ちょっと話が無茶苦茶な気がする。落ち着け、落ち着け俺!
「行くぜマックス!」
「おっす兄貴!」
「「とおっ!」」
2人で同時にジャンプし空中でくるっと一回転して対峙する相手に向かって決める!
「「ライダー……ダブルキック!!」」
レジェンドライダー2人による連携キックを再現してそれを相手に浴びせようとするが
「えいっ」
「「あひゃあ!?」」
対峙している相手……なのはちゃんの魔力弾であっさりと防がれしばかれる俺とマックス。くうう、やっぱり無茶だったか。いてて……
「もう、慎司君だけジャンプ台用意するから何するのかと思ったら……」
なのはちゃんは呆れたように溜息を吐く。いや、マックスは一応曲がりなりにも魔導師だし身体強化で威力はともかく動きの再現は出来るけど魔力無い俺にはそんな芸当出来ないからな。俺だけジャンプ台使わせてもらったわけだが
「そんな風に言うなよ、ジャンプ台ありでライダーキックするのも結構練習したんだぞ?」
「そうなの?」
「ああ、俺が次元艦にいる時の空き時間全部それに費やすくらいには」
「何やってるの!?」
「ジャンプ台は管理局の訓練施設から借りパクしてきた」
「本当に何やってるの!?」
だって誰も使ってないし。魔導師の訓練施設でそんなもん使う奴いないだろスポーツじゃないんだから。そもそも何であったのかも謎だよ。
「兄貴!姉御!今度は3人でトリプルキックっといきましょう!」
「やらないよ!あと姉御呼び禁止だって言ってるじゃないマックス君!」
ぷりぷり怒るなのはちゃんに俺は苦笑を浮かべる、そもそも何で俺がマックスと2人でなのはちゃんと模擬戦……には殆どなってなかったけど模擬戦紛いな事をしていたかと言うとだ。今日の朝にまで時間を遡る必要がある。
……………………………。
「なんじゃこりゃああああああ!?」
と、様々な感情を込めた見事なまでのその叫びを披露したの我らが六課の部隊長、はやてちゃん。まぁ気持ちは分かる、リニアレールの騒動からしばらく経ったんだが俺は数日前からまた次元艦『アークレイン』艦隊の艦長としての次元世界への短期遠征に赴いて帰ってきた所。
その日はとある理由で直接六課の訓練場に向かい、たまたまその日は新人FW4人となのはちゃんだけでなくフェイトちゃんとヴィータちゃんが教導に加わわっていた。マックスは俺と一緒に遠征だったので訓練中じゃなく今は俺の隣にいる。そしてちょうど俺が到着した所で、何の気無しに訓練の様子を見にきたはやてちゃんとちみっこ。来て早々先程の叫びをはやてちゃんがあげたのである。
「な、なんやねんこの大所帯は!?」
はやてちゃんが驚くのも無理はない。訓練場には俺が秘密裏に連れてきた人、人、人、人、人。文字でゲシュタルト崩壊を起こしそうなほど人が集まっていた。しかもただの人じゃない、とある人は中世を彷彿とさせる騎士甲冑の者、とある人は中世の貴族のような格好をした令嬢風な女性、恐らくはその者らの部下の歩兵隊やら何やらが混じっている。
まるで流行りの異世界物語の舞台から転移してきましたと言わんばかりの風貌の者ばかりだった。異世界物好きのシャマルなら今頃狂喜乱舞してるだろう。こちらに気づいた訓練場にいたメンツも全員「ふぇ?」って顔をして驚愕している。
「し、慎司さん……まさかこの人達は……」
ちみっこが体を大袈裟に震わせながら絞り出すように言う。俺が短期遠征の帰りだから色々と察したのだろう。
「………え?嘘やろ慎司君?」
はやてちゃんも察したのか目を見開いてそう口を開く。俺は片目を閉じてお茶目なポーズとりつつわざとらしく舌を出しながら
「連れてきちゃった☆」
「このっアホーーーー!!!」
炸裂する頭部への分厚い魔導書の一撃。いや、記憶飛ぶって。
