Fate/Tonitrus   作:雨在新人

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晩餐(2/2)

「はい、それじゃあ皆お疲れ様でした!」

 ボクがやるよ!と言った元気はそのままに、グラスを金髪の幼馴染が掲げる

 

 「今年のフェスも大成功、おとーさん達がそう言えるくらいなんだって!その成功を祝って、かんぱい!」

 「……乾杯」

 「疲れた」

 だが、残り三人は巫女としての仕事をやっていたが故にそこまで人混みに揉まれていないから元気の残る少女ー高生黎南とは異なり騒ぐ元気はない。トシキには無くもないが、騒ぐ気にはならず、結果的に返ってくる声は小さなもの

 高く掲げずに買い置きのお茶を注いだ結城灯花のグラスとまずはグラスを合わせ、続いて自分と同じくグレープ味の炭酸を注いだ九条柳我のグラスと軽く触れる

 

 「疲れてるけどノリ悪くない?」

 「疲れてればそりゃあな」

 ボクもボクもと下ろしてきたグラス(ちなみにだが、中身はあのcoffee colaだ。置いていったのも個人的には好きだったからで嫌がらせではないのだろう)と触れ合わせ、トシキは居間(といっても日本式家屋の為畳敷き、机は炬燵から布団を取ったものだ)を見回した

 

 ……見ている

 隙間から、3対の眼が此方を見ている。霊体化こそしているようだが、その存在を知るトシキからすれば、視線はしっかり突き刺さっていて

 「疲れてるのに有り難うな結城」

 机の下で、手の甲に刻まれた令呪を撫で、ランサーに心の中で謝りながら、目の前の料理の大半を作った(事になっている)友人へ感謝する

 宴会料理という訳ではないが、内容はしっかりとしたオードブル形式。数品がひとつの大皿に乗った、手間隙かかったものだ

 焼けば食えると買っておいた鳥肉を使った唐揚げに、焼けば良いんだよと買い置きの豚肉のローストポーク。朝にでも焼くかと思っていた白身魚は、さっと湯を通されて湯引きとして並べられ、焼けば良いと買っておいたピーマン等の野菜の炒め物に、トシキは良く焦がすが今回は香ばしいくらいの焦げ目しかないトウモロコシの輪。塩か醤油かけとけば食えると公言するトシキにとっては久し振りの、しっかりとした味付け

 そしてついでに、黎南の持ってきた肉じゃが(ちなみにだがお手製。ゲテモノは好きだが自分でゲテモノは作らないのが高生黎南なので、味は普通だ)

 

 「へぇー、結城ちゃんって、料理出来たんだ、意外」

 聖杯戦争について知っているが故に何となく本当の料理人を分かってそうながら、素直に誉めるように金髪の幼馴染は呟く

 「努力は、してた」

 「うん、一年前は酷かったもんねー」

 「あの時は俺とか塩を規定の3倍入れてた頃だろ。そりゃ結城のがマシだったし成長するさ」

 黎南のゲテモノに慣れ、刺激として濃い味を何かと求めるようになったトシキはそう茶化しておいて

 

 「にしても、何かあったのか柳我?

 お前が九条妹のところに即帰宅しないなんて珍事だろ」

 まあ家主だしと箸で料理をつまみ始めながら、トシキはそう来るとは思ってなかった方の友人に声をかける

 

 「……いや、ちょっと、な」

 「どうした」

 何時もより歯切れが悪い友人に、トシキは首をかしげ

 「なあ、天国。お前、魔法使いなんだよな?自称だけど」

 「いや?流石に魔法使い自称できるほど自惚れてない。魔術師だ魔術師」

 「どっちでも良いだろ」

 「そうでもないのさ、これが」

 「そんな魔術師の天国に聞きたい」

 珍しくシリアスな顔付きで眼を見詰める友人に、トシキは笑うのを止めて向き合った

 

 「アニメみたいな事、本当に起こると思うか?」

 「アニメみたいなこと、か。ラブコメアニメなら幾らでもどっかの学校で起こってるんじゃないか……って、そんな話じゃないよな?」

 「ああ。あの円卓の聖戦のような……」

 「基本はコスプレだ。大体はなりきり、それっぽいの見てもコスプレ

 そうだろう、柳我?」

 知っている。トシキはその事を知っている

 

