Fate/Tonitrus   作:雨在新人

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第1章
守護者、襲来(1/1)


ピンポーン

 チャイムの音に、ゼウス神にアドバイスを受けながらひたすらに槌を振るっていた天国(あまくに)トシキは顔を上げる

 古い掛け時計を見上げると時刻はまだまだ午前5時を回ったところ。こんな時間に訪ねてくるような非常識な知り合いは居ない。朝一の牛乳配達なども頼んでいない

 

 「はい、天国です」

 訝しげに仕事場を出て、すぐ近くの玄関の鍵を開け、防犯の魔術を解除しないように扉は開かず

 「天国さん、朝早くにすみませんが、警察の者です」

 ……フリーズした

 

 「警察の者が何か」

 少しだけ顔をひきつらせ、トシキは扉を開く

 「昨晩なのですが。住宅街で強盗殺人らしきものが起こったのは御存じでしょうか」

 そこか、と当たりを付けて、変なごまかしはいけないだろうなとトシキは頷く

 「強盗殺人、ですか

 被害に遭った家は……結城家でしょうか。それならば」

 逆に切り込む。知らないとは言わず、包み隠さず

 「話が早くて何よりです

 その結城家なのですが、そこから昨夜貴方が大荷物を持って出ていったという目撃証言があるのです」

 ……やはり来たか、とトシキは心の中で頷く。バレなければ良いなとは思ったが、人払いの魔術はそう得意分野ではない。荷物が多いので気が付かれても仕方がないと思っていた

 だからこそ、そこは誤魔化さずに言う。此方には最大の正当化方法があるのだから、と

 

 「そこから、強盗は俺ではないかという形ですか

 ……通信記録を見て貰いたいのですが」

 すっとスマホを取り出し、履歴を開く

 「この時刻はそちらで確認した死亡推定時刻を越えているはずです」

 連絡してきた者の名は、結城灯花。今争点になっているだろう相手

 「確かに昨夜、結城家には、友人である結城灯花の言葉に応じて行きました

 強盗に家に入られて怯えて助けを求めてくる友人を一人にしてはおけなかったもので。彼等が見たと言うのは、恐らくは家に泊まって貰う為に彼女の毛布を運んでいく俺でしょう。結城の奴、毛布が変わると寝れませんからね

 正確には殆ど、ですが流石に両親を殺されて直ぐでは使いなれた毛布がないと駄目だろうと、当人の許可を貰って運びました。疑うのであれば、今は眠っているので起きたあと、当人から確認を取ってください」

 嘘ではない。いや、許可を貰ったと言うのは嘘だが、その辺りはもしも聞かれたら口裏を合わせてくれるだろう

 

 「でしたら何故ですか

 何故、そのような事件があったと知っていながら」

 詰め寄ってくる、若い青年警官

 正義感に駆られたのだろう彼を軽く止めつつ、トシキは言葉を続けた

 「……もしも、連絡を入れたとして。俺は昨日、この家に帰れましたか?

 俺は、友人を一人ぼっちにしないことを選んだ、それだけです。俺にとって、事件の通報よりも、友人の安心の方が大切だった、だから警察に一晩拘束されかねない通報をしなかった

 説明としては、十分だと思いますが」

 「ですが!

 なによりも!なによりもです!あの家の屋根は引き剥がされていた。だのに!その天井は何処にもない

 あれだけの質量が何処に消え去ったのか、あまりにも不可解過ぎる!それが分かるとすれば天国だけだと、上層部が話しているのを聞いた」

 おいしっかりしろ警察上層部、とトシキは心の中で息を吐く。天国は土着の魔術師。旧き家として、一応この地の警察や役所とも繋がりはある。あれは魔法使いの家だからという(魔術師に過ぎないため)嘘と天国に手を出すな不可解過ぎる事件は協力を仰げという不文律が上には伝わっているのだ、魔術絡みの事件が起こったときに当時の後継者が介入して何とか出来るように

 「お前じゃないのか!」

 今にも掴みかからんとする青年警官に、流石に新人はそこら知らないはずだわなとトシキは溜め息を吐いて

 

 「止めんか」

 『……あらあらマスターさん、大丈夫なの?』

 止めるものは、それぞれの背後から同時に現れた

 

 「……ランサー、今は良い」

 『あら?でも困って』

 「……すまない、居られた方がややこしくなる

 結城を見ててくれ、ランサー」

 『ええ、分かったわ』

 トシキの言葉に応じ、ちょっと眼のやり場に困る服のサーヴァントはささっと去っていった

 

 「……彼女は」

 「応援です。アニメフェスの

 泊まる場所が取れなかったらしいので家に」

 それっぽい大嘘で誤魔化して

 「と、言いたいところなんですが、少し違います、警部」

 即座に真実に近いことを言うために切り返す

 

 「違うのかね」

 若い警官の後ろから現れた初老の彼に頷いて、後ろを向き、トシキは更に叫んだ

 「アーチャー、スーパーゼウス!

