[茶々丸]
「申し訳ありません、ネギさん。」
「……どうしたのさ、絡繰さん。」
わたしはマスターの家でお茶をしているネギさんに、頭を下げました。チャチャゼロ姉さんが、ネギさんの頭の上で怪訝そうな顔をしています。いえ人形ですので表情は動いていないのですが。
「超と葉加瀬に、ネギさんの存在が漏洩しました。情報源は、整備の際のわたしの記憶ドライブです。」
「ええっ!?……ああー。それなら仕方ない、か。」
「咄嗟に偽装ドライブを表層に出し、ネギさんの計画そのものは隠し通しましたが……。いえ、隠し通したつもりですが。」
ネギさんは深く考え込んでいます。頭の上のチャチャゼロ姉さんが、シュールです。マスターはニヤニヤ笑って、楽しそうですね。
「……絡繰さん。何故開発者に対してまで、僕の計画を隠してもらえたんですか?いえ、ありがたい事なんですが。」
「え……。何故、でしょうね。」
本当に、何故でしょう?あ、いえ。
「おそらく、ネギさんにマスターが協力しているからだと思われます。積極的な協力とまではいきませんが、ネギさんへ協力的な立場を取っているのは間違いありません。ネギさんの計画を、超や葉加瀬を含む不特定多数に知られる事は、マスターの不興を買う可能性があります。」
「ケケケ、ソレダケカヨ。」
「それ以外に、該当要素が見つかりませんが、姉さん。」
「マ、イイサ。モチット色々カンガエテミロヤ。」
「はあ……。」
そこでネギさんが、飲み干したお茶のカップを置くと、歩み寄って来て、わたしの背中に手を……?
「でも、超さんかな?葉加瀬さんかな?伝え聞く性格からすると超さんだと思うんだけれど。茶々丸さんが隠し事をしているのには、気付いた模様だね。」
「これは!」
ネギさんが背中から取ったのは、小さな蛾でした。ですが、ネギさんが親指と人差し指でその蛾を潰すと、中から電子部品が。わたしのセンサーでも気付かないなんて。
「ネギ、それは?」
「盗聴器だね。技術的には凄いけれど、でも今の季節この種類の蛾は、羽化してないんだよね。もっと夏にならなきゃ。」
「くくく、超と葉加瀬も抜けているな。」
「いや、もしかして僕に気付かせるために、あえてこの種類使ったのかもね?気付かないほどの間抜けであれば、そのまま盗聴して、気付いたのなら何らかのメッセージとして使う。
……違うかい?超さん?外装は壊したけど、マイク機能は死んでないはずだ。」
え。この盗聴器、まだ
[鈴音]
『ああっと。そうだな。腹を割っての会談を申し込む。君と葉加瀬聡美さんの才能、能力は正直捨てがたい。日取りはそちらの都合がいい日を教えてくれればいい。僕の携帯番号は、○○○-××××▲▲▲▲だ。連絡をくれたら、そのときに場所はこちらから指定する。』
「日時はコチラ、場所はソチラかネ。二重三重に用心深いヨ。」
「え?どういう意味です超さん?」
「日時はコチラに任せるコトで、コチラをある程度信頼してイルと見せてるヨ。その上で、場所は自分の側で決める事で、罠とかかけられない様にしてるネ。」
葉加瀬はワタシの言葉に驚いてるヨ。シカシ、ワタシの計画を遂行するためには今のままでは
なんとかして
イキナリこんなトコで躓くとは思わなかたヨ。おのれ
「超さん、どうしたんですか?物凄い顔になってますが……。」
「オットいけないネ。葉加瀬、さっきの番号に電話するヨ。ただし黒電話機。」
「黒電話を盗聴するのは、一苦労ですからね。」
ジーコロロロロ、ジーコロロロロロ、ジーコロロ……。
超旧式の黒電話のダイヤルを回して、相手が出るのを待つヨ。数回のコール音が鳴って、
『はい、こちらスプリングフィールド。』
「こちらいつもニコニコ、超包子ネ!……と言うのは冗談、でもナイカ。超包子もヨロシクして欲しいヨ。こちらは超ネ。
でも、そちらあまりに普通ネ?ここはナニか、「ハイ、こちら昇竜軒!ラーメン3つ、今出ましたから!」トカ、ギャグで掴みを入れて来るかと思テ、気合い入れてタンだけどネ?」
まずはギャグ混じりでフレンドリーに……。ダケド、綱渡りしてる気分ヨ。相手は
いや、人生経験トカほぼ無いだろうカラ、逆にそう言う面では楽に相手取れるカモ?いやいやいやいやいや、油断は駄目ネ!
