ガルドとのギフトゲームに勝利した俺は自分の部屋に置かれているベットに寝そべっていた。
何故あの時、俺は耀を庇ったんだ?
おかしくない。それは人として立派な行為。だが俺にはそんなものはどうでもいいことだ。何故あの時、俺は耀を庇ったのか・・・・・それが不思議でならなかった。
あの時、俺はあのまま動かず耀がガルドに斬り裂かれ十字剣を持つ力を失くしたタイミングを見計らって十字剣を持ちそのまま体勢の整えていないガルドにトドメを刺すことは出来た。だが、俺はそんなことをしなかった。イージスを捨て身を挺してまで耀を守った。何故なんだ?
俺はすでに死んでいる。死人に人としての感情はない。なら、何故俺は耀を庇った。それは人としての感情が生きているから?それ以外は思いつかないがそうなろうだろうか?耀に惚れた?・・・・・ないな。少なくとも会って数日の奴に惚れることなんてありえないし、耀もこんな死人に惚れるわけがない。そんな思考を巡らせていると突然の破砕音と同時自身のような震動が俺を襲った。
逆廻の奴か?いったいに何をしてるのやら・・・・・。
頭を掻きながらとりあえずは様子を見てこようと部屋から出て発生源と思われる談話室まで足を運ぶと
「先程ぶりだな。霧谷篝」
「・・・・原因はお前と逆廻か?レティシア」
穴の開いた壁を見て俺は一瞬で理解することが出来た。
「逆廻の実力でも知りに来たのか?だったら止めときな。こいつの実力は恐らくお前じゃ試したところでたかが知れてる」
「ヤハハ、えらく評価が高いじゃねえか」
そりゃそうだろ。人間が神を足蹴り一発で倒す奴をどうやって低評価しろってんだ。
「というより、篝さんはどこでレティシアさまと知り合ったのですか?」
「あれ?いたんだ、黒ウサギ」
「最初からいました!」
言ってみただけだ。黒ウサギ。
「ガルドのゲームの時こいつはずっと俺たちを見ていたんだ。俺はその時気づいて接触した。つーか、黒ウサギのその耳はただの飾りか?人間の俺でさえ気づいたってんのによ」
「黒ウサギの素敵耳は飾りではございません!というより今日の篝さんはいつもより毒が入っていませんか!?」
「・・・・疲れただけだ」
確かにおかしい。俺はどうしちまったんだ?
ため息を吐きながらソファーに寝転がりながら目を閉じる。それから黒ウサギたちの話を聞くだけ聞くと、レティシアの賭けたゲームは中止。レティシアがここに来たのはノーネームを解散するように黒ウサギを説得。だが、すでにジンの名が広まっているのでもうどうすることも出来ない。なら俺たちの力を試す。この先の茨の道を歩いて行けるだけの力があるのか。
「その不安、払う方法が一つだけあるぜ」
「何?」
「実に簡単な話だ。アンタは"ノーネーム"が魔王を相手に戦えるのかが不安で仕方ない。ならその身で、その力を試せばいい。どうだい、元・魔王様?」
「ふふ・・・・なるほど。それは思いつかなんだ。実に分かりやすい。下手な策を弄さず、初めからそうしていればよかったなあ」
そう言い合って逆廻とレティシアは中庭に出る。黒ウサギと俺もつられて出ていくとレティシアが金と紅と黒のコントラストのギフトカードを取り出しランスを取り出す。
「互いにランスを一打投擲する。受け手は止められねば敗北。悪いが先手は譲らせてもらうぞ」
黒い翼を出し制空権を支配するレティシアは自分のランスを掲げ投擲するが逆廻は怒号と共に素手で槍を殴り返した。
だから、言ったのによ・・・・・。
俺は内心そうつぶやく。そのままレティシアの体に槍が貫くと思ったが間一髪で黒ウサギが助けレティシアのギフトカードを見ると震える声で。
「ギフトネーム・"
「っ・・・・・・!」
「ハッ。どうりで歯ごたえが無いわけだ。他人に所有されたらギフトまで奪われるのかよ」
