アンダーウッド地下大空洞で俺と飛鳥は決闘している。だが、勝負の行方はもう決まっている。
「どうした?飛鳥。加減している俺にまだ一撃も当てられないのか?」
「この・・・ッ!押し潰しなさい!ディーン!」
「DEEEEEEEEeeeEEEEEEEEEEN!!」
雄叫びと共に巨腕をかまえ、打ち出すディーン。だが、ディーンが打ち付けたのはナイトメアで作った俺の幻だ。今、俺はナイトメア以外一切の武器は使わず飛鳥と決闘している。
飛鳥の奴、熱くなり過ぎだ。ナイトメアは視覚を惑わすギフトなんだから視覚だけじゃなく本体である俺の足音や下が大河なら幻の俺は歪んで見えるはずなのに何をしているのやら。
俺は内心呆れるようにため息を吐きながら分身を作るに対して飛鳥は無鉄砲に分身に攻撃していくなか俺はナイトメアを使い霧で全身を隠し飛鳥の隣に立ちナイトメアを突きつける。
「はい。一回死んだ」
「ッ!?この!」
飛鳥は白銀の十字剣をギフトカードから取り出して振るってくる。俺はそれを躱して地上に降りる。
「今よ!ディーン!」
「DEEEEEEEeeeeeeeeEEEEEEN!!!!」
俺が本物だと確信して俺が地上に着地する瞬間を狙うかのようにディーンに命令する。
まあ、これは悪くない手だ。だが・・・。
「なっ!?」
それが本物であったのならな。
ディーンが殴りつけたのはナイトメアで作った俺の偽物。
ヒュ
一本の矢が飛鳥の頬をかする。
「はい。二回死んだ」
本体である俺はガーンヴァを取り出していた。続いて俺はガーンデヴァとナイトメアをしまい無防備の状態になると飛鳥は攻撃して来なくなった。
躊躇っているんだろうな。馬鹿が。それが命取りになるかもしれないのに。
「どうした?攻撃しないのか?」
小馬鹿にするかのように飛鳥を煽ると予想通りに飛鳥はディーンを使って攻撃してきた。
「龍化、フット」
俺は足のみを龍化させディーンの攻撃を躱してディーンの背後を取る。そして、ディーンの膝後ろをおもっきり蹴飛ばしてバランスを崩し、飛鳥はディーンから落ちて大河に落ちた。その隙に俺は今度は爪を龍化させて飛鳥の顔寸前で止める。
「はい、三回死んだ」
「・・・・・・・」
目を見開き黙る飛鳥に俺はため息を吐きながら言った。
「これでわかったろ?飛鳥、お前は弱すぎる」
「・・・・っ・・・・・!」
「確かにディーンは強力だ。だが、飛鳥お前自身は弱すぎる。しかもそれだけじゃない。すぐに熱くなり周りを見ず冷静さを失いがむしゃらになる。だからこそ幻覚を見抜くことが出来なかった。さらに俺が無防備になった瞬間、お前は躊躇った。馬鹿か?敵に情けをかけてどうする?その一瞬の判断で味方の誰かが死ぬかもしれないんだぞ?なのにお前は俺の挑発に簡単に乗り結局やられた。俺が敵ならお前は三回どころかもっと死んでいるぞ?」
「・・・・・・・っ!」
黙り込み手を強く握りしめる飛鳥だが俺は容赦なく言い放った。
「これが事実だ。下らない正義感で人は救えねえ。救えるだけの力を持ってこそ救えることが出来るんだよ。今のお前にそれは『――――――――――手が滑ったああああああああああああああッ!!!』・・・・・・・・おい、何しやが」
「手が滑ったから仕方ないよな!」
ビシッ!と親指を立て笑顔を言う十六夜だが目はまったく笑っていなかった。
言い過ぎって言いたいのか?ハッ!下らねえ。現実を教えてやっただけだ。正義感、感情論、それらすべては何の意味もない。何かをするにたいして力は絶対的に必要なものだ。・・・・・・・まあいい、この場は十六夜に任せるか。
その場を十六夜に任せて俺は何も言わずその場を去ろうとした瞬間黒ウサギが声をかけてきた。
