイドとして完璧なんだよぁ、たまに生意気言ってくるのは困るが別にそれはいいし。

 

「私の体が常に必要だなんてそんな滅相もない……」

「言い方なお前。あと過剰評価すんなよみょうちくりん、言っとくけどその貧相な体どうにかしない限り誘惑もクソもないぞ」

「傷つきました」

 

 だったらもっと傷ついたって顔しろ。相変わらず昔のリインフォースより表情筋が死んでやがる。

 

「プロテイン飲むか?」

「なぜですか?」

「栄養補給」

「…………考えておきます」

 

 あ、ちょっと体型の事は気にしてるんだねごめん。と、くだらない言い合いをしながら暫し歩いてると編成式を行ってる広場が見えてきた。そこでソフィは立ち止まると俺に一礼してから告げる。

 

「それでは私はここで一度失礼します、宿舎の方で準備作業がありますので」

「ん?おお、そうか……だったらここまで歩く必要なかったんじゃないか?」

 

 バイクで宿舎の駐車場に止めたんだから目と鼻の先だったろうに。ソフィの六課の役職は一応宿舎の管理とそれに関わる雑用とかだからなぁ。まぁ、俺の仕事を手伝うのが優先にはなるだろうが。勿論ソフィの役割は他のスタッフもいるわけだし。

 

「ご主人様をお見送りしたかったので。では、また後で……失礼いたします」

 

 そう言ってもう一度深くお辞儀をしてからソフィは小走りで来た道を戻っていった。全く……

 

「可愛い奴め、調子狂うんだよ」

 

 と、頭を掻きながら俺も釣られて小走りでその広場に近づいていった。

 

 

 

 

 

 

 

……………………………………。

 

 

 

 

 

 広場には既にこれから六課を運営していくだろうスタッフや魔導師が列を成して壇上ではやてちゃんが立ち編成式が行われている最中だった。ん?ソフィと同じ宿舎の雑用スタッフも編成式参加してるじゃん、ははーんあの野郎サボり………じゃなくて一足先に仕事しに行きやがったな。

 ふむ、こういう光景を見ると学生時代の集会なんかを思い出す、よくなのはちゃん達に悪戯してしばかれてたなぁ……。さてさて、このまま真っ正直に列に加わるのは帰って目立って仕方ないな……さりげなく少し遠くから編成式を眺めるとしよう。

 

 それにしても、今日まで忙して六課設立の準備やら何やらを皆んなに任せっきりだったから知らない顔が多いな。まぁ、一つの大きな部隊なんだし人も多い。部隊長のはやてちゃん、実績と実力を兼ね備えてるなのはちゃんフェイトちゃんに守護騎士達の指揮官陣に俺たちよりも若い4人のFW陣、2人は知ってる顔だな。もう2人は知らん。一応事前に送られてきた六課についてのデータにメンバーの名簿もあって顔と名前くらいはある程度覚えたけど。

 後はメカニックやバックヤードのスタッフ達も数多くいるが殆ど知らないな。まぁ仕方ないね、俺の仕事上他とは交流少ないもんね。友達ここでいっぱい作ったろ。

 と、はやてちゃんの話を聞き流しながら色々観察していると……やっべ、はやてちゃんと目があった。俺の方を見ながら器用に話を止めずにニンマリとしていた。あれは何か良からぬ事を考えてる時の顔だなあのエセ関西。

 

「長い話は嫌われるんで私からはこれくらいで……」

 

 と、自身の話を終えると拍手が送られる。その拍手が止むのを待ってからはやてちゃんは再び口を開き

 

「最後に六課の一員として皆さんに紹介しなければいけない人がいます。ここにおる皆んなは事前の準備や顔合わせである程度のメンバーは把握してると思いますが皆んなと同じ六課のメンバーとして加わるのに今日まで一度も顔を出さなかったアンポンタンが1人います」

「誰がアンパンマ○だ」

「誰もところ構わず顔を削いでパンを渡すヒーローとは言ってないねん」

 

 耐えきれず観念して俺も壇上にあがりそう返すと条件反射ではやてちゃんもツッコミを入れる。皆んなの目の前なので一瞬しまったっという顔をしつつも咳払い一つ交えて場を整えてから

 

「紹介します、荒瀬慎司……六課では特別支援隊長として皆さんを支えてくれる事でしょう」

 