「いいえ・・・魔王はコミュニティから奪ったのは人材であってギフトではありません。武具などの顕現しているギフトと違い、"恩恵"とは様々な神仏や精霊から受けた奇跡、云わば魂の一部。隷属させた相手から同意なにしギフトを奪うことは出来ません」
と、いうことはレティシアは自分からギフトを捧げた。ということになるな。まあ、今までのこいつの行動を見ればある程度なら想像は出来るな。
それからとりあえずは屋敷に戻ろうとしたが突然異変が起きた。遠方から褐色の光が射し込む。
「あの光・・・・ゴーゴンの威光!?まずい、見つかった!」
焦燥に混じった声と共にレティシアは俺たちを庇うように立ち塞がり光をモロに受けてしまった。そして、レティシアは石像になった。
「いたぞ!吸血鬼は石化しせた!すぐに捕獲しろ!」
「例の"ノーネーム"もいるようだがどうする!?」
「邪魔するなら構わん、斬り捨てろ!」
空を飛んでいる騎士たち、恐らくペルセウスの兵隊だろうと思われる奴らが石化したレティシアを捕獲し、確保した。そして俺の隣では逆廻が不機嫌そうに、尚且つ獰猛に笑っていた。
「まいったな、生まれて初めておまけに扱われたぜ。手を叩いて喜べはいいのか。怒りに任せて叩き潰せばいいのか、篝はどっちだと思う?」
「笑っとけ」
「と、とりあえず本拠に逃げてください!」
黒ウサギが慌てて俺たちを本拠へと引っ張る。まあ、当然か。レティシアのことも気になるだろうがそれ以前にあいつらがここにいるということはレティシアを取り戻すようにコミュニティのリーダーにでも言われて来たんだろう。なら、もめ事を起こすのはよくねえな。
「これでよし・・・・・危うく取り逃がすところだったな」
「ギフトゲームを中止してまで用意した大口の取引だ。台無しになれば"サウザントアイズ"に我ら"ペルセウス"の居場所は無くなっていたぞ」
「それだけじゃない。箱庭の外とはいえ、交渉相手は一国規模のコミュニティだ。もし奪われでもしたら」
ーッ!
「箱庭の外ですって!?」
・・・・確か吸血鬼が昼に活動できるのは箱庭の天幕のおかげ。それがない外では吸血鬼は昼間に活動できない。
「一体どういうことです!彼らヴァンパイアは"箱庭の騎士"は箱庭の中でしか太陽の光を受けられないのですよ!?そのヴァンパイアを箱庭の外に連れ出すなんて・・・・!」
「我らの首領が取り決めた交渉。部外者は黙っていろ」
突き放すように語り、翼の生えた靴で空を舞う。
もし、レティシアが箱庭の外に連れて行かれたら恐らく二度と会うことは出来ないだろう。レティシア・・・・お前はそれがわかった上で俺たちのところに来たのか?自分がいなくなるまで少しでも黒ウサギたちのことを考えていたのか?どうしてそこまでする必要があるんだよ・・・・。仲間のため、コミュニティのためにガルドを使い俺たちの実力を知り自分のことは何を言わず箱庭の外に行くつもりだったのか・・・・。二度と・・・二度と黒ウサギたち会わないつもりで・・・・・。
「こ、この・・・・・!これだけ無遠慮に無礼を働いておきながら、非礼を詫びる一言もないのですか!?それでよく双女神の旗を掲げていられるものですね、貴方達は!!!」
「ふん。こんな下層に本拠を構えるコミュニティに礼を尽くしては、それこそ我らの旗に傷が付くわ。身の程を知れ"名無し"が」
「なっ・・・・なんですって・・・・・!!!」
黒ウサギは怒りで震えているが奴らをそれを鼻で笑った。
「フン。戦うというのか?」
「愚かな。自軍の旗も守れなかった"名無し"など我らの敵ではないぞ」
「恥知らず共め。我らが御旗の下に成敗してやるわ!」
「・・・・・じゃあ、守ってみろよ。自分の命を」
ドン!