「篝さん!」
「なんだ?黒ウサギ」
「え、えっと、濡れたままじゃ風を引いてしまいます。篝さんも大浴場に行きませんか?」
それを聞いた俺は自分の格好を見ると確かに頭から足先までびしょ濡れ状態。だけど俺はレーヴァテインを取り出して熱を発生させ服を乾かせる。
「これで問題ない。それとも黒ウサギが俺と入りたいのなら喜んで一緒に行くが?」
「お断りします!」
「それは残念。またの機会にするよ」
今度こそ俺はその場を去り、宿舎へは戻らず誰もいない所へと足を運ばせていた。
「はぁ、疲れた」
そんなことを言いながら俺はその場で寝転びさっきの決闘のこと、飛鳥のギフトのことを考えていた。
飛鳥のギフトは威光。俺の知っている範囲では支配系のギフトだとは思うが、いや、他人のギフトのことを考えても仕方ない。俺は俺のやるべきごとをすればいい。
「それで?いったい何の用なんだ?誠」
「随分と気配を読めるようになったんだね。篝兄さん」
寝転がっている俺の頭上には元の世界にいたはずの俺の弟、霧谷誠がいた。
「というか驚かないんだね。僕が箱庭に来たことに」
「別に。俺はそういう人間、いや、龍人だってことは前から知ってるだろう?」
「そうだったね。まぁ、僕も篝兄さんと同じ召喚されてきたんだ。魔王側にね」
「お前が?ということは俺の敵か?」
俺は薄らと殺気を放って言うがそれをスルーするかのように誠は首を横に振った。
「いや、今はまだ敵じゃない。でも、いずれ篝兄さんとは戦うことになるだろうね。その時は殺してあげるよ。心身共にね」
「相変わらず平然と恐ろしいことを言うよな、お前は。安心しろよ、俺が殺してやるから」
「篝兄さんに僕は殺せない」
「お前は俺を壊せない」
「「だから、死ぬのは誠(篝兄さん)だ」」
俺達はハモるようにそう言い合うとお互い微笑した。
「そうそう。母さんたちが心配していたよ。もし、帰れるのなら帰ってあげなよ」
「悪いが元の世界に戻る気はねえ。俺は一生この箱庭で生きていく」
「そう言うと思った。ところで、風の噂で聞いたんだけど。ペルセウスとペストを篝兄さんが倒したって噂本当?」
「さて、どうだろうな」
はぐらすかのように言う俺だが誠はがっかりするかのようにため息を吐いた。
「やっぱり、篝兄さんはその程度なんだね」
誠がそう言うと灰色のギフトカードから何十枚ものコミュニティの旗が出て来た。
「僕が箱庭にて半月で集めたコミュニティの旗だよ。全て五桁クラスはある」
「それは凄いな。で?」
「別に、ただの自慢だよ。そうだ、自慢ついでに兄さんにこれをプレゼントするよ」
誠はそう言うと灰色のギフトカードを取り出してそこから一本の剣を出した。
綺麗だな・・・・。
その剣を見てすぐにそう思った。豪奢を極めた黄金作りの柄と、汚れを知らない純白の刀身。白銀色に輝く刃に俺は一瞬見惚れてしまった。
「魔剣、フルンティング。生き血を吸わせれば吸わせるほど切れ味を上げることのできる魔剣。前に潰したコミュニティで手に入れてね。僕には必要ないから篝兄さんにあげるよ」
「それはどうも。ありがたくもらうよ」
俺は誠からフルンティングを受け取るとすぐさま誠の首を切り落とした・・・・と思ったが。
「やっぱり無理か」
切り落としたと思った誠の死体は霧となって消えていった。
『言ったろ?篝兄さんに僕は殺せない。精々頑張って今回のギフトゲーム生き残ってくれ。篝兄さんは僕の手で必ず殺したいからね。身体も心も』
空から聞こえた誠の声。俺は特に気にせずフルンティングをギフトカードの中へとしまった。
