俺、黒ウサギ、サンドラはペストに向かって行っていると激しい地鳴りと共に街が変わっていた。ステージそのものも変えることができるのかよ、魔王って・・・・。規格外もいいとこだ。
「ま、今の俺の仕事はペストを倒すことか」
俺が気にしなくても向こうは耀やレティシア、ジンの担当だ。俺が気にしたところで黒ウサギたちの足を引っ張るだけ。なら、俺は自分の出来ることに専念する。
「あなた達が私の相手?」
「うわお、そっちから来てくれるなんて・・・・」
空に浮きながら平然と姿を現すペスト。時間制限があるから自分から動かないと思っていたんだがな・・・。まあ、仕方ないか。
「ま、役不足かもしれないが相手してくれや、
俺はデュランダルとレーヴァテインをかまえ、黒ウサギも金剛杵・"
「いいわ、ゲーム終了まで遊んであげる」
「サンキュー、それじゃあ早速行くぜ!」
俺は翼を羽ばたかせレーヴァテインでペストに斬りかかろうとするが黒い風がペストを覆うようにし守った。
へえ、ただ黒死病を撒くだけじゃないんだな。なら・・・。
「燃え散らせ!レーヴァテイン!」
俺はペストを囲んでいる黒い風ごとレーヴァテインの炎で燃やそうとしたがたいして変化はなかった。
「無駄よ」
「いや、少しでも削れれば!」
デュランダルを持っている手に力を入れ俺はデュランダルを振り下ろした。すると、黒い風を破壊することに成功した。
でも、ペストにまで届かなかったか・・・・。
「前言撤回するわ。まさか無理矢理こじ開けてくるんなんて」
「だけど、お前にまでは届かなかった」
「それでもよ。でも、今のはそう何度も使えないみたいね」
あちゃ・・・・バレてるな。デュランダルはともかくレーヴァテインは俺の生命力を使って炎を出している。魔剣と聖剣のコラボ。いい考えだと思ったんだけどな。
「確かに俺一人では無理だけど俺の後ろにいる奴も含めたらどうだろうな?」
含み笑みを浮かばせながら言う俺に黒ウサギたちも反応したのか動き出した。
「篝さん!黒ウサギとサンドラ様で援護します!」
「任せた!」
黒ウサギの雷とサンドラの炎の同時攻撃にペストは再び同じように防御した。
もう一度やっても同じだろう・・・・。なら、試してみるか。
「龍化!アーム!」
俺の両腕は龍の赤黒い鱗に包まれ鋭い爪まで生えてきた。だが、単純な力はパワーアップした。だが、それと同時、俺の中で抑えていたものが少し出てきた。
白夜叉が言っていたことはこれか・・・ッ!なるほど、俺にとってはもろ刃の剣だな。
龍の腕となった俺はデュランダルでペストの黒い風を簡単に斬り裂いたがペストはそれを予想していたのか簡単に躱した。
「流石に簡単には喰らってくれねえか」
「当然よ。流石に私でもオリジナルのそれを喰らったらひとたまりもないもの」
デュランダルを指すペスト。なるほど、つまり直撃したら大ダメージは与えられるということか。
「だから、貴方を最初に倒してあげるわ」
黒い風を俺に向かって放出して来たペスト。俺は翼を羽ばたかせそれを避ける。だが、避けた先にはペストがいた。
「レーヴァテイン!」
俺はレーヴァテインの刀身か大出量の炎を出して牽制。何とか攻撃は喰らわなかった。だが、これ以上レーヴァテインを使うと死ぬな、俺。
俺はレーヴァテインをギフトカードにしまい、デュランダルだけにする。すると黒ウサギがペストの問う。
「"
「えっ?」
「そうよ」
「えっ!?」
驚きすぎだぞ。サンドラ・・・・・。
「十六夜さんから話を聞いた時、よもやと思いました。貴女の持つ霊格は"ハーメルンの笛吹き"に記述された"一三〇人の子供の死の功績"ではなく、一四世紀から一七世紀にかけて吹き荒れた黒死病の死者―――――八〇〇〇万もの死の功績を持つ悪魔ではないか、と」
