宇宙世紀は終わらない   作:むにゃ枕

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第四話 士官学校 UC0074~0077

 月日が経つのは早く遂にUC0074になった。私は士官学校に入学できる年齢になったのだ。ムンゾ自治共和国防衛隊士官養成学校、通称、士官学校は17歳以上から入学できる組織だ。

 

 ここでムンゾ自治共和国防衛隊について説明しよう。簡単に言うとムンゾ自治共和国防衛隊は独立自治を志向しているサイド3に地球連邦が飴玉代わりに与えた防衛軍である。当然、装備は地球連邦軍以下のものしかない。宇宙用艦艇としてチベ級宇宙戦艦、パプア級輸送艦、ガガウル級駆逐艦を装備しているがこれらは全て地球連邦宇宙軍のものと比べると劣るように設計させられたものだ。また、地上軍のマゼラ・アイン戦車や宇宙戦闘機についても劣ったものしか与えられていない。

 

 この他にもサイド3にはザビ家の私兵である親衛隊というものが居たりするがこちらは所詮は私兵というレベルであり、将来ジオン軍の骨格をなすのはこのムンゾ自治共和国防衛隊だ。

 

 私の父親のハーラン・レノックス准将や、私の文通相手のマ・クベ少将などはこのムンゾ自治共和国防衛隊に所属している。前にも言ったが地球連邦軍の平時の将官の最上位が少将であるので、防衛隊もその制度を流用し少将が最高位となっている。

 

 防衛隊と言いつつも実際は一国の軍隊と言っていいだろう。普通に規模は大きい。前世の自衛隊以上の規模を持っている。もっとも地球連邦軍とは雲泥の差が有るのだが。

 

 そんな微妙な立ち位置にいるムンゾ自治共和国防衛隊の士官学校に私は入学するのだ。この学校では二年間の基本教育を終えてから、一年間の実地訓練を行い卒業する。これくらいの年数は宇宙での訓練などを鑑みるとなかなか短い方だろう。

 

 入学式で、問題の男を発見した。金髪でグラサンを掛けている男だ。どう見てもシャア・アズナブルだった。あいつ生きてやがった。ぶっちゃけると死んでた方が、私にとっても人類にとっても害が少なかっただろう男だ。だからといってキシリア機関に通報しても未来がよく分からない方向に行ってしまうだろう。放置だ、放置。

 

 ちなみにレビル中将もこの入学式にも参加している。こっちも生きていられると面倒くさい奴に思えるが、そもそも連邦軍の将官だし何もできないだろう。

 

 シャアに関してはこっちが放置していても向こうが気づく可能性が拭えない。シャアが生き残っている理由を探るとキシリア機関が無能すぎる気がするが、私兵集団の能力なんてそんなものだろう。シャアの話に戻るが彼は出自バレした同じテキサス出身のリノ・フェルナンデス君を事故に見せかけ殺している。

 

 それと比べると私は危険な気がする。幼少期は奴に連れまわされていたので私の顔を覚えている可能性が高い。念のために殺されては元も子もないので気を付けたい。

 

 父親が過保護なため、士官学校内のキシリア機関員とのつなぎは付けているのでいざとなったらそれを使いたいところだ。

 

 学校生活の目安としてはガルマの御一行とは程々の距離をとって、将来の為に有望そうな同期とは仲良くしていきたい。もうキシリア閥に所属してしまっているためガルマとの友好度を高くする必要はないはずだ。

 

 善は急げということでシャアを人気のない所に呼び出した。策は何個かあるので問題はないはずだ。きっと。何か仕込まれないか心配だったため、待ち合わせ場所に先に来れてよかった。全く人気が無い場所なので密談にはもってこいであることを再確認できたころに人の気配がした。

(ターゲットと確認)

 

「おっと動かないでね。キャスバル・レム・ダイクン」

 

「おや、なんの冗談かな?僕はシャア・アズナブルだ。そんな危ないものを向けないでくれないかい」

 

「貴方が私に危害を加えないと約束すればいいわ。やんちゃだったキャスバル君」

 

「その声、その姿……間違ってはいないな、やはり君かテレサ」

 

「ええ。悪いけど私復讐鬼の巻き添えで死にたくはないの」

 

「……」

 

「弁解はしないの?私の家ザビ家と親しいのよ」

 

「……ふふ、まさか君はそんなことはしないだろう?」

 

「そうね。その通りだわ」

 

「君が求めているのは自身の安全のみだろう?違うのかい?」

 

「イエスよ」

 

「なんとも冷たい女だな君は……」

 

「これで用は済んだわ。ザビ家の打倒にもダイクン派の再興にも私は興味がないの。勿論あなたにもね」

 

「そうか……」

 

「そうね」

 

(めっちゃ青春みたいな会話じゃん)

 

 思ってた以上にすんなりと私の話が通ったのに驚いた。これで私が事故に見せかけて殺される確率はほぼなくなっただろう。死亡フラグは解除した。やったぜ!