 はやてちゃんは俺に何か言うように目配せをしてくる。まぁ、はやてちゃん的にもこれから一緒にやっていくんだしちゃんと部隊の一員として皆んなに挨拶くらいはしろという事だろうな。

 ここまで顔を出せなかったのも他の隊員からすれば面白い話ではないしな。しかしまぁ俺としてはあんまり目立つような事は避けたいんだが……六課の中なら平気か。

 

「あー……改めまして。俺が荒瀬慎司だ、今日まで顔を出せなかった事……申し訳なかった。殆どの人は俺の事を知らないと思うが一応この部隊の隊長陣達とは子供の頃からの付き合いでな、こいつらに何か不満があったら遠慮なく俺に言ってくれ……間に立ってやる」

 

 ふむ、もう少し話しておこうか。ジュエルシード事件から敷かれている俺の情報規制で皆んな俺の事は本当に知らないし。

 

「俺はリンカーコアが体内に存在しない、管理局員としてはかなり致命的ではあるが俺の出来る事は全力でやる。だから何かあれば俺を頼って欲しい、必ず力になる………込み入った話は皆んなと仲良くなってからかな。これからよろしく頼む」

 

 最後に言わねばならない事もある。

 

「最後に、俺は楽しい事が好きだ!皆を部隊の一員として、仲間として皆んなを楽しませる存在になる。だから皆んなも楽しんでこの部隊で一緒に頑張ろうぜ!」

 

 と締め括る。急な俺の登場となってしまったが隊員達から笑顔で惜しみない拍手をもらう。うん、これで俺の顔は覚えてもらえただろ。俺もなるべく早く全員の顔と名前を覚えるようにしなくちゃな。

 

 

 

 

 

 

……………………………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで編成式は終わり、この後早速機動六課を稼働させるため各々準備に入るのだがその前に少しの間自由時間を設けた。殆どの人は今日ここに来てこれから自分たちが住むであろう宿舎を自分色に染める作業があるだろう。なるほど、ソフィのやつそれで編成式でないで一足先に宿舎に準備しにいったのか。

 

 俺は宿舎には行かず編成式が終わって雑談に興じてる久しぶりに会う友人達の元に。

 

「よう、遅れちまってすまんな」

 

 と、片手を上げながら告げる。なのはちゃん、はやてちゃん、フェイトちゃんにシグナム、シャマル、ヴィータちゃん……あとちみっこも、ザフィーラも機動六課入りしたはずだが今はここにはいないようだ。

 

「全くええ度胸やな……今日まで一度も顔見せにこおへんで」

 

 と、冗談ぽく怒った素振りをするはやてちゃんにすまんすまんと言い返す。

 

「慎司、久しぶりだね……半年くらい会えてなかったよね?」

「うん?まぁなー……まぁ基本は遠征続きだし」

「そっか、でも元気そうでよかったよ」

 

 フェイトちゃんも相変わらずのようだ。

 

「おす、なのはちゃんも……直接会うのは久しぶりだな」

「…………………」

「なのはちゃん?」

「…………ねぇ慎司君」

「おう、どうした?」

「この間私に荷物送ってくれたよね?覚えてる」

「覚えてない」

「嘘だねっ!何あれ!?段ボール一杯に秋刀魚のキーホルダーと真ん中に佇む等身大の秋刀魚の置物!」

 

 と、デバイスに画像を表示させて俺につきつけるなのはちゃん。大きい段ボールの中にガッチリと無数の秋刀魚のキーホルダーとそれに囲まれる形で中央に等身大の秋刀魚の置物(自立型)が。あ、あぁ……あー、あれか。

 

「そういえばそんなもん送ったなぁ」

「本当に覚えてなかったの!?というか何で秋刀魚をあんなに送ってきたの!」

「いやぁ、思いつきかなぁ……反応は見れないけど定期的になのはちゃん弄らないとアレルギー反応出ちゃうからさ」

「そんなアレルギーはないよ!」

「はぁ!?あるし!」

「逆ギレしないでくれるかなぁ!」

 

 いやまぁ本当に思いつきだったんだよね。思いつきというかキッカケがあったというか。ちょっと秋刀魚のキーホルダーを大量に入手する機会があったからさ。………嘘じゃないよ?