 アニメのような出来事、いや、アニメにして神秘の大魔術から絵空事に貶めた出来事。どちらが先にあったのかの順番は逆だが、聖杯戦争はあのアニメに良く似ている

 

 だがそれをおくびにも出さず、真剣な質問を真剣に受け止めて、ふざけた回答をトシキは返す

 

 「……妹が、見たらしいんだ」

 「良くできたコスプレを?」

 「いや、違う。あれはコスプレなんかじゃない、って」

 「何だそりゃ」

 「巨大な生き物を、連れていたらしい」

 「はー、そうなのか」

 適当な返しのフリしつつ、扉の先を見る

 其処には姿を隠した、巨大な白牛が居て。流石に無関係だろ?と目線を戻す

 一人黙々と、トシキの好物は避けつつ結城灯花は食事を進め、へぇーと高生黎南は聞いている

 どちらも聖杯戦争を知ってはいて、だがそれを語る気はないようだ

 

 「なあ、天国

 本当に、アニメみたいな事……起きると思うか?魔術師だって言うなら、起こせたりするんじゃないのか?」

 「……言っておくがな、柳我

 俺個人で、物語の英雄なんて召喚できない。んなこと出来たら今頃戦国時代の様々な噂があるが真実はこれだ!って武田信繁辺りを召喚して直接聞きましたって発表してる」

 嘘はつかない。個人では出来ないのは本当だ

 

 「……なら。あのアニメみたいに、強力な何かがあれば。魔法の道具があれば」

 「起きるかもしれないな」

 「……そう、なのか」

 静かに、青年は眼を伏せる

 

 「天国。もしもそんな事が本当に起きたら」

 「凄い仮定だな」

 まあ、現状起きてるのだが、とトシキは頭の中で苦笑して

 「お前は、どうする?」

 「戦うよ。俺はこれでも、天国の魔術師だぜ?」

 「そう、だよな

 お前はそういう奴だよな」

 目線を上げる友人に、何時も通りに笑いかけて

 

 「ま、本当ならヤバイが痛いコスプレ野郎だろうし、近付かないことだ」

 「そう、言っておくよ」




「……天国。信じたかったよ、お前を」
 打ち上げを終え、一人歩く帰り道。九条柳我は、静かにそう呟いた

 「お前は、嘘は基本付かない。でもさ、本当の事、言ってないんじゃないのか?」
 人気の無くなった家路を、辿りたくもないその道を一歩一歩踏み締めながら、地面だけを見て、九条柳我はそう言葉を虚空へと吐く

 『……その通りだ』
 否や。答えるものは、確かに其処に居た。姿は見えず、だが、其処に
 「なあ天国。お前に疚しいことが無いなら、素直に答えてくれたって良かっただろ?」
 『だが、奴は煙に巻くように、事実だけを告げ真実を覆う。それは、疚しい者の言葉』
 「……彩月。お前が最期に、天国製の包丁を握り混んだのは、そういう、事なんだよな」
 何時しか取り出していた血塗れの包丁の柄を握り締め、青年は呟く

 「有り難うな、アサシン。お前が霊だというものを見れなければ、友達だと思ってたあいつに、騙される所だった。結城ちゃんのように」
 そうだ、と唇を結ぶ
 「結城ちゃんを、助けないと。騙されてるんだ、魔術師なんてロクでもないあいつに」
 『ああ、そうだとも』
 「彩月を殺し、結城ちゃんを騙し、聖杯を狙う、この地の魔術師。皐月が包丁のダイイングメッセージで教えてくれた、あいつを……」
 『聖杯戦争のマスター、天国刀志鬼を』
 『「殺す」』
 その声が重なる。街灯により映し出される青年の影に、更なる大きな影が覆い被さる

 「……彩月の敵討ちだ。聖杯も何も要らない。彩月が居ないなら、願いなんて無い
 でも」
 『ああ、女の恨みは国をも滅ぼす。分からせてやろう』
 「……頼んだぞ、サーヴァント、アサシン」
 『当然だ、我がマスター』
 そう、闇の中拳を合わせるマスターとサーヴァント。その両者の瞳には、うっすらと甕のような意匠の魔方陣が輝いていた
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