[瀬流彦]
僕は今、信じられない状態にある。と言うか、信じられないところに居る。
「うぉーーー!!凄え、凄えな、瀬流彦のおっさ、兄ちゃん!」
「ほんとに凄いよね……。いやマジで。」
小太郎君は、ときどきおっさんと言い掛けるが、一応兄ちゃんと呼んでくれる様になった。それは喜ばしい。
「いや、長生きはするもんだよね。約束で、娘に話せないのが残念だけど。」
「いや弐集院先生。長生きと言う年齢では無いでしょう。」
弐集院先生と葛葉先生は平常心を保っている?いや、葛葉先生は、眼鏡の奥で目が泳いでる。
「何と言う事だ、言われた通り考えればすぐ解る事だったじゃないか。エヴァンジェリンが自ら好んで吸血鬼になったのなら、大人になってから、せめて16~17ぐらいになってから吸血鬼化するはず。あたりまえじゃないか。エヴァンジェリンが悪に堕ちたのは、吸血鬼である事で様々な迫害を受けたからだそうじゃないか。今までなら、吸血鬼である事が悪い、と切り捨てていたが……。吸血鬼化が、自らの行いではなく他から強制された物だったなんて。それでは話はまったく変わって来る。エヴァンジェリンは滅ぼされるべき悪ではなく、逆にわたしたち正義の手から零れ落ちた、救われるべき被害者じゃないか。救われなかった、救う事ができなかった被害者じゃないか。いや、「わたしたち正義」?そんな不甲斐ない者が、今までエヴァンジェリンの事情を知らずに、いや知ろうともせずにただ凶悪犯として切り捨てていた愚か者が、正義を名乗るなど、正義を自認するなど、おこがましくは無いのか?わたしに正義の資格はあるのか?妻や娘の前に、胸を張って立つ事ができるのか?娘……。もしわたしの娘が誰かの魔法実験で吸血鬼化されたら、わたしはどうする?実験を行った者を殺す?私怨で?正義のために、吸血鬼化された娘を殺す?いやその場合、被害者なんだぞ。何よりわたしの可愛い娘じゃないか。ああ、だが……。」
……ガンドルフィーニ先生は、ちょっと再起不能の様だ。いや、本気で再起不能になられても困るんだけどさ。何にせよ、現在の状況を理解していないっぽい。理解はしてるのかな?それどこじゃないだけで。
「……コチラの道筋は駄目ネ。ならばこのルートでハ……。これだと先程の手法で潰したハズの、この変数が邪魔をするカ……。」
「超さん……。この
「葉加瀬、わたしには何がどうなっているのか理解できん。教えてくれないか。」
聡美さん、わたしにもお願いします。
「わかりました。でも、気を落とさないでくださいね……。」
超君たちは超君たちで大変そうだなあ。彼女の事でも、ガンドルフィーニ先生は衝撃を受けていたっけ。彼女たちは、
当初ガンドルフィーニ先生は
「彼女らの動機は、まさしく正義だ。だが手法は麻帆良と折に触れて衝突している。小さいが、その行いは悪と言えるかも知れない。彼女が問題生徒、要注意生徒であったことは間違いが無い事なんだ。大義のためなら、小悪を見逃しても良いのか?しかし見逃さない事で、大義を果たせなくなったら?彼女にも事情があった。たとえその事情を明かされても、とうてい信じることができない様な荒唐無稽だが、深刻な事情が。言われても、わたしは信じる事ができなかっただろう。正義とは、悪とはなんだ?全てを犠牲にして、1人過去の世界に戻り、血反吐を吐いて戦う少女に、手を差し伸べるのが本当の正義では?だが……。」
ああ、ガンドルフィーニ先生がどんどん一人で追い詰められていく。けど、無自覚に追い詰めている側の超君たちも、追い詰められているんだよね。未来を「おおまかに」……あくまでおおまかに確率論の観点から予測する、
そのネギ君?なんか自分のプランの発表を準備してるよ。高畑先生といっしょに。高畑先生は、海外での仕事が早期に終わったからついさっき空港に到着したんだ。それをネギ君が迎えに行ってきて、今「ここ」に居るんだよね。
「……駄目ネッ!!なんて、なんて事カ……。考えられる限り、
「超さん……。」
「超……。」
超さん……。
「……ワカテ、いるヨ。ツマリはわたしの計画では、
ネギ君からゲストIDでのアカウントを作ってもらって、宇宙基地?にある大型量子コンピューターに繋がってると言う端末で、必死に計算してた超君だが、ついに肩を落として敗北を認めた。つまりは
だが超君は不屈の意志力で、立ち上がる。そしてネギ君に向かい問いかけた。
「
「違うよ。
「え゛……。む……。では聞かせてモラオウ!