「ぐわっ!」
奴らの一人の肩に矢が突き刺さった。
・・・・外したか。頭を狙ったつもりだが鈍ったな。まあいい。
俺はの手には二―メートルはあるであろう神弓ガーンデヴァに矢をつがえて構えるとペルセウスの奴らが怒声を上げる。
「き、貴様!自分の立場がわかっているのか!?我ら"ペルセウス"の同士を傷つけた罪は重いぞ!」
「知るかよ。てめえらを全員殺せばいいだけの話だ。文句があるなら口じゃなく実力で俺を殺せよ」
俺の言葉に怯むペルセウス。いや、恐らく俺の体から怯むほどの殺気が出ているんだろう。だが、そんなもん関係ない。
「死ねよ。全員」
冷酷かつ冷徹につき放つと俺は次の矢を射る。だが、ペルセウスの兵に当たる寸前に逆廻が矢を破壊した。
「・・・・・・邪魔すんな。逆廻」
「そうはいかねえ。これ以上したら白夜叉と問題を起こしちまう。それにいくら俺でも黙って見ている訳にはいかなかったんでな・・・・マジで全員殺すつもりだったんだろ?」
「っ!?」
「「「「「「「っ!?」」」」」」」
逆廻の言葉に黒ウサギは驚愕しペルセウスの奴らの顔は蒼白になる。
「ああ、それがどうした?そいつらは俺たちを成敗する、敵ではないと言ったんだ。例えやられ返されても文句は言えねえはずだ」
「マジでどうしちまったんだ?いつものあんたならここは傍観すると思ってんだがな・・・・・逆鱗にでも触れちまったか?」
「だったらどうした?邪魔するならお前から殺すぞ?」
弓を逆廻に向けると逆廻の表情から笑みは消えた。
「上等じゃねか!やってみろ!」
強力な脚力による一気に距離を詰める逆廻。逆廻の力だと並みのパワーを持った力では負ける。俺はギフトカードにガーンデヴァをしまい別のものを取り出す。
「デュランダル!」
ありとあらゆるものを切り刻む聖剣、デュランダル。俺はデュランダルを逆廻目掛けて振り下ろすが逆廻は危険と判断したのか、後方に跳んで避ける。
ドガァァァァアアアアアアアアアアンッ!
地面に激突したデュランダルを中心に大量の土煙が舞いあがり、巨大なクレーターが出来た。
「ヤハハ!面白れえ!」
逆廻も負けずにもう一度突っ込んでくるに対して俺はそれを迎撃しようと構える。
「いい加減にしやがりませこんのお馬鹿様ぁぁぁああああああああっ!!」
俺と逆廻、仲間同士の戦いに耐えられなくなった黒ウサギが緋色の髪とウサ耳を逆立てながら雷の槍を投げつけた。
「どうして仲間同士で争っているのですか!?私達は同じコミュニティの仲間です!それが・・・それがどうして戦うのですか・・・・・」
涙を流し始める黒ウサギを見て俺はデュランダルをギフトカードにしまう。
「悪い・・・・逆廻、黒ウサギ。冷静じゃなかった」
冷静だった。これ以上なく冷静で俺はペルセウスを殺そうとした。だが、その結果、黒ウサギを泣かせてしまった。
「謝るくらいでしたらしないでください」
「・・・・・悪い。少し頭を冷やしてくる。逆廻も悪かった」
「別に気にしちゃいねえよ」
俺は二人に謝り自室に戻った。
本当にどうしちまったんだ、俺は・・・・・・・。
自室に戻り、俺は自分のおかしさについて考えていた。
あの世界・・・あのクソ家族に一生会わないですむことに浮かれ感情の浮き沈みが激しくなっている?それとも、レティシアが中学の頃の俺に似ているから?どちらにしろ、おかしいのは確かだな。
何とも言えない感情の変化が渦巻くなか、どれだけの時間が経ったかはわからなかったが気が付くと先程まで静かだった本拠が騒がしくなった。声の音量の高さを聞く限り口喧嘩ぽいがとりあえず行ってみることにした。
「どういうつもりなの黒ウサギ!本気であの男の物になってもいいというの!?」
「――――――――・・・・・・・・」
鬼気迫る表情で黒ウサギを追いかける飛鳥と暗い表情で早歩きする黒ウサギ。すると飛鳥が鋭い目で俺を見てきた。
「篝君も言ってやって!仲間の為に自分から売ろうなんて無駄だって!」
「む、無駄って・・・・どうしてそこまで言われなきゃいけないのですか!?」
「・・・・・まずは事情を説明しろ」
それから飛鳥と黒ウサギからサウサンドアイズ、白夜叉の支店で起きた出来事を一通り聞くと
「黒ウサギ。お前が悪い」
「な、何故でございますか!?」
「レティシアは何のために俺たちのところに来た?それも自分の魂の一部と言えるギフトを捨ててまで。それはジンや黒ウサギ、俺たちのためにあいつはギフトを魔王に渡したんだぞ。それがどれだけ辛く、苦しいものかは黒ウサギの方が知っているはずだ」