 

「私が全部もっててもしょうがないし、捨てるわけにも行かないからお子さんのいるご近所さんとか職場で配りまわったんだからね!」

 

 ご近所さんと行っても地球の高町家ではなく機動六課に出向する前まで住んでたミッドの家のことだろうなぁ。

 

「お前……そんな事して変な噂立たなかったのか?」

「たったよ!ご近所さんからは秋刀魚の高町さんとか言われてたもん!」

「そういえば管理局で一時だけなのは、秋刀魚のエースオブエースとか言われてたな」

 

 と、思い出したのかヴィータちゃんがそう口を滑らせて俺は思わず吹き出す。

 

「笑わないでよ!誰のせいだと思ってるの!?」

「処理の仕方を間違えたなのはちゃん」

「ああ、納得いかないけど言い返せない!」

 

 と、ポカポカしてくる。19になっても揶揄ったらそんな反応してくれるなのはちゃん、マジでショックです。あざといけど可愛いからOKです。

 

「何年経ってもこの2人はこんな感じのやり取りをするのだな」

「まぁ、分かってた事だし」

「うぅ〜〜、うらやましぃです!」

 

 シグナムとシャマルも元気そうでなにより。ちみっこは相変わらずである。こいつ生まれてからもう8年くらい経つのに結局俺への接し方はあんまり変わらなかった。ついでに言うとここにはいないがリインフォースも変わってない。貴様ら少しは成長してくれ。

 

「さぁさぁ、ここで慎司君となのはちゃんの痴話喧嘩見るのも楽しいんやけどそろそろウチらも色々準備せなあかんね」

 

 と、流石は部隊長。しっかり見極めて仕切りを入れる。

 

「ウチとフェイトちゃんはこの後上層部で機動六課について説明をしに行かなあかんからその前に慎司君は部隊長室まで来てくれるか?今まで忙しくて仕方なかったとはいえ部隊の資料の説明だけじゃ流石にあかんやろ?」

「ん、そうだな。ちゃんと俺にも役割やら何やらある訳だしな。頼むわ」

 

 そんな訳で、皆んなとの再会もそこそこにして管理局員として仕事もこなす事に。各々自分の持ち場やこれから必要な準備に取り掛かるのだった。

 

 

 

 

 

 

…………………………………。

 

 

 

 

 

 

「実働部隊はなのはちゃんが隊長、ヴィータが副隊長を務める『スターズ』とフェイトちゃんが隊長、シグナムが副隊長を務める『ライトニング』、この2つが主に実戦に赴く事になると思う」

「ふむ、けど場合によっちゃはやてちゃんとかも前線に出たりはするんだろ?」

「もちろん、けどウチは一応部隊長やし……本当に必要な時やないと出られへんね」

「そういうもんか………」

 

 部隊長室ではやてちゃんと2人、俺の為に機動六課について最終確認を行なっている。事前に送られたデータを3Dホログラムに表示させながらそれと照らし合わせながらはやてちゃんにより詳しく説明を受ける。

 ちなみに、データを表示させてるのは俺の専用デバイス。リンカーコアのない俺のデバイスはなのはちゃん達が持ってるデバイスと違って自律型じゃない、つまりはしゃべりもしない完全に地球のスマートフォンのようなデータデバイスと同じ感覚で使ってる物だ。

 

「スターズは……スバル・ナカジマにティアナ・ランスター…ね。この2人は今日が初対面になるし後で個人的に話すとして……ナカジマってのはあのゲンヤ・ナカジマさんの?」

「そう、娘さんやね。慎司君は相変わらず顔が広いなぁ、ナカジマ三佐とも交流があるん?」

「まあな、あんまり深くはないけど」

 

 人脈っての言うのは大切だからね。それに個人的にあの人いい人そうだから関わりは持っておきたい。

 

「ライトニングはエリオとキャロやね、この2人は慎司君も知っとるやろ?」

「ああ、エリオはフェイトが世話してる時から関わりがあったしキャロもエリオほどじゃないが何度か会ったことがあるよ」

 

 引き取られたばっかでツンツンしてた時のエリオが可愛くてなぁ、いつの間にか慎兄なんて呼んで慕ってくれたっけか。

 

 それ以外にも人材の確認、六課に携わる関係団体と後見人……必要な情報は全て聞いておく。小一時間ほど話し込んでようやくひと段落ついた所ではやてちゃんが打って変わって引き締めた表情をして俺に問いを投げ掛ける。

 

「慎司君は……カリムとも友達やったね」

「ああ、そういえば機会が中々出来なくてはやてちゃんと3人で会ったことはまだ無かったな」

 

 3人とも忙しい身だからな。

 

