あけましておめでとうございます。
正月休み超堪能した作者です、また執筆がんりまっする
六課設立から2週間が経つ。その間も六課が特に大きく動く事はなく忙しさに目を回しながらも穏やかな日常続きであった。俺はと言うと3日前から一度アークレインに戻り短期遠征へと赴いていた、今回は既に俺達が新たに発見したいくつかの次元世界の追加の現地調査という名目だ。
観測してるのと現地に赴くのじゃ全然印象が変わるからな、もうずっと前から管理局が管理している次元世界ならともかく俺達アークレインが新たに発見、及び既に存在が確認されていてもたどり着く事の出来なかった次元世界の踏破に成功した世界はここ何年で数知れず。
仕事を頑張り成果を上げれば上がるほど忙しくなるという悪循環である。てな訳で、その短期遠征からつい今しがた六課へと戻ってきたのである。
時間はまだ早朝明けぐらい、皆んな本格的に業務に専念し始めた頃合いである。
「あ、荒瀬さんとソフィアさんおかえりなさい」
「おう、ただいま」
六課本部の管制室まで赴くとそこのスタッフにそう声をかけられたので応対する。一緒にいるソフィはペコリと頭を下げる事で返答としていた。ちなみに今回の短期遠征は六課からは俺とソフィだけ参加しリインフォースとマックスは留守番をさせていた。
流石にこっちの人員を全員連れて行くわけにもいかないからな。
「お、慎司さんじゃないですか、帰ってたんですね」
「荒瀬さん、この間の件アドバイスありがとうございました!」
「よう荒瀬、お疲れさん!」
1人に声をかけられれば芋づる式のように管制室にいたスタッフの皆んなに声を掛けられる。2週間もすればスタッフ全員とはもう交流はしてある。皆んな気のいい連中だ。
「荒瀬さん、おかえりなさい。ちょうど報告したい事があったんです」
「うん?ああ、この間の相談事かよ?」
また1人、なんだか機嫌が良さそうな女性オペレーターに声をかけられる。
「んで?どうだったんだ?上手く行ったか?」
「はい、荒瀬さんの言う通りにしたらまたお食事しましょうって約束してくれました!」
「おうそうか、よかったよかった」
この子は俺が遠征に出る前に休憩室で同僚に今度食事をしに行く事になった気になる男性事で相談していたのをたまたま俺が通りかかり一緒に話を聞いてあげたのだ。
「荒瀬さんのおかげです、ありがとうございました!」
「いいのいいの、またなんかあったら遠慮なく声かけろよ?」
「ありがとうございます!」
まぁぶっちゃけ男女2人で食事に行く時点で両方とも気がある可能性が高いからな、俺はただ足踏みしていた彼女の背中を押しただけである。
そんな感じで皆んなに声をかけられながら部隊長席で隊員達の様子を見守っていたはやてちゃんのところまで赴き
「よっす部隊長、遠征からただいま戻りましたで候」
「皆んながいる前なんやからウチに対してはもうちっと態度に気を遣って欲しいんやけどなぁ」
「今更だけどなぁ」
「ほんまそれなぁ」
と軽く笑い合う。
「にしても流石慎司君やね、もう六課の皆んなの人気者や」
「ただ皆んなが仲良くしてくれてるだけだよ」
その方が楽しいし、いいことづくめだからな。学生時代もクラスメイトだけじゃなく学校の生徒皆んなと仲良く出来るように意識してたし。そういうのは人生を楽しく生きるのに必要な事だと思う。
地球の皆んなは元気にしてるだろうか……。
「んで一応今回の報告書な、ソフィ」
「はい、ご主人様」
と、今回の遠征の報告書をまとめた書類をソフィからはやてちゃんに渡してもらう。機動六課の運営には直接関係ない体の物ではあるが六課に身を置いてる間は報告義務があるからな。そういうのは友人とか関係なくちゃんとしないと後々困るのはお互いだからな。
