「……正気?」
「大マジ」
未だに信じられないといった感じで眼をしばたかせる少女に、トシキは軽く笑ってそう答えた
「まっさかこんな近代のサーヴァントが来るとはなって話なんだが……。実際に呼ばれてからじゃ何も言えない」
「古い時代の方が来やすいの?」
首を傾げる金髪の幼馴染に、トシキは頷きながらお茶を一口
「当たり前だろれーな。神の時代が終わってから魔術だ神秘だってのは段々と消えてくばかり。ドラゴンだワイバーンだの不可思議生物もほぼ居なくなってってんだ
現代に比べてまだ数百年前だ数千年前だの方がよほど超常の英雄ってのは多い。というか、現代は最早殺戮兵器の時代だからな、新たな英雄、サーヴァントとなりうるような存在がほぼ産まれないんだ」
「あ、確かに」
「まあ、遥か未来、巨大ロボットだとかが出てくるようなロボットものアニメのような時代にまで行けば、いっそって話はあれ、そんな奴はまず間違いなく俺達と縁がない。縁がなければ、ほぼ呼べないさ」
「……」
ぽーっと自身のサーヴァントを見上げる少女と、それを見てポーズを取る偉丈夫は無視しておいて
「でも、人間が楔なら、本当の召喚って」
「ああ、そう言うときは」
世界だと言い張る板に大穴を空け、巨大な尖った鉄塊を突き刺す
普通の鉄なそれに、マグネットをくっつけて、ほらとトシキは指差した
「そういった世界の危機だとこうなる」
「……凄く雑だね」
「そう。世界そのものがヤバい存在、それ自体が楔になるから良いんだ」
「っておーい、結城、戻ってこい」
話を終え、てもまだぼーっとしている黒髪の少女に向けて声を掛ける
「……ごめん」
「いや、良い。まあ、普通はそうなるよなって
続いては、こいつの話に行こうか」
と、トシキは左の手を掲げて見せる。そこにあるのは、赤い痣
「……怪我?」
「いや、違う。結城、お前にもあるはずだぞ?
これは令呪という。サーヴァントと契約し、この世界に存在を繋ぎ止める楔である証であり、同時に聖杯戦争に参加している証明でもあり、サーヴァントに対する保険でもある」
「保険」
「サーヴァントは何故召喚に応じるのか
まあ、本来の術式では世界を護るための召喚だから良いんだが、聖杯戦争においてはそうじゃない。だとすれば、英霊がサーヴァントとしてやってくるだけの理由があるはずだろ?まさか、純粋な善意で殺し合いに参加してくれる英雄ばかりでもあるまいし」
こくり、と少女が頷くのを見て、トシキは続ける
「聖杯の奇跡は、サーヴァントにも与えられる。そのリソースの一部を得る為に、彼等は召喚に応じる
な訳だけど、基本的に知っての通りサーヴァントってのは強い」
「とっしー、より?」
「あのさぁ、俺をなんだと思ってるんだ結城。リボルバー式の拳銃弾くらいなら斬れるが、その程度で勝てるかよ。幻獣を斬る為に次元屈折に至った剣士とかそんな化け物揃いだぞサーヴァントってのは。あのアニメあるだろ?あそこの円卓の騎士とそう変わらないファンタジー、現代魔術師が勝てるような相手じゃない」
頬を掻きながら、トシキは苦笑し
「で結城、何で胸元を覗き込んでるんだ」
「……痣、見つけた」
「見せないで良い。寧ろ隠せ」
ラフな服装の胸をちらちらする少女から眼を反らした
「こほん。話を令呪に戻そう
そんなサーヴァントなんだが、まあ大人しくマスターである魔術師に従ってくれるとは限らない」
『……むにゃむにゃ』
『全てはエウロペちゃまの気分よ』
『安心したまえミス・マスター。私は紳士だ』
口々に告げるサーヴァント+おまけの神様
「まあ、今回のサーヴァント達は良いんだろうけど。素直にマスターに従うサーヴァントばかりじゃない。そして、サーヴァントとマスターだと、基本的にサーヴァントを抑えられるだけの強さをマスターは持たない。そんなマスター側の為に用意された命令権、それが令呪だ
呪いのような強制力を持つ、3回の命令権。それがあるからこそ、サーヴァントはマスターに基本従うって寸法だな」
「……そういうもの?」
「令呪による命令に、サーヴァントは基本逆らえない。いや、可能な限り従うってだけなんだけどさ。例えば自害せよと命じたら、本人の意志に関わらず自殺しようとするくらいの強制力はある
ま、それで自分の心臓に槍を突き刺して……そっから数時間暴れまわれたり、一回死んだぞだが俺の命は一個じゃないと蘇ったりで本当に自害したといえるのか怪しい奴等は居たりするんだが一応な」
「……でも、そもそもそんな命令権要るの?サーヴァントも、マスターが居ないといけないんじゃ」
「ああ、基本的にはな。だけど聖杯戦争について語った時に言っただろ?6騎分のサーヴァント丸ごとってリソースが貯まることで奇跡に届くって。マスターはぶっちゃけ生きてても死んでても無関係なんだ
だから、サーヴァントは7騎で基本固定なんだがマスターはその気になれば変えられる。マスターが死んでからサーヴァント自身が消えるまでの間に新しいマスターを見つけるとかで残れるんだ。最悪、馬が合わないとか生理的に無理だとか今死んで良い人間にカテゴライズしたとかそもそも自分を召喚する為の縁として生前の妻の墓を荒らして手にした遺品を使ったとか生前恨みを持ってた一族の末裔に召喚されただとか諸々でマスター殺すサーヴァントだって居る。そういうサーヴァントを従えておくには、それくらいの安全装置は必要だろ?