まぁ、そんな感じで怒るはやてちゃんと事態を理解したなのはちゃんとただただ苦笑を浮かべるフェイトちゃん。まぁ怒るのも無理はない、何故ならこの大所帯の人間全員俺が別の次元世界から連れてきた住人達なのだ。管理局は様々な次元世界を管理、監視、介入している。管理世界はいわゆるミッドチルダや既存の魔法が存在する世界……キャロの故郷の集落があった場所もミッドチルダとは違う別の管理世界だな。そう言う所はそこの住人達も管理局を認知し、互いに助け合っている。これらは思いっきり介入してる世界だな。
さらに組み分けるなら無人世界と呼称されるのもある、その名の通り地球のような一つの次元世界が存在するものの人のような知性ある生き物がが存在せずまだ生まれたばかりの世界だったり荒廃し滅んだ後だったりと様々。これらはだいたい管理局は管理と監視をしてる。大きな動きはないかの監視、無人世界によっては次元犯罪者を捕えた後に送られる収容施設として使われ管理されてるかだ。
そして問題なのは管理外世界、俺達の故郷もそれに当たる。これに認定されるのはその次元世界に知的生命体がおり尚且つ魔法が存在しないか、その次元世界の住人が管理局を認知してるか……まぁ魔法がない世界では基本的に管理局を認知する所か地球のように自分達の世界だけで殆どの住人達の世界は完結する。
管理外世界は基本的に介入はせず観測のみ。観測はどこかの次元犯罪者にその世界を乱させないように監視しておく為、介入しないのは下手に管理局の存在や魔法の存在をバラして秩序を乱させないためだ。勿論闇の書事件やジュエルシード事件の時のような事態の場合は存在を秘匿させつつ介入する場合もあるが。
簡単に想像つく事だろうが地球にもし魔法の存在や管理局を認知させたら世界は混迷を極めるだろう。大袈裟な話じゃない、場合によっては戦争だって起こる可能性もある。だから管理外世界では地球と同じようなスタンスを取る、俺達がなんの考えなしに魔法の存在や管理局の存在を認知させるのは絶対にしてはならない事。
前置きが長くなったがつまりは俺が管理世界でもない次元世界の住人をミッドチルダに連れて来てる事がそもそも問題でそれでみんなは頭を抱えてるのだ。
「このアホ!このアホ!」
「バカっ!バカっ!慎司君バカ!」
悪口の語彙力ないエセ関西人と砲撃魔王なのはちゃん2人からチクチクと色々されつつも俺はまあまあとなだめる。
「あーもう……あんな慎司君?慎司君から六課に入る前にアークレインの活動の報告を全部開示してもらったから知っとるけど……慎司君が遠征してる所の次元世界は全部管理外世界か認定審査待ちの次元世界しかないやん……こんなんバレたら処罰されてまうよ?」
「大丈夫大丈夫、信頼してる奴しか話もしてないし連れてきてないし」
「何も安心できないし流石に多すぎるよ!?」
それなっ!俺もお前らの立場からしてみればそう思う。
「まあまあ2人とも……慎司だよ?ちゃらんぽらんしてるけど多分ちゃんと考えあっての事だから」
「いやー、皆んながミッドチルダ来てみたいって言うからつい連れてきちゃった☆」
「ちょっと殴っていいかな?」
フェイトちゃんが珍しく激おこプンプン丸でござる。
「待ってくれ!私が無理を言ったのだ、我が友を責めないでほしい」
「ええ、どうか怒りをお沈めになってください」
3人に説教される俺の助け舟を出すように豪華な騎士甲冑を纏った男と貴族の豪勢な格好をした女性。連れて来た次元世界の住人達の代表である。ちなみに2人ともまた別々の次元世界の住人でつまり今ここには2つの次元世界の住人が入り乱れてる訳だがまぁ言ったらややこしくなりそうなので黙ってよう。
「ああ、紹介するわ。友達になったよくある異世界現地主人公物の本人みたいな平民から努力で王国騎士団長に成り上がった通称カイ君と勘違いで悪徳令嬢として断罪されそうになったけどチート能力に目覚めて絶賛人生快進撃中の貴族令嬢のミィちゃん」
「ああ!慎司君の影響で何言ってるか大体分かる自分が恨めしいわ!」
