Fate/Tonitrus   作:雨在新人

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遭遇戦(2/3)

「……ギルガ、メッシュ?」

 首を傾げる親友

 

 少しは、震えもマシになり、危なっかしげながら、一人で立つ

 そうして、不思議そうに頭上の黄金の王を見上げ

 「あの塔を登った人?それとも、ビッグブリッジで死闘繰り広げる人?」

 と、無邪気に聞いてきたのであった

 

 「結城、ビッグブリッ"ヂ"な」

 ああ、そういう、とトシキは納得し

 「アーチャー、結城を支えてやってくれ」

 『ふむ、理解した』

 このまま結城を守り続けなければならないという事は理解したのであろう。偉丈夫のサーヴァントは、ひょいと足を掬い上げ、その軽い体を抱えあげる。体全体を、足と背に通した二本の手で支える手法、所謂お姫さま抱っこという奴だ

 「そ、それは良い……」

 一部では憧れと言われたりもするが、この状況では単なる羞恥だろう。嫌がって少し首を振る少女に、トシキは抱えられててくれ、と言葉をかける

 「でも、ギルガメッシュなら

 そんなに怖く……」

 「良いか結城

 確かに知名度は日本じゃその古いゲームの主人公の方がまだあるかもしれない。あのゲーム見てもそんな強く見えないかもしれない。けれども、あの黄金の王はそうじゃない。正直な話すると、文句無しにヤバい相手だ

 全てを見た人、人類最古の黄金の王。半神半人の英雄王。アニメでも時折出てくる人類全ての叡知の庫、『バビロンの宝物庫』の所有者……」

 といっても、トシキとてそこら辺は父がアニメの際に参考にしていた冬木第四次聖杯戦争記録からの受け売りなのだが

 『その通り』

 ぱちん、と盃を持たぬ手で、黄金の王が指を鳴らす

 その動きに合わせて地上には十の黄金の渦が浮かび、そこから……

 機械音を立てて武器を持った自動人形(オートマタ)がその二本足……や、キャタピラで進みだしてきた

 

 「……ひっ」

 『そう怯えるな雑種。こんなものは小手調べだ

 壊れてくれるなよ?』

 更に巨大な黄金の渦が二つ、王の背後とオートマタ軍団の背後に生まれ、地上の渦からは一昨日確認した青銅巨人タロスの上半身が、空中からは……やけにスタイリッシュでカッコいい……何と言うか、ゼウス神が歌っていたあの歌が主題歌のゲームにも出てくる皇帝(カイザー)の異名で呼ばれていた魔神(マジン)に近い形状の巨大な剣を携えた鋼の戦神が姿を現す

 その全長、約40m。西暦何年に人類が其処に辿り着くんだよと言いたくもなる超兵器

 鋼を扱うトシキだからこそ、一発で分かる。輝くボディは、地上に現存する金属よりも遥かに洗練された合金だ。神話の時代に遡って、機械神であったというゼウスの装甲と比べたとして良い勝負なんじゃないだろうか。少なくとも、現状の地球で、あの鋼を打ち砕く刃は作れないだろう。ってか、核爆発の直撃耐えるんじゃなかろうかあの装甲

 

 「……っ!」

 『ふははははははははは!どうだ大たわけ

 これぞ(オレ)の所有する巨大ロボよ』

 「歩くだけで街の被害がヤバいんですいません収めていただけないでしょうか?」

 『ふん、心得ているとも。人間大のものを機神で潰しても浪漫が無い。やはり、巨獣、巨神へ向けて振るってこそ

 これはアサシン等に向けてこそ振るうべき剣であり、戻ってくるまで貴様等が時間稼ぎしているあの牛が戻ってきたとして、あやつが本性でも現さねばそう使うことはないとも

 だがそうではないわ大たわけ!(オレ)はこやつの感想を聞きに来たのだ』

 何しに来てるんだこの王!?なんて混乱は胸の内に秘めて、トシキは改めてその巨駆を見上げる

 一応人払いとかはさりげなくしていたが、流石にこの巨大ロボとか神秘の秘匿大丈夫かなーなんて思いながら

 

