Fate/Tonitrus   作:雨在新人

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刀匠の社(1/1)

カーンカーンと鉄を叩く音が暗く寒い夜空へと響き渡る

 

 『あらマスターさん、こんな時間だなんてとっても頑張りやさんね』

 背後から投げ掛けられるそんな柔らかな言葉に、天国(あまくに)トシキは槌を置いて振り返った

 「ランサー。一応れーなや結城には危険だから鍵は掛けておいたはずなんだが……」

 『あらごめんなさいね。霊体化してしまって』

 霊体化。サーヴァントの体は肉体ではない。あくまでもエーテル体、魔力で作られた仮初めの体であり、だからこそ存在するのに楔が必要である

 逆に言えば、肉体ではないので目に見えない姿になったり扉などを突き抜けたり、魔術的な対策をされてなければやりたい放題も出来るという訳だ

 

 「いや、良いよ。さすがにサーヴァント相手に危険だって程でもないから」

 腕で汗を拭い、起きてきた金髪の少女サーヴァントに、まあそこら辺にでもと言いながらトシキは腰を下ろす

 『あら?もう鍛冶は良いのかしら。あんまり完成したようには見えないのだけれども』

 トシキの横にあるのは、未だ不格好な両刃の直剣。刃がガタガタであり、とても剣とは呼べない代物

 

 「良いんだ。これ以上打っても完成しないって分かる程度の失敗作だから」

 火は灯りの為に付けたまま、ダメダメだな、とトシキは苦笑してみせた

 「偽打・天叢雲。魔術での咄嗟の鍛造どころか、自力で地金から打つことすらも出来ないままじゃいけない。それじゃあ、れーなも、結城も、守れやしない

 それを痛感したから、練習だな。ダメだったけど」

 はあ、と息を吐く

 

 『……む?』

 『ゼウスさま?どうかなされたの?』

 その背後に、白牛の姿が現れる

 『マスターさん。見せて貰っても良いかしら』

 「……まだまだ冷えてないけど」

 『大丈夫、おばあちゃまは熱いのは慣れっこだもの』

 ……自慢気に言う少女に、そういえばタロスってロボらしいし、熱くらい持つかとトシキは納得し

 「……いやそれとこれとは話が違うだろ」

 盛大に水をぶっかける。湯気と共に歪な鉄塊がその赤熱を抑えられ、黒く冷えて行く

 

 「はい、どうぞ」

 『あら、サーヴァントですもの、人より頑丈なのに。気を使わせてしまってご免なさいね』

 ちょっとだけ重そうに、冷えた黒鉄を金の髪のサーヴァントは持ち上げ、牛へと見せる

 『ゼウスさま、ゼウスさま。何が分かるのかしら』

 

 その黒鉄に鼻を突っ込み、暫くふんふんと臭いを嗅ぎ……

 静かに、牡牛は頷いた

 『……やはり、か』

 「……うん?」

 『エウロペちゃまのマスターよ。名は』

 「天国トシキ。名乗ってた気がする訳だが」

 『天の国(オリュンポス)より来る者、か。道理』

 「……そんな由来だっけ?」

 と、トシキは家の古い書物を思い出す

 

 「で、結局何が分かったのか」

 答えは出ず。此方に視線を向けた白牛に対し、少年は問い掛けた

 『クリロノミア、というものを知っているか?』

 「結城が作ったゲームにそんなのあったな」

 ソロモンズクリロノミア。結城灯花が初期に作ったシンプルなカードゲームだったはずだ。プレイヤーは魔術師となって魔術を模したカード10枚からなるデッキを使い、このカードをプレイした時貴方は勝利する効果を持つ第10の指輪のカードを使用する為に残り9枚を駆使するというスマホアプリ。拡張性はなく無料だが、一応DL数は万行ったと喜んでいた事をトシキは覚えている

 

 「まさか神すらそのゲームを知っている……という訳無いか。遺産という意味の方だろう?

 いや、だとしても何を刺しているのか分からない」

 『まあ、あの娘そんなもの作ってらしたの?』

 「はい。家のスマホにも入ってるからどうぞ」

 指輪の描かれたカードのアイコンをタッチ。金髪のサーヴァントへ向けてアプリを起動したスマホを投げる

 『あら、有り難うマスターさん

 それで、これはどうすれば良いの?』

 『……エウロペちゃまよ

 話が逸れる。その機械は触れれば動くのだ』

 『あら、現代の技術は凄いのね、偉いわ!』

 少しだけ興奮ぎみに画面に触れる少女サーヴァントは横に置いて、牡牛は話し始める

 

 『テオス・クリロノミア。毒性のない水銀のごとき液状のナノマシン、と現代ならば表現するものか』

 「ファンタジー物質だな。何か関係が?」

 『行使していた魔術は、かの神々の遺産によるもの』

 「……は?」

 口をあけ、トシキは首を捻る

 

 『鍛造魔術と言ったか。まさか、この時代にテオス・クリロノミアを精製する魔術を扱う人間が残っているとはな』

 「え?ちょっと待て

 残っている?ってことは何か?家の魔術って神代ギリシャで使われてたナノマシン扱う魔術だったって話なのか?」

 『然り、である』

 「訳が分からない……

 いやまあ、鍛造前に素材に特異な力が流れ込んでるってのは感じていたんだが……」

 ナノマシンによるものだったのかー、と納得して

 

 「……それで?」

 『本来はヘファイストスの領分だが……

 そのような不安定不完全なクリロノミアの使用は目に余る。我が真のクリロノミアというものを教えてやろう』

 「出来るのか!?ってか、自分でクリロノミア?を作れるならば」

 『我は天空、全能である。然れど、牡牛の姿では子供を産み出す生命の源くらいしか出ぬ。伝えるのは理論だけだ、自身で形とせよ』

 「威張って言うことなのかそれは!?」

 

 理論を……天国トシキという現代魔術師にとっては机上の空論とも言えるものを聞きながら、夜は更けてゆく

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