「八〇〇〇万もの死の功績・・・・!?それだけあれば、神霊に転生することも可能」
「無理よ」
「無理です」
うわぁ、バッサリ言われたな・・・・。どんまいサンドラ。
「最強種以外が神霊に成る為に必要な功績は"一定数以上の信仰"でございます。如何に規格外の数の死の収集しようと、神霊に至る事は不可能でございますよサンドラ様」
なーる。なら、いくら死のうが関係ねえな。この龍モドキ以外は、か。
「ですが信仰の形は様々です。恐怖をもって奉られる神仏も決して少なくはありません。密教の悪神にはよくある事でございます。しかしペスト。貴女は神霊に成り上がる為の恐怖も信仰も足りなかった。後の医学が黒死病に対抗する手段を得ることで、貴女は神霊には成りきれなかったのです」
「残念ながら、所々違うわ。だけどそうね・・・・・時間稼ぎ程度に教えてあげる。私は自分の力で箱庭に来たわけじゃない。私は召喚したのはかの魔王軍"幻想魔道書群"を率いていた男よ」
召喚ということはペストは黒ウサギが俺たちを呼んだように来た存在なのか。じゃあ、同類だな。
「きっと私を手駒に加えたかったのね。八〇〇〇万もの死の功績を持つ悪魔・・・・いいえ。"八〇〇〇万の悪霊群"である私を死神に据えれば、神霊として開花させられると思ったのよ」
「という事は・・・・貴女は黒死病が神霊化したわけではなく、黒死病の死者の霊群ですと?」
「ええ。その代表が私。・・・・・しかしかの魔王は、私達を召喚する儀式の途中で何者かとのギフトゲームに敗北し、この世を去った。私達が、"
「あー、話は終わったか?」
欠伸しながらそう訊く俺にペストは鋭い目で俺を見てきた。おお、こわ。
「ペスト。俺は別に復讐なんてやめろとか、何の意味もないとは言わねえ。やりたかったらすればいい。自分の気が済むまでな。だが、今はギフトゲーム中だ。そういうのは終わったからしてくれ」
「・・・それもそうね。じゃあ、そうさせてもらうわ」
ペストが俺に黒い風を放とうとした時デカい地震が起きた。更に耀たちのところからも遠目でシュトロムが倒れているのも確認できた。どうやら十六夜たちは終わったみたいだな。じゃあ、後はペストだけか。
『ヤバいな』
突然、俺の中でクソ龍モドキが話しかけてきた。つーか、お前から話しかけてこないんじゃなかったか?
『今のは独り言だ。それより気を付けたほうがいいぞ。これであの魔王の小娘も本気になった』
はぁ?
「――――――――・・・・・止めた」
「え?」
「時間稼ぎは終わり。白夜叉だけを手に入れて―――――皆殺しよ」
刹那、黒い風は天を衝いた。
「先ほどまでとの余興とは違うわ。触れただけで、その命に死を運ぶ風よ・・・・!」
おいおい、マジかよ!クソ、まずいな。
『どうした?打つ手なしか?なら体を寄越せ。俺ならあんな魔王の小娘一撃で終わらせられる』
うるせえ、ここぞとばかり言いやがって。誰がてめえに体を渡すか。
俺は龍モドキと軽く口喧嘩していると龍は嘆息したかのような息を漏らす。
『やれやれ、なら思い出させてやる。お前は人間ではなく獣だということを』
龍モドキがそう言うと俺の脳に何かが浮かび上がってきた。
『ハハハハ!おもしれえ!こいつ泣き出したぜ!』
数人の男たちが一人の男を囲って殴ったり蹴ったりしていた。そして、殴られ、蹴られ、泣いていたのは俺だった・・・・。
ここは・・・・・?俺の記憶の中か!
『そうだ、俺が貴様の記憶を覗いた時の記憶をお前自身に見せている』
龍モドキが笑い声を抑えながらそう言ってきた。本当にいい趣味してるぜ、お前は・・・。俺の忌むべき中学時代のことを思い出させやがって・・・・・ッ!
