転生しても楽しむ心は忘れずに   作:オカケン

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 csmダブルドライバー………かっけえなぁ。一番好きなのは断然ディケイドですけどもね。次点でアギトかな。


やれることを

 

 

 

 

「んで?こんな朝早くにこんな所で1人で何してるの?」

「…………………」

「いい天気だなぁ、絶好のランニング日和だ」

「…………………」

「…………最近のサメ映画は無茶苦茶だよね」

「…………………」

 

 ダメだ、何言っても黙ったままだ。会話しようにも無視されちゃ何も出来ない。

 

「……やっぱりテロリスト?」

「違う」

 

 これだけはちゃんと反応する。よっぽどテロリストと言われるの嫌なのだろう。いや、誰でも嫌だわなそりゃ。さて、どうしたものか………でも悪い子には何となくだけど見えないしあの手が使えそう。金髪の女の子の隙をみて目薬を差す。

 

「無視しないでよ…」

「……………」

「な、なんでぇ……むじずるのぉ!」

「っ!?」

「びえええええええええええん!!金髪少女にずっと話しかけてるのに無視されたああああああ!」

「あ、え、あ、その………違くて……」

「ゔああああああああ!!そうやって無視して俺をいじめるんだー!!」

「ご、ごめ………えと、話を……」

「いじめるよぉ〜!パツキン女の子がいじめてくるよぉ〜!!」

「ち、違うのっ……泣かないで……同じくらいの年の男の子にそうやって話しかけられたの初めてだから何を言えばいいのか分からなくて」

「それで困って黙ってたままだったと」

 

 ピタっと嘘泣きをやめると女の子はえっ?えっ?と困惑していた。いいね、懐かしい反応だ。最近なのはちゃんはすっかり慣れちゃって騙されなくなっちゃったし。新鮮だ。

 

「初対面の奴に何言えば分からない時はとりあえず自己紹介だ。俺は荒瀬慎司、君の名前は?」

「フェ……フェイト……テスタロッサ」

 

 見た目からそうだと思ったけど外国生まれの子かな?まぁ、身近にアリサちゃんとかいるしカタカナの名前は珍しくないか。

 

「フェイト……フェイト………フェイソン?」

「フェイトだよっ」

「フェイトたそ」

「フェイトっ!」

「フェイトそん!」

「フェイトだってば」

 

 あぁ、そんな拗ねた顔しないでよ。ていうか冷たそうな雰囲気出してるくせに話してみれば中々感情表現豊かな子じゃないの。お兄さんそういう子の方が好きよ絡みやすくて。

 

「ごめんごめん、フェイトちゃんか………で、そのフェイトちゃんは朝早くに公園で何をそんな不安そうな顔をしてるんだい?」

 

 俺の質問にフェイトちゃんは口を開きかけるがすぐに閉じてしまう。そして、別に何もないと言ってまた殻に閉じこもってしまった。ほほう、予想以上に頑固な子だ。だが、そうされたらますます話を聞きたくなるというものだ。

 

「まぁまぁ、そう言わずにさ。俺に話してみない?解決できるって保証は出来んけど何か力になれるかもよ?」

「大丈夫……」

「大丈夫って顔してないよ。何がそんな不安なんだ?話せる範囲でいいから話してみろって、こう見えて頼りになる太郎君ですよ」

「慎司って名前じゃないの?」

「太郎は慎司であり、慎司は太郎なのさ」

「……ごめん、ちょっとどういう意味か分からないや」

「戯言だからそんな本気に考えないでくれ」

 

 そんな風に話せ話せとしつこく押すとフェイトちゃんは観念したかのように

 

「そこまで言うなら………分かった」

 

 と、ようやく話をし始めてくれた。と言っても話自体はそんな込み入った物ではなかった。簡潔にまとめるとフェイトちゃんはこれから母親に会いに行くらしい。こんな言い方をすると言う事は普段は一緒じゃないって事なのかな?まぁ、家庭事情にまで踏み込むのは今はやめておこう。その時に手土産としてケーキを持って行こうとしたのだが途中で手を滑らせて落としてしまったらしい。

 

「どれどれ」

 

 フェイトちゃんが持っている紙箱に入ったケーキを覗いてみる。あちゃー、食う分には平気だけどここまで形が崩れてるとなると贈り物としては駄目だな。フェイトちゃんの手は包帯で巻かれている。怪我でもしたのだろうか、それでつい落としてしまったのだろう。折角贈り物として用意したケーキがこの有様じゃフェイトちゃんの顔も浮かなくなるだろうに。

 買い直すお金はあるそうだがまだ早朝。店はやってないだろう、店が開く頃にはもう母親元に向かっている時間らしく間に合わない。それで途方に暮れているのだ。

 

「それ、捨てちまうのか?」

 

 形が崩れたケーキを指差してそう言う。

 

「母さんには渡せないし………私が自分で食べるよ」

 

 ため息をつきそうな表情でそう言うフェイトちゃん。うーん、何とかしてやりたいが………待てよ?