あとは、別に安全装置だなんて物騒な使い方をしなくても良い。突然一人で居るときに別のサーヴァントに襲われたときに、『助けて!自称スーパーゼウス!』って叫べば、どれだけ遠くに居ても彼は一瞬で目の前に現れる。そんな感じで、ちょっとした人智を越えた事なら起こせるからそういう感じで使っても良い
最低最悪な使い方だけど、自分好みの顔立ちのサーヴァントが呼べたからって肉体関係を強要するのに使ったとかそんなんも居たはずだ。好きに使えば良い」
「最後が最低すぎる」
半眼になる少女に、実際にどっかの亜種聖杯戦争ではあったらしいぜ?とトシキは笑ってかえし
『安心したまえミス・マスター
この私、令呪などなくともレディの誘いは』
「しない」
『勿論それで良いとも。私はそこの神と違いスケベではないのでね』
不満げに角を揺らす牡牛を、軽く宥めて
「結城は聖杯戦争って戦いに巻き込まれた。そこはサーヴァントと呼ばれる7人の過去の英雄達が最後の一人になるまで殺し合い、生き残ったのが奇跡を得る戦いであり、その英雄を現世に留める楔であるマスターにされてしまっていたのだ
そこまでは良いか?」
「大丈夫」
「ボクは、そこには無関係?」
「まあ聞いといてくれ、れーな。世界には相手マスターの大切な人を人質に取ろうって戦法使う奴も居るはずだ、無関係では居られないかもしれない」
一息ついて、トシキは続ける
「じゃあ、サーヴァントそれぞれについて語ろうか
まずは、結城のサーヴァント、アーチャー」
ことり、と白い駒を置く。ポーンだったそれは、鍛造魔術で弓を持ったものに作り直して
「名前の通り弓兵のサーヴァントだ。なんだけど……
幾つかの亜種聖杯戦争についての資料とか読んだ結果、弓を使わないアーチャーが多いって結論が出たくらいには自由だ。大体、遠距離に向けて何かを放つ事がアーチャーの素質らしい
特徴は遠距離攻撃が出来ること、強みは遠距離攻撃が出来ること、弱点は何かを飛ばす関係上飛ばすものからある程度何者なのかバレやすい事」
続いて、と槍を持ったような駒を置く
「そこで寝てる俺のサーヴァントがランサー。槍兵のサーヴァント
基本的に槍だからリーチが長く、最速のクラスとも言われるな。今回は……いやまあ雷の速度で飛んでく投槍は確かに速いか
利点は攻撃が速いこと。欠点は今回に限って言えば緊張感に欠けている事。そこら辺はサーヴァントによるけど」
次に、と置くのは剣を持った駒
「セイバー。見ての通り剣士だ
英雄譚で多くの英雄が剣を持ってるだけあって、優秀なサーヴァントが来やすい。大体バランスが取れてて、最優のクラスとも言われる
今回は、俺が遭遇した限り恐らくはユーウェイン卿。欠点としては、俺が止めなきゃいけないとしている敵な事
ここまでの三騎が、三騎士とか呼ばれるクラスだ。基本的にスタンダードに強い。亜種聖杯戦争において勝ちたいならこいつらが呼べると良いとか言われてるが……まあ置いておこう」
置くのは手綱みたいなものを持つ駒
「これがライダー。名前の通り、何かに乗ってる事が多い英雄だな
その何かが有名な事が多いから、宝具と呼ばれるその英雄の切り札が強いことが多い。今回は……人類最古の英雄王
結城、れーな。すっごく偉そうな金髪の男に出会ったらそいつだ。マイペースで尊大だけど礼儀を弁えれば酷いことはあまりしてこないはずだから、頑張って礼儀を尽くしてくれ」
置くのは杖のようなものを持った駒
「キャスター。魔術師のサーヴァント
俺も魔術師だが、基本的にそういった現代の魔術師とは比べ物にならないヤバい魔術の使い手だ
欠点は、実はさっきまで紹介してきた4種類のサーヴァントにはある程度の魔術への耐性が付加されている事。それっぽいのに出会ったら、一目散にサーヴァントの後ろに隠れろ」
置くのはナイフっぽいものを逆手に構えた駒
「アサシン。言葉通りの暗殺者だ
