魔法転生・ネギ?ま   作:雑草弁士

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第000話:プロローグ

[???]

 

 わたしが意識を取り戻すと、そこは周囲一面が雲海の様な霧の中の様な、真っ白でわけがわからない空間だった。周囲を見回すが、どこもかしこも白い、白いだけの空間だ。視線を下に向けても、自分の身体さえ見えない。わたしは手を顔の前に持って来る。だが手のひらどころか指一本たりとて見えなかった。

 

(もしかして、これは夢では無いのか?)

 

 そう思ったわたしは、自らの右頬をつねって見る。痛みは無かった。いや、それどころか右手が頬に触れた感触すら無い。そこでわたしは気付く。右手を動かしたと思っていたのが、単に「身体が在った頃の記憶による錯覚」でしか無かったと言う事に。

 

(あ、そっか……。死んだ、か。)

 

 わたしは寝ている間に、心臓発作を起こして死んだのだ。何故それがわかるかと言うと、死んだ直後からしばしの間、わたしの意識体……魂とでも言うべきソレは、朦朧とした意識のまま自分の死体の上に浮いていたのだ。だから霊的な感覚で、自分の身体が何故生命活動を停止したのかも知る事ができたのだ。もっとも朦朧としていたので、情報は得られてもそれを理解する事はできなかったが。

 そしてわたしの意識体はいつしか自分の死体から離れ、高次空間へと遷移していた。この真っ白い空間がそうだ。この空間が白いのは、わたしの意識体の知覚が今まで生きていた世界の理に縛られているため、この高次空間を識る事ができていないためだった。

 

(どうしたもんだろうな。というか、なんで肉体が無いのに意識を保っていられるんだ?あ、いや。なんで「肉体が無いと意識を保てないのが普通」だってわかる?)

 

 一瞬慌てたわたしだった。しかしそのうち、何処からか「知識」が流れ込んでいるのに気づいた。そしてわたしは、その流れ込んで来る知識によって、この高次空間で「周囲」を知覚する方法を知った。次の瞬間、真っ白だった周囲の様子がいきなり変わる。

 そこは波が打ち寄せる海辺の浜に似ていた。そしてその浜には、海から様々な名状し難い形をした漂流物が流れ着いている。わたしはその漂流物の1つの上に、乗っかっていた。そして「知識」はそのわたしが乗っている漂流物から流れ込んでいた。瞬間的に、わたしは理解する。その理解すらも、それから流れ込んで来る知識によるものだったが。

 

(……これは、「人の魂」の抜け殻、か。これに宿っていた意識は、すり切れたかあるいは転生でもしたか。その際に落っことしていった、生きていた頃の経験とかの塊……。)

 

 漂流物は、ここに流れ着いた死人の、生前の知識や能力といった代物の塊だった。わたしは偶然そのうちの1つに触れて、それの一部を自らの内に取り込んでしまったらしい。しかしある意味で、わたしは運が良かったのかも知れない。いや、死んでいて運が良いも何も無いのだが。

 

(この抜け殻は、生前は「魔法」の使い手だったらしい……。いや、本気で魔法使いとか存在してたんだな。ああいや、わたしが生きていた世界とは別世界から流れて来た可能性も高いのか。

 でも、流石に魔法使いだけあるな。霊的な知覚の方法とかの「知識」が無かったら、真っ白な空間で何が何だかわからないうちにすり潰されて、すり切れてたろうな。)

 

 わたしはしばし時間をかけて、その魔法使いの知識を吸収する。この霊的空間で、自由に活動できる様になる事が目的だ。だが、ついうっかり知識だけではなく「記憶」まで取り込みそうになって、慌てて情報の流入を絞った。そんなもんまで吸収してしまっては、人格が混ざってしまいかねない。それは、わたしという存在の消滅に繋がる。いや、既に死んでいる身だが、やはり消滅は恐ろしい。

 魔法使いの知識をほぼ手に入れたわたしは、なんとか動ける様になったので波打ち際を移動する。そして打ち寄せられている様々な「人の魂」の抜け殻から、知識を手に入れて行った。

 

(……この場所は色々な世界から、こういった「人の魂」の抜け殻が寄せ集まって来る場所みたいだな。そして無造作に情報が積み重なっていくだけの場所、か……。)

 

 わたしは器用に、意識体の状態で溜息を吐く。興味本位のままに様々な情報……知識を吸収してみたものの、既に死人の魂でしかないわたしはソレを活かす事もできない。はっきり言って、虚しい。

 

(……いや、このまま情報を手に入れていけば、もしかしたらここから抜け出す事も?)

 

 思い直したわたしは、知識を、情報をどんどん手に入れていく。やはりこの波打ち際に漂着している抜け殻は、様々な複数の世界から流れ着いてきている様である。ある抜け殻からは、オーバーテクノロジーとでも言うべき超未来科学技術が手に入った。別の抜け殻からは、最初のとは系統が異なる別種の魔法の知識が手に入った。また別の抜け殻からは、武術の経験や奥義に相当する技の知識が手に入った。まあそんな有用な物だけでなく、役に立たないゴミ情報も数多かったが。

 いったいどれだけ時が流れただろう。わたしは知識だけなら、とんでもないレベルの超絶賢者になっていた。もっともこれは机上の知識でしかなく、身になっているのはごく僅か、この魂状態の意識体でもなんとかなる技だけだったが。練習や実験、実証や実践ができなくては、知識も身にはならない。

 それはともかくとして、わたしは無数の抜け殻から得た知識を統合し、この空間……高次元のゴミ捨て場から脱出する方法を見つけ出した。まあ、なんと言えばいいか、単純に生まれ変わればいいだけの話なのだが。

 

(まあだけど、生まれ変わると記憶は基本的には消える、か。まあ、ごく稀に前世の記憶が甦る事はあるが、ここでの記憶は普通残らん、か。ぶっちゃけ、勿体ないなあ……。頑張って得た知識や、知識を吸収するために魂構造を頑張って拡張したのに。)

 

 はっきり言えば、物凄く勿体ない。わたしがここで色々頑張ったのが、まったくの無意味になるのだ。ただ、長い年月の間、わたしはある程度の諦めもついていた。

 

(でもまあ、普通はここに流れ着いたら、転生とかせずにすり切れて消滅するみたいだしな。転生できるだけ、まだマシか。魂拡張したから、転生後の人生では、魔法とかある世界だったら非常に有利に生きられるかもしれん。

 ……ま、今のわたしは消えちまうんだが。そうだな、それが正しい。無理矢理残って、転生後の子供の人生を奪うのは外道の所業だ。うん。)

 

 意識体で溜息を吐き、わたしは念を凝らして自分の意識体の周囲に転生陣を描く。この陣により、わたしは何処かの世界で赤ん坊として転生する事になるのだ。そして陣が起動する。わたしの意識は、混濁して行った。




消滅覚悟で転生を選んだ主人公……。はたして彼はどうなるのでしょうか。
……いや、完全に消えちゃったら、お話が終わってしまうのですが(笑)。乞うご期待!
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