 「恐ろしく澄んだ鋼。精悍な姿

 星の守護神と言われても納得の行く……端的に言えばこれこのままスーパーロボットものの主役機に使ってウケそうなもの故に、逆に反応に困ります、王

 何時の時代のですかこれ」

 『(オレ)に聞くな!恐らくは人類が星の海へと旅立つ辺りの時期であろうよ』

 何年後だそれ、とトシキは肩を竦める

 恐らくは、数百年はかかるのではないだろうか。西暦2500年くらいに建造されていそうだ

 

 「……王よ、何故そのようなカッコいい未来のものを」

 『(オレ)がライダーであるからに決まっておろうがたわけめが!』

 「巨大ロボットはパイロットであってライダーかと言われると……と……」

 口ごもる

 トシキ的にも分からない。これ、ライダークラスに含めて良いのか?そもそもエウロペとか普通にゼウスという牛の乗り物連れているし、正直なぁとやる気あるのか無いのか分からないセイバーとて獅子連れてきたりとライダーっぽい宝具を持っていたりするのだし、考えるだけ無駄なのかもしれない

 

 「ととと、とっしー!」

 「焦りすぎだ、結城」

 今までの話で、ゲームで良く出てくるギルガメッシュよりリアルは数段ヤバいと理解したのだろう。どうしようといった感じで、抱えられたまま震える親友が、震わせた声で問いかける

 「凄い英雄さんなんだよね?」

 「ぶっちゃけ、本気で全力を出したらサーヴァント界最強まである。いや、逆に反則になるからそれは無いか」

 「スーパーゼウスより?」

 「本気出されたら相手にもならないな」

 「えっと、とっしーのサーヴァントより?」

 『ええ、あの金ぴかさんには、おばあちゃまじゃ勝てないわね

 でも、もし本気で来ても盾くらいにはなって護ってあげるから、安心してちょうだいね?』

 「……そんなもしも、は良い」

 あくまでも、彼等とて本気で事を構える気はないのだろう

 それならば、あの黄金の王が看破したように、まだ戦えそうな白牛のゼウス神が戻ってくるのを、此方と談笑などして待ってやる道理はない。とっとと来れば、此方としては最悪令呪を切って呼び戻すしかないのだ。まともにやりあう気ならば、それをしないのは可笑しい

 

 「勝ち目がないのは本当だ。あの、頭抱えてるユーウェインも瞬殺する。何なら、アーサー王だってワンパン出来るはずだ」

 「……ゼウス、より?」

 『真体があれば、敗けはせんとも

 だがしかし。今の我はエウロペちゃまの牛。世界を別つ剣……直接見たことは無いが、世界を貫いた杖と似たようなものであろう?』

 「寧ろ世界を貫いた杖は見たことあるんですかゼウス神」

 漸く戻ってきた神の轟くような声に、トシキは返す

 『西暦?と言ったか。あれで言えば紀元前1万年と2000年前にな。我等オリュンポスの神々と共に全てを破壊する捕食の星へと挑んだ東方の猿神が持ってきおったわ

 破壊の星すら繋ぎ止め、我等の超雷霆合体……まあ不完全な8機合体ではあったが……の時間を稼いでみせた《如意金箍棒(アレ)》と同格の剣、《乖離剣エア》を抜かれれば、今のこの体ではひとたまりもなかろうよ』

 