「そ、それなら尚更です!魂を削ってまでコミュニティの窮地に駆け付けたレティシア様を見捨てては、我々の義が立ちません!」
「・・・・・それで自分がそのルイオスに売られることでそのクソ下らねえ義が成り立つのか?ならねえだろ。仮に黒ウサギがルイオスの物になってレティシアがこっちに来たときあいつは喜ぶのか?」
「そ・・・・それは」
「即答できないならすんな。今、黒ウサギが抱えている自己犠牲は無駄だ。自己犠牲なんてな聞こえを良くするための言葉だ。それを守っていたらいつか両方とも失うことがあるぞ。とりあえず時間があるなら今の内に頭でも冷やしておけ冷静になってからもう一度考えろ。それからでも遅くはねえだろ」
「・・・・・はい」
ウサ耳をしょぼつかせてとぼとぼと歩く黒ウサギの背中を見て俺はフと気づいた。
「飛鳥、逆廻の奴はどうした?」
「あれ?そういえばどこに行ったのかしら?さっきまで一緒だったのに」
「まあ、あいつならほっといても平気だろ。飛鳥は黒ウサギを見張っといてくれ。俺は寝る」
そう言って俺は飛鳥から離れサウザントアイズの支店へ向かう。
「と、いうわけで少し知恵を貸してはいただけないでしょうか?白夜叉」
「何がというわけだ。まあ、私もどうにかしようと思っておったところじゃ。先ほども小僧が来たところじゃしな」
「やっぱ、逆廻は来ていたのか」
あいつならすぐに行動するだろう。
「あやつはすぐにどこかに行ったが・・・・そうだな、一つ条件を飲むというならおんしにも知恵を授けるとしよう」
「条件って?」
「ペルセウスは伝説を満たしたゲームを用意しておっての。恐らくあの小僧はそれに挑戦に向かっておる。その内一つにもおんしに行ってもらいたい」
「それでいいのか?ペルセウスって言ったらゴーゴンだっけ?いや、その内一つということは別のか?」
「クラーケンとグライアイじゃ。恐らくあの小僧はグライアイの方に向かっておるからおんしにはクラーケンの方を行ってもらいたい」
「ああ、わかった。つーか、俺の知りたいこと教えてもらったんだ。条件を飲まないとな」
まあ、出来ることは限られているが・・・・。
「簡単じゃ。あの七光りの小僧をとっちめてくれ。いや、もう盛大にやってもらってもかまわん!顔の原型が無くなるまでぼこぼこにしてくれ!」
・・・・・・何か、スゲー怒っているんだがそのルイオスってそんなに外道なのか?まあそうなんだろうが。
「わかった。とりあえず殺さない程度にボコっておくよ。そういや、クラーケンってどこにいんだ?ここから近いのか?時間が限られているから早く行かねえと」
「おお、そうじゃた。あの小僧の脚力ならまだしもおんしじゃ到着するまで一週間はかかるな。これを持っていくといい」
白夜叉のギフトカードからは少し凝った何かの紋章みたいなものが刻まれている靴を取り出した。
「これはギリシャ神話に出てくるアキレウスの靴じゃ」
「アキレウスってあの神話に出てくる英雄の?」
「そう、どこぞの七光りと違ったちゃんとした英雄だ」
凄い根に持ってんな。
「俊足のアキレウスの恩恵が込められたこれならすぐにクラーケンのところに行けるだろう。使ってくれ」
「サンキュー、白夜叉。ゲームが終わったら返しにくるよ」
「いや、よい。そのままおんしが使ってくれ。それもその方がよいじゃろう」
それはラッキーだな。
俺は靴を履き返てアキレウスの靴を履き支店に出て白夜叉から教わったクラーケンの方角に走ろうと足に力を入れた時、気が付いたときは俺はとんでもないスピードで動いていた。
すげえ・・・・これが英雄、アキレウスの速さ。これならすぐに着くな。
それから丸一日後、俺は目的の場所に到達した。すると
「挑戦者か?人間とは珍しいのが来たものだ」
海から巨大なイカ、クラーケンが現れた。
「ああ、ペルセウスの挑戦権を手に入れる為にここに来た」
「ならば、話が早い。我がギフトゲーム受けてみよ!」
ギフトゲーム名『クラーケンの打倒』
プレイヤー 霧谷篝
勝利条件 クラーケンの打倒
敗北条件 プレイヤーが死亡した場合
プレイヤーが上記クリア条件を満たせなかった場合
宣誓 上記を尊重し、誇りの下、『霧谷篝』はギフトゲームに参加します
ペルセウス 印
クラーケンの打倒か。これはまた難しいのが来たな。
俺は自分と巨大生物クラーケンを比べる・・・・・・うん、人間ってちっぽけな存在だな。
「それではいくぞ!」
触手で攻撃してくるクラーケン。だが
あれ?遅い。
もの凄く遅かった。まるでビデオでスローモーションで再生するようにゆっくりだった。
おかしい?俺が人間だから手加減してくれているのか?