 

 シャア・アズナブルが私をどさくさに紛れて殺すことは無くなったはずだ。あれはそういう男だったはずだから。

 

 士官学校の二年間の基礎授業は、軍事の基本を学んだり戦術を学んだりする授業だった。他にも走ったり走ったり走ったりした。私は大学の博士号まで持っているくらいには頑張って勉強したので勿論シャアやガルマを抜いて主席だった。ずっと主席だ。

 

 女子の中で私が仲良くなったのはゼナ・ミアだ。彼女はドズルの妻になる女性である。私が内向的キャラで必要最低限の会話くらいしかしないのに彼女は活発に活動している。私がかなり彼女に引っ張られる友人関係だ。なんやかんやで彼女のことは良く思っている。

 

 UC0077になった。この年地球連邦宇宙軍サイド3コロニー駐留艦隊に所属するサラミス級巡洋艦が、ズムシティの農業区画に激突するという事故が発生してしまった。この事故によってサイド3の反連邦感情が刺激され、ズムシティをはじめとした各コロニーで反地球連邦デモが発生した。

 

「ねえテレサ。虐殺よねこれって」

 

「そうね。ゼナ」

 

「私たちも何か行動を起こすべきよ。虐殺が正当化されていいはずないわ」

 

 反地球連邦デモを地球連邦が武力で鎮圧しようとして、それに反発したデモ隊との間で交戦が発生した。士官学校のあるガーディアン・バンチからも連邦軍がデモ隊の武力鎮圧のために派遣される準備がされているという話だ。

 

「そうは言っても、行動ねえ。ここの連邦軍をどうにかするってこと?」

 

「うっ、そう言われると……」

 

「シャアがガルマを焚き付けて反乱を起こそうとしてるの知ってる?」

 

「まさか!?本当に!?」

 

「ああ。残念ながら本当のことらしい」

 

「私ね。軍隊ってこういう時の為に有るのだと思うの」

 

 シャアは私にコンタクトを図ってきた、連邦軍の駐留地の地図が欲しかったらしい。私はキシリア機関を通じて地図を用意した。これは明らかに暁の蜂起の準備のようだ。ここでゼナに教えても時間の問題だろう。

 

 ほどなくしてシャアとガルマが学生を焚き付け始めた。キシリア機関を通じてキシリアに連絡を取ったら好きにしろとのことだった。

 

 襲撃が始まった。私も一隊を任せ得られて突撃する。

(人間の魂が砕けて私の中に入ってくりゅううううう❤)

戦場に近づくにつれ確かにそんな感覚がしてきた、気持ちが悪い。死人の怨念、悔恨、悲鳴、嗚咽、様々な感情が私の中に入ってきた。ああ気持ちが悪い。

最初の数分を通り越すと慣れてきた。ニ十分後くらいには魂の悲鳴が単なるBGMになっていった。

下腹部が熱くなって下着が湿っているのが分かった。身体は高揚していて、精神だけが落ち着いていた。

(ヒャッハー!皆殺しだ!!死ぬまでぶっ殺してやる!!悲痛な死を。絶望を。他者の命を奪える戦場だよ。ああたまらないわアアアアア!!!!魂!魂!タマシイイイイイ!!!!)

ニュータイプってこんなのだったのだろうか?テスの声が脳裏でうるさい。

 

 恐怖に竦んで足の止まった連邦兵を三点バーストで撃ち殺していく。タンタンタンといった小銃の響きが、断末魔の悲鳴が、溢れる血と臓物から汚物が溢れる音は只の音楽のように聞こえた。

 私は戦場に順当に適応していった。同期は怯えながらあるいは狂乱したように戦っているが、私は冷静だった。怯えもなければ狂気も無かった。ただの機械のように淡々と人を殺していった。

 