「はい、確かに受けとりました。2人ともお疲れ様やね、今日はゆっくり休んでても……ってそうもいかへんか」
俺達に気を使ってそう提案しようとしてくれるが俺の普段の忙しさを知ってるはやてちゃんはそれが出来ない事を理解しため息をついてくれる。勿論六課の特別支援隊としての仕事もあるがやはりネックなのは提督としての俺だよな。
赴かなきゃいけない所、作らなきゃいけない書類、確認しなきゃいけない事項。死んでしまえ管理局、とは口には出さないが休みくれ。まぁ忙しいのは自業自得っちゃ自業自得だから文句は言うまい。
「ああ、俺もソフィも勿論皆んなも忙しいんだ。なに、そんな心配そうな顔すんなよ。根は詰めないようにするからさ」
「あはは、そやね…忙しいのはお互い様やし。2人ともちゃんと身体に気をつけて引き続き業務の遂行をお願いします」
と、ちゃんと部隊長らしく言ってくるはやてちゃんに俺とソフィは敬礼して了解と頷くのだった。
…………………………………。
その後ソフィとは一度別れて俺は機動六課の施設見て回る。今日はデスクワークではなく各施設の必要物資等の調査と現場スタッフの声を聞くためである。優先度なんかも全体の意見を聞いて決めないといけないからな、見回りはこまめに少しずつやってはいるのだ。
だからこそ数ある六課のスタッフの皆んなと交流できたのだからありがたい事だ。
通りがかりで遠目で訓練場が見えた、なのはちゃんがFW4人とマックスを厳しく指導しているのが遠巻きでも見て取れた。
「頑張れよ………」
そう呟いて俺は目的地まで足早に向かうのだった。
………………………。
「あ、慎司さんじゃないすか」
「ようヴァイス、調子はどうだ?」
訪れたのは六課の整備庫、移動手段に使われるヘリなんかを保管し整備をして万全に期するための施設。ヴァイスはそのヘリのパイロットと可能な範囲での整備を担当している。基本的に六課の出動時に使われるヘリもヴァイスがパイロットとして操縦するため結構責任重大な役職を任せられている。
「まだ前線での出動には使われてないですからね……最新型ですし今のところ不備も故障もないので差し当たって必要な物はないっすね」
「そうか、んじゃこの2週間のヘリの稼働時間を大体でいいから後でメールで送ってくれるか?」
それで必要な燃料と魔力を算出して追加の物資としてまとめておきたい。ヴァイスは了解っすと軽い口調ではあるが返事を返す。この2週間でしっかり仕事をこなすタイプだと認識してるので忘れたりする事はないだろう。
「そういや慎司さんがこの間教えてくれたバイクの店行ってみたんスよ」
ヴァイスも趣味程度にバイクを乗るらしくこの間その手の話で盛り上がったのだ。
「ああ、ミッド郊外の…どうだった?目当ての掘り出しもんはあったか?」
「ありましたありました、ドンピシャでしたよ。いやー、慎司さんが教えてくれたお陰でようやくパーツが揃いました」
と、その話をするヴァイスの顔は少年のように楽しそうだ。まぁこれくらいはお安い御用だ。
「今度カスタム終わったら一緒に乗りましょうよ」
「ああ、鬼のようなこの仕事量を片付けたらな」
と、冗談ぽく答えたのだがヴァイスはあーと声を出して苦笑を浮かべる。あらまちょっと冗談ぽく聞こえなかったかもしれない。いかんいかん、なのはちゃん達とは違ってまだこの間自己紹介をしあったばかりだからな。
気をつけないと。
「そのバイクの店以外にもにも結構知られてない掘り出しもんが見つかりやすい店いくつか知ってるからよ。バイクでそこ巡るのもいいかもな」
「ああいいっすねぇ……慎司さんとバイクの話できるとは思わなかったんですけど俄然楽しみになってきましたよ」
