「はあー!終わった終わった!」
それから、何時間経ったろう
いや、計算すれば分かることだが9時間だ
日は暮れ、アニメフェスの熱気も去り、神社の境内は昨日と同じく人気の無い何時もの姿に戻っている。残していくなと放送が(因にだが、声を当てたのは結城だ。黎南はそういったものが苦手らしく、写真も撮りたがらないし、声の録音も駄目だ)言ったにも関わらず多くが捨てられている飲み物の空きペットボトルや空き缶、ついでに多種多様な紙ゴミと本か何かを包んでいたシュリンク、ついでにちょっと近くのアニメグッズショップの袋が散らばる何時もの数倍は汚い床だけが、アニメフェスの名残を残していて
「全く、持ち帰れよな」
アーサーコスプレの段ボールを脱いだ天国トシキは、愚痴りながらもそれを拾い上げた
そのまま、横でさすがに辛いって顔で突っ立っている結城の手のゴミ袋に入れ、また次へ
トングのような便利なものは無い。正確には1本あったが、それは別人が使っている。その為、疲れた結城にはいちいち屈んでゴミを拾い上げるのは体力が持たないだろうと、こうして役割分担することにしたのだ。そもそも、結城にバイトに付き合う義理だって無かったわけだしな
トングを持っていった九条
『マスターさん、おばあちゃまのお手を貸しましょうか?』
なんて、霊体で聞いてくるサーヴァントは、要らないと断って作業を進める
いや、だってそうだろう。何が悲しくてサーヴァントを呼んでゴミ拾い(
遠くで声がする
黎南の親父の声。昨日は何者かー恐らくはこの聖杯戦争を始めた魔術師どもの一員ーによって路地で眠らされていたらしい彼だが、今日は普通に戻ってきている。彼は魔術の素養も何もない人だ。娘が何故か根源と接続を可能としていただけ
魔術師が狙うようなものではない。もう、彼は安全だろう。……黎南を狙うついでとかが無ければ、という前提の元だが
「ふう、片付いたな」
「……終わった」
静かにまだまだ温い夜風の中、自分達の担当範囲の清掃を終える
今日の黎南はホットとんじるとか持ってきてなくて。ごめん、ボク一度家に帰らないとってメモと共に、一本の冷たいジュースがゴミを置く為の一時的なスペースの前に置いてあった
「忘れられてるわ、今日は一人じゃないって事実が」
昨日のゴミ拾いはトシキ一人であった。そのノリで今日も1本なのだろう
決して、結城の分は無いぞとかそんな嫌がらせではない、そんな筈無いと信じたい。いや、疑う気もトシキには無いのだが
そんな苦笑と共に、缶のプルタブを引く。炭酸飲料特有の少し弾ける音と、金属の接合が外れる小気味良い音と共に、その缶に……
おっと、と止まる
「結城、飲むか?」
疲れたのはインドア派の少女の方だろうと思い直し、口を付ける前に、トシキはそれを差し出した
「……良いの?」
「結城のが疲れてるだろ?」
疲れた時にコーラは良いものだ。まあ、黒い缶だからゼロカロリーっぽいが
と、黒いコーラ缶を差し出す
大人しく少女は受けとり、口を付けて……
「ぶっ!」
吹き出した
「結城!?どうした」
すわ毒か。焦って、トシキは幼馴染から缶をひったくり
「ま、不味っ……けほっ!」
そして、間違いに気が付いた
Cの頭文字でコーラ。そして黒い缶。有名なゼロカロリーコーラと酷似した缶であったが故に、それだと誤認していた
だが、Cの頭文字の後ろに小さめな文字で続いていた言葉のスペルは……offee。つまり、Coffee Cola
「ってこれゲテモノじゃねぇか!」
思わず缶を地面に叩き付けかけ、汚れるわと思い直す
コーヒーコーラ。コーラの甘味とコーヒー豆の苦味と焼いた味が調和して絶妙に不味いと大評判だった数年前に出たゲテモノドリンクの一種だ。美味しいフレーバー系なら季節で復刻したりするが、これはまあ、二度と出てこないだろう味
「こんなものまだ在庫あるとか、あいつゲテモノ買うの好きだよな……」
「……迷惑」
「他人に出さない分には、良いんだけどなー」
あいつ、心から好きで買っているせいか、ゲテモノドリンクを割と出してくるのだ。しかも善意で
「って残りどうする、結城」
要るか?と缶を振り
「流石に、無理」
「そっか」
その声に、まあ喉の渇きはとトシキは口を付けようとして……
「あ」
「ん?あ、そうか」
間接キスだな、と思い直して口を離す
何だかんだ親しい関係である結城は許してくれそうだが、何だか気恥ずかしくて
「っと、鍛造……出来なくもないな」
あまり誉められた事ではないが、魔術で缶を金属グラスに鍛え直して間接キスを避ける
そのまま、グラスに残る黒くて不味い炭酸を一気に飲み干して
少しだけ寂しげな結城に首を傾げながら、一歩
「結城?」
さらに一歩
「どうした、結城?」
付いてくる。黒髪の小柄な少女が、そのままどちらの家路とも違う方向への歩みを後ろに付いてくる
「……」
「……結城、家は」
「泊めて」
たった一言。それで、分かる
「あの家にはもう、帰りたくない」
一人ぼっち(まあ、アーチャーは居るので二人なんだが)は嫌だという話
「何でもするから」
袖を掴む手の力は弱々しく。トシキを見詰める綺麗なカラーコンタクト越しの眼には涙の雫すらあって
「……あ、そうか」
何故結城はと思ったところで、漸くトシキは思い出す
「結城、はいこれ」
取り出したのは家の鍵
「良いの?」
「良いのも何も、俺とお前に貸し借りは無しだろ、結城
そんなものいちいち気にしてたら、互いに返しきれないしな」
そもそも、PCとか置いたままだしな
そう、最初からトシキとしてはその気であった。だからこそ、PCだの何だのを回収してきたのだから。故、そのつもりな事を頼まれ、そういえば家の鍵を渡さなきゃ勝手に入れないという当たり前の事を思い出したのである
「うん」
きゅっと合鍵を握り締める少女
魔術で鍛造した(自分の家だし、流石に犯罪ではないはず)その鍵が、まるで大事なもののように見えて(いや無くしたら大事なものではあるのだが)
「とっしーは?」
「散歩。一日中立ってて疲れたから、ちょっと夜風にな。そのうち帰るよ、物だけは沢山有るから勝手に使ってくれ」
それだけ言って、トシキは歩き出し
「……駄目」
その手を握られて、止められる
令呪もあるし、何だかんだフェスに来た人の中には付けてた人も多かったからとグローブ越しのままの手に、それでも分かる熱さ
「結城」
「行くなら、一緒に行く」
「何言ってるんだ、疲れたろ結城?」
「……一人で、探す気だった」
図星を付かれ、言葉に詰まる
「……聖杯戦争。一人で、戦おうとしてた」
「そんな事無い。ただ、夜風に……」
引く気は無い。物静かでも、結城灯花はそこで騙される少女ではない。だからこそ、手を掴んだ
そんなこと、トシキには良く分かっていて
「ランサー、先に帰っててくれ」
連れていこうかと思っていたサーヴァントに、そう声をかける
「帰るか、結城」
ここでボクから質問があります。この作品のヒロインって誰に見えるかな?
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勿論ボ……高生黎南ちゃんだよね?
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泥棒ネ……結城灯花ちゃんかも?
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自鯖のランサーさん説もあるよね?
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実は金ぴかの王様との薔薇?
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それ以外(女化薬金ぴかやハーレム)だよ?