ハローレノックス大尉であります。私の所属する突撃機動軍はグラナダとフォン・ブラウンからなる月面都市を完全に制圧。ドズル中将の宇宙攻撃軍はサイド1、2、4を制圧。そして私と私の中隊はグラナダで英気を養っている。
実のところ、初戦のこの電撃戦は連邦宇宙軍の初動を遅らせるのに大きく貢献している。サイド5ルウムに駐留しているティアンム艦隊が動けない理由がこの電撃戦にあるのだから。
ティアンム艦隊艦隊は現在のジオン公国軍の艦船と同等の量の艦隊であり、この艦隊が月面抜けてサイド3に攻撃を仕掛ければジオンは敗れるという状況にあるのだ。
連邦軍は無能ではないのでティアンム艦隊でジオン本国を攻撃することも計画されていただろう。しかし、それをできない理由があった。ジオンのコロニー落としだ。
私個人としては人間の屑の所業に思えるがこれは作戦としてはかなり優秀なものだ。これによりティアンム艦隊はサイド5防衛のために小部隊を残し、コロニーの迎撃に向かった。
その隙に、グラナダの基地化と要塞化を急ピッチで進めているのだ。
また、地球に近い月面都市のフォン・ブラウンはアナハイム・エレクトロニクスとの交渉によって中立となっている。これは実際はアナハイム側がジオンに向かって、中立にしないと物資を止めると脅したというのがもっぱらの噂である。スプーンから戦艦までをキャッチコピーにするアナハイム・エレクトロニクスは巨大なコングロマリットでありボイコットされると大変なものになってしまうので仕方が無い。
(死の商人め)
全くである。こいつらが原因ではないが一年戦争の要因の一つではないかと疑ってしまう。
「大尉、浮かない顔をしてどうしたんですか?」
「ストレット少尉か。私はアナハイムエレクトロニクスが全ての黒幕に思えてな………」
事実、ラプラスの箱とか考えるとやっぱり黒幕なのではという思いが沸き上がってくるのだ。
「大尉。陰謀論は今どき流行りませんよ。まあフォン・ブラウンは落とし損のような気もしますがね」
「全くだ。死んでいった敵味方の兵はせめて安らかに眠って欲しいものだな」
「おっと。そんなこと言ってると上から睨まれますよ」
「死者に哀悼すら捧げられない戦争は願い下げだな。せめて死には意味が有って欲しいものだ」
「ええ。全くです」
「湿っぽい気分にさせてしまったな。そうだなリンゼイ伍長にカクテルでも作ってもらおうじゃないか」
「おっと、女子会に私のような冴えない男が参加していいので?」
「ああ。構わない」
私たち中隊ではリンゼイ伍長を中心として女子会が行われているのだ。メンバーは私と、企画者のリンゼイ伍長と、エリザ伍長と、上等兵のアンである。
茶髪、黒髪、金髪、赤毛と全くまとまりのない組み合わせだ。
中隊長の私が女であることもあって私の中隊の三分の一に当たる四人が女で、全員仲がいい状態である。
「しかしなあ。もしかしたらザクの設計もアナハイムが流したのかもしれないぞ」
「まさか。有り得ませんな」
「ルナリアンならやりそうじゃないか。そして連邦が負けそうになったら高性能なMSを向こうに流すんだ。連中ならやりかねないだろう」
「嫌な想像ですね。大尉の良く当たるカンもたまには外れてもいいのでは?」
「ああ。そう願いたいね」
ルナリアンの悪口を言いながら私たちは女子会の会場に向かった。会場は基地内のちょっとしたブースだ。
「あっ大尉待ってました。ストレット少尉も一緒なんですね」
「少尉もっすか?」
「アンが失礼を。少尉こちらに」
アンは赤毛を短く刈り込んだボーイッシュな女の子だ。
中隊では可愛がられている。
「そういえば大尉凄かったっすね。私もあんなにザクを動かせるようになりたいっす!」
「練習あるのみだな」
「つれないっすね。なんか秘訣は無いんすか?」
「慣れだ」
「アン。それぐらいにしなよ」
「もう。エリザはもっと前向きになりなよ」
「アンが前向きすぎなのよ」
「えっと。用意できましたよ。大尉の好みに合わせで辛口でいいですね?」
「こういう時に階級は役に立つものだな」
(私甘いのが良いんですけど)
嫌だね。辛口だ。
(私活躍したよね?)
分かったよ。二杯目はそうする。
(わーい)
「えええ!?大尉私甘いのが良いっす!」
「駄目だ。階級順とバーテンダーの都合に合わせろ」
「大宇宙の戦士諸君に敬意を表す。献杯」
宇宙世紀は非常だ。だから敵も味方も今は忘れて、誰かの死を悼むジオン将校が一人くらいいてもいいだろう。