空気を変えるためにそんな事を提案したのだがヴァイスは乗り気である。まぁ、その内連れて行ってやるとしてだ。
「さて……と、他も回らなきゃいけねぇからそろそろ行くよ。他に必要なものがあったら遅くなってもいいからメールでもなんでも連絡くれや」
「うっす、お気遣いありがとうございます」
手をひらひらとさせながらヴァイスの元を去る。……にしてもアイツはパイロットなのか、俺の眼にはどこかの武装隊にでも所属してそうな雰囲気を感じてはいたんだが……うーん、まあいっか。
………………………………………。
その後もいくつか部署を回ってリストアップした資料をリインフォースに渡す。とりあえず簡単に優先度と必要数はまとめて置いた、最終的な発注はあの資料を元にしてリインフォースが選定したもので問題ないだろう。
後は……と、腕時計で時間を確認して思案する。ふむ、訓練の様子でも見てくるか。そう思い立ち訓練所へと足早に向かう。
到着した頃には訓練は佳境に入っていたようでFW4人はなのはちゃんとのシュートイベーション……まぁ模擬戦に近い訓練を、マックスは参加してしまうと4人の連携の訓練にならなくなってしまうので見学か。
一応実戦形式を見るのも訓練のひとつだからな、ちゃんと目を凝らして観察をしている。おっと、そんな事を考えている内にシュートイベーションも終わりをエリオの一撃で終わりを迎えたようだ。
なのはちゃんに集合をかけられ5人は小走りでなのはちゃんの元に、訓練内容と今後の事を話してるようなので終わったのを見計らって顔を出す。
「やぁやぁ、早朝訓練お疲れ様皆の衆!」
と声をかけながら手を挙げる。皆んなぼろぼろだなぁ、なのはちゃんは相変わらず厳しくやってるようで。
「兄貴ぃぃぃぃい!!かえってきてたんですねぇ!!」
とテンション上げながらにじり寄ってくるバカをアイアンクローで動きを止める。無論手加減もしない。
「ぐおおおおっ!!流石兄貴ぃ……握力ぱねぇっす!」
こいつ気持ち悪いな。
「す、すごいわねマックスさん。あんなになのはさんにしごかれたのに慎司さんを見たら疲れなんて無いみたいに元気に……」
とティアナちゃんが若干引き気味にそう呟く。
「慎司君も遠征ご苦労様、おかえりなさい……かな?」
「ああ、今回も無事何事もなく終わったよ」
なのはちゃんはわりかし心配性だからな、そう言ってちゃんと何も問題もなかった事を伝える。
「にしてもFW4人とも……俺は魔法使えないし実戦経験皆無の素人意見になっちまうけど随分動きがよくなったなぁ。特にエリオ、最後の一撃中々カッコよかったぜ?キャロも支援魔法のタイミングと速さも完璧だったな!」
と、マックスのアイアンクローを解いて2人の頭を両手で撫でる。
「ありがとう慎兄!」
「ありがとうございます、慎司さん」
2人は気持ち良さそうにしながらそれを受け入れてくれた。いやぁ、可愛らしいな2人は。久しぶりに見た時は身長伸びて大きくなったななんて思ったけどやっぱりまだ子供だなぁ。
「スバルちゃんとティアナちゃんのコンビネーションも抜群だったな!なのはちゃんが期待してるのも頷けるよ。………だが2人とも大丈夫だったか?2人が使ってるローラーブーツとアンカーガン、ガタがきてるみたいだったけど?」
「え?あ、は……はい」
「後で……メンテスタッフの方に見てもらいます、はい…」
そう指摘したのだが2人は少しポカンとして生返事だった。
「うん?どうしたよ?」
「い、いや!慎司さん自分で素人って言ってる割には……」
「戦闘訓練よく見えてるなぁって……」
ああなるほどね、失礼にならないように気を使わせてしまったようだ。