 

「なぁなぁ、そのケーキよかったら俺にくれないか?」

「え?別に良いけど」

「サンキュー」

 

 箱ごと受け取り中身のケーキを取り出して全部を一気に頬張る。口の周りが生クリームだらけになるがそれには意を返さずあっという間に全て食べきる。

 

「ふむ、中々うまいな」

「良かった」

 

 その言葉を聞いてますます母親に渡しておきたかったのだろう。元々暗くなってた表情が更に影を指す。

 

「こんなケーキ貰ったらお礼しねぇといけないな」

「えっ?」

 

 公園の水道で口の周りを洗ってから俺はフェイトを指差しながら言う。

 

「いいか!3分で戻ってくるから絶対にそこ動くなよ!」

「え?あ、うん」

「約束できる?」

「う、うん。約束する」

「本当だな?」

「本当に大丈夫」

「嘘ついたら針千本………飲むぞ」

「絶対に待ってるから飲まないでね……」

 

 念を押しつつダッシュで家に向かう。まぁ目と鼻の先なので急げば本当に3分で戻ってこれる。家の冷蔵庫から目当ての物を取り出して、形が崩れないよう急ぎつつ慎重に運ぶ。

 

「ほれ、ケーキのお礼だ……受け取ってくれ」

 

 公園に戻ってすぐフェイトちゃんに紙箱を突きつける。昨日の練習帰りに翠屋で桃子さんがくれたケーキだ。

 

「え?そんな、受け取れないよ」

「いーからいーから、ケーキくれた礼だから。ちゃんとした等価交換だろ?」

 

 あのケーキがどれくらいの値段かは知らないけど……まぁ量は似たようなもんだからいいだろう。

 

「言っとくがそのケーキは俺にとって海鳴一………いや、日本一美味いと思ってる喫茶店のケーキだ。味は保証するぜ?フェイトちゃんの母親もきっと喜ぶよ。それこそ、ほっぺたがとれちまうほどにな」

 

 胸張って言う俺にフェイトちゃんは先程までの暗い雰囲気から少しだけ笑みを溢した。

 

「ご、ごめんなさい……気を使わせちゃって」

「ちげーよ、そう言う時はありがとうって言うんだよフェイトちゃん」

 

 ほれ、早く言って言ってとジェスチャーする俺にフェイトちゃんは困惑しつつも

 

「……ありがとう、慎司」

「おう、どういたしまして。つってもケーキくれたお礼しただけだがな」

 

 満面の笑みとは程遠いが、それでも表情を明るくしてくれたフェイトちゃん。やっぱ女の子ってのは笑顔が一番似合う。

 

「これで、喜んでくれるかな……」

 

 ギュッとケーキの箱を掴んでそう呟くフェイトちゃん。

 

「喜んでくれるさ、フェイトちゃんの母親がどんな人か知らないけどさ………翠屋のケーキだぞ?食べさせたら絶対喜ぶって。俺が保証してやんよ」

「うん、そうだったらいいな」

 

 安心しろよ、そうやって真心込めたプレンゼント渡されちゃどんな母親だって喜んでくれるさ。俺が知ってる2人の母親はそうだったよ。ママンもお袋も………いつも喜んでくれたからな。

 

「フェイトちゃん、まだ時間あんのか?」

「え?うん……もう少しだけ」

「んじゃ、こうして出会ったのも何かの縁だ。おしゃべりでもしようぜ」

 

 隣を無遠慮にどかっと座る。ランニングできなくなるけどそんな事はどうでもいい。今は、少しでもこの子を明るい笑顔にしてから母親の元に行かせてあげたい。

 

「フェイトちゃんのお母さんの話でもしてよ。どんな人なのか、勿論俺の話も聞いてもらうけどな」

 

 そんな俺の言葉にパァとした表情を見せるフェイトちゃん。嬉々として母親の事を話し始めるフェイトちゃんを見て

 

「フェイトちゃんはお母さんの事が大好きなんだな」

「うんっ」

 

