Fate/Tonitrus   作:雨在新人

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雷霆と黄金(1/2)

『……エウロペに、ギルガメッシュ』

 『そこな妖精混じり、何故この(オレ)が後になる』

 『ずらかるぞマスター!この二騎はヤバい!

 私としても、最悪神に連なる者2騎を同時に相手するなんてやれるものではない!』

 黄金の王ギルガメッシュの声を無視し、セイバーが地を蹴る

 「あ、おい!聖杯は」

 『後だ!今は、下がるのみ!』

 折角取りに来たのに、と黎南を置いていくことに不満げなふわふわ髪の少年の言葉を無視し、セイバーは鳥居を越え、空へと身を踊らせる

 『ふん、下らん』

 社の上、黄金の渦が渦巻く

 トシキは知っている。聖杯戦争のモチーフをアニメに組み込む為に父親が手にした極秘資料を盗み読んだ時に書いてあった。書いてあった事は多くはないが、それでも20年以上前に冬木という市で起きたらしい聖杯戦争に降臨したギルガメッシュの基本戦闘スタイルについては書いてあった。宝具等は流石に記載が無かったが……それでも、あの渦の正体は分かる

 王の財宝(ゲートオブバビロン)。この世の全ての財宝、ありとあらゆるものの原型が収められているという伝説の庫の門

 ならば、其処から現れるのは……

 黒光りする巨大な腕であった

 「……なんだあれ!?」

 予想外のものにトシキは眼を見開く

 鋼鉄、いやあれは青銅だ、と刀匠としてのトシキの眼が告げる巨腕。人一人であればその拳の上に乗れる程の大きさの腕は、手の甲辺りからマグマのような色のエネルギーラインが走っているのが見えるお洒落な意匠を持ち、渦から伸びていた

 『あら?タロス?そちらにいるの?』

 『ふはははははははは、これぞ<青銅巨人の原重槌(スフィリ・オリジ・ターロー)>!』

 「貴方何処出身ですか!?」

 ターロー、タロス。ギリシャ神話に出てくるエウロペに贈られた青銅の巨人である。オリジとはおそらくオリジナルの事。色々混ざってる、たぶん言語すら混ざってる

 何より、原型を持っていても可笑しくはないが本来タロスを贈られた相手の眼前で出す辺りが酷い。正直なところ、人によっては喧嘩売ってるとしか思わないだろう

 『まあ!あなたもタロスを持っているのね!兄弟なのかしら。愛らしくて良いわよね、タロス』

 まあ、喧嘩売られた当サーヴァントは、気にしていなかったようではあるが

 『何処出身か?そんなものウルクに決まっておろうがたわけ!』

 「知ってます!その巨人の出所がウルクじゃな」

 『(オレ)とてたまには童心に返って機械巨人を操りたくもなる

 さあ、行くが良い原初の巨人よ!』

 「資料より滅茶苦茶だなこの王!?」

 『ライダークラスで現界したのだ!ライダーらしく戦うも一興よ

 青銅の巨人に見せて付けるがいい、原型、お兄さんの力をな!』

 高笑いと共に、巨腕の手指が赤熱、五指がピンと伸びる。それはさながら5列並んだ砲口のようで

 「ランサー!」

 トシキは、叫んでいた

 『あら?なにかしら』

 「全弾、撃ち落としてくれ」

 『あらまあ、どうして?』

 「どうしてもこうしても、街に被害が出る!」

 『ふん、下らん事を気にするものよな雑種

 戯れが過ぎてあやつらが逃げたわ』

 口は相変わらず悪く、けれども案外残念そうでもなく、黄金の王が渦を消す。中に引っ込んで、何も撃たれることはなく腕も消え去った

 

 既に付近にセイバー等の姿はない

 ライダー、いやギルガメッシュは社の上から降りる気配もない

 「……有り難う、ランサー」

 『あら?エウロペで良いわよマスターさん。ランサーなんて他人行儀だもの、一緒に戦うわたくし達には』

 「……いや、聖杯戦争において、サーヴァントの真名は戦法や切り札、そして弱点の全てをを告げていると言っても過言じゃない

 本来は、他人に把握されない為に隠すべきもののはずなんだ。あの……ギルガメッシュ王のように自分に絶対の自信があるならば、明かすことによる威圧というのも有効かもしれないけれども……」

