足踏み、胴造り、打ち起こし・・・・・・。
俺、
大三、引分け・・・・・・・。
弦を引きかまえ的に向かって狙いを定める。
会、一、二、三、四、五、六、七、八・・・・・離れ!
パァァアアアアン!
残心。ふぅ~、終わった。。
見事的の中央に当たり、息を吐いた俺は速やかに弓道場から出て同じ部活仲間や後輩たちのところに行く。
「やったな!優勝だ!」
「やっぱりトリはお前だと安心するわ」
「これで今年も全国に行ける!」
「よっしゃ!帰ったら打ち上げだ!今日は飲むぞぉぉおおおおお!」
庄司、渡辺、田中、大木戸。俺と同じ高校三年の同輩。もう三年の付き合いになる。
「とりあえず全国は決まったんだし、明日はゆっくりしようぜ。それから大木戸、お前高校生なんだから酒飲むなよ。飲んでもいいがそれで全国取り消しにはするな。仮にも部長なんだから」
「わーてるって!少しだけだ!」
結局は飲むのかよ・・・・。勘弁しろよ。お前、唯でさえテンション高めなのに飲むと余計にテンションが高くなるから鬱陶しいんだから。
心の中でそんな愚痴を言いながら俺たちは表彰を貰い、記念撮影をして俺は自分の家に帰宅し、着かえずにそのままベットに寝転ぶ。
「はぁ・・・・全人類滅びねえかな~・・・・・なんてな」
憂鬱。そんな言葉が俺に一番合ってると自覚できるくらい俺は今、憂鬱だ。いや、あの時からもう憂鬱か。
「ん?手紙?」
気が付くと机の上に一枚の封書があった。そこには『霧谷篝殿へ』と書かれた封書を見て俺は首を傾げた。
「俺の名前しか書かれてねえ・・・・みたいだな。何だ?このアニメに出てきそうな手紙は?まぁ、開けてみるか」
そう言って俺は机に置いてあるナイフで封を切って文章を読むと
『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。
その
己の家族、友人、財宝を、世界の全てを捨て、
我らの"箱庭"に来られし』
「わ」
「きゃ!」
「おっ!」
読み終わった瞬間、俺は空にいて、上空恐らく4000mから急落下していた。
今、俺以外にも声がしたな・・・・・。
俺は落ちながらも横を見てみるとそこには金髪ヘッドホンの奴と髪に赤いリボンをつけた女子と猫を抱えている女子がいた。
どうやら、呼ばれていたのは俺だけじゃなかったんだな・・・・・・。まぁ、どうでもいいか。このままだと湖に落ちて死ぬな。
そんなことを考えているうちに俺は湖に落ちて死・・・・・・にはしなかった。
「し、信じられないわ!まさか問答無用で引き摺りこんだ挙句、空に放り出すなんて!」
「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」
いや、動けねえだろ。
金髪ヘッドホンの奴の言葉に思わず内心でツッコンでしまった。
「・・・・・・。いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?」
「俺は問題ない」
「そう。身勝手ね」
お前もな。というか何だ?この個性溢れる奴らは?大木戸たちでさえここまで個性は強くねえぞ?まぁ、どうでもいいか。
陸に上がり背伸びをする俺は辺りを見渡すと茂みに隠れて俺達を見ている奴がいるがそれもどうでもいいか。
「此処・・・・・どこだろう?」
「さあな。まあ、世界の果てっぽいものが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねえか?」
「あの状況でよく見てんな。あ、その猫触っていい?」
「うん、いいよ」
無表情の女子から許可をもらい俺は猫の頭を撫でたり顎を掻いたりするが、何か睨んでんな、この猫。毛は気持ちいいが・・・・。
「まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ。もしかしてお前達にも変な手紙が?」
「そうだけど、まずは"オマエ"って呼び方を訂正して。私には久遠飛鳥よ。以後気を付けて。それで、そこにいる貴女は?」
「・・・・・・春日部耀。以下同文」
「そう。よろしく春日部さん。猫を撫でているお兄さんは?」
「霧谷篝。恐らくお前らより年上だろうけど別に敬語じゃなくてもさん付けもしなくてもてもいいぞ。そういうのは慣れていないからな。猫ありがとう」
「どういたしまして」
俺は猫を春日部に返す。
「最後に、野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」
「高圧的な自己紹介をありがとうよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義者と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」
「そう、取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」
「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」
心からケラケラと笑う逆廻十六夜。
傲慢そうに顔を背ける久遠飛鳥。
我関せず無関心を装う春日部耀。
その光景をどうでもよさそうに見る俺、霧谷篝。
うん、俺以外、キャラがスゲー濃いいな。それにしてもまさか本当に異世界に来るとはな。全国大会・・・・・・・どうでもいいから後輩の誰かが頑張るだろう。頑張れ、大木戸たち、そして後輩たちよ。俺は別の世界から覚えているうちは応援するよ。
「で、呼び出されたはいいけどなんで誰もいねえんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねえのかよ?」
「そうね。なんの説明もないままでは動きようがないもの」
「・・・・・・・。この状況に対して落ち着き過ぎているのもどうかと思うけど」
「いや、春日部さん。それはキミも言えたことじゃないだろう?お前ら落ち着きすぎなんだよ」
(あなたもですよ!)