 それはそれは、朝日に照らされた金色の髪と同じくらいキラキラした表情だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 夢中で2人で話をしているとフェイトちゃんは慌ててもう行かなきゃと立ち上がった。

 

「本当にありがとう。このお礼はするから」

 

 そう言い残して公園を後にした。

 

「もう落とすなよ!また会おうなー!」

 

 去っていく背中にそう投げかけ見送る。手の包帯も気になるし本当は俺が持っていってやりたかったがいかんせん、そろそろ学校に行く準備をしないと。

 次会った時には、俺の仲のいい親友達を紹介しよう………きっとみんな仲良くなれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから翌日の早朝、週末である今日は学校もお休み。朝早くから道場へ向かう。相島先生にマンツーマンでみっちり指導を受ける予定だ。特別練習みたいなものか。これも結構頻繁にやっている。週末にまで俺の練習に付き合ってくれる相島先生には感謝している。普段のクラブの練習も俺に目を掛けてくれている。いずれ必ずこの御恩は返す腹づもりだ。

 自転車を走らせて道場に到着。一礼してから道場に入ると既に道着に着替えて準備運動をしている相島先生……と隅で正座をして真剣な目つきでいるなのはちゃんの姿があった。

 

「何でなのはちゃんが?」

「お前の練習を見学したいそうだ」

 

 俺の疑問に相島先生が答える。先に道場で準備をしてくれていた先生につい先程なのはちゃんが訪れてそう言ってきたらしい。

 試合の応援に来た時に既に顔は見知っていたしとても真剣そうだったなのはちゃんを断る理由もないからと許可をしたらしい。

 

「お前も気にせずいつも通りやれ」

「はいっ!」

 

 すぐに道着に着替えて準備運動をして早速練習開始。補強運動で体をいじめ、基礎練習で柔道の基本的な動きを反復し疲れてきた頃に技の打ち込み、投げ込み。先生とのマンツーマンでの乱取り(試合形式の練習)。それを何度も何度も何度も。さらには寝技で同じメニューをもう一度。朝から始めて練習が終わったのは正午より少し前。 

 その間、なのはちゃんは正座を崩す事もなくずっと真剣に俺の練習を見ていた。

 

「慎司、ここまでにしておけ。明日も通常の練習があるからな」

「はいっ!」

 

 絶え絶えな息を何とか正常に戻して返事をする。もう、くたびれたなんて表現が生易しいほど体の疲労を感じる。本格的に試合が近づいてきている現状、本気で優勝する為にずっとこの調子で練習してきたがいくらやっても不安は拭えない。それでも自分のできる努力を最大限やっていくしかない。

 

「高町さんと一緒に帰ってゆっくり休め。試合前に体を壊しちゃ元も子もない」

「ありがとうございました」

 

 着替えて一礼して道場を後にする。なのはちゃんも俺に続いて相島先生に頭を下げながら後にした。

 

「お疲れ様、慎司君」

「ああ」

 

 飲み物とタオルを手渡してくれるなのはちゃん。それを受け取って止まらない汗を拭いつつ水分補給。自転車を押しながら少し歩いた所でようやく体が落ち着いてきたので、俺は真っ先になのはちゃんに聞く。

 

「一体どうしたんだ?練習見学したいだなんて」

 

 なのはちゃんが練習場にまで来たのは今日が初めてだ。前に士郎さんが俺の影響で柔道に興味を持ち始めたと言っていたがそう言った類の理由じゃない事は顔を見れば分かった。

 

「うん、深い理由があるわけじゃないんだけど」

 

 言い淀んで深く考えながらもなのはちゃんは俺を真っ直ぐに見て言った。

 

「慎司君に……背中を押して欲しかったのかも」

「…………………」

 

 正直疑問が多すぎて訳が分かんなかったけど、少なくともふざけて言っているわけではない事は一目瞭然だ。最近ずっと悩んでいる事の件なのだろうけど俺の練習する姿を見る事が何か励ましにでもなるのだろうか?