俺は中学の頃イジメの対象にされていた。そして、死人となったのもこの時期だった。何の前触れもなく突然、イジメの対象にされ、殴られ、蹴られるのは日常。物を隠されるにも、壊されるにも日常になっていた。
『お前ってさ、何で生きてんの?成績も悪い上に運動も悪いんだ。死んで楽になったほうがいいんじゃねえの?』
そう、中学の時俺の成績などは最悪っていい。何をやっても中の下。それ以上は伸びなかった。そのせいでイジメの対象になったかもしれない。もしかしたらそうじゃないのかもしれない。
『人間とはわからん生き物だ。少し自分と違うだけで意味もなく嫌われ者にする』
ああ、そうだな。それには同意するよ。
あの時は酷いなんてものじゃなかった。教師に見つからないように俺を陰で殴ったりしてストレス発散されたり、教科書など隠されたり、ただでさえ悪い成績を暴露されたり、終いにはトイレの水で顔を洗わされたこともあった。家に帰っても成績の事で問い詰められ、怒られ、飯を食べる、トイレに行く、寝る以外の娯楽はさせてもらえなかった。ただ、時間が来るまで机に上で座って勉強する振りをしていた。部屋の外から歩く音がするたびにビクついていた。
『う・・・・ひぐ・・・・・』
・・・・・・・・・。
ベットで息を殺しながら泣いている俺を見て俺は何も言えなかった。そして、その時の俺はずっと泣きながら何でこんな目にあわなきゃいけないのか?何でこんな辛い思いをしなければいけないのか?それだけをずっと考えていた。次の日も、その次の日も俺は泣きながらそう考えていた。
辛い・・・・生きるのが辛い。それがその時の俺の毎日だった。
『しかし、よく何も言わず耐えることが出来たな』
言わなかったんじゃねえよ、言えなかったんだ。人間なんて弱い存在なんだよ。ただ耐えるしか俺には出来なかった。イジメに反撃する勇気もなければ、家族にイジメられていると言う勇気もなかったんだ。臆病者だ。
『なら、死ねばいいんじゃなかったか?死ぬ勇気もなかったということか?』
ああ、死ぬ勇気も俺にはなかった。でも、死ぬわけにもいかなかった。俺には大切な友人がいたから。友人と言っても飼っていた犬だけどな。それが俺の唯一の支えであり、安らぎでもあった。そいつがいるだけで俺は耐えることが出来たんだ。だが・・・・・。
次に映しだされたのは体中青アザだらけの犬の姿が寝転がった状態でピクリとも動かなかったところだった。
誰だって見ればわかる。殺されたってことを。殴ったり、蹴ったり、もしくは武器まで使っていたということも。だけど、俺の家族はたかが犬が死んだというだけの理由で警察にも連絡せず勝手に墓を作り埋めただけだった。俺は墓の前でただ茫然と立ちすくんでいた。涙も流さずただ立っていた。
大切な友人が死んだにも関わらず俺は悲しむことさえ出来なかった。ただ、何かが崩れる音しか聞こえなかった。
その次の日、俺は学校に行くといつも俺をイジメている奴らが笑みを浮かばせながら俺によって来た。
ああ、殴りに来たのか。いいぜ、もう好きにしろよ。
支えの無くなった俺は自暴自棄になっていた。すると、俺をイジメていた奴の一人がこう言ってきた。
『お前のとこにペット。綺麗な水玉模様が出来ていたな』
その言葉に俺はすぐに理解した。そして、心の奥底から湧き出てきた。それと同時、俺の目の前にいる奴らが人ではなくただ自分が強いとアピールしたいただの獣だとわかった。
遠慮する必要はどこにある?
何故、耐えなければいけない?
殺したんだ。殺されても文句はないはずだ。
誰かに囁かれたかのようにそう俺に頭に過った。それから俺はイジメてきた奴らを殺そうとした。殴ったり、蹴ったり、椅子を使ったり、バットを使ったり、ハサミやカッターも使ってそいつらを殺そうとした。いや、殺したかった。あいつがされたように同じようにしてやろうとした。幸い、教師が止めに入り、そいつらを殺すことは出来なかった。それから俺は精神病院に連れて行かされ入院することになり、俺は病室でただ息をしていると看護婦たちの声が聞こえてきた。
『今日入った子知ってる?中学生なのに人を殺そうとしたらしいわよ』
―――違う。有害な獣を駆除しようとしただけだ。
『ええ、聞いたわ。獣のように暴れ回ったらしいわね。怖いわ』
―――俺が獣?