「そのつもりです。けれど、映像とか資料とか準備するから、少しだけ待っててくれますか?地球でも眺めながら。」
そう、今僕らのいる部屋の窓からは、蒼く大きな美しい地球が見えている。何と言うか、
石化解除されて、弐集院先生と葛葉先生と一緒に手当てを受けてたら、そこに宇宙船が空から降下して来たんだよね。で、ネギ君曰く。こうなったら枯れ木も山の賑わい、袖振り合うも多生の縁だと、僕らまで巻き込んでしまう事にしたんだそうだ。……英国人だそうだけど、日本語の諺とか詳しいね?
[ネギ]
タカミチと絡繰さんを助手に、僕は僕の計画について、皆に話し始めた。
「まず、基礎知識のおさらいから。この世界には、
ちなみに、基本的に
ここまでは良いですか?」
「あー、理解した、理解したんだが……。コレ、まださわりなんだろ?はぁ……。」
「千雨ちゃん。もうこうなったら、今までの常識は捨てた方がええよ。ウチは魔法を学ぶことに決めたときから、きっちり覚悟決めたえ。」
「……いや、わかってはいるんだ。ネギさん、続けてくれ。」
千雨の目に、力が戻って来たね。じゃ、続けようか。
「で、一部の人には衝撃的な事かも知れないけれど……。
「……え?」
「そ、そうなん?」
「そうなんだよ。……その世界を創ったのは
「あー、落ち着いてくれネギさん。つまりそいつの残した不具合で、今
ああ、ありがとう千雨。落ち着いた。僕は説明を再開する。
「うん、その通り。
火星には現状生命体が存在しない。魔力は生命活動から生み出されるのが基本だからね。
「「「「「「……!!」」」」」」
「
ああ、だけど彼らもちゃんと自分の自我意識はあるし、感情はあるし、心はあるし、魂だって持っている。身体が魔力で出来ているってだけで、立派な人間なんだ。これは心に留め置いて欲しい。
だけど幻想の存在だから、彼らを
皆、言葉も無いね。先生方の中にも、「ソレはじめて聞いた!」って顔してる人すら居るね。
「そしてここで登場するのが、
僕の父を始め、『
「「「「「「ええっ!?」」」」」」
「本当なんだよ。彼らは魔法儀式をもって
大戦を起こしたのは、その魔法儀式から皆の目を逸らす事が目的。なんだかんだ言っても、
その新しい、「完全なる世界」においては、そこに封じられた人々は「幸せな夢」を見つつ、眠り続ける。永遠に。そこでは一切合切の生命活動が行われないから、極めて省エネルギーで極めてクリーン。「完全なる世界」を維持するには太陽から降り注ぐ魔力で、充分に維持運営ができるってわけだ。」
「ば、ばかげている!そんなもの、阿片窟と何が違うんだ!」
叫んだのはガンドルフィーニさんだ。僕はそれに頷く。
「ええ、何にも違いません。それは同意します。ですが僕は、一定の評価はしているんですよ。あくまでタイムリミットが間近に迫っての、緊急避難として、ですが。」
「……!!」
「それと、一人も取りこぼさないで救いを与えよう、って言う
ええ、そうなんです。秘密結社『
色々知っていた超さんたち一同、僕から話を聞いていたエヴァさんたちやタカミチ以外の面々は、驚きの余り言葉も無い。
「話は少し戻る。ウェスペルタティア王国って国が、
けれどその行いに対する報いは、悲惨な物だった。メガロメセンブリアの元老院どもが、大戦終結直後の政情不安を鎮めるためのスケープゴートとして、アリカ王女に秘密結社『