 

「慎司君やっぱりすごいよ」

「何のこと?」

「それだけ頑張れる事だよ」

 

 柔道の事を言っているのだろうけど。確かに頑張ってはいる、謙遜はしない。勝つ為に、結果を出す為に人並みの何倍も練習をしてきたと胸を張って言える。

 

「頑張る事はそんなにすごい事じゃないよ」

「うん、でも慎司君みたい誰もがずっと全力で頑張り続けられる訳じゃないから……すごいってなのはは思うよ」

「そうかい」

 

 そんな事言ってなのはちゃんは何を求めてるんだろう。俺は何を言うべきなんだろう。俺を褒めてくれるなのはちゃんは別段暗い様子とかそんな感じじゃないんだが、色々と考え込んでるようなそう言う雰囲気だ。答えは出かけてる、何をすべきかどうしたいのか分かっているけどあと一歩を欲しがっている。以前と比べて迷いない表情なのに言葉がたどたどしいのはそう言う事なんだろう。

 その一歩をもしかしたらなのはちゃんは求めているのかもしれない。練習を見に来たのも感化されたかったのかも。

 

「慎司君は……どうして柔道を始めたの?」

「前から気になってたからだよ」

 

 嘘ではない。前世での始めた理由だがな。

 

「それだけじゃないよね?」

 

 何だかんだで何年もの付き合いになるなのはちゃんは誤魔化せなかったようだが。

 

「他にもあるよね?試合の時の慎司君はすごく………真剣だもん。まるで命を掛けて試合してるみたいに」

「大げさだよ」

「そんな事ないよ」

 

 確かに前世での色々な出来事で前世以上に柔道には真剣に取り組んでいるが命がけなんか勿論大げさだが、なのはちゃんはそれじゃ納得いかない様子。どうしようか、前世の事を話すわけにもいかないし……ふざけて答えてるなんて思われたくないからな。けど、真剣に聞いてくるなのはちゃんを無下にするのも嫌だし。

 

「…………真面目な話さ、俺も何で始めたかなんて事は正確には言えない。自分でも分かんない部分とか何となくって気持ちもゼロではないからさ」

 

 けど………それでもやっぱり一番頭に浮かんだ理由は

 

「後悔したからかな」

 

 後悔?と首を傾げるなのはちゃん。そう、後悔したんだ…柔道を続けなかった事を。死ぬ前のたかが2年。20歳で死んだから高校で辞めてからの2年間。たった2年間だったけど、心にぽっかりと穴が空いたようなそんな感覚をずっと抱いていた。けど、辞めたのにも理由があって………それでまた始める事が出来なくて。今も俺は後悔している。

 

「もう、後悔したくなくて……その絶望を味わったから。俺は柔道を始めて、そして頑張れるんだと思う」

 

 何を後悔したかとかそんな事はなのはちゃんには話せない。前世の事なのだから、なのはちゃんは理解できてないだろうし気にもなるだろうけど察して深くは聞いて来なかった。

 

「そっか、後悔したくないから……なんだね」

「だから、なのはちゃんも後悔しないでな」

「えっ?」

 

 なのはちゃんを真っ直ぐに見つめて、俺は言葉を送る。

 

「…………なのはちゃんがずっと何に対して悩んでて考えてるかは知らんけどさ、後悔だけはすんなよ。人生の先輩からのアドバイス」

「慎司君、私と同い年だよ」

 

 そう言いながらもなのはちゃんは笑った。

 

「ああ、そういえばそうだな」

 

 俺も笑みをこぼした。

 

「ありがとう………いつも励ましてくれて」

 

 何のことやらと肩をすくめてみる。なのはちゃんもふざけて真似をしてくる。腹がたったので自転車を置いてほっぺをぐにぐに。

 

「あれ?前より艶が無くなってないか?ちゃんと寝てんのか?」

「いいから早く離して〜」

「老けたのかな?」

「うにゃー!」

 

 ひっかくなよ、普通に痛いから。そんな風にじゃれあいながら帰った。なのはちゃんはやる事あるからと遊びに誘ったが断られた。すずかちゃんとアリサちゃんも予定あるらしいしな。この後は家で大人しく休もう。けど、まぁ久々になのはちゃんとじゃれあって楽しかったから。まっいいか。何か背中を押せたのなら……それでいい。俺には直接何か役に立つ事は出来ないんだろうから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「慎司、これ」

 

 帰ってベッドでボーッとしているとママンからいきなり何か手渡される。

 

「なにこれ?お守り?」

 

 また変な時期に。もう正月なんかとっくに過ぎてるぞ。しかもよりによって交通安全の御守りかよ、トラウマ抉るなって。

 

「それ、肌身離さずもっときなよ」

「なんでまた?」

「いいから、最近物騒だからちゃんと持っとくんだよ」

「へいへい、ありがとうママン」

 