それ以外考えられない。だが、次から次へ来る触手を躱しているとクラーケンの様子がおかしくになっていった。まるでイラつくかのように・・・・。
「おのれ!人間の分際で我の触手を容易く避けるな!」
・・・・・どういうことだ?
俺はクラーケンの触手を避けながらどういうことになっているか思考を働かせると気づき靴を見る。
英雄アキレウスの靴のおかげか。これを履いて丸一日動いていたから速さだけじゃなく目も速さに慣れたのか。なら
「悪いな、クラーケン。時間がないんだ!すぐに終わらせてもらう!」
俺は跳躍しクラーケンの頭上まで跳びギフトカードからデュランダルを取り出し、そのままクラーケン目掛けて振り下ろす。
ドガァァァアアアアアアアアアンッッ!!
デュランダルの攻撃により倒れるクラーケン。
「やっぱ、魔物には聖剣だな。効果は抜群だ。さて、おーい、クラーケン、生きてるか?さっさと挑戦権をくれ」
それから俺はクラーケンから挑戦権であるゴーゴンの首の印がある蒼い宝玉を貰い、すぐに本拠へ目指すが
その前にやっておかなければならねえことを終わらせねえとな。
俺はノーネームの本拠に行く前にある人物のところに会いに行くためそいつを探し始めると思ったりすぐに見つけることが出来た。
「ここにいたか、逆廻」
「篝か。へぇ、クラーケンのとこのギフトゲームに勝ったみてえだな」
俺が持っている蒼い宝玉を見て面白そうに笑う逆廻の手にも紅い宝玉を持っていた。
「・・・・なぁ、逆廻。俺とギフトゲームをしろ。俺が勝ったらそれを貰う」
逆廻の持つ宝玉を指して言う俺に逆廻は挑戦的な目で俺を見る。
「突然、面白い事を言うな。お前、結果が見えている勝負はしない主義じゃなかったのか?それとも今なら俺に勝てるという自身でもあるのか?」
「ああ、お前に勝てるから言っているんだ。時間がねえ。するのか?しないのか?」
俺の問いに逆廻は宝玉をその場に置いて嬉々とした表情で拳をかまえる。
「いいぜ、お前とのギフトゲームは面白そうだ!篝!」
「それはなによりだ。逆、いや、十六夜!」
そして俺と十六夜に
『ギフトゲーム名 挑戦権を賭けて
ルール説明
・相手に降参、もしくは戦闘不能にさせたら終了。
・相手を死亡させたら失格。
宣誓 上記のルールに則り、"篝""十六夜"の両名はギフトゲームを行います』
お互い羊皮紙を確認し、俺はギフトカードからイージスとデュランダルを出し、十六夜は拳をかまえ直す。
「そういや、俺が勝ったら篝は何をしてくれるんだ?」
「・・・・お前の命令をどんなことでも一回聞く。じゃダメか?」
「別にそれでいいぜ。それじゃ・・・・行くぞ!」
圧倒的とも言える脚力で一気に至近距離まで詰め寄り殴りかかる十六夜。
「二度も同じ手はくわねえよ!」
だが、俺は十六夜の拳をイージスで受け流し、隙の出来た懐にデュランダルで斬りかかる。
「しゃら、くせ!」
「なっ!?」
十六夜は体を捻じ曲げデュランダルの刀身の横を蹴った。そして、俺はあまりの蹴りの衝撃にデュランダルを手放してしまう。それをチャンスかと十六夜はすぐに拳をこちらに放つ。
「チッ!うおっ!?」
俺は咄嗟にイージスで防御するが十六夜の出鱈目な攻撃力に盾ごとふっ飛ばされた。
・・・・なんつー腕力だ!腕がもげたかと思ったぞ!だが、これで距離を取らしたのが失敗したな。
俺はギフトカードからガーンデヴァを取り出しつがえすぐに射る。
「ハッ!こんなもん!っ!?」
十六夜は矢を打ち落とそうとするがそれをせずに避ける。
「良く避けたな。だが、それは正解だ。デュランダルはありとあらゆるものを切り刻む聖剣ならガーンデヴァはありとあらゆるものを射抜く神弓。もし、あのまま打ち落とそうとしていたなら腕に穴が出来ていたぞ」
俺はガーンデヴァを十六夜に向けてもう一度かまえる。
「悪いがこの距離で攻めさせてもらうぞ。接近戦より遠距離のほうが倒す効率が良さそうだからな」
「心外だぜ。その距離なら俺に勝てると思われるなんてな」