 ジェットパックで飛びながら俯瞰する戦場が美術館のように思えた。カチリと音がして弾が切れた。弾薬はもうなかった。仕方が無いナイフを抜く。そして銃弾の雨を掻い潜りながら敵に肉薄する。驚愕を顔に張り付けた連邦兵の首をナイフで切り裂く。頬に飛び散った血を舐めとると甘かった。命を奪う甘美さがそこにはあった。

 

 怯えた連邦兵を背中から刺していく。こんな時にニュータイプというものは便利だ。度を越した空間把握能力に直感、戦闘の為に人は進化したのかもしれない。いや戦場から人間は進歩するのかもしれない。

 

 気が付いた時には私は一人になっていた。味方の方に戻ると何やら彼らは怯えているようだった。

 

「ば、化け物が」「なんだよ!なんなんだよおお!!」「いやああ!!!!私を殺さないでよおお!!!」

 

 瓦礫から覗く金属で自分の顔を見てみるとなるほど化け者の様だった。顔には張り付いた微笑が、そして身体には返り血の一つもなかった。真っ白の肌は屍蝋のようで人形じみていた。

 

 暁の蜂起は成功しガーディアン・バンチの連邦軍は降伏した。市民はそれを祝い凱旋パレードが行われた。ガルマを中心に左側には私、右側にはシャアがそれぞれ群衆に向かって手を振っている。

 

 ちなみにリノ・フェルナンデスはシャアに殺されたらしく、遺影となってパレードに参加している。私の指揮下にいた同期の何人かは死亡し、残りの一部は精神崩壊し廃人になった。正常なのはほんの一部だ。一体何がおこったというのだ。  

 

 時間が収拾し、地球連邦軍サイド3コロニー駐留軍との間で交渉が行われサイド3から駐留軍は撤退することになった。大衆はその結果に熱狂しているが私には破滅へと一歩を踏み出したように思えた。

 

 

 事態がひと段落つくと、シャア・アズナブルは士官学校から放校され、私が主席卒業、ガルマが次席で卒業した。卒業パーティーが終わると私は洒落たバーに呼び出された。

 

 店員に合言葉を告げると奥に通され、そこにはキシリアとその護衛の姿が有った。

 

「あら久しぶりね、レノックス少尉。配属の希望は有るかしら?」

 

「これはお久しぶりですキシリア閣下。私の希望としてはモビルスーツパイロットを志願します」

 

「あら。貴女はてっきり父親や兄のように後方を望むと思ったのだけれども?」

 

「そうしたら貴女に使い捨てにされ、私は身元不明の死体にされてしまいますから」

 

キシリアのこめかみが引くついていた。

 

「権力欲に取りつかれた更年期の婆は黙って私の言うことを聞いてればいいのよ」

 

「言うじゃない小娘が」

 

キシリアの怒りを察した護衛が素早く動く。キシリアは激昂するのを何とか抑え荒い息を吐いた。

 

「私は暇じゃないのよ。生意気を言うだけの無能は必要ないわ」

 

「では、証明してみせましょう。私が口だけの無能ではないということを」

 

 種を明かすと実際こんなことをしているのは私ではなくテスの方だ。テスはMSという兵器の力で私の安全を守ることを主張し、私は後方勤務と実家の力で安全を得ることを目標としていた。彼女の武力で安全を買うという主張は複雑怪奇なジオン政界で私が生き残れるはずがないという前提で成り立っていた。しかし私は前線には出たくなかったので後方勤務を目標とし、政界でもなんとかなるだろうと楽観的に確信していたのだ。更に彼女の主張の根本には戦闘欲求が有ることを指摘し、完全論破したら身体を乗っ取られた。おかげで最近は砂糖の塊ばっかり食わせられている。辛味。辛味が欲しい。

 

 こうして私はキシリアを煽りまくったが無事に教導機動大隊に所属することになった。父から小言をもらったがあれはキシリア閣下が私のことを試したのだと言いくるめた。

 

 私の安穏としたライフプランは既に崩されてしまった。なんてこった。しかし正直なところMSパイロットというのも良いのではないかと最近は考え直している。後方勤務では部下を持てたとしても文官ばかりだろうし、MSパイロットに比べると昇進のスピードは遅くなる。しかし、生命の危機は明らかに少ないはずだったのだ。

 

 この時期から教導機動大隊所属ということは私は最初期のMSパイロットということになる。ある程度のノウハウが育ったころに所属したいという願望はあったが、これはこれでいいのかもしれない。何より最初期というのはロマンが有るのだ。最初期のMSパイロットだったという一生モノの思い出が出来るだろう。近所の子供に自慢するのもいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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