 どういたしましてと言いながら俺の部屋から出て行くママン。おかしいな、ママンってそんな信心深かったかな?まぁいいか、せっかく用意してくれたんだ………出かける時は必ず持ち歩くようにしよう。

 

「それにしても暇だ」

 

 ゲームも一人でずっとやってるのも飽きたし。テレビも面白そうなのはやってないし。いつも会う3人は予定あるみたいだし。朝の特別練習を終えて見学してたなのはちゃんと一緒に帰ってすぐに昼寝して起きてからボーッとしてたらすでに夕方だ。休息といえば聞こえがいいがせっかくの休日………なんかしたいな。

 ベッドから降りて部屋着から普段着に着替えて玄関へ。

 

「ママン、ちょっと散歩してくるわ」

「はいはい、ご飯までには帰りなさいよ」

「うっすうっす」

 

 早速貰った御守りをポッケにしまって外に出る。とりあえず部屋で燻ってるよりは外の空気を吸って当てもなく歩くのもいいかなと思った。ゆっくり歩いて考える。

 最近、アリサちゃんはなのはちゃんとまともな会話はしてなさそうだ。アリサちゃんがなのはちゃんに怒ったあの一件から2人の間には溝というのは大げさだが前ほどの近さは無くなっている。喧嘩したとかそんな風に距離が離れたわけではないのは分かる。アリサちゃんはアリサちゃんなりの考えがあってなのはちゃんに対してあの態度なのだろう。なのはちゃんも全て理解してる訳ではないにしろ意地悪されてる訳ではない事は分かってるみたいだ。

 前のように4人ではしゃげるような……元に戻るのにはなのはちゃんの悩みが解決するのを待つしかない。どうする事も出来ないのは分かってはいるがやはり歯痒い。

 そんな悩んでも仕方ない事に考えを馳せているといつもの公園に差し掛かった。そういえば昨日の朝にあったあの子………フェイトちゃんのプレゼントはうまくいったのだろうか。連絡先も知らないしどこに住んでるかも知らないから知りようがない。一応俺も無理やりフェイトちゃんに事情を聞いた手前、どうなったか気になる所だ。

 

「まぁ、流石にまた公園にいるなんて事はないか」

 

 何て言いながらも公園を確認してみる。フェイトちゃんが座っていたベンチに視線を送ると。

 

「マジか」

 

 いたわ。普通にいたわ。びっくりだよ、でも話聞きたかったしちょうど良かった。近づいて声をかけようとする。が、俺は言葉に詰まってしまった。

 

「…………………」

 

 フェイトちゃんは俯いていた。暗い表情で俯いていた。昨日の朝、声をかけた時と同じように。いや、それ以上に暗い表情だった。別れた時はキラキラとした笑顔を見せてくれたのに、今はその面影もない。

 極めつけは両手で大事そうに抱えている紙箱。見覚えがある、俺がフェイトちゃんにあげた翠屋のケーキだ。間違いない。母親に渡すつもりだったケーキが今ここにあるという事は………。声をかけるか一瞬迷った、無視する事も出来ず俺は努めて明るく声をかけた。

 

「よっ!フェイトちゃん、昨日ぶりだな」

「あっ………慎司、よかった会えて」

 

 俺を確認するとフェイトちゃんはすぐに立ち上がって俺の前に立つ。すると

 

「ごめんなさい」

 

 そう言って頭を下げてきた。

 

「何だよ……何でいきなり謝ってんだよ」

 

 予想外の行動に度肝を抜かれつつ、なるべく冷静に応答する。

 

「ごめんなさい、慎司がせっかくくれたケーキ………食べて貰えなかった……」

 

 そう言うフェイトちゃんの表情は変わらず暗いままだった。とりあえず事情を聞くと母親に渡す事は出来たものの手をつけて貰えずずっとそのままになってしまいそうになり、俺から貰った品だから捨てる事も出来ずにとりあえず悪くならないうちに俺に返しにきたらしい。

 何だよ、娘からのプレゼントに見向きもしなかったって事か?何だよそれ……。

 

「フェイトちゃんは悪くないじゃないか」

「その……母さんはずっと大変みたいで。私も母さんの期待に添えなかったからっ」

「何だよ、だからって娘からのプレゼントを完全無視なんておかしいじゃないか。大体何だよ期待に添えなかったって」

 

 なんことかはさっぱりだが子供は親の人形じゃないだ。自分の思う通りにならないからってそれはあまりに酷い話だ。俺が怒りを露わにするとフェイトちゃんは

 

「母さんは悪くないの!……私がいけないだけだから」

 