『ああいう子が殺人犯になったりするのね』
あいつらが人で俺が獣?何で?何の感情もなく自分たちの優越感の為に殺したあいつらが何で人なんだ。認めない。あんな奴らが人なんて俺は認めない。
『まあ、死んだほうが世の中の為ってことね』
ーっ!?
どうして・・・・俺ばかり・・・俺は死ぬべき存在なのか?死ななければならないのか?死んだほうがいい存在なのか?死んだほうがいいのはお前ら人間のほうだ。お前らみたいな奴が人と言うなら俺は獣でいい。
それから俺は入院生活を終わらせるため俺は嘘を磨いているうちに俺自身が嘘となった。そのせいか俺は自分自身にある獣としての感情を心の奥底にしまい込み俺は自分自身を殺し、何の痛みも感じない死人となった。
『それを今、解放するときじゃないか?』
何でだよ?こんなもん俺に見せて俺がお前に体を渡すと思っていたのか?
『そうじゃない。あの魔王の小娘を殺すには少なくとも今のお前では無理だ。だが、獣の本性になったとしても恐らく無理だろう』
じゃあ意味がねえじゃねえか。
『まあ、話を最後まで聞け。獣の本性を出したところで所詮お前は人間。何も考えずただ突っ込めば一瞬でやられる。だが、お前には俺がいる』
・・・・・どういうことだ?
『お前の体を俺の体にすればあの程度何ともない。龍とはそれだけの存在なんだ。でだ。取引するか?人間』
・・・・・・・するかよ。俺は今一人で戦っているわけではない。
『だからこそだ。月の兎たちが死んでも良いのか?貴様の友人のように死なせたくなかったら俺の取引に応じろ。そうすればお前一人の犠牲で残りの全ては助かる』
・・・・・・・・・・。
俺はあの日から学校の奴らも家族も誰も信じられなくなった。ただ、死んでいるように生きて来ていた。何の目標も夢も希望も何もなくただ生きていた。だがこの箱庭に来て俺は変わった。十六夜、飛鳥、耀、ジン、レティシア、コミュニティの子供たち。そして、黒ウサギ。数日という短い間だったけど俺に生きていると思わせてくれた。
あの時、守れなかった代わりと言ったらおこがましいにもほどがあるが失いたくはない。失うくらいなら・・・・・。
黒ウサギには手を出すなよ。
『いいだろう。なら、呼べ!我が名を!』
俺は飛ぶのを止め屋根に足を乗せて黒ウサギを呼ぶ。
「黒ウサギ!」
俺の声に黒ウサギはこちらに振り向いて来てくれた。
「この数日間、楽しかった。生きていると思わせてくれて楽しかった。ありがとう」
別れの言葉。これだけは言っておきたかった。
「俺の肉体をくれてやる。だから、力を寄越せ!タンニーン!」
叫んだ瞬間、俺の体は龍へと変貌し始めた。
「ダメです!篝さん!」
黒ウサギが叫ぶが俺は意識が完全になくなる前に今できる生きている笑顔で黒ウサギに言った。
「好きだったぜ。黒ウサギ」
「そうはさせないッ!」
ペストが死の風を俺に放ってくる。だが、もう遅かった。俺は・・・俺は・・・・もう。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
ドラゴンになったから。
龍となった篝の咆哮はペストの死の風を相殺させた。
「うそ・・・・」
驚愕するペスト。だが、龍になった篝が赤い目でペストを睨んだ瞬間。
ドスッ!
龍となった篝の腕がペストの腹部を貫いた。
「そんな・・・・・私は、まだ・・・・・!」
ペストが何かを言おうとする前に龍となった篝の口から炎が噴き出てペストを消滅させた。これで、魔王とのゲームは終わった。だが
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
戦いはまだ終わっていなかった。