「慎司君は、機動六課を設立した目的は分かっとるよね?」

「ロストロギア、『レリック』の回収とそれを追う謎の組織についての調査及び捕縛……ってとこかな」

「カリムから『予言』の事については?」

 

 心臓がどきりと跳ねる。俺は視線を窓から見える綺麗な景色に向けながら答える。

 

「……詳しくは知らん、けどその予言の内容と六課の設立が深く関わってる事は知ってる。だからカリムが六課の後見人として名乗りを上げてくれた事も、率いてる聖王教会が六課に援助してくれてることもな」

「そっか…その詳しくは……いつかちゃんと慎司君にも他の皆んなにも話すつもりや。だから今は慎司君の胸に留めておいてくれると助かるんやけど」

「大丈夫大丈夫、俺口堅いから」

「……なんか不安やな…」

 

 そう言うなって、そういう事の秘密はちゃんとするぜ俺は。それに、それを知っても知らなくても俺がはやてちゃんないしこの部隊の為に動く事は変わらないしな。

 

「ま、慎司君のことやから何だかんだしっかりしてくれてるし平気やね。それでどうなん?慎司君の方の任務は」

 

 引き締めた雰囲気を取り除いてはやてちゃんは、今度は友人としての雑談としてそんな事を切り出す。俺は少しうーんと唸りながら

 

「やっぱり長期の遠征の時なんかはキツイよなぁ、余裕で数ヶ月間船の中だし」

「あはは、今聞いてもやっぱり信じられへんよ…、慎司君が入隊して一年もしない内に次元航行艦の提督やなんて」

「それはお前……成績が優秀なのと両親の七光の賜物よ」

「ちょっとは悪びれんかい」

「でもちゃんと実績を出してるのが俺らしくてカッコいいだろ?」

「まぁ……そうなんやけどね。でも腹立つわ〜」

「俺は使えるものなんでも使う主義なの。事故にあった時もなりふり構わなかっただろ?」

 

 そう、本当になりふり構わず使えるもの使っとくのが得だぜ。後ろ指刺されようが親のツテだって使わなきゃ。じゃないと本当に掴みたいものは掴めないからね、あの全国大会の時に学んだ教訓だからね。テストに出るから覚えておきなさいな。

 

「そういえば慎司君はそうやったね………リインフォースはいつ頃こっち来れるんかな?」

「数日以内に来るはずだよ、俺がこっち早めに来る代わりにリインフォースに後処理任せちまったからさ」

 

 リインフォースは今は俺が所属する次元航行艦の隊員……俺の部下なのだ。本当はせっかく助かった命、はやてちゃんの元で自由にさせたかったのだが未だにリインフォースの暴走を恐れてる上層部は定期検診を義務にさせている。変わらず定期検診をしてるのは俺の母である荒瀬ユリカなのだが、俺の入隊と共に管理局に復帰した母さんもとある理由で俺の次元航行艦に同乗する事が多くまた数ヶ月船の中なんて事も珍しい話じゃないからな。

 

 それを理由にリインフォースが検診を受けないのは許さないとのお達しで俺が形上目付け役となり母さんの定期検診を受けさせている。もう暴走の心配なんて皆無だし主人であるはやてちゃんのそばにいた方が仮に何かあったら時はその方がいいのだがいかんせん、どこの世界も上層部というのは頭が固いのだ。

 

「ま、リインフォースならさっさと終わらせて明日にでも来るかもなぁ」

 

 俺といる時はなんかぽやぽやしてるけど魔導師としても隊員としても彼女は優秀だ、俺が思ってるよりは早く来そうだ。

 

「そか、そんなら機動六課スタッフ本当の意味での全員集合はもう少し先になりそうやね」

「だな、て言っても残りは俺の部下2人だけだしな」

 

 リインフォースと……アイツか。まぁ、さっきも言ったように2人とも数日以内には合流できるはずだ。と、そんな話をしてたら時間はあっという間に過ぎているもの、チラッと時計を確認する。

 

「はやてちゃん、時間大丈夫なのか?」

「うん?おっと、そろそろ行かへんとな。ウチとフェイトちゃんはもう出るけど慎司君、留守は頼んだで?」

「はいはい、さっさと言ってこい。俺もそろそろFW連中の所に顔出さないとな」

 

 そう言ってはやてちゃんとは一旦別れ、俺は今頃訓練場でなのはちゃんにみっちりしごかれてるであろう新人4人の元へ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

