Fate/Tonitrus   作:雨在新人

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納品(1/1)

「よし!それじゃあそろそろ……」

 「悪いれーな。後少し待ってくれ」

 

 「ん?どうしたのさトシキくん」

 映画早く行こ!する幼馴染を止めたトシキに、首を傾げて金髪の幼馴染が問い掛ける

 「いや悪い。ちょっと仕事があってさ」

 「仕事!?仕事ってまさか……魔術師としての!?」

 「いや、鍛冶」

 「あ、そっちなんだ」

 ちょっとだけつまらなさそうに唇を尖らせ、少女が呟く

 それに苦笑しながら、トシキは部屋の隅の棚にしっかりとしまいこんでおいた一つの箱を取り出した

 

 「って言っても、今日はもう出来上がってるものを引き取りに来るだけなんで、すぐ終わるよ」

 「へぇー」

 「ずいぶん、長い」

 「長いだろ?中身も長いんだ」

 揺らしても問題はないものだが、徒に傷を付けても面倒。箱はあくまでも梱包ではあるものの、だから雑に扱っても良いというものでもない。少なくとも、今日の朝渡す相手に……いや、性格にはその主君にとっては

 

 響く鐘の音に、来たかとトシキは頷いた

 

 「アマクニ様。完成したとの事で」

 「はい」

 『あら、おきゃくさまかしら?

 お茶をどうぞ』

 なんて、気が利くサーヴァントにはありがとうと軽く頷き

 その細長い黒い箱を指差す

 

 「此方に」

 「拝見しても?」

 「是非」

 言いつつ屈み、トシキは箱を開く

 そこに納められていたのは、一振の刀。刃渡り65.6cm、現存する中では、ほぼ間違いなく最も新しいものであろう少し短めに打った日本刀

 

 「此方です

 鞘は伝統に合わせ内鞘まで含めて木製、鍔の意匠は任せるとのことで、貴家の家紋……とは言わないのでしたか?勲章の方が正しいかもしれませんが、その勲章をアレンジしたものを組み込んだものとさせていただきました」

 「そのままでは無いのですかな」

 問い掛ける家を訪ねてきた白い髪が美しい老紳士に、はいと強くトシキは返す

 「鍔は中央を刃金が通るものです。元からそれを可能とする紋様であればともあれ、中央に一本線の無い紋では、刃がその中心を貫く事になってしまいますので

 それはそのまま鍔に落としこむには不吉が過ぎる。その為、アレンジを加えさせて貰った次第です

 主にもそうお伝え下さい」

 「お気遣い、痛み入ります」

 手渡された紳士が、鞘から刀身を引き抜く

 

 現れるのは冷たい刃。普通の刀剣類に比べて赫い色をした鋼に、見る者の意識を揺らがせる乱れ刃の刃文。そして特徴として、鋒付近だけは峰側も研ぎ、両刃とした造り

 「室町にヒヒイロカネとも呼ばれた……実際には伝説の金属とされた方とは違う一門秘の配合による合金ではありますが……

 日緋色金による赫刀、幽花互の目(ぐのめ)の刃文、小烏造の仕上がりとなっております」

 「先端だけ両刃とは、随分と珍しいですな」

 「俺……いや私自身普通であればしない古刀の造りではありますが、皇室御物たる小烏丸以来、天国一門が献上する刀の伝統なもので」

 「ほう、由緒ある造りなのですな

 旦那様も気に入る事でしょう。ところで、この刀の銘は」

 その問いに、少しだけトシキは迷う

 だが、答えは直ぐに決まった

 「天境。始祖が来たと言われる、何時か一門がたどり着くべき地の名です

 一門の刀として、渾身の作として、これ以上の名は無いかと」

 

 

 それから5分後。箱に入れて持ち帰る老紳士を見送りながら、ふうとトシキは息を吐いた

 「終わったぞ、れーな、結城」

 横の部屋に隠れていた……というか逃げていた二人を呼ぶ

 「ねえトシキくん。変な言葉聞こえたんだけど」

 横から出てきて一言、失礼なことを幼馴染は言う

 「皇室御物?」

 「ああ、小烏丸な。同名の刀は幾つかあるけど、先祖が打ったのが御物として国立文化財機構に保管されてるらしいぞ」

 「……え?」

 「再鍛、偽打・小烏丸、と」

 魔術師として良く打つ刀を鍛造し、ほいと投げ……ては危険なので抜き身の刀身を傷付かないように握って、柄を差し出す

 「っても本物は妖怪変化をぶった斬る妖刀だからなー。表向き保管されてるのは同時に打たれた普通の刀で、本来の本物はどっか行っちまったっぽいんだが」

 「え?いや、どうしろと?」

 「だから、な?

 そもそも鍛造魔術は俺が打てるものしか造れない。魔術刻印が本物の小烏丸を知ってなければ、そもそも俺が完全なものじゃなかろうが小烏丸を打てるはずがない。ってことで、俺の先祖の作って訳だな」

 「あれ本気だったんだ……。平安からずっと鍛冶の家系っていうの……」

 「いや、天国一門を何だと思ってたんだよれーな」




刀剣紹介

三好切天境
種類 太刀
時代 室町時代
刀工 天国
刀派 天国派
刃長 約64.3 cm
所有者 足利義輝
室町時代の刀工、天国某によって造られた一振。天国一門に伝わる最秀最期の一振と呼ばれる特殊技法を使い造られたというが……。特徴としては一般的な刀剣より赫い色をしていることと、鋒が両刃の小烏造りである事
後に一般的に天下五剣とされるうちの4振と共に足利義輝が持っていたとされ、当時の資料には秘せよとされつつごく一部のみに記述がある。三好切の名は、足利義輝が愛用し、永禄の変でも使われたとされている伝聞から
天国家の資料によれば足利義輝の遺体の右手には砕けたその一振があったとされ、義輝の死と共に喪われたため現存はしていないが、後継者が打ったほぼ同じ造りの太刀は重要文化財指定を受けて東京国立博物館に所蔵されている
逸話がほぼ無い為、刀剣マニアからの人気は天下五剣等に比べると2段くらい落ちるらしい。トシキ曰く、同時に義輝と共に折れた童子切のが恐らく上。今の童子切はただの刀だから兎も角な
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