「仕方がねえな。こうなったら、そこに隠れている奴にでも話を聞くか?」
「なんだ、貴方も気づいていたの?」
「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?そっちの猫を抱いている奴とあんたも気づいていたんだろ?」
「風上に立たれたら嫌でもわかる」
「お前ら凄いな。俺はまったく気づかなかったよ」
「嘘つけ。俺達より先に最初にあそこを見たのはあんただろ?」
イタズラに成功した子供のように無邪気な笑みを見せる逆廻。
「・・・・・お前、正確悪いって言われねえか?」
「ハハハ!良く言われるぜ」
笑ってはいるが目は全然笑ってねえなこいつ。庄司以上に厄介そうだな。
「や、やだなあ御四様。そんな狼みたいな怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃますよ?ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございますョ?」
「断る」
「却下」
「お断りします」
「お前ら息ピッタリだな」
「あっは、取りつくヒマもないですね」
バンザーイと降伏のポーズを取るウサギ耳の獣人。黒ウサギ?って言ってたな。黒ウサギの目と態度は全然違うな。あれは値踏みをしている目だ。
俺は黒ウサギを見てそう思っているといつのまにか黒ウサギの横に春日部さんが立ち
「えい」
「フギャ!」
黒ウサギの耳をおもっきり引っ張った。
「ちょ、ちょっとお待ちを!触るまでなら黙って受け入りますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか!?」
「好奇心の成せる業」
「自由にも程があります!」
「へえ?このウサ耳って本物なのか?」
「・・・・・じゃあ私も」
今度は逆廻と久遠さんが片方づつ黒ウサギの耳を引っ張り始めると涙目で俺に助けを求めてきた。
はぁ・・・・仕方ねえな。
「お前ら、その辺にしてやれよ。まずはこの世界のことを訊いてからでも遅くはねえだろ?」
「「「引っ張ってからでも遅くはねえだろ?(でしょう)(ない)」」」
「お前ら本当に息ピッタリだな。悪いな、黒ウサギ。俺にこいつらは止められなかった」
「ちょっ、諦めるの速くありませんか!?」
え、だってな・・・・。
「人間、諦めが肝心。せめて終わるまで見守っておくよ」
そうして、小一時間ほど、黒ウサギの悲鳴が近隣に鳴り響いた。
「-あ、あり得ない。あり得ないのですよ。まさか話を聞いてもらうために小一時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに違いないのデス」
「よしよし。元気だしてな」
宥めるように黒ウサギの頭を撫でる俺。
流石にちょっと可哀想すぎたかな?まぁ、どうでもいいか。
それから黒ウサギは気を取り直して咳払いし、両手を広げて、
「それではいいですか、御四人様。定例文で言いますよ?言いますよ?さあ、言います!ようこそ、"箱庭の世界"へ!我々は御四人様にギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼントさせていただこうかと召喚いたしました!」
「ギフトゲーム?」
「そうです!既に気づいていらっしゃるでしょうが、御四人様は皆、普通の人間ではございません!その特異な力は様々な修羅神仏から悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその"恩恵"を用いて競い合う為のゲーム。そしてこの箱庭の世界は強大な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活出来る為に造られたステージなのでございますよ!」
「ちょっといいか?黒ウサギ」
「はい、なんでしょう?」
「俺はそのギフトだっけ?なんて持ってねえぞ」
心当たりがまったくない。
「いえいえ、そんなことはございません。何かしらのギフトを持っておられますよ。恐らく今は眠っているだけで何らかの切っ掛けで現れることはこの箱庭では珍しいことではありません」
そんなもんなのか?まぁ、いつかわかるか。
その後、黒ウサギの説明を聞き、俺はある程度はこの世界のことが理解出来た。そして、黒ウサギが何故、あの時、俺達を値踏みしているかをも。すると十六夜が黒ウサギに一言。
「この世界は・・・・・面白いか?」
「YES。『ギフトゲーム』は人を超えた者たちだけが参加出来る神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギが保証いたします」
それから俺たちは黒ウサギのコミュニティに向かって歩いているなか俺は黒ウサギに耳打ちした。
「黒ウサギ。騙すのはよくないぞ?」
「ッ!?な、なんのことでございましょうか?」
俺の言葉に表情が硬くなる黒ウサギだが、俺は後ろにいる逆廻たちには聞こえないように続ける。