十六夜は地面に転がっている石を拾い上げて投げる。
「オラッ!」
こちらに向かってくる石。普通に投げているように見えるが俺はその石に狙いを定め射ると爆撃し、矢もその衝撃で破壊された。
「どんだけだよ!このチート野郎!」
そう叫んだ俺は悪くないと思う。ただでさえ接近戦での十六夜の拳と蹴りは異常なうえ厄介なのに。投げてくる普通の石にまでここまでの爆撃を生み出すなんて。
いったい、十六夜のギフトは何なんだ?正体不明というふざけたギフトネームしかわからねえし、第一、拳にまであんな破壊力があって投げた石にまでここまでの破壊力があるとは・・・・。
「オラオラッ!ドンドン行くぜ!」
次々投げ始める十六夜に俺もガーンデヴァを使いそれを迎撃する。
チッ、このままじゃジリ貧だ。こうなったら一気に勝負を決めるしかねえな。
俺は投げてくる石を全て迎撃すると同時、アキレウスの靴で十六夜の背後に廻り込み、レーヴァテインを取り出す。
「燃え散れ!」
一瞬で炎が十六夜の周辺を囲む。
「十六夜、ギブアップしろ。レーヴァテインの炎はそう簡単には消えない。このまま焼死にしたくなかったらギブアップするんだな」
いくら十六夜といえど、物体がないものを破壊するのは無理だろう。炎をいくら殴ったとしても無意味だ。そう思い勝利を確信したが十六夜は軽薄そうに笑っていた。
「おいおい、まさか俺がこの程度でギブアップすると本気で思ってんのか?」
十六夜は炎に向かって拳を振り上げ炎を破壊した。
「は?」
一瞬、俺の思考が止まった。いや、止まらずをえなかった。あれだけの身体能力を持っていながらギフトまで破壊するなんてどう考えても異常だった。
こいつのギフトは単に身体能力を上げるものではねえのか!?それでギフトも破壊!?いったいなんなんだ!?こいつは!
「考え事してていいのかよ!」
瞬く間に距離を詰まられすでに拳を俺に向かって殴りかかろうとしていた十六夜。俺は咄嗟にイージスで防御するが再びふっ飛ばされただけじゃ終わらなかった。
「イージスにヒビだと!?」
数多の攻撃からでも防御することのできるイージス。そのイージスにたった二発でヒビを入れるなんて・・・・。
驚愕。今まさに俺が感じている感情がまさにそれだった。
「・・・・・十六夜。お前、本当に人間か?まさか人の皮を被った化け物だったりするのか?」
「おいおい、これでも立派な人間だぜ。それより、もうお終いかよ。もっと俺を楽しませてくれるんだろ?」
「その言い方だと俺はもっとお前を楽しませることが出来るみたいだな」
「ああ、まだお前の真骨頂を見てないからな。嘘つき」
「・・・・・・・・」
十六夜の言葉に俺は黙り込むが十六夜は続けて言ってくる。
「伝説の武器を相手にするのも面白いがまだ、お前の切り札とも言えるものが残ってんだろ?それを使ってもっと俺を楽しませてくれよ」
十六夜の挑発とも言える言葉に俺は今出している武器を全てしまい、ナイトメアだけを取り出す。
出来れば使いたくなかった。それは本心かもしれない、そうじゃないかもしれない。そのどちらにも俺にはわからなかったが・・・・・使うしか道は残されてなさそうだな。
「後悔すんなよ、十六夜。嘘つきが幻術を使うということは幻術の力を最大限にまで活用出来るということだ。だが、お前の場合本気行かなければ恐らく勝てない。本気行く。
俺はナイトメアをかまえると十六夜は心が躍るかのような表情をしながら腰を落し、右腕を引き絞る様に後ろへ下げる。
「よしよしいいぞ!面白れえ!だが、その前に一つ訊きてえ。何でそこまでしてレティシアを助けてえんだ?」
「・・・・・・さあな、正直なとこ俺もわからん。何でここまでしている今の自分にも不思議でならない」
本当に何をしているんだろうな、俺は・・・・・。
「まあ、お前がそれでいいのなら別に俺がとやかく言うつもりはねえ。来いよ、篝。ぶっ倒してやる」
「行くぞ、十六夜。壊してやる」
お互いに不気味な笑みを浮かばせながら