「反省してる?」
「いや、別に」
そう答えるトシキに、茶碗を置いて金髪の幼馴染ははぁ、と息を吐いた
「ダメだよ結城ちゃんも。男の人って危ないんだから」
「そうだぞ結城。俺以外だったら襲われてもっと怖い思いをしてたかもしれないからな、そこは気を付けるんだぞ」
「ボク、おおかみさん候補が言うことに説得力無いと思うな」
「はいすいません」
寝れない事態は高生黎南によって終わりを告げた
だがそれは、金髪の巫女幼馴染に、自室に幼い容姿の親友を連れ込んで自分のベッドに寝かせてたという犯罪臭のする状況を見られたという訳で
それだけならまだ良かった。だが、枕も無いし寝れないの?と余計な気を効かせたランサーに膝枕された状況では言い逃れのしようもない。えっちなのはどうかと思います!な少女によってこうして説教される事態となったのであった
「もう一度聞くけど、反省してる?」
「震えてる結城を一人にすべきじゃなかったと思うからそこは反省してない」
「はぁ、もう良いよ。そこら辺、間違ってないと思ったら反省しないもんね
でも、次やったら怒るからね」
そこまで怒っている様子はなく、少女は告げて
『ところで、ミス・マスター?
何故あの巫女娘は無関係の事に腹を立てているのだね?』
「良くわからない」
アーチャー陣営は、喧騒から少し離れた場所でランサーの作ってくれた朝食(スクランブルエッグにベーコン)をつつきつつそんな会話を交わしていた
「……で、今日は3連休の最終日な訳だが」
「訳だけど?」
「学校は明日からだ」
「あ、行くんだ。せーはい?戦争は良いの?」
「黎南。学生は学校に行くものだ
あとは、幾ら魔術師がクソの塊みたいな性格が多くとも、流石に白昼堂々と動く奴はそんなに居ない。此方が学校等の他に無関係の人間が沢山な場所に居る場合は尚更だ」
こくり、と頷くサーヴァント達
「サーヴァントって大概はかつての英雄。無駄に人を殺す事を良しとして一般人を多数巻き込むように仕掛けてくるなんて事はほぼ無い。だから、日中は安全に近いんだ」
「へえー、そうなんだ」
「だからって油断しちゃ駄目だからな、結城。昼は人が居なくなってから仕掛ける際に有利になる為の情報戦のターンでもある
直接的な戦いがないってだけで、安全かもしれないが安心じゃない」
「なら、学校にも行かない方が」
「結城。突然休み続ける奴って怪しくないか?」
『ええ。頑張りやさんが突然休みがちになったら心配だもの。おばあちゃまなら聞き回るわ』
「そういうことだよ。何時も通り生活しながら、怪しいものをそれとなく探る」
カフェイン摂取も兼ねて、食後のインスタントコーヒーを開けながら、トシキはそう続けた
『ああ、当然ながらブラックで頼む』
『ミルクたっぷりで貰えるかしら?』
『我、所望するは黒き稲妻なり……』
「普通にブラックと言ってくださいゼウス神」
言いつつ、黎南のものはミルク多め、結城のは砂糖ありのミルク無しへと調整して作り、自分のものもブラックに
黎南は気にしてないが、結城は色が黒い方が通っぽいからということでミルク無し主義だ。ブラックは苦いらしく、あまり好きではないようだが。何時もブラックでと意地を張るものの、少し微妙な表情をしているため、こっそり砂糖を入れて
「はいれーな。あと、こっちが結城だな
アーチャーとランサーとゼウス神は此方」
配り終えて、トシキは黒い液体に口を付ける
口に広がるのは、そう美味しいわけではないが飲みなれた味
「さて」
一息付いて、トシキ話を切り出した
「結城、映画行くぞ」
「……え?」
呆けた目で、ぽかんと口を開ける親友に苦笑して
「今日休みだろ?」
「え、でも……」
「言ったろ、基本は普段通りだって
それとも、俺一人で残りのマスターが誰なのか探ってこようか?」
「なら、行く」