「そ、そんな!メガロメセンブリアが!」
「本当なんですよ、ガンドルフィーニさん。メガロメセンブリアの元老院の中には、前王と懇意にしていた者も多かったんです。それの怨みもあった様で……。
アリカ王女は、大戦の戦犯扱いされて「災厄の魔女」の汚名を着せられて、終戦から2年後、処刑された。……表向きは。」
「「「「「「!?」」」」」」
「実は僕の父、ナギ・スプリングフィールドと『
「めでたしめでたし……ってワケか?……あ、いやゴメンしてや。色々問題もあるんやな。まだ。」
小太郎君は、僕の強い視線に慌てて謝る。その通りだ。
「そうだよ小太郎君。問題だらけだ。第一、母は未だ汚名を着せられ、
そして今から6年前になるのかな?ダイオラマ魔法球の外の時間では。僕は当時3歳だった。ああ、年齢が合わないのは、僕が1日が6日になるダイオラマ魔法球って言う物の中で、長年修行と研究をしていたからだよ。僕が3歳の頃には、父も母も傍にはおらず、僕は従姉のお姉さんと、故郷の村の人達に育てられていた。
そしてそこに、突然悪魔の群れが襲いかかって来た。村の人々を石化し、僕を殺そうと襲いかかって来たんだ。調べて分かったんだけれど、何らかの方法で僕……アリカ王女の血を引く存在が生まれて生きている事を知ったメガロメセンブリア元老院の一部……ほんとに一部だといいんだがね。そいつらが刺客を送り込んだんだよ。さっき倒した悪魔は、そのとき現れた中でも随一の実力の1体だった。だから僕は、あいつだけは自分の手で倒したくてね……。
でもまあ、その時の僕は弱かったし、殺されかけた。そして、その絶望?恐怖?まあなんでもいいか。それで前世の記憶と能力が甦ったんだ。そうでなきゃ、そのまま殺されてたかもね。そして悪魔どもを蹴散らした。」
「前世の記憶!?」
超さんが驚いて立ち上がる。僕は超さんに頷いてやった。なるほど、超さんの想定では、弱いままの僕だったのかもね。超さんが、へたへたと椅子に座り込んだ。
「そこに、僕を助けに来た父が現れた。当時の僕は前世の人格が表に出てたからね。父は僕自身には会えなくて、がっくり来てたよ。そこで父が苦しみ出した。調べてみたら、父は先代の
いや、
ああ、父は自分が憑依される事まで計算の上で、先代
「ナギから聞いたが、その
「ええ、凄く面倒くさかったですけどね。
でも事情があって、僕と父はその場で別れて、今に至るまで再度会ってはいないんだ。……母も行方不明だけども、父と居なかったと言う事は。もしかしたらもう、死んでいるのかもしれないね……。」
さて、いよいよかな。僕の
計画は既に走り出してる。もう止まる事はできないし、止めるつもりも辞めるつもりもない。そしてオマケと言うか、僕にとってはもしかしたらこっちの方が重いのかもしれないけれど、復讐を……。メガロメセンブリアの元老院、最低でもその中の村を襲わせた連中と、可能であれば母さんに汚名を着せた連中、そいつらへの復讐を果たす。
それが3歳の僕と、前世の僕から受け継いだ、今の僕の骨子なんだ。
今回、「魔法先生ネギま!」原作の酷いネタばらしがありました。というか、ほぼそれで枚数を使ってしまいました。ごめんなさい。