「まぁ、こう見えても提督だからな。戦術論なんかは本に穴が開くほど、ストレスで胃に穴が開きそうになるほど読んだからこれくらいは出来ないといけないんだよあっははははは!」
「慎司君、皆んな引いてるよ」
「引き際も肝心だぞ皆んな」
「上手い事まとめようとしないで」
無理だったか………。
「まぁとにかく俺みたいな奴の目でも分かるくらい皆んなすごく成長してるなって感じてるってそう言いたかったわけだよ、な?なのはちゃん」
「確かにその通りだけどあんまり褒めすぎちゃダメだよ慎司君?」
「鬼教官の代わりに褒めてあげなきゃ可哀想だろ」
「誰が鬼教官だって?」
「豆投げつけるぞコノヤロウ!!」
「逆ギレしないでよ!?」
なのはちゃんと会うたびにこんな会話をしてる気がするが今更か。なのはちゃんがストレスで胃に穴を開けさせないように気をつけないといけないな。
「もう……でも慎司君が言った通り皆んなが訓練頑張ってついてきてくれたから実戦用の新デバイスに切り替えようって話をちょうどしてたんだよ」
なるほどね、流石にいつまでも訓練用のデバイス使ってるわけにもいかないもんな。何てなのはちゃんと話してるとアイアンクローの痛みから解放されたマックスがこれまたワクワクというかなんかうずうずした様子だ。こいつまためんどくさい事言わないだろうな。
「ワッハッハっ!どうだ驚いたっすかFWの諸君!俺の兄貴兼師匠はこんなにも優秀なんすよ!!」
「お前ちょっと黙れよ」
あと弟子にした覚えもねぇよ。
「兄貴!俺一生兄貴についていくっす!」
「それもう何百回も聞いてんだよ」
兄貴〜と気持ち悪くじゃれてくるマックスをいなしているとなんだかスバルちゃんが楽しそうにしながら
「あはは!やっぱりマックスさんと慎司さんって凄く仲良しなんですね!」
と、すこし的外れようなそうでもないような事を言い出すもんだからマックスが胸を張って
「当たり前っすよ!!」
と空に響き渡る声で叫ぶのだった。とりあえずうるさくて耳が痛かったのでキン肉バ○ター掛けておいた。え?人の事言えない?それはそれ、これはこれよ。
…………………………。
とりあえずは一度訓練を終えた5人にシャワーでも浴びせてそれから実戦用のデバイスを受け渡そうという流れになる。訓練場から徒歩でシャワールームがある宿舎に迎い俺となのはちゃんは楽しげに話しながら歩いている5人を見守るように後ろからとぼとぼとついていく。
…………マックスは、ちゃんと馴染めているようで安心した。元気溌剌なマックスは同じく元気なスバルちゃんと気が合うみたいだしティアナちゃんはスバルちゃんがもう一人増えたような感じでやれやれとしながらも面倒をかけてくれているみたいだし、エリオとキャロもなんだかんだで懐いてくれている。
「……マックス君の様子を見に来たんだね?慎司君は」
俺が笑みを浮かべて5人の様子を観察していると隣歩くなのはちゃんも笑みを浮かべながらそう口を開く。俺は「まあな」と短く答えて再び5人の楽しげなやり取りを見守る。
マックスの存在は正直に言ってしまえばFW4人も戸惑っている事だろう。自分達は六課の前線部隊としてチームを組んで訓練に明ける、そんな中で同じ六課の所属とはいえだ………前線に立つ事も出来ない、そのために全部同じ訓練をするわけじゃないマックス。魔導師と名乗るにはきっと未熟すぎるくらい土台が足りていないように見えるマックスの扱いは正直迷うだろう。なのはちゃんはマックスも強くする為に本気で訓練メニューを考えて受け入れてくれてはいるが4人と馴染めるかは心配だった。杞憂で終わってよかったと心底思う。
