Fate/Tonitrus   作:雨在新人

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赤と金の少女(2/2)

「れーなを?」

 思わず、眼前の少女にトシキは聞き返す

 

 「どういう話なんだ」

 『ん?あの子は聖杯でしょ?

 だから、別のマスターさん達にだって狙われる。だからさ、わたしが監督役として預かろうか?ってお話。どうかな

 わたしって、言った通りルーラーだから、渡して貰ったら勝者が決まる時まで護り抜くよ?』

 「その場合、れーなはどうなる」

 『勝者が決まったときには、ほぼ完全な聖杯になってると思うから、勝った人に託すよ

 でも、もしもキミがそこを心配してるなら、負けなきゃ良いよね?』

 「そうじゃない。負けることを考えて聞いてるんじゃない

 聖杯戦争が起きているとはいえ、今日はアニメフェス二日目、本番だ。それに、明後日からはまた学校だってある

 そこら辺はどうなるんだ」

 そんな意気込むトシキの袖が、くいっと軽く引かれた

 

 「……学校」

 「結城?」

 「どう、しよう」

 「あー」

 言い澱む。確かにそうだ。結城の家はもう無くて。家庭は血によって崩壊した

 平穏な生活には戻れない

 「後で考えよう」

 「ん」

 こくり、と頷く結城

 

 『そこら辺は、諦めて貰うのが肝心かなー

 だって、外歩いてたら護るための努力が増えるからね。今回のわたし、積極的に介入するのは御法度だから、ご飯とかは用意するけど基本的に部屋に居て貰う感じになるよ』

 「なら、答えはひとつだ

 俺はれーなの幼馴染として、天国の魔術師として、れーなを護る。護らなきゃいけない。だから、その提案を受けるわけにはいかない」

 『うん、良く言った!』

 うんうん、と裁定者を名乗る少女は頷く

 『そこで任せたというようでは、我が来た意味がない』

 『マスターは頑張りやさんだもの、そう言うわよね』

 自身のサーヴァント等も、それに同調する。ただ、結城だけは少し不満げで

 

 「……危険」

 「そう言うなよ結城。お前だって、ひとりぼっちは嫌だろ?」

 「……嫌」

 「でも、狙われる

 ……あれ、何で?」

 当然の疑問

 

 「聖杯を手にしたら、勝ち?」

 「いや?れーなは今回の聖杯っぽいけど、それだけじゃ何一つ意味はない。寧ろ殺したら聖杯が消えて終わりっていう点では安全かもしれない」

 「なら」

 「でも、最後に聖杯のところに行かなきゃ勝ちにならないんだ。つまり、聖杯であるれーなの体を手に入れれば、最終決戦の場所を指定できる。結局、聖杯を手にするには聖杯のある場所に行かなきゃいけないからな。罠だって仕掛け放題だ」

 ついでに、他にも利点はある。ぶっちゃけある程度の魔力リソースで叶う程度の願いであれば、聖杯戦争に勝ち抜く必要なんてものがそもそもない。4騎くらい脱落した時点でほいと聖杯に触れてしまえば、それで叶えられる程度の困難だけどまあ本気でやれば何とかなるかもってくらいの願いだったら叶えて一抜け出来たりする。何なら、根源への穴には7騎のサーヴァントの魂が要るが根源に至らなくて良いなら6騎で十分な事も多い。最終決戦だ!と仕掛けているフリして自分のサーヴァント自害させ聖杯を満たして聖杯に触れて勝ちというズルも出来る

 そこらは結城に言いたくなくて、それっぽいことだけをトシキは告げた

 

 「……大変」

 「命が狙われないだけ、結城よりマシだよ」

 言いつつ、そうだと思い、裁定者の少女に問い掛ける

 「結城の保護は?」

 『ん?そっちのマスターさんの保護?

 出来るよ?けど、わたしって中立だからね、サーヴァントを喪ったマスターさんなら保護できるけど、サーヴァント込みだと困るよ?』

 「つまり、もしも結城を保護してほしいなら……」

 『この大天才に御退去願うしかない訳だ』

 そう、スーパーゼウスを何とかしなければならない

 

 「……結城」

 それでも、トシキは言う

 「降りるなら、今だ

 この期を逃せば、結城は聖杯戦争からもうきっと降りられない。下手をしたらマスターだからと殺される、そんな血生臭い魔術師のエゴによる戦いに、否応なしに巻き込まれる」

 静かに、少女は言葉を聞き続ける

 