『ふふふ、そう警戒しないでください。と言いますか、僕の方でもそうそう多方面に敵を抱えてなんか、いられないんです。交渉で何とかできるなら、貴女が何を企んでいるか知りませんが……。』
「ヤパリ知らなかったのカ!?あ、ああいや失礼。続けて欲しいヨ。」
『ごほん。何を企んでいるかはわかりません。けれど、僕としては貴女たちを敵としてではなく、味方に、同志に取り込んでしまいたい、そう考えています。貴女たちの頭脳は、放置して置くにはあまりに惜しい。』
「……大きく評価シテくれて、アリガトウ。デ、会見日時なんダガ……。明日の晩、21時ではどうネ?」
コウ言うのは、なるたけ早い方が良いネ。下手に相手に準備させない。コチラもあまり準備できないガ。拙速は巧遅に勝るんだヨ!
と言ウカ、急がないト……コッチの計画がドンドン遅れて行くネ!悲鳴あげたいヨ!
『了解です。ならば場所は、世界樹前広場の学園祭用ステージで。』
「了解ネ。」
『では。ガチャ。』
電話は切れタ。この会見で、鬼が出るカ蛇が出るカ、歩く姿は百合ノ花……ナニカ違うネ。ああ、そっちは「立てばシャクヤク、座れば牡丹」だったカ。まあ良いネ。ワタシが過去に戻って来た理由、その全テを賭けた会見になるヨ!
「超さんが燃えている……。」
何トしてモ……!!
[小太郎]
ちくしょう……。ちくしょう……!!
俺は今、麻帆良に居る。麻帆良のどの辺だかは知らん。けど、麻帆良のどこだかに閉じ込められて、見張りなしに自由には出歩けん状態や。そやけど、俺が荒れてるのはソレが理由やない。あいつや!あの瀬流彦とか言う優男のおっさん!
俺は、あいつに捕まった後、麻帆良に連行された。そして黒人や禿げ頭のグラサン大男や髭のグラサン黒スーツやらが交代で見張りをしとる場所に軟禁された。そやけど、俺は尋問とか拷問とか、そう言ったもんは一切されへんかった。何故や?飯はけっこう美味い。そやけど、何で何も聞かへんのんや?奴らは、何考えとおねん。
理由はすぐ分かった。奴らは俺を「保護」しとったんや。そして裏の事情も、千草姉ちゃん捕まえたから充分に判っとったらしい。俺はええ様に使われただけの、ある意味被害者扱いされてたんや。千草姉ちゃんの自白からも、そんな感じだったと眼鏡のカタナ持ったオバ……い、いや姉ちゃんが教えてくれた。アカン、うっかりオバ……と思う所やった。今の殺気、死ぬかと……。
……閉じ込められてた間、ずっと、ずっと考えとった。あの瀬流彦とか言う優男のおっさんに言われた事を。ゆっくり落ち着いて考えたら、あの優男の言う事が間違うておらんのは、痛いほど理解できた。俺は、卑怯もんやった。卑怯もんの仲間やった。裏の事情何一つ知らされず、一般人として幸せに暮らしてたねーちゃんを攫って、その幸せをブチ壊そうとしたやつらの仲間やったんや。そしてソレを助けようとした、正義の味方の足止めをしたんや……。
TVは、見放題やった。日曜の朝に、ライダーをいつも観てた。今週も、当然の様に観てた。けど、俺はつらくなって、TV切った。ライダーみたく、なりたかった。無敵のヒーローに。いけ好かない東の西洋魔術師どもをばったばったと倒す。そんな事を夢見てた。そやけど俺のやってた事は、ライダーに倒される悪役の方やった……。
俺はヒゲグラサンの黒スーツに、頭を畳に擦り付けて頼んだ。もっかい、あの瀬流彦とか言う優男と戦わせて欲しいと。必死で、必死で頼んだ。そして、どこぞの体育館を貸し切りにして、再戦は成ったんや。
負けた。
前の様に完封はされなかったけど、それでも勝てなかった。そして今、俺は体育館の床にうつ伏せになって、泣いとる。声を殺して、泣いとるんや。ちくしょう、ちくしょう……。
[瀬流彦]
僕は犬上小太郎君を連れて、夜道を歩いてる。あいてて、今回は障壁破られて、いいパンチを1、2発もらっちゃったからね。分身の術には流石に驚いた。治療術師を呼ぶかと言われたけど、断ったよ。小太郎君の治療がされてないのに、と言うか小太郎君が断っちゃったんだけどね。それを後目に僕が治療されると、ナニ、だろう?