「それで、俺の愛しくてたまらないウサギさんはいつまで隠れているのかな?」
そう言うと物陰から黒ウサギがおどおどしながら出て来た。
「あ、あのいつからお気づきで?」
「そうだな。俺が皆から離れて数分後ぐらいかな」
「・・・最初から気づいていたのでございますね」
ため息を吐きながら黒ウサギは俺の隣へと座ってきた。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
お互い無言の中、俺はため息を吐き黒ウサギに話しかけた。
「聞きたいのか?俺と誠のこと?どうせ、最初から聞いていたんだろ?」
「え?い、いえ!?そのようなことは!?」
「黒ウサギ、顔にメッチャ出てるぞ。私、篝さんと篝さんの弟さんのこと知りたいのでございますって」
「うっ!」
「まー、別にいいが。隠す事でもないしな。その前に黒ウサギ、俺とギフトゲームをしよう」
「ギフトゲームでございますか?」
「ああ、今から黒ウサギは1~4の数字を選んでくれ。俺は黒ウサギが選ぶ数字を当ててやる」
「つまり、黒ウサギは1~4の数字を選び、篝さんがそれを予測し、当てる。ということでございますか?」
「そう。チップは・・・・・そうだな。俺が勝ったら飛鳥のフォローを頼む。黒ウサギが勝ったら一日お前の奴隷でいい」
「なっ!?それは駄目でございます!ギフトゲームは対等な条件でのみ行われるべきです!しかも、篝さんが提案したゲームでは黒ウサギのほうが明らかに有利です!賭けるのであれば対等な条件でなければ」
うんうん。真面目だな、黒ウサギは。
「なら、これはどうだ?俺はギフトを使っていい。黒ウサギはギフトを使ってはいけない。というか、黒ウサギ、分かっていないな」
「え、何がでございましょうか?」
きょとんと目を丸くする黒ウサギに俺は笑みを浮かべて言った。
「このギフトゲーム。例え、俺がどんなペナルティを背負おうと関係ないんだよ。100%俺が勝つから」
「・・・・いいでしょう。このギフトゲーム受けて立ちます!ただし、先程篝さんの提案した通り黒ウサギはギフトは使いません!篝さんはじゃんじゃん使ってください!」
「ゲーム成立だな」
『ギフトゲーム名”皇帝と月の兎の数当て”
・ルール説明
・参加者が予測した数字を紙に書く
・もう一人の参加者が1~4の数字を決める
・条件
・予測する側はギフトを使用可能。数字を決める側はギフトの使用不可
宣誓 上記のルールに則り、”黒ウサギ”と”篝”の両名はギフトゲームを行います』
俺と黒ウサギの手元に
「準備が出来たぞ。黒ウサギ」
「YES。こちらも決まりました」
自信たっぷりに胸を張る黒ウサギ。うん、相変わらずいい胸だ。
「2・・・・いえ、1でございます!」
黒ウサギが選んだ数字は1。一応、俺はそれでいいのか確認する。
「それでいいんだな?」
「YES!」
それは予測して書いた紙を黒ウサギに渡す。黒ウサギはそれを確認するとそこには俺の予測通り1と書かれていた。
「え、嘘?」
驚く黒ウサギだが黒ウサギが持っていた
「予測通り俺の勝ちだな。黒ウサギ」
「篝さん。どうして黒ウサギが1を決めるのが分かったのでございますか?」
「ちょっとした心理戦だよ。まず第一に何で俺が1~4の数字を選んだと思う?」
「ええっと、わかりません」
「まず、4の数字は死とも言えるから心優しい黒ウサギが4を選ぶとは思えない。第二に黒ウサギは控えめな性格だ。なら、1を言うとは思えない。なら2か3のどちらかを選ぶはず」
「しかし、黒ウサギは1を選びましたよ?」
「そう、普通なら黒ウサギは2か3を選ぶはずだった。だけど俺が割に合わない条件と挑発をしたからこそ黒ウサギは自分が普段選ばないはずの数字、1を選んだ」