 「じゃあどうしろと?」

 『ふはははは!安心せよ、そこなたわけ共

 貴様等が恐れた剣であれば、ほれ、この通りだ』

 黄金の王が愉快そうに手を天へ掲げる

 同時、巨神が騎士っぽいポーズで地面に刺していた剣を掴んで掲げ……

 其処に、というか剣の柄に巨大な力が渦巻いているのが見て取れる

 3つの回転渦。それが巨剣へと伝わり、刃が輝きを放ち……

 『とまあ、こういう訳だ。必殺剣に組み込んだのでな。此度の現界において、(オレ)が《乖離剣エア》を抜く事はまず無いだろうよ

 使う程の相手もおらんしな』

 舐められてるぞゼウス神。それで良いのかゼウス神

 そんな言葉を言いたくはなるが、今ゼウスを刺激して良いことはない

 「王よ。その必殺剣は誰に……」

 『ふはは、聞くな大たわけ

 ライダークラスとして現界をするにあたって、(オレ)とて必殺の一撃の一つくらい持っていくかと組み込んだは良いがな、使う相手などビーストでも降臨せぬ限りはおらんという事実に当たったのだ

 英雄王初めての失策という奴よ。だが(オレ)は取り出さん。やはり必殺技あってこその巨大人型兵器(スーパーロボット)であろう』

 

 大笑いする機嫌のよさげな黄金の王を見上げ、タイミングを計り……

 「ゼウス神!」

 『良かろう!』

 注意が逸れた。その一瞬にトシキは叫ぶ

 同時、意志を汲んでくれたのであろう、巨牛の蹄にスパークが走り……

 

 「アーチャー、結城を背に乗せて強行突破だ!行けるな!」

 『任せたまえ、ミスター!』

 既にランサーは定位置感ある安心と信頼のゼウスの背に座っていて

 軽い親友の体は、投げられることはなく優しくサーヴァントからサーヴァントへと手渡され、白牛の背へ座らされる

 『ええ、一緒に掴まって頂戴ね』

 「……うん」

 『……考えたようだが……』

 準備が終わる頃、周囲に浮かぶ12の黄金の渦

 そこから、12本の槍が突き出される

 

 だが。黄金の王が現れたその瞬間からずっとトシキ達を囲むように《王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)》は既に不可視のまま展開されていた。今さら渦を出して射出などせずとも、何時でも射てたのだ

 ならば、本気で進行を咎める気でやってはいないと判断しても問題ないだろう

 会話に付き合っている間に、彼が本気で此処で戦う気など無いと理解したからこその強行突破。マスターに忠実に動くはずもない彼が、今は有り難い

 味方してくれればその何倍も有り難いが、それはギルガメッシュに求めるものではなく

 

 「っ!再鍛!偽打・亀戸天刃!」

 降り注ぐ豪雨

 『ええ!マスターさん』

 雨雲を呼ぶ刃。それによって出来るのは雨までだが……此処に、雨雲を生かせるサーヴァントが居る!

 結城を腕の中に抱えたまま、ランサーが器用にどっかから持ち出した竪琴を響かせる

 その音色と共に、射出される直前の槍目掛け、12の雷槍が天から降り注ぎ、その全てを打ち砕いた

 

 「Go!」

 叫びと共に、牛が軽く地面から浮いて駆け出し、電磁浮遊だろうか、同じく宙に浮かびながらアーチャーも空を駆ける

 それを、トシキ自身は自分の足で数歩遅れて追いかける形

 ゼウスに三人は乗れず、なにも言わないことから、恐らく結城を抱えたままではろくに戦えないのであろう

 

 『……行け』

 獅子は動かず、騎士もやる気無く、当てる気無いだろと言いたくなる軌道で剣を振るうのみ

 此処で斬りつければ通りそうな気もあるが、流石に通してくれるという礼儀に反するのでそのまま横を素通りし

 『忘れたかたわけ』

 『そちらこそ、この天才を舐めているのではないかね?』

 立ちはだかる人間サイズの自動人形達は、アーチャーの機械腕から放たれる電撃によりその動きを止める

 

 人払い故に人気の無い商店街の道を抜ける

 これで!

 そう思った刹那、トシキの脳裏に響く警告

 直感が告げる、死の香り

 「っ!ランサー!」

 言いつつ、既に鍛造してある刀を構える

 

 『……ちっ、剣が』

 その直後

 ランサーが飛ばしてくれた雷槍により剣を砕かれた、一瞬前までは気配すら無かったフード付きのマントを目深に被った男が、素手でトシキへと掴みかかって来ていた

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