 そう言って母親を庇う。何なんだよ、意味わかんないよ。

 

「期待に添えなかったってどういう事なんだよ、フェイトちゃん……」

 

 フェイトちゃんを見据えてそう聞く。

 

「そ、それは…………」

 

 しかしフェイトちゃんは目線を外して答えてはくれない。なんだよっ、フェイトちゃんもかよ。なのはちゃんと一緒なのかよ。

 昨日あったばかりの俺だからって、君まで教えてくれないかよ。役に立てないのかよ。

 

「それでその……ケーキ……返すね。ごめんね、せっかく用意してくれたのに」

 

 手渡される紙箱を受け取る。中身のケーキもそのままだ。結局の所、俺のお節介は無駄骨だったて事になる。歯痒い。ただ歯痒い。無力感に苛まされる。分かってるさ、俺はなんでもできる特別な人間じゃない。そもそも、人間は万能じゃない。何でもかんでも当事者じゃない俺が力になれる事なんかほとんど無いんだ。

 なのはちゃんも然り、フェイトちゃんも然り。そんな事は理解している、だけどそれでも胸に渦巻く悔しさは取れない。けど、それは今は飲み込むんだ。俺は当事者になれないなら………それでやれることをやろう。

 

「……フェイトちゃん、俺一人じゃ食いきれねぇからさ一緒に食おうぜ」

 

 フェイトちゃんは何か言おうとしていたが有無を言わさず一人分のケーキを手渡す。困った顔をするフェイトちゃんに添えられていたフォークを渡して食ってみろって訴える。

 フェイトちゃんは恐る恐るケーキを口にした。瞬間、驚くような表情を浮かべた。

 

「すごい……美味しいね。慎司があれだけ言うのも分かるよ」

「だろ?桃子さんのケーキは世界一よ」

 

 俺が作った訳ではないが胸張ってそう伝える。

 

「こんなにおいしい物……母さんにも食べて欲しかったな」

 

 そう言うフェイトちゃんに言葉には返答できなかった。なんで言えばいいのか分からん。かわりに自分の分のケーキをムシャムシャと豪快に口にする。お陰で全部食い終わると口の周りは白いクリームだらけになる。

 

「フェイトちゃんフェイトちゃん………サンタクロース」

 

 体張ったボケじゃ、笑え。

 

「さん……たくろーす?」

「えっ?まさか知らん?」

「うん………慎司、口の周り凄い事になってるよ?」

 

 こいつ手強いな……。

 

「いいか?サンタクロースってのは1年に一回…とある日に事あるごとの住居に不法侵入して子供にプレゼントを置いていくんだ」

「いい人なのか悪い人なのか分からないね」

「だがそれで終わらないんだ」

「えっ?」

「実はな、サンタクロースにプレゼントを渡された子供はな?次の日には………テロに目覚めるんだ」

「超展開だね」

 

 一気に冷めた表情をするフェイトちゃん。

 

「だからフェイトちゃんもサンタクロースに洗脳されたテロリストだと思ってたんだ……」

「テロ行為願望はないってば……」

「ちなみに今までの話は作り話じゃなくて本当の話だ」

「えっ!?そ、そうなの?」

 

 やばいこの子ピュアすぎ。面白いからネタバレしないでおこう。

 

「人間はなんで二本足で立てるか知ってるか?」

「え?知らないけど……」

「実はな……俺も知らない」

「何で知ってる風に話すの?」

「シーラカンスがどうしたって?」

「話に脈絡がなさすぎるよ」

 

 何てケーキを味わいながら話をする。悲しい事があったのなら誰かが励ましてあげればいい。俺はいつも通りに接するだけだけどな。

 それが大切だって事を俺は知ってる。伊達に前世の記憶持ちじゃないからな。

 気のせいかもしれない。俺の目が都合よく見せてるだけかもしれないけど……フェイトちゃんは最初に比べればまだマシな表情を浮かべるようになってくれていた。せめて今だけは俺のこのくだらないやり取りに付き合ってくれや。その間は、その悲しい出来事を思い出させないように頑張るからさ。

 

「フェイトちゃん、また公園に来いよ」

「えっ?」

「今度はもっといっぱい話して、いっぱい遊ぼう。きっと………楽しいから」

「……………うん」

 

 ほんの少しだけ、相変わらず暗い表情だったけど……ほんの少しだけ……笑ってくれた気がした。

 

 




 

 眠いながらも何とか投稿。おやすみなさい
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