 じっと、鮮やかな赤い瞳(因みに度の浅く入ったカラーコンタクトらしい。本来の瞳の色が色素薄くて灰色っぽいからか、想定より明るく鮮やかに色が浮き出るらしい)がトシキを見つめる

 「裁定者、今なら、結城を保護してくれるよな?」

 『死にかけでもう降りるから助けてって言われても困るけどね。今なら、大丈夫

 例えそこのアーチャーさんが私は退場したくないって何をしようとしても、消えるまで護りきってみせるよ』

 「だ、そうだ

 だから、今ならまだ引き返せる。こんな聖杯戦争なんてクソッタレ魔術儀式から一抜け出来る」

 「抜けたら、安全?」

 『私が消えれば、マスターとしてのミス・マスターは価値を喪う

 とすれば、あと狙われる理由としてはミスタ・カタナカジへの人質や嫌がらせであろうなぁ

 さてミスタ・カタナカジ。それでも君は私が消えればミス・マスターは安全だと言うのかね?』

 責めるように、偉丈夫がトシキを見下ろす

 「だから、監督役に頼むんだ」

 『おや。ついさっき幼馴染としてどうこう言っていたが、ミス・マスターは別かね?

 全く、このような男に、ミス・マスターは相応しく無いのでは無いかね』

 「それは、違う」

 「違う。れーなは俺が護らなきゃいけない

 でも、俺は。結城に死んで欲しくないんだよ」

 自分でも何処か矛盾してないか?と思いつつ、それが正しいと何故か確信して

 真っ直ぐに見返しながら、トシキは告げた

 

 「だから、結城

 眼前のサーヴァントには申し訳ない事だが……降りろ。俺は大切な友人に、クソッタレで命懸けな戦いに巻き込まれてなんて欲しくない」

 その言葉に、少女の赤い瞳はどこまでも真っ直ぐで

 「同感」

 と、答えたのだった

 

 「じゃあ」

 「わたしも同感

 とても大切な…………が、一人で命懸けの戦いをしようというのに、見て見ぬ振りなんて出来ない」

 その言葉の一部だけは、ノイズが掛かったように耳鳴りで聞き取れなくて

 「結城。友達って言ったのか?」

 それでも、何時もならばそう言ったのだろうという感じで、トシキは聞き返す

 「……そう。友達」

 少しだけ寂しげに。何時ものように、小さな親友は頷いて

 「友達が一人だけ危険な戦いに行くのに。死ぬかもしれないのに

 なにもしないなんて、出来ない」

 「……結城」

 「とっしー

 一人で戦って、死んだら……困る」

 どこまでも真っ直ぐな瞳から、目を反らして

 「俺は、天国の魔術師だ。でも結城は違う

 命懸けであいつらを止めなくて良いんだよ」

 そんなトシキを、妙なものを見る目でサーヴァント等が見ていた

 

 「……そんなこと、無い」

 「何が」

 「……覚えてる?

 昔。パソコン、盗られたとき。キモいと、言われて」

 「バカにすんなって、やった奴等殴って取り返したな。でも当たり前だろそんなこと」

 「すごいって、言ってくれた

 だから、今のわたしがある。認めてくれる人が居たから」

 「あんなもん子供のやっかみだって」

 トシキは何処までも止める

 

 「それでも、だからわたしがある

 その、恩返し。降りない。聖杯なんて要らない。けど、戦う」

 『そのようだ。どうかね、ミス・マスターの遺志は固いようだが』

 「危険なんだよ、結城!

 あいつらは、結城の両親を何の躊躇いもなく殺してるような奴なんだよ!」

 言わないでおこうとしておいた事も忘れ、声を荒げる。怖がるだろうと肩は掴まず、拳を握り

 

 「お父さんと、お母さんが……」

 「だから、だからだ結城

 頼むから、お前まで死ぬような事をしないでくれ」

 「……とっしーが、()めるなら」

 その瞳は、あまりにも真っ直ぐで。両親が死んだと聞いて、けれども全く揺らがず。いや、寧ろ……その事実が逆に怒りに火を付けたように、しっかりと見返してくる

 「スーパーゼウス」

 『何かね、ミス・マスター?』

 「とっしーのサーヴァントを倒せば、止められる?」

 『お安い御用、とまでは言えないが、善処はしよう、ミス・マスター。確かに、サーヴァントなくしてはミスタ・カタナカジとて聖杯戦争に参加し続ける手は無いとも

 考えたものだ、称賛に値する』

 そのサーヴァントの答えに満足したのだろうか、少女は目を閉じて

 「……分かった

 でも、無理はするなよ結城。魔術師って生き物は……大体、人間の屑の煮込みだから」

 トシキは、折れた

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