ちなみになのはちゃんも割と理解してしまって苦笑してる。フェイトちゃんははてなマークを頭上に浮かべて首を傾げていた。君仮面ライダーしか見ないもんね、仕方ないね。
「慎司よ!我が友よ!ミッドチルダとやらは素晴らしいな!」
「ええ!ええ!見た事ない物ばかりで興奮が止まりませんわ!」
「だろぉ!俺も最初来た時はそう思ったんだよ!」
と、子供のようにはしゃぐ3人を見て怒るに怒れなくなる3人であった。
結局3人はとりあえず慎司をしばき倒した後、次元世界から来てしまった住人の代表2人に強く……それは強く一緒に来た人たちの口止めと元の世界でそれらを広めない事を固く固く約束させ、慎司に責任持ってアークレインに届けさせ元の次元世界に帰らせた。
正直いきなりこんな事になってびっくりな3人だが……まぁ慎司は人の見る目あるし……とかある意味慎司らしいしまぁいっか……という感じに考えがまとまりそうな自分達も随分と慎司に毒されてるなぁと自覚しつつ何がしたかったんだと頭を抱える。
まぁ慎司の場合意味あるように見える行動も突発的だったり無計画だったり楽しいからなってしまおうというな感じだったりするので考えるのは無駄だろう。多分今回は後者だろうし、困った物だが。
「まぁでもこれはこれ、それはそれだもんね……」
「な、なのはちゃん?」
高町なのは清々しいくらいの笑顔を慎司に向ける。
「慎司君?あんな大勢な人連れてくるほど今日は暇だったんだよね?」
「え?別に暇ってわけじゃ」
「だったんだよね?」
「暇です、ついでにマックスも共犯です」
「兄貴ぃ!?」
流石にこれらを管理局に報告は出来ない、つまりはある意味共犯者にされてしまったのでなのは達はそれはそれでお仕置きしないといけないと考える。
「模擬戦……しよっか?」
慎司は今世に生を受けて初めてやりすぎたと後悔したのだった。
…………………………………。
そんな馬鹿みたいな流れでたくさんボコボコにされた後にライダーキックも失敗すると言う恥を晒した訳だが。まあ、気分転換も含めた運動だと思えばいいかね……良くないけど。息を吐いてから服についた汚れを叩いて立ち上がる。そんな姿をなのはちゃんはジッと見つめてくる。うん?
「何だよ?どうかしたか?」
「いや、お仕置きとはいえマックス君の訓練にもなるから模擬戦したんだけど慎司君……魔法は使えないけど動きはちゃんと実戦向けだったなぁって。やっぱり体動かしてる時の慎司君も楽しそうだったし」
「そりゃお前、魔法を前にしたら意味ないって言っても曲がりになりにも管理局員で提督なんだ……体だって鍛えてるし基本的な体術くらいは身につけてるさ、それに体が動かすの好きじゃなきゃ柔道だってあんなに出来ないよ」
つっても管理局でも形式でやる体術だから実戦になんて魔法前にしたら意味ない代物だからな。俺にはそれしか出来ないからやってるだけで。魔法を使える皆んなの方が圧倒的に実戦向けだし強い。隣でさらにしばかれてノびてるマックスを起きろっ!と叩いて起こしつつ呆れた顔して見学してたFW4人に宿舎まで運ぶのを頼んだ。
「さぁてと、おふざけの時間も終わりだ。皆んな大好きデスクワークの時間だぜ、あーめんどくせぇ」
と、気怠げに声を上げてから俺は宿舎の方へと歩き出す。変な騒ぎ起こしたせいで忘れそうになったが遠征帰りだから色々書類やらまとめなければならないし忙しいのだ。忙しいのに何であんな騒動起こしたの?ていうツッコミは受け付けない。
「慎司君……」
なのはちゃんに呼び止められる、何だ?お仕置きはもう勘弁して欲しいんだけどな。
「何で……柔道辞めちゃったの?」
俺となのはちゃんの間に強い風が吹いてなのはちゃんの髪を靡かせる。近くにいるはやてちゃんとフェイトちゃんもなのはちゃんの言葉に顔を強張らせる。それは………俺が管理局に入隊してから一度もされなかった質問だったから。はやてちゃんも、フェイトちゃんも、アリサちゃんもすずかちゃんも何となく聞きにくかったのだろう、俺もそれに乗じて自ら理由を説明することは無かった。