「それでは、ギフトを使ったわけでは・・・」
「もちろん、使っていない。それにこの程度なら十六夜だって出来る。そして、何故俺がこんなことをしたかと言うと、俺の弟、霧谷誠は例え初対面の相手でも1~100の数字を当てることが出来る」
「そ、それは不可能でございます!?もし仮にそれが出来たとしてもギフトでも使わない限りは・・・・!」
「表情、しぐさ、癖、目線、それら全て見極めることが出来れば不可能じゃない。弟は、誠は生まれ持っての天才。頭脳も身体能力も恐らくギフトも・・・・・。そして、誠は何も出来ない俺を恨んでいる。殺したいぐらいにな」
「ま、まさか、兄である篝さんを殺したいなんてこと・・・・」
「あるんだよ。弟にとって俺はただの石ころだ。邪魔なものは排除する。あいつにとって俺はその程度の存在だ。まぁ、相手が誰だろうが降り懸かる火の粉は払わないとな」
「だ、駄目でございます!御兄弟で殺し合いなんて!?」
「何言ってんだ、黒ウサギ。別に殺し合いをするなんて一言も言ってないぞ。ああ、今のは別に言葉のあやだから気にするな」
「ほ、本当でございますか?」
「ああ」
俺の言葉にほっと息を吐く黒ウサギに俺は内心で謝った。
悪いな、黒ウサギ。また俺と誠が出会うことがあれば間違いなく殺し合う。それはもう変えられない運命なんだよ。
「ああ、そうだ、黒ウサギ」
「は、はい。なんでございましょう?」
「飛鳥が今穿いている下着の色は何色でしょう?A、赤 B、黒 C、青。さぁ、どれでしょう?もし、外れたら黒ウサギの下着をここで見せてもらう!」
「どうして篝さんが飛鳥さんの下着の色を知っているのでございますか!?この変態様!」
唸る黒ウサギのハリセンはまっすぐ俺の頭へと直撃した。
「ふ、先程の決闘でチラリとな」
「したり顔でなにほざいているのでございますか!?」
再び、俺の頭にハリセンが直撃。
「さぁさぁ、どれだと思う?答えないという選択肢は無しな。もし、答えなかったら俺は今から女湯に突撃するかもしれない」
「くっ!この変態様は何を堂々と覗き宣言を・・・・ッ!」
「おいおい、黒ウサギ。何を言ってるんだ。男は皆変態なんだよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Cの青でございます!」
「残念。答えはDの白です」
「卑怯です!ABCの中から選ぶのではなかったのですか!?」
「別にABCから選べとも言ってないし、三択とも言っていない。黒ウサギが勝手に勘違いしているだけだ。ふふふ、まんまと罠にはまったな、黒ウサギ」
「くぅ・・・・・・ッ!」
悔しそうに項垂れる黒ウサギに俺は笑みを浮かばせながらそっと黒ウサギのスカートに手を伸ばそうとしたがウサギだけにあって脱兎の如く俺から距離を取った。
「黒ウサギは・・・・・・黒ウサギはそのようなゲーム納得出来ません!!」
スカートを押さえながら涙目で逃げていった黒ウサギ。うん、まぁ、黒ウサギを弄れたから良しとしよう。正直、飛鳥が何色の下着を穿いているか俺もわからんし、変な空気もこれで壊れたろう。
そう思いながら俺は皆がいる場所へと戻ることにした。
そして、戻るとそこには怒りで顔を真っ赤にした飛鳥がディーンで俺を殴って吹き飛ばしてきた。瞬時に龍化したおかげで怪我はない。俺は再び飛鳥の元へ行きこう言った。
「安心しろ、飛鳥。お前がどんなど派手な下着を着けようが俺は興味ないから」
安心させようと言ったつもりなのだがまた俺はディーンに吹き飛ばされた。あれ?励ましたのに何で殴られるんだ?