大抵の場合何者かを自分が相対して殺した事で有名な人物だ。処刑人や職業暗殺者、後は領主に反旗を翻した奴とかもだから割と幅広い。近代のスナイパーなんかもこのクラスで召喚される事があるらしいから、真面目にマスターからすれば一番危険な相手だ
欠点は大抵の場合対人に強い分サーヴァントとかいう人を越えた化け物の面と向かってのスペックのごり押しに弱い事……と言いたいけど相手による
とりあえず、出来ることなら相手が何なのか分かるまで結城はアーチャーと離れない方がいい。れーなは……殺しても無意味だから少しは安心かな。でも拐いに来られたら困るし、出来れば結城と居ることが対策になる」
置くのは、不思議な駒
「バーサーカー。狂った英雄
これはちょっと特殊で、元々は普通の英雄を狂わせて暴れまわらせている場合と、生前から狂気に呑まれて色々やらかした為狂ったまま召喚されたナチュラルボーンなのと二種類パターンがある
ほぼどんな英雄でもバーサーカー足り得るから真面目に予想が付かない。前者の場合暴走状態に近いから生前より技量とかは落ちてるだろうが、その分リミッター外れててバカ力
欠点としては意志疎通がしにくいことと、暴走してるから全体的に魔力を食うこと
……あ、言い忘れてたけど、当たり前ながらサーヴァントを維持するには魔力が必要だ。それは楔であるマスターから吸われていくので、サーヴァントを戦わせればそれだけ魔力を使う
結城は……量はそんなに多くないから気を付けてな。やり過ぎると魔力不足でぶっ倒れるぞ」
7つの駒を並べる
「以上7種類だ、基本はな
特に対人で強いアサシンが結城の命を狙った時が一番危険だから気を付けてな」
そう、トシキは付け加えて
「基本?例外も居る?」
と、黒髪の少女に食い付かれた
「いや、エクストラクラスって名前で居るには居るが……」
「知りたい」
「正直な話、基本7クラスの方が脅威だし、召喚されている可能性も低い。何なら召喚されていたらいけない存在も居る。それでも聞くのか?」
「半端な知識は、嫌」
「そう、だな」
眼を煌めかせる少女に結城も大分元気になったなとうなずいて、トシキは言葉を続けた
「まずはルーラー。後はセイヴァー」
豪奢な駒を二つ置く
「セイバー?さっき聞いた」
「バーじゃなくてヴァー。剣士じゃなく救世主って書く方な
裁定者と救世主。こいつらは例外の中の更に例外。基本的に誰かに召喚される方が可笑しい特異な存在だ。ルーラーは、聖杯戦争自体が狂いそうな時にマスター不在で現れて現況を叩き潰し正しい道に戻すって運営側の存在。セイヴァーは伝承の聖杯を産み出した当人だったり、或いは悟りを拓いた者であったりのアレ。文字通りの神仏にして救世主
どちらも狂ったスペックのチートだが召喚される方が可笑しいので気にしなくて良い」
盾を持った駒を置く
「シールダー
文字通り盾の英霊。割と居そうな気がするんだけど基本的に盾の逸話を持つ英雄は他の逸話も持つからそっちで呼ばれて、ついでに盾を持ってるって事が基本だからほぼ出てこない。あるとすれば……適性のある他の全クラスのサーヴァントが既に召喚されている状態で尚特定の英雄が召喚に応じようとした場合くらいかな」
鎖に繋がれた駒を置く
「アヴェンジャー、復讐者だな
恨みを持つ者というよりも、実際に復讐を成し遂げた者って側面が強いらしい。詳しくは知らないけれども、あの巌窟王とかもそのクラスらしいぞ
あいつ脱獄してまずやった事が親の安否確認と自分を庇ってくれた人への恩返しってくらいには復讐に取りつかれてない存在だと思うんだけどな。つまり、良く分からんクラスだ」
変なものをもった駒を置く
「フェイカー、影武者のサーヴァントだ
どっかでそんな存在の記述を見たことがあるけれども、良く分からん」
二人が上下に絡み合うような駒を置く
「アルターエゴ。別人格
これもどっかで記述を見ただけなんだが……特定の存在の別側面、切り離された何か、らしい