そんななのはちゃんが今、その俺たちの中ではもはや禁句とも感じてしまう事を聞いて来たのだ。
「っ……ごめん、私……」
「いいんだ、謝る必要はない」
当然の疑問なんだから。そしてそれを説明する事なく皆んなの察しの良さと気遣いに甘えて説明してこなかった俺が悪い。俺が下手に『柔道』なんて口にしたんだ。自然にずっと気になって疑問を口にしてしまうのは仕方ないと思う。
「………勘違いはさせたくないから言うけど…」
そう呟いて空を見上げる。晴れ渡る綺麗な青空だ、そんなよく見る光景に目を細めて懐かしさを覚えつつ
「俺は、夢を諦めたわけじゃないんだよ……」
3人にそう言い放って俺はとぼとぼと訓練場を後にした。
………………………………………。
それからまたしばらく経って業務に追われる日々を少し送る。あの後別になのはちゃん達とはギクシャクするような事はなく平常運転だ。あれだけのやり取りで態度に出るほど安い付き合いじゃないしなのはちゃん達も今はそれだけ聞ければいいってそん感じの事を目で伝えてくれていたからまたそれに甘える事にした。
さて、そんな俺の事何かで頭を使ってる場合じゃなくいい加減色々皆んなも俺も切り替えた所でだ。先日のリニアレールの一件で回収したガジェット達の調査を任せていたフェイトちゃんとシャーリィ……シャリオ・フィニーノから連絡があった。どうやら進展があったらしくそれについて隊長陣と一部のスタッフのみで緊急会議を開くと連絡があった。幸い俺はアークレインではなく六課に勤務中だったおかげで会議には問題なく参加できる。
といっても他の面々がまだ揃うまで時間が掛かりそうなので俺は時間潰しに物資の見廻りついでの散歩に興じる事にした。
歩きながらあれこれ考えてると後ろから尻を軽く蹴られるような感覚がしたので慌てて振り向くと
「ヴィータちゃん?」
「よう、なに深刻そうな顔してんだ」
ムスッとした様子のヴィータちゃんがいた。何だか機嫌が悪い?
「あれ?何か怒ってる?」
「アタシが今お前に何回声かけたか分かるか?」
「1582回?」
「4回だ!先に大きい数字出して怒りにくくしようとしてんじゃねぇ!」
「ちなみに1582年は本能寺の変があった年って言われてるらしいぜ」
「知るかっ!」
ええー、日本の歴史が大きく動いた瞬間とか言われてんだから少しは興味持てよー。俺は興味ないけど。
「たくっ、それで?何回も声かけられても気付かれないくらい何考えてたんだよ?」
「オムライスを発明した人って偉大だなぁって」
「何だそれ」
と、ヴィータちゃんは呆れるように少し笑う。
「…………お前が色々と何を抱えてんのか知らねぇけどあんまりなのは達を心配させんなよ?」
「そんな風に見えるか?」
「見えるさ、そうじゃなきゃお前そもそも管理局員になんかなってないだろ」
まぁ、否定はせんけど。管理局に入隊するなんて俺も思っても見なかった事だしなそもそも。
「そんな色々抱えてると思ってる俺にヴィータちゃんは何を言いたいんだ?」
「別に、慎司は無理するなって言ったって無理するし隠し事するなって言っても隠し事する奴だってのはアタシだけじゃなく長い付き合いの皆んなはそう思ってるからな」
「あれ?めっちゃ厄介な人認定されてね?」
「それ抜きでもお前は厄介な人だよ」
それはひどい。俺が一体何をしたと言うんだ、ただちょっと色々騒動起こして楽しんで生活してただけだろう。それがいけない?そんなぁ
「だから別にどうこう言いたい訳じゃないよ、慎司は厄介な友達だけど同時に信頼できる友達だからな。アタシも皆んなも慎司の事を信頼してるから何も言わない聞かないって事は慎司も分かってるだろうし。ただちょっと考え事してるお前みたらムカついただけだよ」
わー、無茶苦茶な事言ってそうでめっちゃ嬉しいことも言ってくれてる。感動で泣きそう、ヴィータちゃん結婚しよ?