「黒ウサギのコミュニティは本当は衰退しているんだろ?」
「な、何故それを!?」
カマかけてはみたがまさか本当だったとは・・・・・・。
「最初に疑問に思ったのは黒ウサギが俺達を値踏みした目で見た時だ。何故、値踏みする必要があったのかと考えると二つの結論が出た。一つは強力なギフトを持っている俺達を誘う振りをして俺達をどこかに売る。二つ、何かをするのに俺たちの力が必要。だが、逆廻がコミュニティに入ることを拒んだ時、黒ウサギは焦っていた」
それは何らしかの戦力を急いででも必要だということ。
「何故焦る必要があるのか?そう考えみた。それと見てわかった。黒ウサギ、お前は嘘を吐くのがド下手だ」
「う」
「嘘が下手なのに嘘をついた。それは嘘をついてでも俺たちが必要だった。そして、先程の黒ウサギの箱庭の説明でわかった。黒ウサギのコミュニティはギフトゲームに負け衰退し、これ以上はコミュニティが続けるのは不可能。そう考えると黒ウサギが焦った理由も理解できた。当たりか?」
「・・・・・・・・・・」
「沈黙するということは当たりとみて間違いなさそうだな」
暗くなった黒ウサギの表情を見て確信することが出来た俺は黒ウサギの頭を優しく撫でる。
「か、篝さん?」
「何だ?」
「怒っていらっしゃらないのですか?」
「別に怒ってねえよ。俺は大抵のことは許すことにしてんだ。いちいち気にしたらキリがねえ。それに黒ウサギには俺をこの世界に呼んでくれた恩がある。だから俺はこれ以上は責めたりはしねえよ」
「か、篝さん・・・・」
目を閏わせる黒ウサギ。
「まぁ、後の奴らがどうなるのかは知らねえけど。逆廻も気づいているだろうしな」
「そ、そうでした・・・・。どうしましょうか?」
「自分で考えて下さい。それが責任というものです」
がくり。と肩を落とす黒ウサギ。それからも歩いていくと外壁が見えてきた。
「ジン坊ちゃーン!新しい方を連れてきましたよー!」
外壁の前にいるダボダボな服を着た少年に黒ウサギは名前を呼ぶとこちらに視線を合わせる。
「お帰り、黒ウサギ。そちらの女性二人と男性一人が?」
「はいな、こちらの御三様が」
クルリ、振り返る黒ウサギ。
カチン、と固まる黒ウサギ。
あれ?いつのまにいなくなったんだ?まっいっか。と、どうでもよさそうにする俺。
「・・・・・・え、あれ?もう一人いませんでしたっけ?ちょっと目つきが悪くて、かなり口が悪くて、全身から"俺問題児"ってオーラを放っている殿方が」
「ああ、十六夜君のこと?彼なら"ちょっと世界の果てまで見てくるぜ!"と言って駆け出して行ったわ。あっちの方に」
「な、なんで止めてくれなかったんですか!」
「"止めてくれるなよ"と言われたもの」
「ならどうして黒ウサギに教えてくれなかったのですか!?」
「貴女と篝君が仲良く話していたから邪魔しないようにしていたから」
ガクリとその場で崩れる黒ウサギ。そして、ジンだっけ?が言うにはギフトを持った幻獣たちが野放しにされいくらギフトを持った人間でも危ないらしい。
まぁ、死んだら死んだで自業自得だな。
それから黒ウサギの髪が緋色になりもの凄い速さで跳んで行った。
「逆廻のことは黒ウサギに任せて俺たちは行かないか?」
「そうね。そうしましょう。エスコートはあなたがしてくださるのかしら?」
「え、あ、はい。コミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルです齢十一になったばかりの若輩ですがよろしくお願いします。三人の名前は?」
「久遠飛鳥よ。そこで猫を抱えているのが」
「春日部耀」
「それで俺が霧谷篝だ。よろしくな、ジン」
互いに自己紹介を済ませ俺たちは箱庭の害門をくぐる。それから久遠さんのリクエストで近くにあった"六本傷"の旗を掲げるカフェテラスに座り注文する」
「はいはーい。ティーセット三つにコーヒーにネコマンマですね」
ん?ネコマンマ?
誰も頼んでいない注文に首を傾げていたのは俺だけじゃなかった。すると春日部さんが店員に問う。
「三毛猫の言葉、分かるの?」
「そりゃ分かりますよー私は猫族なんですから。お歳のわりに随分と綺麗な毛並みの旦那ですし、ここはちょっぴりサービスさせてもらいますよー」
どうやら春日部さんの猫がネコマンマを頼んでいたようだ。
猫族か・・・・・ということは他にも様々な種族がいるんだろうな。春日部さんが猫の言葉がわかるのはギフトの力・・・・か。なら、春日部さんのギフトは動物や生き物の言葉を理解することのできるギフト、いや、そういえば黒ウサギが隠れていた時風上にいればって言っていたな。生き物の特性をも持つことの出来るギフトなのか?
「おんやぁ?誰かと思えば東区画の最低辺コミュリティ"名無しの権兵団"のリーダー、ジン君じゃないですか。今日はオモリ役の黒ウサギは一緒じゃないんですか?」
思考錯誤をしている俺の前にいきなりピチピチタキシードを着た肉食獣のような牙を持つ変な大柄な男が現れた。
何か、面倒事になりそうだな。まぁ、それもどうでもいいがな・・・・。