「マックス君は元気な子だからね、ああいう感じがティアナ達にも元気を分け与えてるみたいで皆んな仲良くやれてるみたいだよ」
「ああ、そうみたいで安心したよ」
ちゃんとアイツを理解してくれる人が増えるのは、まぁ上司としては嬉しいからな。
「慎司君のお仕事の方は平気なの?」
「平気じゃないけど……まぁ大丈夫さ。興味あるからデバイスの方も皆んなと見にいくよ」
「そっか」
道中車に乗ったフェイトちゃんとはやてちゃんと遭遇する。どうやらはやてちゃんをカリムの教会本部まで送り届けるみたいだ。一言二言会話を交わしてから別れて俺達はそのまま施設に向かった。
……………………………。
5人がシャワーを浴びてる中なのはちゃんは先にデバイスメンテルームに顔を出すと言って一旦別れた。俺もついて行こうと思ったが皆んなが来るまでゆっくりしておこうと備え付けのベンチに背中を預けてふぅ……と一息入れる。何も考えず、何もしない時間っていうのは必要だ。じゃなきゃすぐに人間てのは潰れちまう、しばらくぼーっとしてるとシャワーを浴びた後で顔を少し上気させてるキャロがひょこっと顔を出した。
「あれ?慎司さん」
「よおキャロ、とりあえず座れよ」
と、隣に座るよう促す。なのはちゃんは一足先にデバイスを受け渡す場所に待ってる事を伝えて他のみんなが来るまでゆっくりしてろと告げる。
「ティアナちゃんとスバルちゃんは?」
「お二人はまだシャワールームです」
あー……まぁ女の子がシャワーや風呂が長いのはどこの世界でも一緒か。キャロの場合はまだ子供だから早かったのか……まぁそんな事考えても仕方ないか。そうなると男性陣遅いな……ああ、エリオだけならともかくマックスもいるからなぁ……アイツのはしゃぎに付き合わされて遅くなってるんだろう。哀れエリオ、めんどくさいから助けにいかない俺を許せ。
「……………」
「……………」
このまま黙って待ってるのもキャロは退屈か、何か話を…と思った所でふと思い出す。
「そう言えば、キャロと2人きりで隣り合って座るのも初めて会った時以来か?」
「え?……あ、はい。そうですね、それ以来ですね」
「ははは、忙しくて中々会えなかったけど何だかんだキャロと出会ってから何年も経つんだな。覚えてるか?その時の事」
「あはは、流石にアレは忘れられないですよ……」
キャロが楽しそうに笑っているのを見ながら当時の事を思い出していた。
そもそもキャロは第6管理世界アルザスという地方の少数民族出身だ、その民族は魔法で竜を使役する民族らしくキャロもその力を使う事が出来るらしい……らしいのだがどうやらキャロのその力は中でも類稀なる才能を持っていたらしくその力を恐れた故郷のリーダーに集落を追われてしまったのだという。
キャロが使役する竜こそは今頃エリオのと共にシャワーを浴びてにいるであろうミニマスサイズにまで落とし込まれているミニ竜こと『フリードリヒ』、訓練なんかでもキャロをサポートする為口から火炎弾みたいなの吐き出したりしてくる。
そしてそんなキャロは集落を追われ各地を転々てしている時に管理局に保護されたという。管理局は彼女の持つ竜を使役する才能……レアスキルに着目しキャロの意思をしっかりと聞いてから入隊を勧めたキャロも応じたが配属された部隊でキャロはフリードリヒの真の力を解放する魔法『竜魂召喚』を発動させるが制御できずフリードリヒは暴走。
甚大な被害を出してしまった。管理局はキャロ強大すぎて制御できないキャロの力を持て余している時に事情を知ったフェイトちゃんがキャロを引き取って面倒を見る事になる。そして、その直後に俺はフェイトちゃんから紹介される形でキャロと対面する事になったのだ。
『忙しい所ごめん慎司、近々会えないかな?力を貸して欲しいんだ』