「結婚する?」
「キモいなお前」
あ、普通に傷つく。泣きそう、泣きそうだけどヴィータちゃんらしくて嬉しいや。けど泣きそう。でも、そんなやり取りだけで互いに笑い合える関係ってのは本当に大事なものだ。
ひとしきり2人で笑ってから俺は一呼吸終えてから
「んじゃ、会議終わったら久しぶりにやるか?」
「お、ポケ○ンか?それともスマブ○?」
「バト○ドーム」
「お前そんなん待ってたか?」
超!エキサイティング!!なゲームは全部持ってるだよなぁこれが。ちなみに結局会議の後にはできなかったけど翌日の休憩時間にヴィータちゃんと本当にやったけどヴィータちゃんの感想は「微妙」の一言だった。ちなみに俺もそう思う。
……………………………………。
「うるせえええええええ!!喧嘩すんなああああああああああ!!!!」
「誰も喧嘩してへんけど!?」
「うおおおおおおおおおおお!!」
「黙らんかいこのアホ!!」
分厚い魔導書で頭を叩かれる。痛い、普通に痛い。
「会議中に何騒いでんねん!中学生か!?」
「バカにすんな!中学生だって会議中に騒いだりしない!!」
「じゃあお前は何なんだ!?」
通りすがりの仮面………いや、今じゃないな。もっと大事な場面でこのセリフは取っておきたい。原作はめっちゃ使ってたけど俺はこの好きなセリフをここだっ!所に使いたいのだ。ならばここで言うべきセリフは
「やっちゃえ○産」
「地球での自動運転はまだ先の話やで、って何の話してんねんっ」
流石エセ関西人、ナイスノリツッコミ。
「もう、慎司がいると話進まないよ……」
と、壇上に上がり皆んなに説明している途中だったフェイトちゃん。ヴィータちゃんとの談笑で時間を潰してから予告通り緊急会議の最中だ。まぁ、騒いだのは許してくれ我慢できなかったんだ。
ちなみに会議の参加者ははやてちゃんになのはちゃん、フェイトちゃんのいつもの3人にそれぞれの副隊長を務めるヴィータちゃんとシグナムにシャマルと相変わらず獣姿のザフィーラ、リインフォースにちみっこと昔からのいつもの面々と言った所か。
「ごめんごめんフェイトちゃん、続けてくれ。この後焼肉の話だっけ?」
「もう黙ってね流石に」
「ごめんなひょい」
隣に座るなのはちゃんが首にかけたレイジングハートをチラつかせながらニコッとした顔でそう言う。やめて、もう魔力弾あびるのは懲り懲りよ。
「それじゃあ仕切り直して……」
フェイトちゃんは友人である俺達を前にしてもちゃんと部隊の会議という雰囲気を保つため丁寧にそれに似合った口調で残骸ガジェットの調査で分かった進展を説明してくれる。そう、俺達が追っているレリックを狙う謎の組織……そう呼称するしか無かった大元の人物を。
「ジェイル……スカリエッティ…」
静かにそう呟く。ジェイル・スカリエッティといやぁ罪状が数え切れないほどある超広域指定されてる一級次元犯罪者の名前だ。んで、まぁフェイトちゃんの出自とかでも因縁がある相手だ。とにかくそのジェイル・スカリエッティが大元なら……なるほど、フェイトちゃんがスカリエッティのデータをモニター化してくれた物を見ると明らかだが彼の白衣の姿を見る通り強い力を持った魔導師としての次元犯罪者というよりドクター……研究者としての力を持った犯罪者なのだ。彼が件のガジェットを開発し差し向けていると思えば納得もいく。
まぁ、同じ研究者の俺のママンが聞いたらめちゃくちゃ激怒しそうだけど。けど多分……スカリエッティだけじゃないだろうなぁ…黒幕はスカリエッティでも様々な協力者や他にも………うん、そうじゃなきゃ俺の中で色々説明がつかないからな。