 頭を抱え……ることは流石に出来ず、けれども額に右掌を当てて、トシキはうめく

 『あら、そうなの?』

 「例えば、貴方のところの英雄アキレウス」

 『あらあら、あの子の事を知っているの?』

 「サーヴァントがアキレウスと分かったならば、アキレス腱を狙えば良いと分かってしまうでしょう?」

 だからです、と、サーヴァントなのにわかってなさそうな少女に、トシキは続けた

 

 「そして、ギルガメッシュ王

 有り難う御座います、貴方が居なければ、彼等を止めてくれなければ。俺は今此処に骸として転がっていた」

 『ふん。礼までは忘れんか

 だが無礼である。何よりも(オレ)に先に礼を述べるべきであろう』

 再び玉座かの如く社の上に腰を下ろし、何でか酒の杯まで持ち出して、罰当たりな場所で寛ぎながら王が笑う

 「サーヴァントとしてはライダークラス。いかなギルガメッシュ王とて、此度の聖杯戦争ではランサーとは違い敵なもので、つい後回しに」

 『ふ、正直者よな

 だが一つ言っておこう。(オレ)は聖杯など要らん』

 「……は?」

 口をあけて、ぽかんとした表情のままトシキは固まる

 基本、サーヴァントは聖杯が欲しくて召喚に応じるのだ。稀に、本当に稀に聖杯なんて必要ないが降臨するサーヴァントが居るらしいが、かの黄金の王がそんな殊勝で献身的な性格でないことは今までの言動が証明している

 『そもそも聖杯など、此処にある』

 月明かりに杯を照らし、王は酒を煽る

 『聖杯で飲むお酒って美味しいのかしら。美味しいならば、ゼウスさまに教えて……』

 「いやそこじゃないランサー、ツッコミどころかもしれないけれども、ツッコミだしてしまうとキリがない場所だそこは」

 『聖杯酒か?

 聖杯飯には劣るな』

 「王、真面目に答えなくて良いです」

 ダメだこの金髪サーヴァント二人話が上手く進まない、とトシキはぼやいた。そもそもウルクに米あったっけとかは地雷なので忘れることにして

 

 「ギルガメッシュ王は、聖杯を求めてはいない、と?」

 『だからそう言っておろうがたわけ

 万能の願望器なら蔵に幾つか転がっておる。その上、此度の聖杯は……』

 倒れたままの少女を、黄金の王の赤い瞳が見据える

 『何と、人間ときた。モノであれば(オレ)の財だ雑種共が身勝手に奪い合う等許さん

 だが、人はやはり(オレ)の財だ。財ではあるが……独占していては(オレ)の子しか残らんではないか!それでは人類という話がそこで終わってしまう。故に、特に手は出さんとも。余程(オレ)が気に入ればまた別だがな!

 此度の聖杯戦争、(オレ)にやる事はない。此度の聖杯など要らんとも』

 「では何故召喚に応じなど……?」

 『此度の聖杯戦争、召喚された方が愉快だからに決まっておろうがたわけが!』

 愉快犯かよぉぉぉぉっ!というのは無礼過ぎるので叫べず。どうすんだよとトシキは一人項垂れた

 『見よ、そこな主神を!自ら四つん這いの体勢で妻を背にモーモー哭いておるわ!此処がたわけの前でなければ笑いが止まらんかったところよ

 そのような光景、召喚されねば見ることは出来ぬ、これで召喚をされるなとは誰一人言えまいよ』

 「……というか、聞き間違いとかではなく?そこな主神?」

 『然り。かの雷霆、ΖΕΥΣ(ゼウス)である。人の目には牡牛にしか見えんのだろうが、(オレ)の眼は特別製でな。はっきりと見えるとも、赤子のように這いつくばるかの白き髭の偉丈夫がな!』

 『ゼウスさま、ゼウスさま』

 とんとんと、エウロペが牡牛の首を叩く

 『……如何にも

 我が名はΖΕΥΣ。牡牛となりて神妃エウロペに随伴せし全能神である』

 その声は、牛からではなく。天から轟くように轟音として耳に響いた

 「はぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁああぁっ!?」

 あまりの音量に耳を思わず抑え、それでも変わらぬ音量に負けぬように、トシキは声を張り上げる

 「ゼウス!?マジもののゼウス!?フカシとかじゃなく!?」

 『直前の名乗りを忘れたか?』

 「本物の神霊かよぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 真面目に今回の聖杯戦争どうなってるんだ、と、何度目かトシキは額に手を当てた

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