「駄目だ。魔術師としての知識が無い結城には無理だから、その場合は家に居て貰う。それで良いなら聖杯戦争に関して動くが……」
「やだ」
「というか、ボク忘れられてない?」
ぽつんと言う金髪の幼馴染に、だろ?と返して
「だから映画だ。暗いこと考えるな、今はただ、楽しいことで忘れた方が良い」
そんなトシキの言葉に、こくり、と少女は頷いて
「ボクも行くけど良いよね?」
「いや、元々はこれ打ち上げ二日目だろ」
携帯を操作し、アプリを開いてトシキは呟く
「まあ、柳我は欠席らしいが」
「うんうん、忘れられてたら寂しいなーって」
「忘れるわけ無いだろ、結城を加えるだけだ」
そうして、ほいとトシキは携帯を卓上に放る
「結城と見るものは決まってるんだが、れーなは何を見る?」
「決まってるのそれ!?」
「そりゃな。結城も見ただろ、『復活の蒼き「F」』」
「いやいやいや、可笑しくない!?何でこの映画見ようって時にもう見たよなって言葉が出るのさ!?」
『ええ、可笑しいのではないかしらマスターさん?』
口々に呟かれる疑問
それを一笑し、トシキは続けた
「甘いな。あの映画は最初の一回は作画とスピード感に圧倒されに行くもの。本格的に楽しむのは二回目なんだよ。だから結城も二回目だよな?って話」
「うん」
「え?そんな屁理屈最初から分かったの結城ちゃん……」
愕然とする黎南
彼女は基本アニメ映画を見ないし、縁がなくて
「本当は、柳我もそれのはずだったんだけどな……」
「てゆうかさ、ボクも見ちゃ駄目なの?」
「れーな、原作終盤で敵の体内に入って吸収された皆を助けようとした事あったろ?」
「へぇ、そんな展開あったんだ」
「体内で二度と解けないと言われた融合が解けた時の会話は?」
「え、ボク知らないけど?」
当たり前の回答にだろ?と頷いて、トシキはその横の少女に矢印を向ける
「結城は?」
その言葉に、一度瞳を閉じて。一つ深呼吸をしてから、その小さな友人は口を開いた
「『冗談じゃない!このオレにあんなポーズを取れというのか!』」
そこからか
ニヤリと笑い、トシキは合わせる
「『でもこれしかねぇんだ、あいつに勝つ方法は』」
「『ふざけるな!二度も貴様と合体など出来るか!』」
「『オラだって正直合体は性に合わねぇ。でもオラ達がやらなきゃみんな死んじまうんだぞ!それでも良いんか!』」
「『貴様ともう一度合体するぐらいなら、死んだ方がマシだ!』」
そのアフレコに(声の質がかなり可愛い為、正直なところ台詞の割に全くといって良いほど迫力はない)合わせ、トシキは唇の端を上げる
『あらまあ、このページね!』
なんて、トシキの部屋から持ってきたのだろう漫画本を拡げ、牛と共に覗き込むランサーは無視して
「『そんな事言って、おめぇもう死んでっぞ』」
「『くっ……』」
『『見付けた……オレは許さない……』』
響く雷神の声
アフレコだ。完全に、今見た頁の台詞をそのまま読んでいる感じで
「『一度だけだ!』」
「『本当に良いんか?』」
「『やるのかやらないのかはっきりしろ!』」
『『オレはお前達を許さない……』』
『まあ、ゼウス様。お上手ね』
置いてけぼりな黎南を尻目に、楽しげに参加してくる神にも有り難うと頷いて
「『最高だぜ』」
『『絶対絶対ぜぇぇぇっ対にだ!!!』』
タイミングなんて言われなくても分かる。ぜぇぇっと伸ばされた声が対という音に変わる瞬間、二つの声が一つに重なった
「「フューッ、ジョン!!はっ!!」」
「はい、正解」
流石に距離的にポーズを決めることまではせず(というか、実際問題端から見ればとてもカッコいいポーズとは言い難いものに友人を付き合わせる気はなく)、アフレコを切ってトシキは手を叩いた
「分かったかれーな。これがファンだ
そして映画はファンだから楽しめるものだ。れーなには全く向かない」
「う、うん……良く分かったよ、ちょっとボクには付いてけないかなって」