「レリックを追っている次元犯罪者がスカリエッティだと確定するとしてだ……奴の目的には心当たりはあるのか?」
と、素朴な疑問をフェイトちゃんに投げかけるが
「色々考えられる事はあるけど……どれも推測の域を出ないんだ。正直何とも言えないって言うのが現状かな」
「そうか、まぁマッドサイエンティストの男を理解する事なんか無理だろうしな。仕方ねぇ」
フェイトちゃんは何年か前からスカリエッティを追っていたと聞いたから何か分かるかなと思ったが流石に無理な注文だったようだ。だか、スカリエッティが関わっていると分かっただけでも大きな進展と言えるだろう。
「それじゃ、今後の機動六課はジェイル・スカリエッティの捕縛を目標に今後動いていく……改めてそう言うに風に定めて動いていこか?」
「そうだね、他に手掛かりもないしスカリエッティが関わってるのは間違いないと思うから」
はやてちゃんが纏めるようにそう発言するとなのはちゃんの言葉を筆頭に皆んな頷く。一応確認として俺ははやてちゃんに向かって言葉を紡ぐ
「他のスタッフにはいつ周知させるんだ?」
「すぐ……と言うわけにもいかへんからね、もう少し話を纏めて上層部に報告してからになるかな」
「まぁ妥当か…」
早いに越した事は無いがちゃんと順番っていうのは踏まないといけない。組織特有の息が詰まるような手順だがまあ仕方ないか。俺も参加してるリインフォース以外のアークレインメンバーにはその時一緒にこの事は話すとしよう。
「それじゃ、今日はもう遅いし明日もあるから解散しよか?」
「ああ待て待て、俺から一ついいか?折角皆んな揃ってんだ……リインフォース、例のものを」
「分かった」
わざとらしく指をパチンと鳴らそうとするが綺麗にならず変に鈍い音が響く。それを見て微妙な顔をするなのはちゃんに威嚇しつつリインフォースから少し重みを感じる綺麗に包装された袋を受け取る。
「それは?」
フェイトちゃんの疑問に俺は言葉は発しないで表情をニヤリとだけして返す。ふふん、まぁ洒落たものでも無いけど前々から皆んなに渡したかった物なんだよね。
「コイツさ」
と、袋から一つ取り出してみんなに見せる。それは小瓶、小さい頃星の砂とかそう言うのが入ってお店で売っていたのを見た事あるだろう。それくらいの小さな小瓶。それに引っ掛けられるように丈夫な紐をつけた物だ。中身も一応ある物が入ってる。「ほらっ」とその一つを1番近くにいたなのはちゃんに投げ渡す。慌ててキャッチするなのはちゃんはその小瓶の中身をジッーと見つめてからハッとしたような顔をして
「これ、もしかして……」
「流石なのはちゃん、察しがいいな。そうだよ、それは俺の……『リンカーコア』のカケラだ」
俺の特別なリンカーコア……最後まで正しい方法で使ってやらなかった俺の体の一部。リインフォースを救う代償でこれは粉々に砕け、その残骸を母さんが魔法で綺麗に集めてくれてずっと特別なケースに保管をしてた。現状俺のリンカーコアの破片やカケラ、中には砂状になってる物も含めるとリインフォースの体の中、そして殆ど効能を失った一欠片が俺の体の中にある。それ以外の破片をこのままずっと保管しておくのもどうかと思ってこうやって小瓶に少しずつ詰めたのだ。
「その小瓶に少しずつ俺のリンカーコアのカケラが入ってる。小瓶も魔力で頑丈になってる特別性だ。皆んなには……これを持っていて欲しいんだ」
そう言って皆んなに一つずつ渡す。リインフォースにも用意するつもりだったのだが彼女は事前にそれは要らないと言ったのだ。