そんなメールが届いたのがキャロと会う3日前の事だった。詳しく事情を聞いてキャロ・ル・ルシエという少女の話を知り俺は何とか時間を作ってフェイトちゃんの元に駆けつけた。
「初めまして、俺は荒瀬慎司だ。君がキャロちゃん……でいいのかい?」
「は。はじめ……まして…キャロ・ル・ルシエ…です」
初めて見たキャロは何かに怯えてる様子で俺と目を合わす事も困難な状態だった。かと言ってフェイトちゃんとの距離感も測り切れてないみたいで孤独を感じていることはすぐに見てとれた。
俺はフェイトちゃんから連絡が来た時にこう聞いた、『どうして俺なんだ?』って。フェイトちゃんは俺に言ってきたのだ、キャロの閉ざされてしまった心を開いてほしいと。孤独に潰れそうなこの子を助けてほしい。
勿論俺に出来る事なら協力する、けど俺なんかの力を借りなくてもフェイトちゃん1人でキャロという少女の心を救う事は出来るだろうと。だから聞いたのだ。するとフェイトちゃんは照れ臭そうに笑ってこう言っていた。
「だって、私の心を救ってくれたのは慎司だから……キャロもきっと慎司になら1番の笑顔を見せてくれるって思ったから」
そう言われちゃ、俺は胸を叩いて任せろ…と、そう言うしかなかった。そんな感じで招かれてフェイトちゃんを間に立たせて俺はキャロと対面したのだがさて、どうしたものか……。
「キャロちゃん……そうだな、キャロって呼んでいいか?」
「は、はい……」
「ありがとう、キャロはファイトちゃんからは何て聞かされてるんだ?今日のこと」
「フェイトさんからは……その、自分の友達と会って欲しいと、それだけで……」
キャロに分からないようにフェイトちゃんをジロリと見る。
『お前、俺にもキャロにも説明不足が過ぎるぞ!』
『ごめん、ごめん!勢いもあったから!』
付き合いの長いフェイトちゃんとならこんな感じのアイコンタクトもお手の物である。いや、そんな事言ってる場合ではなく。この子の苦悩を分かってあげる事なんか出来ない、俺が最もらしい事を言い聞かせてもこの子の心には響かない。
それなら……。ふと、初めてなのはちゃんと出会った時の事を思い出す。そうだ、烏滸がましい事なんか考えるな。今日初めて会ったキャロの心の傷を癒してあげるなんて出来るはずはない。俺がするべきは俺がしたい事するべきと思った事。つまりはいつも通りなのだ。だから、
「よっしゃキャロ」
俺はキャロの手を取る。キャロは少しびくりと反応するが安心させるように俺は笑顔を浮かべて伝える。
「遊ぶぜぇ、めっちゃ遊ぶぜぇキャロ!」
「……ふぇ?」
何だ間抜けづらして、可愛いじゃないか。とまあ、俺がそんな事を言い出せばいつものごとく俺が持ってる全てを使って楽しませる。トランプ、ジェンガ、ボードゲーム、テレビゲームなんでもござれ。時にフェイトちゃんも交えて俺は最大限にキャロを楽しませるべく、そして俺も一緒に楽しむべくはしゃぎ回る。
最初は戸惑っていたキャロも途中からは楽しそうな笑顔を浮かべてくれていた。そうだ、子供なんて遊んで笑ってメシ食って寝る、それが1番だ。
「きゃあああ!怖い!怖いです慎司さん!」
「大丈夫だキャロ、落ち着いてやれば平気だよ」
「きゃあああああああ!!」
「はっはっは!!」
だからキャロに無理やりバイ○ハザードやらせて叫びながらライフルを連射して地味にヘッドショットにしてるキャロの技量をみて高笑いしてる俺も許される筈だ。ちなみにフェイトちゃんは
「ゾンビ…ゾンビ怖い……怖いぃ……」
プレイ画面すら見る事もできないみたいでソファで丸くなってる。かわいいかよ、つかそんな貧弱耐性でよくトラウマシーンも割とあるクウガなんて見れたなおい。そんなこんなでキャロには色々楽しんでもらってもうお別れの時間となる。玄関で2人に見送られながら後にしようとすると軽く袖を引っ張られるような感触が。