……………………………。

 

 

 

 

 

「やってるなぁ」

 

 訓練場が見えてくるとと遠巻きながらも訓練の風景も見えてくる。訓練のように構成された街並みを新人4人が走り抜けながらガジェット相手に悪戦苦闘していた。ガジェット……今回機動六課が追う犯罪グループはガジェットを用いてくるそうだから主にそちらの戦闘に訓練をするんだろうな。

 ガジェットの厄介な所は魔力を無力化するアンチマジックフィールド、略してAMF。これにどう対処するかだろうな。

 悪戦苦闘する4人を観察しながら真剣にデータを取る教導官としての顔をしたなのはちゃんが見える。

 

 彼女はあの時俺に宣言したように教導官を志し見事それを叶えた。ちゃんと目標を成し遂げたのだ。今では前線でも教導官として活躍し、これまでの功績を讃えられ不屈のエースオブエースなんて呼ばれちゃいるが。

 

「………………」

 

 俺が近くまで来た事に気づくと子供のように破顔しながら俺の名前を呼んで手を振るなのはちゃん。そんななのはちゃんを見るとあの時からなんら変わらない人懐っこい女の子のままでもあるんだって思えた。

 

「話は終わったの?」

 

 訓練中の新人達には目を離さないまま隣に立つ俺にそう問いかけてくるなのはちゃん。話は変わるけど本当に中学から考えると大きくなったよな色々。ちょっとおっさんぽい感想になってしまうが所轄いい女になった言いたくなるような成長っぷりだ。

 

「デカくなったよなぁなのはちゃん」

「急に貶された!?」

「いやいや、そういう意味じゃ……なくもないか?」

「ちなみにどこを見てそう思ったの?」

「ケツ」

「セクハラ!?それ私以外には絶対言っちゃダメだからね!」

 

 逆になのはちゃんに言っていいんだ?と揚げ足を取るとややこしくなりそうだから自重しておく。

 

「全くもう……訓練が終わったら改めて慎司君を皆んなに紹介しないとだね」

「頼むわ、エリオとキャロは面識あるけどスバルとティアナって子は完全に初対面だし」

 

 と言葉を交わしつつなのはちゃんと一緒に訓練を眺める。

 

「うーん、位置取りは悪くないんだけど今一歩突破力と冷静さが欲しいところだな……」

 

 なんて、青髪のスバルって子の動きを見ながら独り言を呟く。いやね、俺よりは魔導師として全然優秀だからどの口がってなるけど感じるものは感じるからね、仕方ないね。

 

「………驚いた、慎司君魔導師じゃないのに私と同じ事考えてた」

「うん?いやまぁ確かに実戦なんかした事ないし出来ないけど戦術論とか穴が開くほど書類と教科書見て学ばないと提督にはなれんって」

「だとしてもだよ、慎司君が管理局員になるって聞いた時も提督になった時も凄くびっくりしたけど努力家の慎司君だから一杯勉強したんだなぁって」

「ははっ、褒めても何もでねぇよ高町教導官殿」

 

 それにそういう戦術やら何やらの着眼点や知識は本職のなのはちゃんには負けるさ。俺が呟いた独り言だって少し知識があれば感じる感想だし。

 

「………高町教導官…か」

 

 俺がふざけてそう呼んだ言葉を噛み締めるようになのはちゃんは呟く。

 

「どうした?」

「え?ああ……今私がこうやって教導官になれたのも前線で空を飛んで闘うことが出来るのも慎司君のお陰なんだなぁって思い出してたの」

「それ、前にも聞いたぜ?」

「それくらい感謝してるって事なんだよ」

 

 悪い気はせんがよ……ここで俺が「なのはちゃんが頑張ったからだよ」って返すのも何度も言い返した言葉だ。同じ事ばかり繰り返すのはつまらないな、どうせなら違う言葉……何か面白い事を言い返そう。

 

「梅干しとパセリってどっちが左利きなのかな?」

「え?今時空歪んだの?」

 

 キングクリムゾンは発動してないぞなのはちゃん。

 

 

 

 なんて、俺が照れ隠しで適当にふざけた事を言ったのをお見通しのなのはちゃんはあえて指摘しないでニッコリと笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 ちょっと進みが遅いのはご愛嬌で。数話くらいは時間を進めながら慎司の現在の状況の説明やみんなとのやり取りを挟みながら進行していく形になると思います!
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