「私の体の中に未だ私を救い続けてくれてるお前のカケラがあるんだ……私はそれで十分だ」
そう嬉しそうに言ってくれたリインフォースの顔を思い出す。ちなみにちみっこにはちゃんとちみっこ用のサイズに合わせた物を用意してるので抜かりない。
「うん、慎司君がそう言うならありがたく貰うね。けど……どうして突然?」
なのはちゃんの当然な疑問に皆んなも同意なようで頷いてる。まぁ、急にこんなの渡されたら困惑するもんな。だから俺も正直な気持ちで伝える。
「俺はさ、やっぱり皆んなと一緒に前線に立って闘う事はできないからさ……せめて俺の一部を、俺の思いを持ってて欲しいんだ。邪魔じゃなければ、出来れば肌身離さず、闘いの場でも持ってて欲しい。俺と一緒に、俺の想いと一緒に闘って欲しいんだよ」
女々しいくらいに俺はいつも一緒に闘えない自分を恨めしく思う時が何度もある。自らその道を閉ざしたくせに、未だそれに悩む俺がいるのだ。どうしようもないって理解してる、だからこそ今までだって俺が出来る事を最大限にやってきた。それでも、同じ管理局員で同じチームとして皆んなとやっていくなら……どうしても……。
「まぁ、御守り代わりとでも思っててくれよ。俺からの皆んなへの餞別みたいなもんさ」
俺がそう語ると受け取ってくれたみんなは頷きあってその小瓶それぞれ体に身につけてくれる。首にかけたり、腕に巻いたり様々だった。そして笑顔でみんな俺に言ってくれる。
「これがなくても私はお前と一緒に闘ってるつもりだったのだがな……慎司がそれで安心してくれるなら喜んで持っていよう」
シグナムのまっすぐな言葉に笑顔を向けて
「ありがとうございます慎司君……大事にしますね」
優しくそう告げてくれるシャマルに「おう」と照れ臭く返事をして。みんながみんながそうやって俺の想いを汲んでくれた。ずっと……ずっと寂しかった、管理局員になって提督になってから俺はずっと寂しい想いを抱いてた。自ら選んだ道だったけど、やっぱり全然皆んなと会えなかったのは寂しかったから。
なのはちゃんでさえ半年に一回会うかどうか。地球にはずっと帰ってない。アリサちゃんやすずかちゃんと再会した時にはめちゃくちゃ怒られるんだろうな。高町家の皆んなとも会いたいし、地球でのクラスメイト達とだって会いたい。それを押し殺して頑張ってるんだから………なぁ、まだ頑張れるよな俺。
「慎司君、慎司君がどう思っていても私達はこの機動六課で一緒のチームで仲間で友達だよ。どんな所でも、どんな戦場でも、闘いじゃない場所でだって私達は一心同体で頑張るから……慎司君も同じ気持ちでいてくれると嬉しいな」
そうニコッと可愛らしい笑顔を俺に向けながらレイジングハートと一緒に俺の小瓶を首に掛け、その想いを胸に抱くように服の内側に持っていくなのはちゃん。ああ、ありがとう。君はいつも、そうやって俺を勇気づけてくれる。
まだしばらく俺は頑張れそうだ、みんなのおかげでな。
「よっしゃ!皆んなも受け取ってくれたし……最後に言わしてくれ」
清々しい気持ちだ。皆んなの想いを受け取って、俺の想いを受け取ってもらって……ああ、ずっと会えなくてもやっぱり俺達は大切な友達なんだ。そんな当たり前だったはずの想いを胸に抱いて俺は言う。
「2980円になります」
「「「「「「いや金取るんかい!!」」」」」」
いつもの照れ隠しなのでご愛嬌で。
いつも閲覧ありがとうございます!
作者の近況は最近仮面ライダーアギトの大人用ベルトが届いて最近はずっと変身遊びをしております。カッケーぜやっぱり