Fate/Tonitrus   作:雨在新人

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映画道(2/2)

「空が青いのは空のせいじゃないし

 夕焼けが赤いのも」

 

 結構ご機嫌に歌を口ずさむ小さな親友に、トシキは

 「結構楽しそうだな、結城。良かったよ、元気で」

 なんて、声をかけた

 

 今の時間は、結城が口ずさむような夕焼け時……から、更に時間が経った20時過ぎ。映画を見て(れーなは結局一人でラブロマンスを見たらしく、カップルだらけだったんだけど!?なんてどうしようもない報告をして来た)、カラオケまでやって休みを満喫した帰り。真夏ならばまだ夕焼けの赤さが少しは空に見えたかもしれないが、生憎今の季節では空は暗い

 尼谷市は商店街が大きな位置を占め、その大体が19時過ぎに店を閉める為、夜は明かりが少なく、空はなかなか綺麗に星が見える。駅前は違うが

 今日も、オリオン座なんかが空にははっきりくっきりと輝いていて、不吉な赤星やらギラギラ輝く火星やらは流石に無い

 だが……

 

 『今こそ立ち上がれ 運命(さだめ)の戦士よ

 稲妻の剣で 敵を蹴散らせ』

 そこら辺に関して語れそうな……というか、○○を星座に変えたという逸話に溢れている神は、姿を霊体化したままご機嫌に歌など歌っていた

 「……お気に入りですか、ゼウス神」

 枯れた声で、そう訪ねる

 アンコールというかリピートで潰れた喉は、声をどれだけ張ろうとしても掠れ、少し聞きにくい

 『……良き』

 「そ、そうか……」

 というか、今日トシキが歌ったのが確実に初見のはずの歌だ。何故この神は普通に歌っているのであろう

 

 「……というか、良く歌えるな……」

 『我、天空神(ゼウス)ぞ?』

 『ゼウスさまですもの、それくらい出来るわよマスターさん?』

 「神すげぇ……」

 思えば、リピートと言われ連続で歌ったその瞬間から、ゼウス神は普通に合わせて歌っていた気がする。あの時は全力で、トシキにその辺りの記憶はあまりないのだが

 

 「それでそれで、ボクはどうだった?」

 「お前はとりあえず音痴を治せれーな」

 ばっさりとトシキは切り捨てる

 「……わたし、は?」

 「お前は普通に上手いよ、結城。でも、結構好きなのは分かるけど、あの神が口ずさんでるような曲はちょっと声が可愛すぎて似合わないかな……

 さっき歌ってたような方が合う」

 『それでこのスーパーゼウスはどうかね?』 

 「まず一曲で良いので歌ってから出直してください」

 『おばあちゃまは?』

 「楽しそうで良かったと思います」

 『我は』

 「なんであんな上手いんですかゼウス神

 そして何でその曲そんな気に入ってるんですかゼウス神」

 『当然であろう?』

 「いや何故!?」

 何を聞くとばかりに語る神に、トシキは首を傾げた

 

 『我等の曲であろう?』

 「違います、昔のロボットゲームの主題歌です」

 『鋼の戦神の歌、つまり我の歌であろう?』

 「鋼の戦神は別の曲です。ってか、そもそもロボットの歌なのに何で」

 『我、機神ぞ?』

 「へ?」

 思わず呆ける

 「ランサー、ゼウス神が自分をゼウスの右腕とされた最後の紅の翼を纏う(くろがね)の城か何かと勘違いしだしたんだが」

 『あらマスターさん。ゼウスさまの本体は、真体機神と呼ばれる巨大なロボットよ?』

 「……マジか」

 嘘をつかないだろう神代の姫に補足され、あんぐりとトシキは口を開けた

 同時、思う

 あ、これなら牛姿のゼウスっておまけで赦されるな、と。本来が巨大ロボットならば、牛の肉体との落差はあまりにも大きいだろう。何たって、そもそものサイズからして恐らく仔猫と人間くらいに違うし、出力が桁違いだ。まあサーヴァントのおまけなので牛姿で数十馬力くらいはあるとして、本体はまあ当然のように数十万馬力だろう。鉄の城、原初の魔神くらいの性能を想定したら大体そんなものではなかろうか

