(こんにちわぁ みんなのアイドルぅ テレサちゃんだよぉ)
(可愛いって言って)
今何か見えたような?まあいっか。
UC0068になった。私は何とかやっている。現在私は11歳。一応は高校卒業程度の学力は身に着け終えて大学に進んで文科系の研究を行っている。悲しいことに文科系の学問は淘汰されてしまった。役に立つと目された社会学や法学、経済学は残っているがサイド3では文学などは絶滅寸前だ。地球では盛んに研究が行われていると教授は言っていたがコロニーではさっぱりだ。私はあえてそんな学問をやっている。
最近の出来事としてはUC0066に、ミノフスキーショックとよばれる出来事があった。ミノフスキー粒子が発見されたのだ。ヤバい粒子が発見されてしまったので軍事関係者や通信関係者は大慌てだろう。
それはともかく現在サイド3では暴動が発生している。この原因は何かというとジオン・ズム・ダイクンが死亡したのだ。ジオン・ズム・ダイクンは議会で地球連邦政府からの独立を宣言しようとした際に倒れそのまま死亡した。
サイド3において思想的にも実質的にもリーダーだった彼の死は大きな混乱をサイド3の市民にもたらした。そしてジオン・ズム・ダイクンを暗殺したとされる地球連邦政府へのデモが行われている。
ジオン・ズム・ダイクンの死に関して公式発表では病死とされているが真偽は不明だ。巷で主流なのは地球連邦政府による暗殺だ。またダイクンから権力を奪うためにザビ家が暗殺したというザビ家黒幕説も流れている。更には穏健派でありダイクンの同志だったダイクン派が逸るダイクンを殺したというダイクン派自演説も流れている。
要するに真実は不明だということだ。ダイクンの死因が病死という公式発表が真実だとしてもそれは大衆にとっての真実には成れなかった。大衆にとっては地球連邦政府黒幕説が真実となってしまった。そしてダイクン派にとってはザビ家暗殺説が真実になった。確かなことはこの事件がサイド3やさらにはダイクンに傾倒するスペースノイドの地球連邦政府に対しての疑心をさらに煽ったということだ。
私は忘れていたが、テスが私の中からサルベージした記憶に確かにあったのでダイクンの死に関してはそれほど驚くということは無かった。
事態は収拾がつかず、この動乱の中でさなかにサスロ・ザビが暗殺された。乗っていた車が爆発したのだ。これを理由にザビ家とザビ派がラル家を中心としたダイクン派に対しての攻勢を仕掛けた。そしてダイクン派は権力を失ったそうだ。
かねてからキシリア閥に所属しながらダイクン派に所属していた蝙蝠なレノックス家は無事にキシリア閥に合流した。そして今はダイクン派の要人をキシリア閥に取り込んでいるようで、パパはここ数日家を空けている。流石に大学も休みになっているので私は家に篭って情報の収集をしている。
連邦軍の部隊が出動しているいうのがSNSで回ってきた。それを見た私は地球連邦軍が決して無能ではないことを知った。そこに映っていたのはガンタンクだった。その時私の口はだらしなく開いていただろう、文字通り茫然自失だったのだ。
その後調べた結果、ここサイド3の連邦駐留軍がレビル中将であることを知った。どうやらレビル中将の下モビルスーツの研究が行われているらしい。残念ながらこの世界の連邦軍は軍事のパラダイムを一変させるミノフスキー粒子のことを甘く見ている訳では無いようだ。
暗澹とした気分になった。私の未来が一つ狭まったような気がした。気分転換に自宅にある壺を眺めることにした。大学の教授から貰ったものだ。彼は熱心な蒐集家でありそれに感化されて私も焼き物に興味を覚えるようになったのだ。
(キャスバル君は無事に逃げたのかな?)
全く意識していなかった。そういえばシャアはこの事件のせいで地球に逃げ延びるはずなのだ。こんな大ごとになっているのでもしかしたら死んでいるかもしれない。そうすれば私の未来が明るくなる。きっと死んでいるのだ。そうだ。そうに違いない。
その後この暴動は鎮圧され、サイド3に平和が戻った。デモは首都バンチのズムシティだけではなく他のバンチにも派生していたから私は結構心配になっていたのだ。
このまま平和なままなんて行けばいいのだが………多分駄目だろうな。
騒動が過去のことになったある日のこと私は大学の教授と一緒に骨董市に来ていた。この骨董市はズムシティでも知る人ぞ知るといった場所で行われており人は少なかった。
「教授、何となく私にもわかるようになってきました。これ気に入りました」
「それはビゼンだ。ジャパンの焼き物だよ。なかなか渋いセンスをしているじゃないか」
「ええ。これ値段は?うわ高!?私の目がおかしくなったんですかね?」
「残念ながらそれは正当な値段なんだ。地球からはるばるやってきたからね」
「え、茶わん一つがこんな値段なんですか!?でもまあその価値はあるかもしれませんね」
前世ではこんな高くなかった気がするのに。そんな風に私達が談笑していると男がやってきた。というかマ・クベだった。そうだねこの人文化人だったね。
「おや、久しぶりですな教授」
「これはこれは少将閣下。良い品は有りましたかな?」
「いえ、この骨董市は私の好みとは違う様でしてな」
「なるほど。それは残念でした」
「ところで教授、そちらのお嬢さんは教授のお孫さんですかな?」
「まさか。私は一生を君らスペースノイドのいうくだらない学問に捧げた男だ」
「はは、これは随分と手厳しい」
「その点彼女は違う。君とも相応に話せるだろう。紹介しよう少将。こちらはテレサ・レノックス嬢だ」
「社交の場ではお会いしたことが有りませんでしたね少将閣下。テレサ・レノックスです」
私は淑女らしく少将に礼をした。
「なるほど、レノックス家の御令嬢か。准将からはよく自慢話を聞くよ。随分と優秀なのだな」
「いえ私など秀才どまりですよ。本物の天才とはかけ離れています」
「ほお。世の中の諸子が聞いたら怒り狂いそうな言葉だな。だが確かにそうだ。天才というやつは我々では見えない世界を見ているからな。私も彼らの見ている世界を見てみたいものだ………。すまない。戯言だ、忘れてくれ」
「はい忘れます」
「素直なことは良いことだ。君は大成するだろう。そうだ、将来はどうするのかね?」
「私は士官学校に入学する予定です。この先は激動の時代は避けられないでしょうし私の家は武門の家柄ですから」
「ならば私は君のことを予約してもいいかな?」
「ええ構いませんとも」
「フフフ、君とは趣味が合いそうだな。どうかな私と文通でもしないかな?」
「はい。勿論かまいません」
「なんと君は文通を知っているのか。こんな世の中でうら若き少女がそのような趣味を解するとは世の中捨てたものではないな」
「うら若き才媛よ。君の前途に祝福があらんことを」
どんよりしたオーラを感じて横を見ると教授がうなだれていた。
「えっとどうしたんですか教授?」
「君のような優秀な学生が戦争なんかに取られることが悔しくてね。君になら私の研究を任せても大丈夫だと思ったのだがな………」
「私だってのんびり研究して過ごしたいですが、抵抗できずに死ぬくらいなら軍に入って誰かのために死にたいんですよ」
「人は争ってばかりか。少しは進歩があってもと思わんかね?」
「ええまったくそうですね」
しばらくしてマ・クベ少将から手紙が来た。漢詩が添えてあって元ネタを思い出すのに少し苦労したが何とか思い出せた。この古典ネタを交えた文通が最近の私の楽しみの一つになってしまった。オデッサは御免被りたいが。