 すまないがサーヴァントっぽく此方へ来てくれ、結城の為だ」

 「す、スーパーゼウス?」

 「彼の通称です」

 少しの間をトシキは取る

 すぐに、効果はあった

 

 大きな雷鳴と共に、輝いてトシキの前に偉丈夫の姿が現れる

 『ミス・マスターの為と言うならば、このスーパーゼウス、姿を現すとしよう』

 「い、いきなり!?」

 「こ、これは一体!?」

 突如現れる男に驚きを隠せない警察二人に、トシキは続ける

 「ランサー、一旦霊体化してくれ

 すぐに解除で良い」

 『あらまあ、何が起こるのかしら』

 言葉に従い、戻ってきたエウロペの姿が消え、そしてすぐに戻ってくる。不可視となり、すぐに解いたのだ

 「「!?」」

 更に愕然とする警察の男達

 

 「あ、天国くん、これは……彼等は一体」

 「彼等の名は……いや、名前じゃなくて種族?はサーヴァント。そして、結城家を破壊したのもまた

 長らく起きていなかったから、ほぼ単なる噂……みたいになっていたみたいですが、天国案件という奴です」

 「天国案件……」

 「はい、警部。所謂、魔術の絡んだ超常の案件。普通の警察の手出しすること無かれ、という」

 「待ちなさい

 人が死んでいて、警察に手を出すななど……」

 若い警官は吠える。それは、正義感からなのか、それとも警察というものに特権意識でもあるのか、それはトシキには分からず

 「ならば、貴方は。アニメに出てくるような……そうですね、黒鉄の城とも呼ばれるアレ、に勝てますか?」

 「君!突然アニメの事なんて持ち出して」

 「それが、関係あるんですよ

 この度の事件を起こした一派の一人は、全長数十mの機械巨人を有しています。その巨人ならば、家の屋根くらい引き剥がせるでしょう」

 「そんな非常識な」

 「そんな非常識なことが、魔術です

 実際にアニメ染みたことが起きてるんですよ」

 言いながら、トシキは自身の回路に魔力を流す

 「再鍛、と」

 何もなかったはずの場所に現れるのは、一丁のスナイパーライフル

 

 「!?じゅ、銃刀法違反だぞ、君!」

 「残念ながら、俺は刀鍛冶です。こいつは、ハリボテですよ

 でも、これで分かったでしょう。超常は存在する、と」

 実は外見だけ取り繕ったものなライフルをぽいっと捨て、トシキは静かに警察の二人を見据える

 空気を読んだのかアーチャーはその機械腕にビリビリとさも凄いことですよとばかりに帯電してくれていて、ランサーはいつの間にか来ていた牡牛を撫でていた

 

 「……分かった、天国くん

 君達にしか、何とも出来ない事なんだね?」

 「ええ。同等の力で対抗するために、俺達は彼等を呼びました」

 と、トシキは後ろのサーヴァント等を示す

 「ランサー、ついでのデモンストレーションに付き合ってくれ」

 『あらあら、何をするのかしら』

 「ただ、避けずに立っててくれるだけで良い」

 『ゼウスさま、ゼウスさま

 大人しくしましょうね』

 何をするのか分かったのだろう、不満げに首を振る牡牛を撫でて落ち着かせ、金髪の少女はそのちょっと困る服装のまま立ち上がる

 「警部、大丈夫です。発砲してみてください」

 「い、良いのかね?」

 「はい。それで、警察が出てはいけないと目で見て分かるはずなので」

 「……分かった」

 言うや、その初老の警官は警察官として一応持ち歩いている拳銃を取り出し、撃鉄を下ろし

 そして、引き金を引いた

 乾いた音と共に放たれる銃弾が空を割き、少女に襲い掛かる

 だが、しかし。それも当然の事のように、ランサーに当たったそれは空しく床に転がるだけ。傷ひとつ付かない

 

 「近代兵器で彼等に対抗するなら、せめて戦車砲かミサイルくらいは欲しいですね

 最新の戦車や戦闘機ならば、まあ勝負にはなるでしょう。そんな化け物が、合計で7人。うち二人が此処に居て、二人が敵になっているのが確定しています」

 「そ、そんなに」

 「大丈夫です。常識的なのも、もう少し居るかもしれないので」

 いや、居るかなってトシキは苦笑して

 「それで、天国案件の時に我々は」

 「隠蔽をお願いします。色々とバレたら、野次馬根性で首を突っ込んでくる人や、スクープだって写真取りに来る人も居るでしょう

 彼等が超常に触れたとして、無事に生きて帰れる可能性は限りなく低い

 だから、無理筋でもそれっぽいでっち上げをお願いします」

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