 人並みの大きさで、人の姿を思い浮かべていたが故に、牛になってもそんな簡単には許されるのか?と思っていた疑問がトシキの中で溶ける

 『……何故驚く天国?』

 「いや、普通驚きますが!?」

 そこはかと無く不思議そうな神に、トシキは当然のことを!と叫び返す

 『否や。何故それを知らぬのだ天国の魔術師が』

 「いや、俺魔術工房の入り口の鍛冶場は兎も角扉の先に行けない半人前なので、天国なら知ってるはずと言われても困ります」

 『大丈夫よ、マスターさんならきっと行けるわ』

 「行けなきゃ、困るんですけどね」

 

 『時に、矮小な人の身で我を越えると言ったな、アーチャー

 越えられるというならば、越えてみよ。無理だと思うがな!』

 「その煽りは要らないですゼウス神!」

 『ふむ、では人類の進化をお見せしようではないか、ミス・マスター!』

 「材料費、無い」

 『なんとぉーっ!』

 

 「で、どんな姿だったのですかゼウス神」

 明日からは普通の日。休みは終わり、人気の無い道を歩みながらトシキはふとそう問いかける

 

 『見せてやろう。これが我、ΖΕΥΣだ』

 その声と共に、虚空にホログラムのように映し出されたのは、巨大な顔であった

 「あ、顔だ」

 「……透けてる」

 「何か、あまり格好良くは無いですね」

 『言いおるわ』

 「何というか、変形などは?」

 『単体では、ない』

 「……ゼウス神。現代人類には人型に変形するか、或いは手足が生えててドリルで合体して天を貫くかしないと、巨大な顔面をカッコいいとは感じられないかと」

 『……ならば見せてやろう!』

 ムッとしたのだろうか

 語気を軽く荒げたかと思うや、ホログラムの顔面の周囲に11の渦が走り、 11の巨大なホログラムが現れ……

 といっても、人気はないが道の上に照らしているので全部合わせて1mもないが、雰囲気の話だ

 『これが、超雷霆合体、G(グレート)オリュンポスだ』

 果たして。11のホログラムが一際巨大な鯱か何かのような海洋生物型のロボットをボディに合体(といっても、真っ赤な人型がボディ内部にフォームアップされてみたりしていたが)し、最後にゼウス頭部がドッキングすることで一つの巨大な翼を携えたロボットとなった

 「……カッコいいな」

 『これが本来の我、真のオリュンポスの神』

 「……ってことは、巨大化しながら飛来して翼と胸になったのは?」

 『まあ、アルテミスの事ね?』

 「地面から出てきて両足になった、どっかで見たような……いや多分これが先なんだろうドリル?な奴は?」

 『ハデスだ』

 「盾はまあアテナだろうとして、このビームブレード発生させてる武器持ち手になったのは?」

 『デメテルだ』

 「この翼になると思いきや腰アーマーになったのは?」

 『アフロディーテだ』

 「あのデカイ海洋生物型は?」

 『分かるだろう?』

 「ポセイドン?」

 『正解だ』

 「スタイリッシュなフォームアップした人型は?」

 『アレスだ』

 「ゼウス神?アレスの方がかっこ良くないですかね?」

 『体を分けた後、少し思った

 だが、我は雷霆。我は頭脳、我は全能。頭以外有り得ない』

 「……心臓名乗れば良かったのでは?」

 『そこまで言うか。ならば、案を出せ天国』

 「無茶苦茶な……」

 それでも、案外考えてしまうのがトシキで

 

 「……少し、考えてみる」

 あの顔面、変形とか考えたら割と……

 「というかゼウス神、何でそんな機神なのが今では」

 『ふむ、それは紀元前1万年と2000年前』

 「堕天使でも来ましたかゼウス神」

 『そうではないが……』

 そんな会話を断ち切って、神の気配が後ろに現れる

 『構えよ、天国』

 「……ああ!」

 「……えっ」

 びくりと、親友の体が震える

 

 空気が変わる。張りつめたものへ

 『……待っていた、と言うべきか

 或いは通らなければ、何もせずに終わったが』

 少しだけ面倒くさげに、コスプレのような鎧を……というか、恐らくコスプレの段ボール鎧を身に纏い、だからああ昨日の名残ねと見逃されるだろう、星光を反射する鈍い輝きの真剣を携えて

 トシキをあの日襲ったサーヴァントが、セイバーが家路たる道の先に立っていた

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