「えっ、あ!ご、ごめんなさい!」
キャロだった。自分でも無意識に俺の袖を掴んでしまったようで、基本ベース大人しい子だからあんまり分からないけどやっぱり彼女は色々と寂しさや苦悩を日々感じているのかもしれない。だから、余計なお節介だけど……俺は屈んでキャロと目線を合わせながら言葉を紡ぐ。
「キャロ、今日楽しかったか?」
「は、はい!楽しかったです……」
なら、よかった。
「そうか、その楽しかったことはな?これからキャロ次第でいくらでも作れる。俺とだけじゃない、フェイトちゃんやこれからキャロと出会うであろう多くの人達と作れるんだ」
俺の言葉に真剣に頷きながら聞いてくれるキャロの頭に手を乗せて優しくぽんぽんと叩く。
「だから、そんな日々を送れるように前を向くんだよキャロ。すぐには無理かもしれない、けど下を向いてちゃ楽しい日なんて作れない。前を見続けていつか絶対に出会う未来の大切な人達を見つけるんだ、キャロならきっとそんな人達と楽しい日々を送れるさ」
集落を追われ、保護されるまで1人放浪してきたキャロ。孤独を感じ疎外を感じ居場所というものに飢える。けど大丈夫、孤独と思ってるのは基本的に自分だけなんだ。転生して、勝手に世界でたった一人ぼっちだと勘違いしてたとあるバカだって孤独なんかじゃなかった。キャロにだって、まだ出会ってないだけで孤独じゃない。フェイトちゃんが手を差し伸ばしくれたここからキャロが輪を広げるんだ。
「……はい」
赤い顔をして微笑む少女を見て俺は満足げに頷き返してからフェイトちゃんとのキャロと別れた。後日フェイトちゃんから連絡があって管理局の自然保護隊にフェイトちゃんの紹介で勤務となりそこの仲間達と明るく頑張ってると、根本的な竜魂召喚の制御についてはまだ解決してないままでもきっとキャロなりの一歩を歩んだと伝えてくれた。
……………………………………。
それからキャロとは頻繁とはいかなくても本当にたまに会いに行ったりはしていた。当時はエリオにも会いに行ったりしてたから中々前みたいに一日中ガッツリ遊ぶなんて時間が取れなかったのが悔やまれる。俺の忙しさどうにかして、いやどうにも出来ないことは分かってるけどね。言ってみただけよ。
「あはは、あれから自分でゲームとかもやってみたりしてたのか?」
「はい、自然保護隊の皆さんと……」
「うんうん」
「バ○オハザードやったりしてます」
「うん……うん?なんですと?」
「バイオ○ザードです」
「自然保護隊のみんなで?」
「ゾンビ撃ってます」
何でだよ自然保護隊。お前ら自然保護の為ならゾンビも殲滅するのか、いや、ゲームとはいえギャップ凄いのよ。多感な時期にキャロにやらせたのは失敗だったか……まいいか。楽しそうにやってたのならそれが1番だしな。10歳の子が笑いながらゾンビ撃ってたとしても。
「ま、キャロたちFWは将来有望なんだ。バイオハ○ードもほどほどにな?」
「……………」
と、くだらない事を考えている頭を振り払う為適当な事を言ってみたらキャロの顔が一瞬曇った事を俺は見逃さなかった。太郎さん実年齢39歳よ?そういうとこ敏感に見つけれるのよ残念だったな。
「何だキャロ、何か悩みでもあるのか?」
こういう時は直球でいいだろう、俺もキャロも知らない仲じゃないんだしな。
「いえ、そんな事は…」
「キャロ、俺を誰だと思ってるんだ……山宮さんだぞ」
「誰ですか?」
「冗談だ、とにかくバレバレなんだから話すだけ話してみろって。こう見えて頼りにしかならない荒瀬慎司さんだぜ?」