結城、お前アロクラの勇者のアニメ見たことあるだろ?あそこに出てくる魔王みたいな感じだ。勇者が勇者である為に切り捨てた悪の心、そういったもの……が恐らく該当するんだろう。そんな存在をサーヴァントとして呼べるってことがまず有り得ないんだけどな」
スカートの短い少女のような駒を置く
「ムーンキャンサー。蟹じゃなくて癌の方な
月の癌。文字通り、月を破壊しうる狂おしき愛。読んだことはあるがこの世界には来るはずもない。平行世界には居るらしいって程度。何で書いてあったのかも分からん」
横に槍は突き立っているが何も持たない駒を置く
「ウォッチャー、番兵のサーヴァント
良く分からないが、マスターを代わりに戦わせる変な奴らしい」
銃を構えた駒を置く
「ガンナー。文字通り銃の使い手だ
全員アーチャー適性を持つから意味あるのかこれと言う変なクラスなんだが、アーチャーが居る時に出てくるのかもな」
頭から何か伸びている駒を置く
「フォーリナー。降臨者。宇宙から来る何者かから何らかの強い影響を受けた者が当てはまるらしい
宇宙的な恐怖を操る脅威のサーヴァントらしいが、大抵英雄ではないからまず間違いなく普通の聖杯戦争には出てこないし気にしなくて良い。いや寧ろなんであの資料にあったんだろうなそんなクラスの解説……」
月を背負った駒を置く
「ファニーヴァンプ。毒婦……というか吸血鬼
死徒とかいうこの世界の裏に居る吸血種が万が一召喚できた場合こんなんらしいが、そもそも吸血種は基本人間に呼ばれたりしないので机上の空論」
角ばっていてブレードアンテナの目立つ駒を置く
「ガーディアン。守護神のサーヴァント
遥か未来、英雄として扱われる偉業を為した意志を持つ機械だとか何だとか。パイロットや指示を出す人間が居るとそっちがライダーで来るから、AIを持つロボット限定だ
基本俺が結城に勧めた事がある合体ロボシリーズの主役みたいなもんだ。目立ちまくるし基本人間同士の殺し合いに出てこないしそもそもどうやって縁を結ぶんだよこれ」
紋章のような赤い駒を置く
「ビースト。獣
ライオンだとかドラゴンだとかの文字通りの獣ではなく、人類悪と呼ばれる恐ろしい脅威を示す
ぶっちゃけ、こいつが居る場合本物の決戦術式が使える、そんな存在。なので基本人間が呼べるものじゃないから無視で良い」
銀色の翼のある駒を置く
「アンチセル。捕食遊星
神話の時代を終わらせた宇宙からやって来た破壊神らしいがなんとか倒されたっぽいから気にしなくて良い。寧ろこんな奴生きてたら困るというか地球は終わる。そもそもサーヴァントじゃない」
祈るようなポーズの駒を置く
「テラー。紡ぎ手のサーヴァント
奇跡の楔だとか神話を語る者だとか何だとか言われてるが、これも良く分からん。って、良く分からんクラス多いな……」
基本の駒を7つ並べ、オーラエフェクトを重ねる
「グランドクラス。グランドセイバーだとかグランドランサーとかそんな感じ
本物の決戦術式で呼ばれる基本7クラスの上位、その時の脅威に対する最高最善最大最強の7騎。
寝てる牛を指差す
「エンシェントクラス、神話に出てくる神や悪魔や天使やらの本物。つまり、あの牛の本体とかだな
セイヴァーと同じく出てきたら聖杯戦争が終わるので無視で良い」
と、トシキはずっと頷く少女に笑いかけた
「俺の知ってるのは……というか、読んだことある資料にあったのはそんな感じだ
これで良いか?」
「……すぅ」
だが、返ってきたのは穏やかな寝息
頭が揺れ、うなずきのようにも見えるが、確かな寝息
『……ミス・マスターならばビーストの辺りで眠っていたが?疲れたのだろう』
偉丈夫に言われ、無駄骨かよとトシキは溜め息を吐いた
色々と変なクラス名前が出てきますが独自設定でほざいているだけです。公式にはガーディアンもテラーも居ません
そもそも今回の聖杯戦争にもガーディアンとか出てきません