「さて、ここ曲がってしばらく行くと、美味しいラーメン屋台があるんだよ。お腹減ってるだろ?」
「減っとらん……。」
ぐきゅるるるるるる……。
否定した矢先、小太郎君の腹の虫が盛大に鳴る。顔を赤らめる彼だった。
「うん、でも僕が思いっきりお腹空いてるんだよね。一人で食べるのも寂しいから、付き合ってくれないかな。」
「……おう。」
僕らは黙って夜道を歩く。もうすぐラーメン屋台だ。
……!?
「小太郎君、ここにいるんだ!いいね!」
「お、おっさん!?」
お兄さんって呼んで欲しいが、そんな事を言っている場合じゃない。僕は仕事用の携帯電話を取り出して、電話を掛ける。
『はい、こちらガンドルフィーニ。』
「ガンドルフィーニ先生ですか!?」
『瀬流彦君!?まさかあの犬上小太郎が何か……。』
「違います!彼は途中で待機させました!今僕は、妖物を追ってます!どうやって見張りに引っ掛からずに、こんな麻帆良の奥まで……!応援呼んでください!今僕は魔力も消耗してて……。」
『……!わかった、今どこかね!?』
僕は近場の電柱に書いてあった住所と番地をガンドルフィーニ先生に告げると、電話を切る。そして妖物……半透明の少女が駆けて行くのを追った。と、後ろから何かが追って来る。いや、この気配は彼だ。
「小太郎君!あそこに居ろっていったのに!」
「……。」
「……ハァ。しかたないな。」
小太郎君はだんまりだ。しかしその思いつめた顔を見ては、流石に何も言えない。というか、以前色々言い過ぎたからねえ。腹立ちまぎれに、小さい子相手にさ。
そして半透明の少女は、ようやく逃走をやめた。僕は正直、しまった!と思ったね。しめた!じゃなくて、しまった!だ。半透明の少女は、そこで待っていた黒づくめの老人の足元に侍る。その横には同じような半透明の少女があと2体……。そして黒づくめの老人は、こちらを向いた。皮膚感覚で、ヤバさが分かる。
「やれやれ、見つかってしまったかね……。」
「……小太郎君、逃げろ。」
「……な、なんやて?」
「逃げて、ガンドルフィーニ先生たちを呼んで来るんだ!今の僕らは消耗し切ってる!勝ち目は無い!」
「……!」
そして僕は無詠唱で
「こんなところで、効果を確認する事になるとはね。こんなしょぼい魔法で、1回分使ってしまったよ。」
「何らかの対抗術式か!逃げろ小太郎君!早く逃げて、この情報をガンドルフィーニ先生たちに!」
僕は叫んで、黒づくめの男に相対する。僕の攻撃手段は、実はそんなに多く無い。そしてその1つである
あ、この野郎。まだ逃げてない。
「何してる!早く逃げろ小太郎君!僕が足止めするから、逃げて皆を呼んで来るんだ!」
「そ、そやけど……。」
「逃げるのは、卑怯じゃない!けど、逃げない事で「心が逃げ」たら、そっちの方が卑怯だ!今は心のつらさから逃げないでくれ!そして身体は逃げるんだ!そして皆を呼んで来るんだよ!」
「……!!」
行ったか。そして黒づくめの爺さん、小太郎君は追わせないよ!無詠唱
「……やれやれ。わたしには放出系魔法は効かないと、わからないのかね?」
「だけどあんた、うっかりポロっと漏らしたろ。こんなショボい魔法で1回使ったってね。つまりは……。」
「しまったな……。侮って悪かったね。あめ子、すらむぃ、ぷりん、君らはあの子供を追ってくれたまえ。」
まずいな。半透明の少女たちが、この場を離脱して行く。小太郎君、逃げ切ってくれ!僕は1回でも多く、この黒い爺さんの対抗術式を削るため、時間差をつけて1発ずつの無詠唱
前半は、超鈴音関係、後半は犬神小太郎関係。コタローは単純ですからねー。ちょこっと深く考えさせたかった……。超は複雑そうに見えて、どことなく単純な気がする……。超って、ネギと「誰」の子孫なんだろう。公式のネギのお相手は、一応あのヒトで決定らしいんですが、超の未来に至る道筋でのお相手、誰なんだろうなー。
そしてお約束の、黒爺さん。それに相対する瀬流彦先生。いや、無理だろ。