と言うとキャロは観念したように少し笑ってからぽつぽつと語り出す。
「皆さん、訓練でどんどんすごくなっているんです。エリオもティアナさんもスバルさんも……」
「それはキャロだって同じ事だろう?」
「でも私……まだフリードを制御してあげられません……ずっと窮屈な思いをさせてしまってるんです。私が未熟だから……皆んなはどんどん成長してるのに」
そこまで深刻になる程苦悩はしてないにしろキャロなりに思うところはあるという事か。正直俺の見立てじょキャロの実力なら既に制御できる筈だと思っている。俺は魔法に関しては実戦経験のないトーシロだが普段のキャロが使う支援魔法やら色々総合的にみて実力は問題ない筈だ。
となると心……気持ちの問題だ。これに関してはデリケートだ、焦らす必要はないが……本人が本格的に焦りを感じる前に言っておかねばなるまい。
「なぁキャロ、これは俺の持論なんだがな」
「はい?」
「そう言う大事な力って大事な場面で覚醒するって相場は決まってるんだよ。キャロがいま使ったら絶対カッコいい瞬間、それこそアニメみたいな展開の時にキャロは成功させるんじゃないかな?」
馬鹿みたいな事をふざけた顔して答える。真剣に打ち明けてくれたキャロには失礼な物言いだ。しかし、それくらい今のキャロが考えても仕方のない事だと思う。焦っても仕方ないのだから。
「あはは、そうだったらいいんですが……」
「まぁ、今のは冗談にしてもよ。結局はキャロ次第だからな、俺は力になってやれない。やれないけど……そうだな。もし……」
もし………。
「もし、キャロがどうしてもそれを使わなくちゃいけなくて、挑戦しなくちゃいけなくて、失敗出来ないっ!……って時が来たらさ、その理由を考えるんだ」
「理由?」
「そう、理由だ。何のためにその魔法を使うのか、失敗した時また被害があるかもしれないのに挑戦せねばならないのか。その時は絶対にいつか来る、自分の不安や恐怖を飲み込んででもやらなくちゃいけないその時。どうして自分はそんな思いをしてまで使おうとしてるのか失敗できない理由をよく噛み締めて考えろ」
プレッシャーになる?違う、キャロにとってそれはプレッシャーじゃなくて鼓舞になるもの。キャロに限らず魔導師を名乗り命懸けの仕事をしている彼らは皆そういう人種だ。
「極めつけは……まぁどうしても不安だったら俺に通信でも繋げてみろよ。頑張れ〜って言ってやる」
「頑張れ……ですか」
「ああ、無責任な応援の言葉に聞こえるかもしれないけどそう口にする奴の殆どは純粋に頑張って欲しいとその成功を願って口にしてるんだ。それに、何となくいざって時のキャロにはそれで十分な気がするからよ」
最後にそう言って俺はベンチから立ち上がる。エリオ達と残りの女子グループの姿が遠くから見えた、このまま合流してデバイスルームに行くのだろう。俺も一緒しようと思ったけどなんか変な感じになっちゃったし適当になのはちゃんには用事できたって連絡して溜まった業務でもするか……。
「んじゃ、キャロ俺は行くけど午後の訓練も頑張ってな」
そう言ってエリオ達が来る方向とは真逆の方へ歩き出す。
「慎司さん!……ありがとうございます。また、元気な気持ちにしてくれて」
背中を向けたままだったからキャロがどんな表情してるか分からなかったけど、まぁ声の感じだと本当に少しは気持ちが紛れてくれたようで何よりだ。
………………………………。
適当にぶらついてから事務室に戻ろ。休憩がてらの散歩だ、しばらく考え事をしながら歩いていると……六課全体にけたたましく鳴り響く警報。その音に足を止める……ついに来たか。六課にとってのファーストアラート、初の実戦任務である。